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魔女か、恋か、錯覚か
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「あれ?」
再びリジーを見ると、そこには一週間前と同じ、骨ギスでしわくちゃな老婆がいた。
「あれ?」
ハンターは再び声を上げた。
ーーな、何を見たんだ俺は。錯覚か、願望か、夢想か。夢想!?ダメだろ、それは!
「ーーわ、悪い。なんか別もんに見えた。えっと、元気だったか?」
ようやく落ち着いたハンターは気まずそうにリジーに向き合った。ふふっと笑ったリジーにまたしてもおかしな感覚を持ちそうになりながら、村から持ってきたもの、途中でとったものをリジーに手渡すと、リジーも自分が収穫したものをハンターに手渡した。
「わたくし、狩も上手になりましたの。今日はカモを三羽、こちらはハンターさんと村のみんなに」
ウキウキと血抜きをした鴨を差し出しながら、背負いカゴを下ろし、中身を差し出すリジーに、本当に逞しくなったな、とちょっと引き気味のハンター。
だがその手に取った中身を見て固まった。
「えっ?なんだこれ?まさか」
「あっこれは、魔女様の家で採れたもので。万能薬葉樹だと思いますの。間違いでなければ。それと、この果実もその木から採れたものですわ。美味しいのでどうぞ。こちらは途中で狩った野ウサギの食べていた木の実です。蒸したら美味しそうでしたので。あっ、でも兎はたったの一羽ですから、ハンターさんに。先日のお返しです」
「ち、ちょっと待て。これが魔女の家に生えてるのか?」
「ええ。不思議なことに、この木が家を守っていたのですわ。扉は壊れてしまいましたけど」
ハンターはあんぐりと口を開けたものの、はっと笑い出した。
「逞しいなとは思ったけど、ここまでとは思わなかったよ。さすがだ。えっと、この贈り物はありがたく頂戴しておく。全然見合わないけれど、俺、と村からのものも使ってくれ。最近街の方が騒々しくてな。なんでも病が蔓延しているんだとかで、この薬葉樹の葉は助かると思う。もしリジーさえ良ければ来週も持ってこれないだろうか」
リジーはパアッと笑顔を見せた。
「もちろんですわ。お役にたてて嬉しいです!ずっとご恩返しがしたかったんですの」
「そ、そうか。えっと、じゃあまた来週も頼むよ」
「嬉しいわ。もしかしたら、わたくしがお山でうまくやっているなら、もうお会いできないのかと思いましたの。せっかくのご縁ですもの……あ、でも罪を償うためにお山に入ったのに、楽しんではいけませんわね…」
ハンターはカアっと赤くなる。光の加減でリジーの顔が若く見えたり老婆に戻ったりと忙しい。
いや、そう見せている自分の目を疑うレベルだ。だが、なぜかどうしても、どう見ても『可愛い』と思ってしまうのだ。これまでハンターたち村人は何人もの囚人を見てこの山に送り込んできた。女も当然いたが、どの人間もどす黒く表情からして罪を犯したことが見てとれた。可哀想どころか『可愛い』などと思ったことは一度もない。
しかも老婆に対してだ。
だが、とハンターはふと思う。
冤罪。
最近よく聞く言葉だった。王族が罪を犯し、それを隠蔽するために令嬢に罪を被せ、それが山神様の怒りに触れた。守りの魔女が愛想をつかし、国を出たとも聞く。その際に様々な穢れを持ち込んだとか、山神が怒って天罰を下したとか。
それが今苦しんでいる人たちの置かれている立場だ。呪いに冒された人間は血が青くなるとか、荊に巻かれて死ぬだとか。そんな人間を人々は見捨て、助けることはない。助けて更に山神の怒りに触れるのでは、と恐れているせいだ。それまで沈黙を守っていた西の森からは魔獣や亡霊が湧き出し、王都はすでに機能を停止しただとか。
リジーが貴族だったのだとすれば、王都からきたに違いない。それでもリジーの血は青くもなかったし、荊に巻きつかれているようにも見えない。と言うことは呪われているわけではないのだろう。魔女の小屋を見つけ元気に生きていると言うことは、山神様の怒りに触れているわけでもない。どちらかと言えば、好まれている。だとすれば、この老婆こそが王族に冤罪で罪を被せられ、追放された令嬢で。そしてそのことに対して山神様が怒ったのではないか。
もう一つの可能性として、リジーが実は西の魔女だったのではないかという事。罪を犯した王族に愛想をつかし、西の森を解放した。そしてこうやって昔懐かしい我が家へと舞い戻った。……だと仮定すると、この魔女は300歳以上。長老よりも年上だということだ。魔女は不死だと聞く。不老じゃないということは、これ以上しわくちゃになっていくのだろうか。
「ハンターさん?」
リジーに問いかけられ、はっとする。くだらない妄想をした。罪人への詮索はご法度。感情移入をしないようにするためだ。絆されて自分たちが罪を犯すわけにはいかないから。既に時遅しかもしれないが。罪は犯していないと思うが、感情移入はたっぷりしている自覚はある。
「いや、悪い。ちょっと考え事しただけだ。俺たち村人は村から出ることは滅多にないからな。病に苦しんでいる人たちを助けにいくことはできないが、助けを求めにきた人間を助けることはできるはずだ。だから備えあればってことさ」
「ご立派ですわ。そうですね。できるところからコツコツと。わたくし、そう言う考えはとても好きですし、尊敬いたします。わたくしも、わずかでもお手伝い出来ましたら僥倖ですわ」
そう言って首を傾げて笑うリジーはやっぱり可愛くて。
ハンターは天を仰ぎ見た。
再びリジーを見ると、そこには一週間前と同じ、骨ギスでしわくちゃな老婆がいた。
「あれ?」
ハンターは再び声を上げた。
ーーな、何を見たんだ俺は。錯覚か、願望か、夢想か。夢想!?ダメだろ、それは!
「ーーわ、悪い。なんか別もんに見えた。えっと、元気だったか?」
ようやく落ち着いたハンターは気まずそうにリジーに向き合った。ふふっと笑ったリジーにまたしてもおかしな感覚を持ちそうになりながら、村から持ってきたもの、途中でとったものをリジーに手渡すと、リジーも自分が収穫したものをハンターに手渡した。
「わたくし、狩も上手になりましたの。今日はカモを三羽、こちらはハンターさんと村のみんなに」
ウキウキと血抜きをした鴨を差し出しながら、背負いカゴを下ろし、中身を差し出すリジーに、本当に逞しくなったな、とちょっと引き気味のハンター。
だがその手に取った中身を見て固まった。
「えっ?なんだこれ?まさか」
「あっこれは、魔女様の家で採れたもので。万能薬葉樹だと思いますの。間違いでなければ。それと、この果実もその木から採れたものですわ。美味しいのでどうぞ。こちらは途中で狩った野ウサギの食べていた木の実です。蒸したら美味しそうでしたので。あっ、でも兎はたったの一羽ですから、ハンターさんに。先日のお返しです」
「ち、ちょっと待て。これが魔女の家に生えてるのか?」
「ええ。不思議なことに、この木が家を守っていたのですわ。扉は壊れてしまいましたけど」
ハンターはあんぐりと口を開けたものの、はっと笑い出した。
「逞しいなとは思ったけど、ここまでとは思わなかったよ。さすがだ。えっと、この贈り物はありがたく頂戴しておく。全然見合わないけれど、俺、と村からのものも使ってくれ。最近街の方が騒々しくてな。なんでも病が蔓延しているんだとかで、この薬葉樹の葉は助かると思う。もしリジーさえ良ければ来週も持ってこれないだろうか」
リジーはパアッと笑顔を見せた。
「もちろんですわ。お役にたてて嬉しいです!ずっとご恩返しがしたかったんですの」
「そ、そうか。えっと、じゃあまた来週も頼むよ」
「嬉しいわ。もしかしたら、わたくしがお山でうまくやっているなら、もうお会いできないのかと思いましたの。せっかくのご縁ですもの……あ、でも罪を償うためにお山に入ったのに、楽しんではいけませんわね…」
ハンターはカアっと赤くなる。光の加減でリジーの顔が若く見えたり老婆に戻ったりと忙しい。
いや、そう見せている自分の目を疑うレベルだ。だが、なぜかどうしても、どう見ても『可愛い』と思ってしまうのだ。これまでハンターたち村人は何人もの囚人を見てこの山に送り込んできた。女も当然いたが、どの人間もどす黒く表情からして罪を犯したことが見てとれた。可哀想どころか『可愛い』などと思ったことは一度もない。
しかも老婆に対してだ。
だが、とハンターはふと思う。
冤罪。
最近よく聞く言葉だった。王族が罪を犯し、それを隠蔽するために令嬢に罪を被せ、それが山神様の怒りに触れた。守りの魔女が愛想をつかし、国を出たとも聞く。その際に様々な穢れを持ち込んだとか、山神が怒って天罰を下したとか。
それが今苦しんでいる人たちの置かれている立場だ。呪いに冒された人間は血が青くなるとか、荊に巻かれて死ぬだとか。そんな人間を人々は見捨て、助けることはない。助けて更に山神の怒りに触れるのでは、と恐れているせいだ。それまで沈黙を守っていた西の森からは魔獣や亡霊が湧き出し、王都はすでに機能を停止しただとか。
リジーが貴族だったのだとすれば、王都からきたに違いない。それでもリジーの血は青くもなかったし、荊に巻きつかれているようにも見えない。と言うことは呪われているわけではないのだろう。魔女の小屋を見つけ元気に生きていると言うことは、山神様の怒りに触れているわけでもない。どちらかと言えば、好まれている。だとすれば、この老婆こそが王族に冤罪で罪を被せられ、追放された令嬢で。そしてそのことに対して山神様が怒ったのではないか。
もう一つの可能性として、リジーが実は西の魔女だったのではないかという事。罪を犯した王族に愛想をつかし、西の森を解放した。そしてこうやって昔懐かしい我が家へと舞い戻った。……だと仮定すると、この魔女は300歳以上。長老よりも年上だということだ。魔女は不死だと聞く。不老じゃないということは、これ以上しわくちゃになっていくのだろうか。
「ハンターさん?」
リジーに問いかけられ、はっとする。くだらない妄想をした。罪人への詮索はご法度。感情移入をしないようにするためだ。絆されて自分たちが罪を犯すわけにはいかないから。既に時遅しかもしれないが。罪は犯していないと思うが、感情移入はたっぷりしている自覚はある。
「いや、悪い。ちょっと考え事しただけだ。俺たち村人は村から出ることは滅多にないからな。病に苦しんでいる人たちを助けにいくことはできないが、助けを求めにきた人間を助けることはできるはずだ。だから備えあればってことさ」
「ご立派ですわ。そうですね。できるところからコツコツと。わたくし、そう言う考えはとても好きですし、尊敬いたします。わたくしも、わずかでもお手伝い出来ましたら僥倖ですわ」
そう言って首を傾げて笑うリジーはやっぱり可愛くて。
ハンターは天を仰ぎ見た。
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