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第14章 獣人族領
第302話 闇獣の血
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「おい!これを解けよ!」
揺れる馬車の中に鎖付きの手錠で繋がれ
たウィアは叫んだ。その表情は非常に険
しくなっており、一刻も早くその場所か
ら出たいという意志が伺える。
「おいおい。勘弁してくれよ。さっきか
ら、ギャアギャアと………………噂に違わ
ぬお転婆ぶりだな」
「おい。それは一体いつの噂だ?今では"赤虎"ウィアというSSラン
ク冒険者としての名の方が巷では有名
だ」
「おっ。そうだったな」
男は下品な笑いを浮かべつつ、ウィアを
見つめる。その後、舌舐めずりをしなが
ら、持っていたナイフを彼女へと向け
た。
「向こうに着くまでの辛抱
だ。だから、もうちょっとだけ大人しく
していてくれないか、姫さんよぉ」
「…………そこまで知っているってこと
はお前達、只者じゃないな?それとも誰
かの入れ知恵か?答えろ!お前達は一体
何者で誰の差し金なんだ!」
「ゲハハハハッ!知りたいか?知りたい
よな?」
男はウィアの問いに対して、これまで
で一番のバカ笑いをし、得意気な顔をし
てこう答えた。
「そんじゃ、特別に教えてやる。なんせ
俺達に狙われて生きていた者はいないか
らな………………なんと俺達はあの泣く子
も黙る巨大組織"闇獣の血"のメンバーだ!」
「"闇獣の血"だって!?」
「いいねぇ~その表情……………そして肝
心のお前を攫うよう頼んできた者だ
が………………」
その後に続く言葉を聞いたウィアは愕
然とし、力が抜けたのか腕がだらんと下
がった。
「何だと…………………」
その際、手錠と鎖が擦れ重たい音が周
囲へと響き渡ったのだった。
―――――――――――――――――――――
「"闇獣の血"……………獣人族領で生まれた巨大な闇
組織だ。全て獣人族で構成されており、
報酬と引き換えにどんな依頼でも引き受
ける何でも屋でその主な仕事は殺し・窃
盗・詐欺・恐喝・違法売買の斡旋などな
ど。裏のことを頼みたいのであれば、ま
ず名前が挙がる札付きの極悪非道な集団
だ」
「で?そいつらがウィアを攫ったと?」
「どうやら、そうらしい。たまたま一緒
にいたハーメルンが彼女を守る為に抵抗
したそうだ。幸い、命に別状はなかった
が血だらけのまま魔道具で仲間を呼んで
クランハウスへと運び込まれた時は周り
が一時パニック状態だったらしい」
「そりゃSSランク冒険者だからな。そ
んな傷を負うこともそうそうないだろ
う。で?敵の目的は?ウィアを攫って一
体どうするんだ?」
「それはまだ不明だが、敵が去り際に気
になることを言っていたようだ。"笛吹
きも一緒にいたのは手間が省けて、ちょ
うどいい。ラゴン夫妻と笛吹き……………
これで2人は始末した"…………………
と」
「…………………」
「何の因果関係があるかは分からない。
ただ、今回の件に全く無関係とは言えな
いだろう」
「つまり敵はラゴン夫妻とハーメルンの
暗殺、そしてウィアの誘拐………………最
低でもこの3つの依頼を引き受けている
ってことか。なるほど。これだけ大口の
依頼ならば、舞い上がってしまい、そん
な独り言を言ってしまうのも頷ける」
「問題は"獣の狩場"と"愉快な行進"、そしてその同盟クラン達を敵に回し
てもいいと考える理由だ。よっぽど報酬
がいいのか、それともそれだけのリスク
があっても成し遂げたい崇高な目的でも
あるのか」
「そこら辺はおいおい考えるとし
て………………まぁ、何にせよ、敵が舞い
上がってくれていて助かった。そのおか
げでハーメルンの生存確認を怠ったんだ
からな。そして、こうして俺達に情報が
回ってくると」
「……………シンヤ、一体どうするつもり
だ?」
ドルツの問いに対して、シンヤは会議
室をぐるりと見回す。そこには頼もしい
幹部達がシンヤを信じて答えを待ってい
た。
「無論、奴らを徹底的に叩き潰し、ウィ
アを奪還する。ハーメルンは俺達の仲間
だ。そいつをやられて、黙っておくこと
はできない。ウィアに関してはまだ付き
合いが浅く、同盟関係ではないが、ハー
メルンの守ろうとした者だ。ただ奴らを
潰すだけでは意味がない。ウィアを無事
連れ帰ってこそ、ハーメルンは本当の意
味で救われたことになるだろう」
「本当にやるんだな?」
「ああ。お前らもそれでいいか?」
「シンヤさんがそうご決断されたのな
ら」
「私は最初から、シンヤさんに付き従う
つもりでしてよ」
「巨大な闇組織……………燃えてきたぜ」
「極悪非道な組織、許さない」
「ノエ先輩はアスターロ教のこともあり
ますもんね……………あ、私もそのゴミク
ズ共を殲滅しますよ?」
「随分な物言いじゃな、アスカ。まぁ、
妾も久々に胸糞悪くなっておるが」
「とっとと敵を潰して、ウィアを連れ帰
ろう」
「ラミュラの言う通りデス。ウィアとは
一緒にバーベキューをする約束をしてい
たんデス。絶対に連れ帰るデス」
「ボクもなの……………ウィアはボクにも
気さくに話し掛けてくれたの。だから、
バーベキューは絶対したいの」
「この間もバーベキューしてたよ
ね?………………まぁ、いいや。僕も2人
と同じでまだ付き合いは浅いけど、ウィ
アを大切な友人だと思ってる」
「当然ね。もちろん、ワタシもよ」
「………………っと、俺もシンヤに従う
ぜ」
最後に今まで報告をしていたドルツも
賛同の意を示したところでシンヤは頷い
た。そして数秒後、思わず全員が意見を
変えてしまうような言葉をシンヤは発し
た。
「みんなありがとう。そして、先に謝っ
ておく……………すまない。今回は俺1人
で奴らを追う。お前らはここで待機して
てくれ」
揺れる馬車の中に鎖付きの手錠で繋がれ
たウィアは叫んだ。その表情は非常に険
しくなっており、一刻も早くその場所か
ら出たいという意志が伺える。
「おいおい。勘弁してくれよ。さっきか
ら、ギャアギャアと………………噂に違わ
ぬお転婆ぶりだな」
「おい。それは一体いつの噂だ?今では"赤虎"ウィアというSSラン
ク冒険者としての名の方が巷では有名
だ」
「おっ。そうだったな」
男は下品な笑いを浮かべつつ、ウィアを
見つめる。その後、舌舐めずりをしなが
ら、持っていたナイフを彼女へと向け
た。
「向こうに着くまでの辛抱
だ。だから、もうちょっとだけ大人しく
していてくれないか、姫さんよぉ」
「…………そこまで知っているってこと
はお前達、只者じゃないな?それとも誰
かの入れ知恵か?答えろ!お前達は一体
何者で誰の差し金なんだ!」
「ゲハハハハッ!知りたいか?知りたい
よな?」
男はウィアの問いに対して、これまで
で一番のバカ笑いをし、得意気な顔をし
てこう答えた。
「そんじゃ、特別に教えてやる。なんせ
俺達に狙われて生きていた者はいないか
らな………………なんと俺達はあの泣く子
も黙る巨大組織"闇獣の血"のメンバーだ!」
「"闇獣の血"だって!?」
「いいねぇ~その表情……………そして肝
心のお前を攫うよう頼んできた者だ
が………………」
その後に続く言葉を聞いたウィアは愕
然とし、力が抜けたのか腕がだらんと下
がった。
「何だと…………………」
その際、手錠と鎖が擦れ重たい音が周
囲へと響き渡ったのだった。
―――――――――――――――――――――
「"闇獣の血"……………獣人族領で生まれた巨大な闇
組織だ。全て獣人族で構成されており、
報酬と引き換えにどんな依頼でも引き受
ける何でも屋でその主な仕事は殺し・窃
盗・詐欺・恐喝・違法売買の斡旋などな
ど。裏のことを頼みたいのであれば、ま
ず名前が挙がる札付きの極悪非道な集団
だ」
「で?そいつらがウィアを攫ったと?」
「どうやら、そうらしい。たまたま一緒
にいたハーメルンが彼女を守る為に抵抗
したそうだ。幸い、命に別状はなかった
が血だらけのまま魔道具で仲間を呼んで
クランハウスへと運び込まれた時は周り
が一時パニック状態だったらしい」
「そりゃSSランク冒険者だからな。そ
んな傷を負うこともそうそうないだろ
う。で?敵の目的は?ウィアを攫って一
体どうするんだ?」
「それはまだ不明だが、敵が去り際に気
になることを言っていたようだ。"笛吹
きも一緒にいたのは手間が省けて、ちょ
うどいい。ラゴン夫妻と笛吹き……………
これで2人は始末した"…………………
と」
「…………………」
「何の因果関係があるかは分からない。
ただ、今回の件に全く無関係とは言えな
いだろう」
「つまり敵はラゴン夫妻とハーメルンの
暗殺、そしてウィアの誘拐………………最
低でもこの3つの依頼を引き受けている
ってことか。なるほど。これだけ大口の
依頼ならば、舞い上がってしまい、そん
な独り言を言ってしまうのも頷ける」
「問題は"獣の狩場"と"愉快な行進"、そしてその同盟クラン達を敵に回し
てもいいと考える理由だ。よっぽど報酬
がいいのか、それともそれだけのリスク
があっても成し遂げたい崇高な目的でも
あるのか」
「そこら辺はおいおい考えるとし
て………………まぁ、何にせよ、敵が舞い
上がってくれていて助かった。そのおか
げでハーメルンの生存確認を怠ったんだ
からな。そして、こうして俺達に情報が
回ってくると」
「……………シンヤ、一体どうするつもり
だ?」
ドルツの問いに対して、シンヤは会議
室をぐるりと見回す。そこには頼もしい
幹部達がシンヤを信じて答えを待ってい
た。
「無論、奴らを徹底的に叩き潰し、ウィ
アを奪還する。ハーメルンは俺達の仲間
だ。そいつをやられて、黙っておくこと
はできない。ウィアに関してはまだ付き
合いが浅く、同盟関係ではないが、ハー
メルンの守ろうとした者だ。ただ奴らを
潰すだけでは意味がない。ウィアを無事
連れ帰ってこそ、ハーメルンは本当の意
味で救われたことになるだろう」
「本当にやるんだな?」
「ああ。お前らもそれでいいか?」
「シンヤさんがそうご決断されたのな
ら」
「私は最初から、シンヤさんに付き従う
つもりでしてよ」
「巨大な闇組織……………燃えてきたぜ」
「極悪非道な組織、許さない」
「ノエ先輩はアスターロ教のこともあり
ますもんね……………あ、私もそのゴミク
ズ共を殲滅しますよ?」
「随分な物言いじゃな、アスカ。まぁ、
妾も久々に胸糞悪くなっておるが」
「とっとと敵を潰して、ウィアを連れ帰
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「ラミュラの言う通りデス。ウィアとは
一緒にバーベキューをする約束をしてい
たんデス。絶対に連れ帰るデス」
「ボクもなの……………ウィアはボクにも
気さくに話し掛けてくれたの。だから、
バーベキューは絶対したいの」
「この間もバーベキューしてたよ
ね?………………まぁ、いいや。僕も2人
と同じでまだ付き合いは浅いけど、ウィ
アを大切な友人だと思ってる」
「当然ね。もちろん、ワタシもよ」
「………………っと、俺もシンヤに従う
ぜ」
最後に今まで報告をしていたドルツも
賛同の意を示したところでシンヤは頷い
た。そして数秒後、思わず全員が意見を
変えてしまうような言葉をシンヤは発し
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「みんなありがとう。そして、先に謝っ
ておく……………すまない。今回は俺1人
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