俺は善人にはなれない

気衒い

文字の大きさ
133 / 416
第9章 フォレスト国

第133話 入国

しおりを挟む
「次の者!」

「はい!」

「ん?随分と大所帯だな」

「うちは少々、特殊でして」

「何だ?商人か?」

「へぇ、まぁそんなところでございます」

「どれどれ、身分証は……………っと、オマエ・ラ・アザムーク商会か」

「はい」

「なるほど……………よし、確認が取れた。じゃあ通ってもいいぞ」

「ありがとうございます」






――――――――――――――――――――



「どうやら上手くいったようだな」

「まさか、本当にやるとはね」

「当たり前だ。この方法が確実なんだからな」

俺達は現在、フォレスト国にある高級宿屋の一室に集まっていた。そもそもどうやって入国を果たしたのかだが、もちろん素直にそのままいった訳ではない。実は"幻惑"の魔道具というものを使い、俺達の認識を書き換えて正体がバレないように入国したのだ。この魔道具はアスカの固有スキルである"幻惑"が封じ込められた魔道具であり、使い捨てではあるのだが、一度使用すると対象者全員が1週間の間、"幻惑"を使える状態となり、任意での発動を行うことができるのだ。クラン"黒天の星"はこの間の一件で良くも悪くも広く知れ渡ってしまった。その為、どのメンバーまで顔が割れているのかが定かではないことから、一応全員が正体をバラさずにいた方がいいだろうという結論に至り、そのような入国方法となったのだ。リースやセバスは言わずもがな。見つからないに越したことはないし、そもそも俺達と一緒にいるところを発見されると厄介だ。結果、全員が特殊な商人という認識をさせ、入国。その後は目立つことを避けるのに最適な高級宿屋で2部屋を男と女で分かれて取ったのだ。そして、今は作戦会議の為に男部屋の方に全員が集まっているという状態だ。

「で、とりあえずだが……………ドルツ、頼めるか?」

「ああ」

俺に促され、ドルツが地図と情報が書き込まれた紙を広げた。そこにはフォレスト国の地理や彼の文字でびっしりと覆い尽くされたメモ、それから基本情報などが記してあった。

「まずは基本情報からだ。このフォレスト国は国と言われてはいるがどちらかというと小国の部類に入り、その面積はフリーダムの2倍ほどしかない。人口は約1000人。南北でそれぞれエリアが分かれており、北は主に居住エリアだ。ここはフォレスト国を定住場所として決め、暮らしている人々がいるところで7割が一般庶民、残りの3割が貴族で構成されている。一方、南エリアだがここは冒険者や商売人、また遠征など仕事や特殊な事情で訪れている者達が集い、一時的または長期的な拠点としているエリアである。ちなみに俺達が入ってきた入り口も南側にあり、この宿屋もそういった者達向けに展開している」

「なるほど」

「次に人々の暮らしや宗教についてだが、この国には貧民街というものがなく貧富の差は比較的存在しないものと思われる。また信仰や思想に関しては特に決まっているものがなく、多くの者が無信仰であり、他種族への風当たりもそこまでキツくはない。いわゆる差別や偏見といったものも一部を除いては確認されていない」

「一部…………ね」

「気候も安定していて、商品の仕入れや保存にも特に問題は見当たらない。さらには魔物が適度に出現する場所があり、依頼に困る心配がない。普通に仕事をしていれば、商売人だろうが冒険者だろうが生きていけないことはないだろう。依頼に至っては報酬もいいしな」  

「黙って聞く限りではとても暮らしやすくて良い国に思えるが俺達はリースから色々と聞いてしまっている。まさか、裏でそんなことが起きていようとはこの国の者ですら、知らないのがほとんどだろう」

「……………で、僕達は一体、どう動けばいいの?」

「ああ。それはだな………………」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

処理中です...