【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます

大河

文字の大きさ
10 / 37

10話

しおりを挟む
「きゃあっ!」

 リディア王女の悲鳴が大広間に響き渡った。

 オレは人混みをかき分け、必死に声のした方へと向かう。人々が恐怖に包まれた表情で後ずさりし始め、徐々に視界が開けてきた。

「誰も近づくな! 動いたら王女様の命はないぞ!」

 目の前の光景にオレは息を呑んだ。

 貴族風の装いをした男が、リディア王女を背後から拘束するように掴んでいる。彼女の首元には、大型のナイフのような刃物が突きつけられていた。リディアの顔は青ざめ、小さな体が震えている。

「何をする気だ、ルークス!」
「どけ! 邪魔するな!」

 貴族たちの悲鳴と怒号が飛び交い、パーティの華やかな雰囲気は一変した。音楽は止み、会場にはただ恐怖と緊張だけが充満している。

(ルークス? あの男の名前か……)

 周囲の貴族たちが小声で交わす会話が耳に入ってくる。

「あれはルークス・ハインリヒだ……」
「中流貴族の出だが、最近家が没落したという噂だったが……」 
「カイル王子との付き合いが深いらしいな」 
「裏金を流していたことがバレて、地位が危うくなっていると聞いたぞ」

 情報が頭の中を巡る。中流貴族で第二王子と親しい。最近は家が没落しかけている。つまり、藁にもすがる思いで何かを企んでいるってことか。

「皆さん下がってください!」

 広間の入り口から、衛兵が駆けつけてくる気配がする。でも、彼らが到着するまでの間にルークスはリディアを連れてバルコニーの方へと後退し始めた。

「近づくな! 誰も近づくんじゃない!」

 ルークスの声は少し震えている。奴の目的は何だ? バルコニーからだと庭に出られる。そして庭の先には王宮の裏手にある小さな森が広がっている。あそこまで行かれたら捜索が難しくなる。仲間がいるとしたら、もっと悪い状況になりかねない。

「おいお前、何をしてるんだ! 今すぐ王女様を離せ!」

 宮殿騎士の一人が剣を抜いて前に出た。

(いや、待て! 王女様が拘束されてるってのに下手に挑発するなっての!)

 オレは内心で叫んだ。案の定、ルークスは激昂し、ナイフをリディアの首元に強く押し当てた。

「黙れ! もう一歩でも近づけば、この子の首を掻き切るぞ!」

 リディアの小さな悲鳴に、オレの胸が締め付けられる。くそっ、なんで誰も適切な対応ができない? 宮殿騎士たちは焦りの色を隠せず、互いに顔を見合わせるばかり。役立たずめ!

 オレは急いで状況を見極めた。ルークスは剣の扱いに慣れていないようだ。手が震えている。刃物を持つ腕は力が入りすぎていて、長時間同じ姿勢を維持するのは難しいはずだ。それに、騎士たちに注意を向けていて、他からの危険には気づかないかもしれない。

 チャンスは一度だけ。

 オレは目の前のテーブルに置かれたワイングラスに手を伸ばし、ルークスとリディアのいる方向とは反対側の壁に向かって思い切り投げた。

 ガシャーン!

 予想通り、鋭い音にルークスは反射的に振り向いた。

 その一瞬の隙に、オレは床を蹴って一気に距離を詰めた。

「おりゃっ!」

 オレは右手でルークスの武器を持つ腕を掴み、そのまま天井に向かって押し上げた。左手ではリディアの体を引き寄せ、彼女をルークスの腕から引き離す。

「リディア様、こっちです!」

 リディアは素早くルークスの腕から逃れ、周囲の貴族たちの方へと駆け寄った。

「てめえ!」

 王女が逃げたことに気づいたルークスが、怒りに任せてオレに殴りかかってきた。ダイレクトに顔面を狙ってくる。アマチュアの典型的な攻撃だ。

 オレは軽く身をひねって攻撃をかわし、ルークスの腕を掴んだまま、彼の勢いを利用して床に叩きつけた。

「ぐああっ!」

 ルークスは床に倒れ、その勢いでナイフが手から離れた。オレはそれを蹴り飛ばし、彼の背中に膝を押し当てて動きを封じた。

「おとなしくしろ」

 オレは冷静に告げた。

 そして初めて、自分が何をしたか、どれだけの人の目に触れているかに気がついた。

 広間には静寂が流れ、すべての視線がオレに注がれている。

(うわ……めっちゃ目立っちゃった……)

 オレの頬が熱くなる。穴があったら入りたい気分だ。

 ポツリ、ポツリと拍手が始まり、それがやがて大きな拍手へと変わっていった。周囲の貴族たちが立ち上がり、オレに拍手を送っている。

「よくやった、若者」 
「見事な身のこなしだ!」
「あれは何者だ、宮殿騎士か?」

 貴族たちの称賛の声が耳に届く。

 その時、人混みをかき分けて駆けてきた二人の姿が見えた。レオン殿下とフリードリヒ殿下だ。二人とも少し息が上がっている。

「リディア! 大丈夫か?」

 フリードリヒ殿下が真っ先に娘に駆け寄った。

「はい、お父様。セリルさんが助けてくれたの!」

 レオン殿下はオレの方に歩み寄り、ルークスを抑えている様子を見てかすかに笑った。

「どうやら、我々が出る間もなくお前が片付けてしまったようだな」

 駆けつけた騎士たちがルークスを取り押さえ、オレは立ち上がった。

「セリル・グランツ殿」

 突然、フリードリヒ殿下が真正面からオレに向き直った。

「は、はい」

 オレは慌てて直立不動の姿勢を取った。

「娘の命を救ってくれた恩は決して忘れません。深く感謝します」

 そう言って、フリードリヒ殿下は頭を下げた。王子が礼を言う様子を見て、周囲の貴族たちがざわついている。

「い、いえ! そんな大げさな……当然のことをしただけです」

 オレは慌てて答えた。王族に頭を下げられるなんて想定外すぎる。どう対応したらいいのかさっぱり分からなくて頭が真っ白になる。

「お父様、わたしもお礼を言いたいです」

 リディア王女もオレに向かって丁寧にお辞儀をした。

「セリルさん、本当にありがとうございました。わたし、この御恩は一生忘れません」
「そ、それは大変光栄です……」

 オレの顔は恥ずかしさで真っ赤になっていたはずだ。

 ルークスは騎士たちに取り押さえられ、広間から連れ出されていった。彼が去ると、徐々に場の雰囲気が和らぎ始め、パーティの華やかさが少しずつ戻ってきた。

 レオン殿下がオレの隣に立ち、小声で言った。

「……このパーティでお前を貴族たちにどう紹介しようか頭を悩ませていたが、すっかり会場全員の貴族に顔を覚えられてしまったようだな」

 その珍しい軽口に、オレは驚いて彼を見つめた。レオン殿下の口元には、微かな笑みが浮かんでいる。

「えっ、あ、そうですね……」

 なんだか照れくさい。周囲から聞こえてくる称賛の声が余計に恥ずかしさを倍増させる。

 そのとき、楽団が新しい曲を奏で始めた。

「……ダンスの時間だな」

 レオン殿下が言った。

「え、今あんなことがあったのに踊るの?」

 オレは驚いて尋ねた。

「貴族たちにとっては、こういった場は形式が何よりも大切なのだ。事件があったとしても、予定されたダンスは行われる」

 レオン殿下はいつもの冷静さで答えた。

 そして、彼はオレの前に立ち、右手を差し出した。

「踊ろうか」
「オレと? ……レオン殿下、オレにダンスの教養があると思います?」

 オレは慌てて言い訳をした。

「エドガーから習っただろう」

 レオン殿下の言葉に、オレはぐうの音も出なかった。確かに、ここ最近のレッスンでエドガーからダンスも習っていたのだ。それも「婚約者として恥ずかしくない程度には覚えろ」と言われて、かなり厳しく。

「あ、その……まあ、少しは」

 オレは観念して白状した。レオン殿下の口元が緩むのが見える。

「では、行こうか」

 そう言って、彼はオレの手を取った。その手の温もりと、彼の瞳の真剣さに胸がドキリとする。

 周囲の貴族たちの視線が注がれる中、レオン殿下はオレを広間の中央へと導いた。

 最初は周囲の好奇の視線が気になって仕方なかった。でも、レオン殿下の確かな導きに身を任せるうちに、そんな不安も薄れていった。思ったより自然に体が動く。エドガーの特訓が身についているのか。

 ダンスの途中、レオン殿下がオレの耳元で囁いた。

「──これでお前が私の婚約者であることは、皆の知るところとなった」

 彼はそう言って、満足そうに微笑んだ。

(そうか……見せかけの婚約を周囲に知らせることができて満足なのか)

 なんだか少し寂しい気持ちになった。

 将来、レオン殿下の本当の婚約者になる人はどんな人なんだろう? きっとオレのようなごつい男ではなく、可愛らしい女性なんだろうな。そんな人とのダンスなら、俺とは違って絵になるお似合いの二人になるだろう。

 そう考えると、なんだか胸がモヤモヤとしてきた。何でこんな気持ちになるんだろう?

「どうした?」

 レオン殿下が尋ねた。オレの表情に何か出ていたのだろうか。

「いえ、何でもないです」

 オレはいったん思考を停止させることにした。考えすぎても仕方ない。今のレオン殿下のパートナーはオレなんだ。だったら目の前の時間を楽しもう。

「つい最近まで騎士として剣を振るってたのに、今はこれだけの貴族たちの前で殿下とダンスしてるなんて。想像もしてなかったですよ」

 オレはくすりと笑った。レオン殿下も珍しく表情を和らげた。

「私だってそうだ。婚約者とダンスするなど、想像もしていなかった」
「特にオレみたいな相手とは、ですよね」
「いや……」

 レオン殿下は一瞬言葉を詰まらせ、オレの目をじっと見つめた。

「お前だからこそ、だ」

 その意味を考える暇もなく、音楽が急に転調する。

 レオン殿下はオレを優雅にくるりと回し、思考は霧のように消えた

(……お前だからこそって、どういう意味だろう)

 いつの間にか、周囲には他の貴族たちも集まってきていた。けれど、オレにはそんなことは遠い世界の出来事のように思えた。

 オレはただこの瞬間、レオン殿下と踊ることだけが、この世界のすべてのように感じていた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

虐げられΩは冷酷公爵に買われるが、実は最強の浄化能力者で運命の番でした

水凪しおん
BL
貧しい村で育った隠れオメガのリアム。彼の運命は、冷酷無比と噂される『銀薔薇の公爵』アシュレイと出会ったことで、激しく動き出す。 強大な魔力の呪いに苦しむ公爵にとって、リアムの持つ不思議な『浄化』の力は唯一の希望だった。道具として屋敷に囚われたリアムだったが、氷の仮面に隠された公爵の孤独と優しさに触れるうち、抗いがたい絆が芽生え始める。 「お前は、俺だけのものだ」 これは、身分も性も、運命さえも乗り越えていく、不器用で一途な二人の成り上がりロマンス。惹かれ合う魂が、やがて世界の理をも変える奇跡を紡ぎ出す――。

婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした

水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」 公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。 婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。 しかし、それは新たな人生の始まりだった。 前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。 そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。 共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。 だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。 彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。 一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。 これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。 痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

冷酷なアルファ(氷の将軍)に嫁いだオメガ、実はめちゃくちゃ愛されていた。

水凪しおん
BL
これは、愛を知らなかった二人が、本当の愛を見つけるまでの物語。 国のための「生贄」として、敵国の将軍に嫁いだオメガの王子、ユアン。 彼を待っていたのは、「氷の将軍」と恐れられるアルファ、クロヴィスとの心ない日々だった。 世継ぎを産むための「道具」として扱われ、絶望に暮れるユアン。 しかし、冷たい仮面の下に隠された、不器用な優しさと孤独な瞳。 孤独な夜にかけられた一枚の外套が、凍てついた心を少しずつ溶かし始める。 これは、政略結婚という偽りから始まった、運命の恋。 帝国に渦巻く陰謀に立ち向かう中で、二人は互いを守り、支え合う「共犯者」となる。 偽りの夫婦が、唯一無二の「番」になるまでの軌跡を、どうぞ見届けてください。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

エリートαとして追放されましたが、実は抑制剤で隠されたΩでした。辺境で出会った無骨な農夫は訳あり最強αで、私の運命の番らしいです。

水凪しおん
BL
エリートαとして完璧な人生を歩むはずだった公爵令息アレクシス。しかし、身に覚えのない罪で婚約者である王子から婚約破棄と国外追放を宣告される。すべてを奪われ、魔獣が跋扈する辺境の地に捨てられた彼を待っていたのは、絶望と死の淵だった。 雨に打たれ、泥にまみれたプライドも砕け散ったその時、彼を救ったのは一人の無骨な男、カイ。ぶっきらぼうだが温かいスープを差し出す彼との出会いが、アレクシスの運命を根底から覆していく。 畑を耕し、土に触れる日々の中で、アレクシスは自らの体に隠された大きな秘密と、抗いがたい魂の引力に気づき始める。 ――これは、偽りのαとして生きてきた青年が、運命の番と出会い、本当の自分を取り戻す物語。追放から始まる、愛と再生の成り上がりファンタジー。

追放されたので路地裏で工房を開いたら、お忍びの皇帝陛下に懐かれてしまい、溺愛されています

水凪しおん
BL
「お前は役立たずだ」――。 王立錬金術師工房を理不尽に追放された青年フィオ。彼に残されたのは、物の真の価値を見抜くユニークスキル【神眼鑑定】と、前世で培ったアンティークの修復技術だけだった。 絶望の淵で、彼は王都の片隅に小さな修理屋『時の忘れもの』を開く。忘れられたガラクタに再び命を吹き込む穏やかな日々。そんな彼の前に、ある日、氷のように美しい一人の青年が現れる。 「これを、直してほしい」 レオと名乗る彼が持ち込む品は、なぜか歴史を揺るがすほどの“国宝級”のガラクタばかり。壊れた「物」を通して、少しずつ心を通わせていく二人。しかし、レオが隠し続けたその正体は、フィオの運命を、そして国をも揺るがす、あまりにも大きな秘密だった――。

処理中です...