俺は善人にはなれない

気衒い

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第10章 セントラル魔法学院

第174話 交渉

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「シンヤ先生、並びに他の先生方…………本当に申し訳ございませんでした」

「「「「「申し訳ございませんでした!!!!!」」」」」

「自分を見つめ直すことは大切だ。そこから反省し、次へと繋げていければ、それでいい。それにその熱さが今は何よりも重要だ……………これからの授業、ついて来れるか?」

「「「「「はい!何としてでも着いていきます!!!!!」」」」」

「了解だ。もう後戻りはできないからな」





――――――――――――――――――――





「理事長!一体、あれは何なんですか!」

「ん?どうしたんですか、キルギス?」

「どうしたもこうしたもありませんよ!あのシンヤとかいう特別講師、来て早々から、やりたい放題ですよ!初日には学院でも優秀な生徒であるセーラさんを立ち上がることができないほど痛めつけたんです!彼女に何かあったら、彼らはどう責任を取るつもりなんですか!理事長もそれが学院にとって、どれだけの損失になるか、ご理解なさっているんですか!」

「損失…………ね」

「しかもそこから毎日、講師が代わる代わる、生徒達を痛めつけ続けているんですよ!」


「それは模擬戦ではないのですか?」

「あんなのはそう呼べるほど甘いものじゃありません。私だったら、自分の教え子達にそんな危険なことは致しませんよ!」

「実戦を想定しているとしたら、多少危険になるのも理解ができます。ただ彼らのそれが我々には到底及びもつかないぐらいのものだということです」

「たかが底辺冒険者がですか?あり得ませんな。それと奴らは時折、生徒達をどこかに連れ出しているらしく、授業中に見かけないことがあります。その間、一体どこで何をしているのやら」

「随分と授業中に余所見をする暇があるもんですね。教師なのに。あなたの方こそ、一体どこで何をしているのやら」

「っ!?わ、私のことなど今はどうでもよろしい!問題はアイツらが何か余計なことを企てて、生徒達を良からぬ方へと導こうとしているんじゃないか……………私は一教師として、そう心配しているんです!」

「本当に心配しているのなら、セーラさんが傷つくことを"損失"などとは言わないでしょう。あなたは生徒達のことを学院ひいては自分の株を上げる為の都合の良い道具としか考えていない。そして、今はそれらを"黒天の星"を追い出す為の口実に使っている……………違いますか?」

「なっ!?ど、どうしてそう言い切れるんですか!一体どこにそんな証拠が」

「本当に証拠が好きな人ですね。そんなに好きならば、くれてやりますよ…………ほら」

「こ、これは……………」

「ここ最近のあなたの様子をたまたま見ていた第三者の記憶を一部抜粋させて頂いたものです」

「な、何故こんなものが!?」

「本当に凄いですよね。世の中にはこんなスキルを有する者もいるのかとただただ驚くばかりです。対象者の記憶の中から自分の望む部分のみを弾き出し、それを映像の魔道具へとコピーする。どうやら、対象者のプライバシーの為に全ての記憶を覗かずともキーワードに反応した部分で最も近しいもののみを掬い上げることができるみたいです。その逆でやろうと思えば、対象者の記憶を最長5年程前まで遡って覗くこともできるようです。こんなことが衛兵や騎士団にもできれば、自白させる必要もなくなりますし、犯罪も減るでしょうね」

「そ、そんな馬鹿なことが…………」

「あるんですね、これが…………それにしても彼らを見ている時のあなたは非常に愉快な顔をしていますね」

「…………それは嫌味ですか?」

「いえいえ、そんな滅相もない。言い方が悪かったですね。そうですね~……………何か含みのある顔ですかね?」

「ちっとも改善されていませんよ、それ」

「おおっと、これは失敬……………あれ?どうしました?顔中に脂汗が浮かんでいますよ?」

「い、いえ!これは…………なんでもありません」

「ん~……………じゃあ、チャンスを与えましょう。今から私が言う条件をクリアできれば、この魔道具は破壊致しましょう」

「ほ、本当ですか!?」

「ええ。ちなみにその条件をクリアするとあなたの鬱憤も晴れて結果、一石二鳥ですよ?」

「そうなんですか!?」

「ええ。こんなところで嘘をついたりなどしません。私はあなたとは違う方向に真っ直ぐですから」

「そ、そうですか……………で、その条件とは具体的にどのような?」

「非常にシンプルなものです。今から約1週間後に始まる"学院選抜試験"。そこであなたのクラスは1位の座を掴み取って下さい」

「そ、それって、まさか」

「ええ。彼らのクラスとはいずれ否が応でも戦うこととなるでしょう。そして、それに打ち勝った時、あなたの望みは2つとも達成されるのです」
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