『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯

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第13話 黒咲明日香を知りたい

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 黒咲 明日香はオタクである。どの程度かと言うと、好きなアニメのシチュエーションを実際に再現したくなる程度。

かなりの重症。

 彼女の延々と続くアニメの話を聞き、相槌をうって、また続く話を聞いて。このループを繰り返していくうちに、俺の中での黒咲明日香という人物像が定まってゆく。

 アイドルだとか、クラスメイトだとか、オタクだとか。どれだけ多くの仮面を持っていても、人間の本質は一つなんだなと感心した。

 彼女は花が咲くように話す。彼女は雨が降るように悲しみ、曇天から光が差すように立ち直る。それが本質であり、黒咲明日香という形。

衣が変われど魂は違わず。

 座卓の上に置かれたお茶を啜る。と同時に、黒咲の話が大詰めに差し掛かった。あとは一言添えるだけだった。

「──だから! あなたが使用人役に適しているのです!」

 アニメの話から遠回りをして着地した場所は、『お見合いを断るには、俺と黒咲が主従関係を乗り越えた恋をする必要がある』という彼女の立論だった。

もちろん『恋をする』という設定で、行うわけだ。

そんな黒咲の作戦に対して俺は腕を組み、首を縦に振る。

「……分かる。あのアニメは凄くよかった」しかしそう言った直後、俺は首を横に振った。「だけど、現実だったらうまくいかないと思う」

 バンッと黒咲が両手で座卓を叩いて立ち上がる。怒っているわけではなく、ショックを受けていた。

「なんでですか!? 完璧な作戦でしょう!?」

 逆にこっちが聞きたいよ。何で完璧だと思ったんだ。だいたい、あのアニメの山場といったら……。

「ヒロインがカッコよく、お見合い相手をブン殴るあのシーンだけでもやらないと!」

 黒咲はシャドウボクシングを始めた。ヒラヒラと揺れる着物の袖を眺めながら、俺はたった一言だけ言い放つ。

「……それだよ。人殴るなんて、現実なら普通にアウトだ」

ドンガラガッシャーン!!

 と、聞こえた気がした。実際は無音、静寂に包まれたこの和室。時が止まったように黒咲が動かなくなった。

たまに黒咲から「うそだ」などと呟く声が聞こえる。

ヒュルリ、バタンキュー。

 黒咲の頭上にヒヨコが回る幻覚を見つつ、俺は倒れた黒咲を覗き込む。現実でブン殴ると、オタクはこうも脆い生き物なのか。

「おいおい、一撃KOかよ」

 黒咲が目を覚ましたのは1時間後。その間、いくら揺すっても彼女が目を覚ますことなんてなかった。
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