俺は善人にはなれない

気衒い

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第2章 クラン結成

第23話 彼女の生きる意味

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妾は魔族領にある国の一つ、ギムラに生まれ落ちた。幼い頃から、病弱で人見知り。あまり積極的に交流を持とうとするタイプではなかった。じゃが、それでもある程度は普通に生きていけるはずであった…………ごく一般的な家庭に生まれておれば。何の因果か、妾は王族の家系に生まれてしまった・・・・・・・・のだ。それも妾の子として。魔族のそれも吸血鬼種は基本的に一夫一妻を重んじる。その為、それが発覚した時、王宮は大混乱に陥った。じゃが、表向きは・・・・妾を受け入れて、やっていこうと決まったのじゃ。事実、実の父である王は妾に対し、優しく接してくれたし、第一王子も親身になって話を聞いてくれた。しかし、そんな平穏な日々も長くは続かなかった。突然、父が病死したのだ。その日を境に義母が嫌がらせをしてくるようになり、第一王子もまるで人が変わったかのように妾に冷たく当たるようになってしまった。後で聞いたところによると、以前から、義母や第一王子以外の兄妹は妾のことが気に食わなかったらしいのじゃが、父がいた手前、目立った行動が取れず燻っていたみたいじゃ。それと病弱で寝たきりだった妾はパーティーや催し物に参加することができず、それが側から見れば、他の者に押し付けているように映ったらしく、これも良い大義名分・・・・の材料となったのじゃ。ともかく、ある日、いつものように義母に呼ばれた妾はまた仕置き部屋で辛い仕打ちが待っていると思い、絶望しておった。すると連れていかれた場所は仕置き部屋などではなく、なんと城の外、それも近くにある空馬の森じゃった。そんなところまで連れ出して、一体何をするつもりなのか、訝しんでいると森の奥から一台の馬車が護衛とともに近づいてきおった。義母はその馬車の御者と一言二言交わすと何やら金のようなものを受け取り、妾をそちらへと押し出した。そして、訳が分からぬまま、馬車に乗せられ、魔族領からこちらの人族領まで紆余曲折を経て、辿り着いたのじゃ。そこからは奴隷商を転々とし、その中で妾の身に起こったことが何であるのか、家族が妾をどう思っておったのかがだいたい見えてきたのじゃ…………そうこうしている内に馬車はここフリーダムに到着し、ミーム奴隷商で売られることとなり、綺麗な黒髪の端正な顔立ちをした不思議な男に買われることとなった。


――――――――――――――――――――


「なるほどな………」

あの後、すぐに屋敷へと戻った俺達は店主に勧められて買った奴隷……イヴを風呂にぶち込んで綺麗になってもらった後、余分に買ってあった服の中から、最も似合うものを選んで着せた。その際、一切抵抗することもなく、無表情で為されるがままだった為、不思議に思っていたが、リビングに座り、そこで事情を知ると納得することができた。なぜ、彼女の感情が希薄だったのか。そして、なぜ、彼女があまり生に執着していないように見えたのかが。

「お主……妾に一体、何をしたのじゃ。それと………一体、何を知ったのじゃ」

「悪いがお前の記憶を共有させてもらった。仲間にそういうことができる奴がいてね」

「となると、知ったのは」

「お前の過去だ」

「………ふっ、つまらんことをする奴じゃの…………それをして、何になるというんじゃ」

「…………」

「お主が一体、何の目的で妾を買ったのか知らんが、期待には添えぬと思うぞ」

「お前…………死ぬつもりなのか?」

「仮にそうだとして、それがどうしたのじゃ……………あぁ、もしかして、サンドバッグや魔物の盾として、使いたかったのかの?安心せよ。そのぐらいは立派に務め上げて」

「いや、お前なんかにはそれすら出来ないな」

「………なんじゃと?」

「お前、自分は死ぬことくらいでしか、誰かの役に立てないとか思ってるだろ?そういうのは自己犠牲とは言わない。それは単なる自己満足だ。そういう自分に憧れ、溺れているんだ」

「な、何を勝手な」

「ああ、勝手で結構。だが、お前みたいな奴をいざ、そういう目的で使おうとすると指示に従わず、楽に殺してくれる相手や方法を選んだり、直前で恐怖に呑まれて何も出来なかったりするんだよ。それじゃあ、結局役には立たないだろ」

「そんなことやってみなきゃ」

「いや、分かるぞ………試してみるか?」

「っ!」

俺が殺気を放ち、刀を向けた瞬間、イヴは後ろへと飛んだ。レベルにしては上々の反応速度。こちらへの警戒を解かず、俺の出方を窺うその姿勢もいいものだ。

「ほらな?結局、防衛本能には逆らえないんだ。それは種族が違えど一緒。もし、そのリミッターを外す唯一の手段があるとするのなら………」

「す、するのなら?」

「…………いや、これはやめておこう。この場には仲間達もいる。お前らは聞く必要がない…………いや、聞いてはならない話だ」

「……………」

「ともかく、お前はまだ生きることを完全に諦めた訳じゃない。その小さい胸にわずかな希望を抱いているんだ」

「ち、小さい胸じゃと!気にしておることを」

「あれ?本当に死にたい奴がそんなことを気にするのか?」

「ぐぬぅ………い、今のはたまたまじゃ」

「あっそ………それにしてもひん剥いてみりゃ、ただの小娘じゃねぇか」

「ただの小娘………黙って聞いておれば、失礼なことを!許さぬぞ!」

「あれ?本当に死にたい奴が許さないなんて言うのか?」

「あ、揚げ足を取るでないわ!!」

「…………で、何がそんなに辛いんだ?全部、吐き出してみろ」

「な、何なのじゃ!今度は打って変わって優しくしおって…………妾は騙されんぞ!王子だって、そうじゃった。最初は優しかったのにあんなになって………」

「……………」

「あんなになって…………辛いに決まっておろうが…………大好きだった父が亡くなり、残された唯一の理解者からもそげなく扱われ、毎日毎日、身体を鞭や魔法で………」

「……………」

まるでダムが決壊する時のような、支えていたものがその重みに耐えきれなくなって、遂に破裂してしまったような勢いでイヴの瞳から涙が溢れてきた。

「一体、妾はどうしたらいいんじゃ………誰からも必要とされず、かといって、怖くて死ぬこともできずに」

「何だ?生きる意味を知りたいのか?」

「生きる意味…………そんなもの妾にあるのか?」

「そんなの知らん」

「ふっ……辛辣じゃの」

「お前に今、必要なのは中途半端な慰めや同情じゃないだろ。今、お前に必要なのは真実だ」

「たとえ、そうだったとしても泣いている女子に掛ける言葉ではないじゃろ」

「これから、家族として仲間として接するのに遠慮してどうする」

「それはそうじゃが…………ん?家族?」

「ああ」

「いや、待て。何、さりげなく丸め込もうとしとるんじゃ。妾は」

「拒否権ねぇから。お前が生きる意味なんて、これから自分の力で見つけていけ。この世界では力が全てなんだろ?だったら、強くなって、どこにでも殴り込めるように準備をしとけ。いつ、その意味を知る機会が訪れてもいいようにな」

「お主………とんでもない男じゃの」

「退屈はしないだろ」

「…………まぁの」

「お前も俺からしたら、退屈しねぇから。魔物の盾なんて、勿体ないことに使わねぇよ。俺の近くでそのキバ、剥き出しにして笑ってろ」

「んなっ!」

「よし、そうと決まれば…………悪い、お前ら。フリーダムに戻ってきて、まだ1日しか経ってないんだが、また例のやつ、するから」

その瞬間、様々な声が屋敷内に響き渡った。その中には約一名、コロコロと変わる状況について行くのが精一杯の焦った者もいたとか、いないとか…………
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