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19 浪人 鷲尾虎之進
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第五話 浪人 鷲尾虎之進
館林城の大手門前。
空は昼だというのに薄暗い。
浅間の噴煙がまだ天を塞ぎ、灰が光を食っている。
風が吹けば、乾いた灰が砂のように舞い、肌や唇にざらりと貼りついた。
焼け焦げた木の匂いと、湿った土と、どこか生臭い血の気配――
城下には、災厄のあとに残る匂いが折り重なって漂っていた。
門の内側からは、きしむ梁の音、何かが崩れる遠い轟きが時折聞こえる。
それでも大手門は半ば閉じられ、門番の数もいつもより少ない。
この城が、すでに“守るものを失いかけている”ことを、門前の空気が語っていた。
その門前に、ひとりの浪人が立ち尽くしていた。
背は高く、骨太で、肩幅も広い。
髭は伸び、着流しは旅埃と灰でまだらに汚れている。
だが腰の刀だけは異様に冴えていた。
鍔は飾り気がなく、鞘には幾度も擦れた跡。
使い込まれた刃の持つ“静かな重さ”が、鞘越しにすら伝わる。
名を――鷲尾虎之進。
虎之進は懐から一通の書状を取り出し、門番へ差し出した。
手の甲には、風雨で荒れた皺と、握り締めてきた者だけが持つ硬いタコがある。
「この通り。わしは浪人、鷲尾虎之進。
かねてより館林藩剣術指南役としてお召しをいただく約定がある。
ここにその証文がある」
門番は書状を受け取り、慎重に中を改めた。
紙面には確かに、館林藩家老の花押。
墨の濃さも、折り目の新しさも、偽りではない。
だが門番の眉間に深い影が落ちる。
困惑したまま、ゆっくり首を振った。
「鷲尾殿……まことに気の毒だが……今はそのような時ではござらん」
「どういうことだ」
虎之進の声が低くなる。
怒気というより、理解できぬものを前にした鋭さだった。
「見ての通りだ」
門番は城内を顎で示した。
瓦は落ち、塀は崩れ、煙の上がる屋敷が目に入る。
外へ出るはずの藩士の姿もない。
門の向こうは、城というより傷んだ獣の腹の中のように沈んでいた。
「浅間山の大噴火で城下は壊滅。
黒き影が徘徊し、殿も屋敷に籠りきり……
新たに指南役を迎えるどころではござらぬ」
――黒き影。
その言葉が、門前の冷気より重く虎之進の胸に落ちた。
虎之進は思わず空を仰いだ。
灰に曇った天は低く垂れ込み、
噴煙はまだ遠くでくすぶり続けている。
まるで世界の天井が落ちてきたような圧迫感だった。
「ちっ……せっかくの職が……」
吐き捨てるように言い、口元に乾いた笑みが浮かぶ。
門番は哀れむように書状を返した。
「悪いことは申しません。
他所へ退かれるがよろしい。
ここにいては命が危うい」
虎之進は書状を懐へしまい、苦笑した。
「退く場所があれば、とっくに退いておるわ」
そう吐き捨て、大きな背を翻す。
けれどその背中には、“敗者の重さ”だけではなく、まだ燃え残るものがあった。
剣士という業(ごう)が、簡単に枯れるはずがない。
とぼとぼと、行くあてもなく歩く。
浪人・鷲尾虎之進の背に、灰が淡く積もっていく。
歩くたびに足跡は白く残り、すぐ風に消える。
職を得るはずだった館林藩には門前払いされ、懐も、未来も、空っぽのまま宙ぶらりんだ。
だが虚しさは、胸の底に沈むと同時に、別の熱を生む。
――このまま終われるか。
――剣と共に生きてきた身が。
そのとき、背後から
“ずるり”と何かが土を引きずるような音がした。
低い呻き声が近づいてくる。
振り返れば、黒ずんだ影――黒屍人が三体、灰の中からよろめき出ていた。
目は濁り、口元から唾液とも血ともつかぬ黒い筋を垂らしている。
生者の匂いに引かれた虫のように、ただ目的もなくにじり寄ってくる。
「……寄るなら、斬るまでよ」
虎之進は迷いなく刀を抜いた。
鞘走りの音が乾いた空に鋭く響く。
刃が抜けた瞬間、空気が一段冷えた。
一歩、二歩。
黒屍人が伸びる。
虎之進の足運びは静かだった。
腰は落ちていない。肩は力まない。
ただ刃の軌道だけが、
必要な場所へ、必要な角度で滑り込む。
――閃。
首が宙を舞った。
胴が崩れ、黒い灰が散る。
返す刀で二体目。
斬られたことすら気づかぬように首が落ち、灰の衣が風にほどける。
三体目は半歩踏み込み、刃の峰で受け流し、腹から袈裟へ抜いた。
一太刀ごとに、無駄がない。
“生き残るために磨かれた剣”の動きだった。
「ふん……この程度か」
刀を払った、その瞬間。
――ごう。
地を踏み鳴らす、重い音。
前方の瓦礫の陰が、ゆっくりと“起き上がる”ように形を成した。
巨大な人影。
片眼の大男。
肩には黒鉄の鉞。
城下の灰より黒い殺気を背負い、
歩むたびに地面が震えた。
空気が変わる。
戦場の気配ではない。
獣が山に現れたときの、
生き物としての本能が騒ぐ威圧。
「……っ!」
虎之進の背筋に冷たいものが走った。
足が、動かない。
金縛り。
いや、金縛りというより、
“動けば喰われる”と体が理解してしまった恐怖だった。
剣士の反射が凍りつく。
喉が乾き、心臓が跳ねる。
大男は虎之進の前を、まるで彼の存在など見えぬかのように通り過ぎていく。
黒鉄の鉞は血に濡れていた。
滴り落ちる血が、灰色の土に黒い点を打つ。
虎之進は荒い息をつき、刀を握る手に脂汗が滲むのを感じた。
「な……なんだ、あいつは……」
言葉が震える。
「人じゃない……物の怪か……」
背が遠ざかっていっても、心臓は鷲掴みにされたまま鼓動を乱していた。
その胸の底で、恐怖の奥に“剣士の闘志”がじわりと燃え直すのを、虎之進自身がいちばんはっきり感じていた。
――今のは、何だ。
――あれを斬らねば、俺の剣は何のためにある。
灰の風が吹き抜け、虎之進の髭と着流しを揺らした。
彼の名に宿る“虎”は、この地獄の中で
まだ吼える場所を探していた。
第六話 三珠の目的
城下を抜け、荒れ果てた街道を進む一行。
館林の瓦礫と黒い灰煙は背後へ薄れていくが、鼻に残る焦げと腐泥の匂いはまだ取れない。
空からは絶え間なく灰が降り、細かな粒が髪や肩に積もっていく。
田畑は白と黒のまだらに覆われ、倒れた苗がそのまま埋もれ、土は固く締まりきっていた。
夏のはずなのに、風は骨の奥へ冷たく刺さる。
隊列の先頭は三騎。
中央に本多忠壽。
馬上の背は真っ直ぐで、手綱を握る腕だけが静かに緊張している。
左右と少し後ろ、家臣二名が馬を並べ、主君の半歩後を守る位置を崩さない。
鎧の肩口には乾いた血が黒くこびりつき、面頬の縁には灰が詰まっていた。
六騎いたうち三騎は黒屍人に喰われ、今は影もない。
残る二騎の息づかいは荒いが、愚痴も弱音もない。ただ、どこかで呻き声が響けばすぐ首が動く――そんな張りつめた警戒が馬の歩みにも乗っていた。
その三騎の後ろを、徒歩の二人が追う。
鉄之介は大槌を肩に担ぎ、灰を踏むたびにざり、と乾いた音を立てる。
歩調は荒いが、視線は常に道の脇と背後を掃いていた。
金之助は鉄之介の半歩内側を小さく歩き、懐の辰の珠を握りしめる。
熱が掌に貼りつき、脈動が指の骨を打つたび、戸兵衛の最期の声が胸の底でよみがえる。
朱と紅と黄――それぞれの珠の気配が、騎馬と徒歩の列を一本に束ねていた。
沈黙に耐えきれなくなったのは鉄之介だった。
「なあ、お侍さんよ。あのお姫様を助けてやりてぇ気持ちはわかる。……けど、あんたも苦労してんな。あれは頑固だろ? 諦めて帰った方が身のためじゃねえか」
忠壽は馬上で視線を逸らさぬまま、短く首を振った。
「いや、それはできん」
拒みながら、声は少し沈む。
「……だが、どうしたものかとは思っておる」
「ほらな、やっぱ困ってる」
鉄之介は肩をすくめ、今度は金之助へ顎をしゃくる。
「おい、金之助はどう思う?」
金之助は歩みを止めないまま、珠の熱を確かめるように握り直した。
「……俺はじいさまに“西へ行け”とだけ言われた。どこへ行けばいいかも、何をすればいいかも分からなかった。でも西へ向かった途中で、鉄之介に会って、忠壽様に会った。……珠を持つ男たちにだ」
一息置き、前を見据えて続ける。
「じいさまは、西へ行けば珠が運命みたいに集まるって知ってたんじゃないかな。善の珠を集めるために、俺はここへ導かれた気がする。だから俺は――珠を持つ仲間を集める」
「どうやって集める気だ?」
金之助は少しだけ唇を噛んだ。
答えは用意されていない。
だが誤魔化す気もない。
「……それは分からん」
ぽつりと落ちた正直な言葉に、鉄之介が一拍おいて腹の底から笑った。
「なんだそれ! 格好つけといて結局そこかよ!」
乾いた笑い声が、灰の重い空気を少しだけほぐす。
忠壽はその声を背後に聞きながら、馬上で静かに手綱を締めた。
視界の端では、槌を担いで笑う鉄之介が歩いている。
その隣を小さく進む金之助は、灰に濡れた道を踏みしめ、真っ直ぐ前を見据えていた。
――背は見えない。だが、少年の言葉の硬さと熱だけは、確かに忠壽の胸に届いている。
(集めねばならぬのは事実。封印を保つには、十二の珠を善の手に取り戻さねばならぬ)
(だが、それを口にしたのは――まだ幼さの残る、あの樵の子だ)
忠壽は答えを出せぬまま、前方の灰空へ視線を据える。
左右を固める家臣二騎も、黙して主君の歩みに合わせた。
騎馬三騎と徒歩二人の列は、迷いも覚悟も抱えたまま、同じ西へと進んでいった。
第七話 失意の虎之進
街道の脇に、大柄な浪人が立ち尽くしていた。
鷲尾虎之進。
館林藩の剣術指南役として召し抱えられるはずだった男である。
剣なら誰にも負けぬ。
幾度も修羅場をくぐり、刃の上で生きてきたという自負がある。
――だが、城下で“片眼の大男”とすれ違ったときの感覚が、まだ骨の髄に残っていた。
近づいただけで喉が乾き、息が固まり、足がすくむ。
人の形をしていながら、人ではないものに触れた畏怖。
虎之進はそれを振り払うように、灰を踏む街道をぼんやり眺めていた。
そのとき、遠くから馬のいななきが聞こえた。
灰の降る中山道に、規則正しい蹄の音が三つ並んで近づいてくる。
見れば、先頭に若い武士が一騎、落ち着いた手綱さばきで進み、その左右に家臣らしき二騎が馬を寄せている。
三騎は隊列を崩さぬまま、灰の道を静かに割ってくる。
そして馬の前方、蹄の届かぬところを、二人の男が歩いていた。
一人は背の高い職人風で、肩に大槌を担いだまま、灰をものともせず歩く。
もう一人はまだ若い少年で、旅装の背は小さいが、足取りだけは不思議と迷いがない。
灰色の空の下、騎馬三騎と徒歩二人が一本の列になって迫ってくる――その情景が、虎之進の目に刺さった。
次の瞬間だった。
虎之進の肌を、冷たいものが走り抜けた。
――異様な圧がある。
剣豪が背筋で知る“戦場の気”とも違う。
もっと深く、もっと粘る、獣じみた威圧。
三騎と二人が近づくほどに、胸が締めつけられ、呼吸が浅くなる。
(なんだ……こいつらは)
歩いているのは、ただの旅姿の若造と、槌を担いだ乱暴者。
馬に乗る武士も、脇の家臣も、外見だけなら普通の侍にすぎない。
なのに、近づくだけで空気が重くなる。
視線を向けた途端、心臓が耳元で爆ぜるように鳴り、掌が汗で滑り、刀の柄に指がかけられない。
「……な、なんだこれは……」
声に出したつもりが、喉の奥で掠れた。
身体が石になったように動かない。
抜けば斬れる、という自信が、抜く前から砕けていく。
三騎と二人は何事もない顔で虎之進の脇を通り過ぎた。
馬上の若侍は前を見据えたまま、手綱すら乱さない。
左右の家臣も視線を外さず、主君の馬の歩幅にぴたりと合わせている。
徒歩の大男は槌を肩に担いだまま、ひと息でそばを抜け、少年は懐を押さえながら、やはり前だけを見て歩いた。
それだけのことが、虎之進には永劫の苦痛に思えた。
背を通り過ぎても、圧が残り続け、膝が崩れそうになる。
――俺は剣に生きてきたはずだ。
――それなのに、立っているだけで圧倒されるとは。
誇りが、胸の中で音を立てて崩れた。
片眼の大男の時の恐怖は“怪物への畏怖”だった。
だが今のこれは違う。
“人の形をしたまま、自分の遥か上にいる者たち”に出会ってしまった絶望だった。
「……こんな奴らがいるのか……。剣など、何の意味がある……」
唇を噛み、拳が震える。
だがその奥底で、別の声が忍び込んでくる。
――力が欲しい。
――あの怪物にも、今の連中にも、怯まずに立ち向かえる力が。
虎之進はその場に立ち尽くしたまま、しばらく動けなかった。
やがてようやく息を吐き、灰まみれの街道をふらりと歩き出す。
気づけば足は、館林の町外れへ向かっていた。
どれほど歩いたか。
夕暮れ前の灰空の下、廃れた酒肆を見つける。
戸を押し開けると、煤けた匂いとぬるい酒気が鼻を突いた。
虎之進は黙って徳利を掴み、ひとりで飲み始めた。
酒は苦かった。
だが喉を焼く痛みが、さっきまでの寒気を薄くしてくれる。
杯をあおり、もう一杯、もう一杯。
ただ胃に落とすだけのように流し込んでも、胸の空洞は埋まらない。
「剣が通じぬなら……俺の生きる意味は、どこにある……?」
酔いが回り、視界が滲む。
そのとき、酒肆の隅で博打を打っていた男が絡んできた。
「おい、浪人風情がでかい面すんな!」
「黙れ外道……寄るなら斬るぞ!」
虎之進の身体が反射で動いた。
素手で相手を突き飛ばし、床に叩きつける。
相手が呻き声を上げた瞬間、刀に手が伸びかけた。
――だが、そこで止まった。
斬れば勝てる。
なのに、勝った先に何も見えない。
胸には空虚だけが広がった。
「……こんな連中を斬って、何になる」
刀を膝に置き、徳利をまた口へ運ぶ。
外はまだ明るい。
今日一日の出来事に過ぎないのに、虎之進の中では何かが終わったように冷えていく。
斬っても、飲んでも、虚しさは消えない。
脳裏にちらつくのは、片眼の怪物の背と、朱・紅・黄の気配をまとった五つの影。
「……くそっ……俺にも……あのような力があれば……」
夕闇が落ちるころ、酒肆の灯が揺れ、虎之進の瞳だけが濁ったまま、執念の火を残していた。
館林城の大手門前。
空は昼だというのに薄暗い。
浅間の噴煙がまだ天を塞ぎ、灰が光を食っている。
風が吹けば、乾いた灰が砂のように舞い、肌や唇にざらりと貼りついた。
焼け焦げた木の匂いと、湿った土と、どこか生臭い血の気配――
城下には、災厄のあとに残る匂いが折り重なって漂っていた。
門の内側からは、きしむ梁の音、何かが崩れる遠い轟きが時折聞こえる。
それでも大手門は半ば閉じられ、門番の数もいつもより少ない。
この城が、すでに“守るものを失いかけている”ことを、門前の空気が語っていた。
その門前に、ひとりの浪人が立ち尽くしていた。
背は高く、骨太で、肩幅も広い。
髭は伸び、着流しは旅埃と灰でまだらに汚れている。
だが腰の刀だけは異様に冴えていた。
鍔は飾り気がなく、鞘には幾度も擦れた跡。
使い込まれた刃の持つ“静かな重さ”が、鞘越しにすら伝わる。
名を――鷲尾虎之進。
虎之進は懐から一通の書状を取り出し、門番へ差し出した。
手の甲には、風雨で荒れた皺と、握り締めてきた者だけが持つ硬いタコがある。
「この通り。わしは浪人、鷲尾虎之進。
かねてより館林藩剣術指南役としてお召しをいただく約定がある。
ここにその証文がある」
門番は書状を受け取り、慎重に中を改めた。
紙面には確かに、館林藩家老の花押。
墨の濃さも、折り目の新しさも、偽りではない。
だが門番の眉間に深い影が落ちる。
困惑したまま、ゆっくり首を振った。
「鷲尾殿……まことに気の毒だが……今はそのような時ではござらん」
「どういうことだ」
虎之進の声が低くなる。
怒気というより、理解できぬものを前にした鋭さだった。
「見ての通りだ」
門番は城内を顎で示した。
瓦は落ち、塀は崩れ、煙の上がる屋敷が目に入る。
外へ出るはずの藩士の姿もない。
門の向こうは、城というより傷んだ獣の腹の中のように沈んでいた。
「浅間山の大噴火で城下は壊滅。
黒き影が徘徊し、殿も屋敷に籠りきり……
新たに指南役を迎えるどころではござらぬ」
――黒き影。
その言葉が、門前の冷気より重く虎之進の胸に落ちた。
虎之進は思わず空を仰いだ。
灰に曇った天は低く垂れ込み、
噴煙はまだ遠くでくすぶり続けている。
まるで世界の天井が落ちてきたような圧迫感だった。
「ちっ……せっかくの職が……」
吐き捨てるように言い、口元に乾いた笑みが浮かぶ。
門番は哀れむように書状を返した。
「悪いことは申しません。
他所へ退かれるがよろしい。
ここにいては命が危うい」
虎之進は書状を懐へしまい、苦笑した。
「退く場所があれば、とっくに退いておるわ」
そう吐き捨て、大きな背を翻す。
けれどその背中には、“敗者の重さ”だけではなく、まだ燃え残るものがあった。
剣士という業(ごう)が、簡単に枯れるはずがない。
とぼとぼと、行くあてもなく歩く。
浪人・鷲尾虎之進の背に、灰が淡く積もっていく。
歩くたびに足跡は白く残り、すぐ風に消える。
職を得るはずだった館林藩には門前払いされ、懐も、未来も、空っぽのまま宙ぶらりんだ。
だが虚しさは、胸の底に沈むと同時に、別の熱を生む。
――このまま終われるか。
――剣と共に生きてきた身が。
そのとき、背後から
“ずるり”と何かが土を引きずるような音がした。
低い呻き声が近づいてくる。
振り返れば、黒ずんだ影――黒屍人が三体、灰の中からよろめき出ていた。
目は濁り、口元から唾液とも血ともつかぬ黒い筋を垂らしている。
生者の匂いに引かれた虫のように、ただ目的もなくにじり寄ってくる。
「……寄るなら、斬るまでよ」
虎之進は迷いなく刀を抜いた。
鞘走りの音が乾いた空に鋭く響く。
刃が抜けた瞬間、空気が一段冷えた。
一歩、二歩。
黒屍人が伸びる。
虎之進の足運びは静かだった。
腰は落ちていない。肩は力まない。
ただ刃の軌道だけが、
必要な場所へ、必要な角度で滑り込む。
――閃。
首が宙を舞った。
胴が崩れ、黒い灰が散る。
返す刀で二体目。
斬られたことすら気づかぬように首が落ち、灰の衣が風にほどける。
三体目は半歩踏み込み、刃の峰で受け流し、腹から袈裟へ抜いた。
一太刀ごとに、無駄がない。
“生き残るために磨かれた剣”の動きだった。
「ふん……この程度か」
刀を払った、その瞬間。
――ごう。
地を踏み鳴らす、重い音。
前方の瓦礫の陰が、ゆっくりと“起き上がる”ように形を成した。
巨大な人影。
片眼の大男。
肩には黒鉄の鉞。
城下の灰より黒い殺気を背負い、
歩むたびに地面が震えた。
空気が変わる。
戦場の気配ではない。
獣が山に現れたときの、
生き物としての本能が騒ぐ威圧。
「……っ!」
虎之進の背筋に冷たいものが走った。
足が、動かない。
金縛り。
いや、金縛りというより、
“動けば喰われる”と体が理解してしまった恐怖だった。
剣士の反射が凍りつく。
喉が乾き、心臓が跳ねる。
大男は虎之進の前を、まるで彼の存在など見えぬかのように通り過ぎていく。
黒鉄の鉞は血に濡れていた。
滴り落ちる血が、灰色の土に黒い点を打つ。
虎之進は荒い息をつき、刀を握る手に脂汗が滲むのを感じた。
「な……なんだ、あいつは……」
言葉が震える。
「人じゃない……物の怪か……」
背が遠ざかっていっても、心臓は鷲掴みにされたまま鼓動を乱していた。
その胸の底で、恐怖の奥に“剣士の闘志”がじわりと燃え直すのを、虎之進自身がいちばんはっきり感じていた。
――今のは、何だ。
――あれを斬らねば、俺の剣は何のためにある。
灰の風が吹き抜け、虎之進の髭と着流しを揺らした。
彼の名に宿る“虎”は、この地獄の中で
まだ吼える場所を探していた。
第六話 三珠の目的
城下を抜け、荒れ果てた街道を進む一行。
館林の瓦礫と黒い灰煙は背後へ薄れていくが、鼻に残る焦げと腐泥の匂いはまだ取れない。
空からは絶え間なく灰が降り、細かな粒が髪や肩に積もっていく。
田畑は白と黒のまだらに覆われ、倒れた苗がそのまま埋もれ、土は固く締まりきっていた。
夏のはずなのに、風は骨の奥へ冷たく刺さる。
隊列の先頭は三騎。
中央に本多忠壽。
馬上の背は真っ直ぐで、手綱を握る腕だけが静かに緊張している。
左右と少し後ろ、家臣二名が馬を並べ、主君の半歩後を守る位置を崩さない。
鎧の肩口には乾いた血が黒くこびりつき、面頬の縁には灰が詰まっていた。
六騎いたうち三騎は黒屍人に喰われ、今は影もない。
残る二騎の息づかいは荒いが、愚痴も弱音もない。ただ、どこかで呻き声が響けばすぐ首が動く――そんな張りつめた警戒が馬の歩みにも乗っていた。
その三騎の後ろを、徒歩の二人が追う。
鉄之介は大槌を肩に担ぎ、灰を踏むたびにざり、と乾いた音を立てる。
歩調は荒いが、視線は常に道の脇と背後を掃いていた。
金之助は鉄之介の半歩内側を小さく歩き、懐の辰の珠を握りしめる。
熱が掌に貼りつき、脈動が指の骨を打つたび、戸兵衛の最期の声が胸の底でよみがえる。
朱と紅と黄――それぞれの珠の気配が、騎馬と徒歩の列を一本に束ねていた。
沈黙に耐えきれなくなったのは鉄之介だった。
「なあ、お侍さんよ。あのお姫様を助けてやりてぇ気持ちはわかる。……けど、あんたも苦労してんな。あれは頑固だろ? 諦めて帰った方が身のためじゃねえか」
忠壽は馬上で視線を逸らさぬまま、短く首を振った。
「いや、それはできん」
拒みながら、声は少し沈む。
「……だが、どうしたものかとは思っておる」
「ほらな、やっぱ困ってる」
鉄之介は肩をすくめ、今度は金之助へ顎をしゃくる。
「おい、金之助はどう思う?」
金之助は歩みを止めないまま、珠の熱を確かめるように握り直した。
「……俺はじいさまに“西へ行け”とだけ言われた。どこへ行けばいいかも、何をすればいいかも分からなかった。でも西へ向かった途中で、鉄之介に会って、忠壽様に会った。……珠を持つ男たちにだ」
一息置き、前を見据えて続ける。
「じいさまは、西へ行けば珠が運命みたいに集まるって知ってたんじゃないかな。善の珠を集めるために、俺はここへ導かれた気がする。だから俺は――珠を持つ仲間を集める」
「どうやって集める気だ?」
金之助は少しだけ唇を噛んだ。
答えは用意されていない。
だが誤魔化す気もない。
「……それは分からん」
ぽつりと落ちた正直な言葉に、鉄之介が一拍おいて腹の底から笑った。
「なんだそれ! 格好つけといて結局そこかよ!」
乾いた笑い声が、灰の重い空気を少しだけほぐす。
忠壽はその声を背後に聞きながら、馬上で静かに手綱を締めた。
視界の端では、槌を担いで笑う鉄之介が歩いている。
その隣を小さく進む金之助は、灰に濡れた道を踏みしめ、真っ直ぐ前を見据えていた。
――背は見えない。だが、少年の言葉の硬さと熱だけは、確かに忠壽の胸に届いている。
(集めねばならぬのは事実。封印を保つには、十二の珠を善の手に取り戻さねばならぬ)
(だが、それを口にしたのは――まだ幼さの残る、あの樵の子だ)
忠壽は答えを出せぬまま、前方の灰空へ視線を据える。
左右を固める家臣二騎も、黙して主君の歩みに合わせた。
騎馬三騎と徒歩二人の列は、迷いも覚悟も抱えたまま、同じ西へと進んでいった。
第七話 失意の虎之進
街道の脇に、大柄な浪人が立ち尽くしていた。
鷲尾虎之進。
館林藩の剣術指南役として召し抱えられるはずだった男である。
剣なら誰にも負けぬ。
幾度も修羅場をくぐり、刃の上で生きてきたという自負がある。
――だが、城下で“片眼の大男”とすれ違ったときの感覚が、まだ骨の髄に残っていた。
近づいただけで喉が乾き、息が固まり、足がすくむ。
人の形をしていながら、人ではないものに触れた畏怖。
虎之進はそれを振り払うように、灰を踏む街道をぼんやり眺めていた。
そのとき、遠くから馬のいななきが聞こえた。
灰の降る中山道に、規則正しい蹄の音が三つ並んで近づいてくる。
見れば、先頭に若い武士が一騎、落ち着いた手綱さばきで進み、その左右に家臣らしき二騎が馬を寄せている。
三騎は隊列を崩さぬまま、灰の道を静かに割ってくる。
そして馬の前方、蹄の届かぬところを、二人の男が歩いていた。
一人は背の高い職人風で、肩に大槌を担いだまま、灰をものともせず歩く。
もう一人はまだ若い少年で、旅装の背は小さいが、足取りだけは不思議と迷いがない。
灰色の空の下、騎馬三騎と徒歩二人が一本の列になって迫ってくる――その情景が、虎之進の目に刺さった。
次の瞬間だった。
虎之進の肌を、冷たいものが走り抜けた。
――異様な圧がある。
剣豪が背筋で知る“戦場の気”とも違う。
もっと深く、もっと粘る、獣じみた威圧。
三騎と二人が近づくほどに、胸が締めつけられ、呼吸が浅くなる。
(なんだ……こいつらは)
歩いているのは、ただの旅姿の若造と、槌を担いだ乱暴者。
馬に乗る武士も、脇の家臣も、外見だけなら普通の侍にすぎない。
なのに、近づくだけで空気が重くなる。
視線を向けた途端、心臓が耳元で爆ぜるように鳴り、掌が汗で滑り、刀の柄に指がかけられない。
「……な、なんだこれは……」
声に出したつもりが、喉の奥で掠れた。
身体が石になったように動かない。
抜けば斬れる、という自信が、抜く前から砕けていく。
三騎と二人は何事もない顔で虎之進の脇を通り過ぎた。
馬上の若侍は前を見据えたまま、手綱すら乱さない。
左右の家臣も視線を外さず、主君の馬の歩幅にぴたりと合わせている。
徒歩の大男は槌を肩に担いだまま、ひと息でそばを抜け、少年は懐を押さえながら、やはり前だけを見て歩いた。
それだけのことが、虎之進には永劫の苦痛に思えた。
背を通り過ぎても、圧が残り続け、膝が崩れそうになる。
――俺は剣に生きてきたはずだ。
――それなのに、立っているだけで圧倒されるとは。
誇りが、胸の中で音を立てて崩れた。
片眼の大男の時の恐怖は“怪物への畏怖”だった。
だが今のこれは違う。
“人の形をしたまま、自分の遥か上にいる者たち”に出会ってしまった絶望だった。
「……こんな奴らがいるのか……。剣など、何の意味がある……」
唇を噛み、拳が震える。
だがその奥底で、別の声が忍び込んでくる。
――力が欲しい。
――あの怪物にも、今の連中にも、怯まずに立ち向かえる力が。
虎之進はその場に立ち尽くしたまま、しばらく動けなかった。
やがてようやく息を吐き、灰まみれの街道をふらりと歩き出す。
気づけば足は、館林の町外れへ向かっていた。
どれほど歩いたか。
夕暮れ前の灰空の下、廃れた酒肆を見つける。
戸を押し開けると、煤けた匂いとぬるい酒気が鼻を突いた。
虎之進は黙って徳利を掴み、ひとりで飲み始めた。
酒は苦かった。
だが喉を焼く痛みが、さっきまでの寒気を薄くしてくれる。
杯をあおり、もう一杯、もう一杯。
ただ胃に落とすだけのように流し込んでも、胸の空洞は埋まらない。
「剣が通じぬなら……俺の生きる意味は、どこにある……?」
酔いが回り、視界が滲む。
そのとき、酒肆の隅で博打を打っていた男が絡んできた。
「おい、浪人風情がでかい面すんな!」
「黙れ外道……寄るなら斬るぞ!」
虎之進の身体が反射で動いた。
素手で相手を突き飛ばし、床に叩きつける。
相手が呻き声を上げた瞬間、刀に手が伸びかけた。
――だが、そこで止まった。
斬れば勝てる。
なのに、勝った先に何も見えない。
胸には空虚だけが広がった。
「……こんな連中を斬って、何になる」
刀を膝に置き、徳利をまた口へ運ぶ。
外はまだ明るい。
今日一日の出来事に過ぎないのに、虎之進の中では何かが終わったように冷えていく。
斬っても、飲んでも、虚しさは消えない。
脳裏にちらつくのは、片眼の怪物の背と、朱・紅・黄の気配をまとった五つの影。
「……くそっ……俺にも……あのような力があれば……」
夕闇が落ちるころ、酒肆の灯が揺れ、虎之進の瞳だけが濁ったまま、執念の火を残していた。
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