393 / 416
〜After story〜
第35話:バカンス
しおりを挟む3つ目の金鎧を求めて、俺達がやってきたのはとある海岸だった。押し寄せる波の音と海独特の匂いが俺達を歓迎してくれている、そんな気がした。
「「うわ~い!!」」
早速、ビオラとクロガネは楽しそうな声を上げながら、はしゃぎ回っている。はぁ、仕方ない。
「よし。今日は金鎧探しをせず、ここで遊ぶか」
「「「「「っ!?」」」」」
俺の言葉に驚く仲間達。まぁ、俺達はただ目的もなく休憩とか遊んだりはしないからな。
「ほい。この中から、遊びたいものを選んでくれ」
だが、俺は見逃さなかった。ビオラとクロガネの様子を羨ましそうに見る面々を。現にあの冷静沈着なドルツですら、ソワソワしているぐらいだ。それほど俺達は今まで海に縁がなかったのだ。
「うわっ、凄い!!」
「沢山あるちゃき!!」
そう。俺は暇さえあれば、クランハウスで色んなものを作って、それを空間魔法でしまっていたのだ。その中にはもちろん、ビーチで遊べるようなものも含まれていた。
「じゃあ、お言葉に甘えさせて頂きますね」
「私、お家の関係で向こうの世界でも海で遊んだことなかったんですよね~」
「しゃあない。ここの調査も必要だからな…………探偵として」
「ウチ、ビーチパラソルを立てたいアル」
「海かぁ……………いつぶりだろ」
「私、校外学習の前に学院を卒業しちゃいましたから、ありがたいです!!」
「ぼ、僕、こういうとこ初めてで緊張します……………」
「アツい!アツいわ!!上からは太陽が、下からは砂浜が私を責め立ててくるの!!誰か、私を砂で埋めて!!」
約1名、変なテンションの奴がいるが、その後のみんなは思い思いに楽しんでいた。
「あはははっ!!」
「ティアさん!このボート、凄い揺れますね!!」
「おらっ、お前ら!!もっとスピード上げるぞ!!」
「ん~アメイジング!!」
小型のクルーザーを巧みに運転するドルツとそのクルーザーに紐をくくりつけたバナナボートに乗るティアとアスカ。ティアは久しぶりに年相応のはしゃぎっぷりを見せ、そんな彼女の腰に後ろからしがみつくアスカは驚きと楽しさから、とても上機嫌だった。それは仲の良い姉妹にも見え、側からはとても良い画になっていた。そして、そんな中、クルーザーのデッキ部分では優雅に椅子に座りながら、カシスジュースを飲むサクヤの姿があった。
「こ、こうですか?」
「そうそう!やっぱり、シャウ君は筋がいいね!!」
「ビオラ!見るちゃき!余も泳げるようになったちゃき!!」
「なるほど。これでこうやる…………っと!」
「おおっ、凄いなセーラ!何だ、その泳ぎ方は!!そんなのぼくでもできないぞ!!君達は本当に凄いな」
「ビオラ、ビオラ!余もできたから、見て欲しいちゃき!!」
「ん?クロガネ……………果たして、それは泳いでいると言えるのか?」
ふと浅瀬の方に目をやるとそこではビオラがシャウ・セーラ・クロガネへ泳ぎを教えていた。ビオラは色んなところを旅して回っていた関係で当然、海にも行ったことがあり、泳ぎに慣れていたからだった。そこで急遽ではあるものの、ミニ水泳教室が行われていたのだ。
「……………」
「あふっ…………これが私に対する罰なのね」
一方、砂浜ではビーチパラソルの下で静かに読書をするバイラと砂に埋められて気持ち良さそうなモロクがいた。バイラは元々勉強家であり読書家である。外であっても暇さえあれば、本を読んでいることが多い。今回も例に漏れず、"みんなの楽しそうな声と波の音をBGMにいい読書ができそうアル"と言っていた。モロクは……………埋めて欲しいと懇願されたから、埋めてやった。今は"自分が罪を犯して砂に埋められている"という妄想をしながら、悦に浸っていた。お楽しみのところを邪魔しちゃ悪いと俺は彼女の埋めた直後、その場を離れた。近くにいたら、巻き込まれそうでもあったしな。ちなみにみんな、俺の用意した更衣室で着替えて今は水着となっている。水着自体はこれまでに訪れた店で各々が買っていた為、俺の自作ではない。
「さてと……………みんな!これ、やらないか?」
その後、俺はみんなが一通り、今の遊びをやり尽くしたところを見計らって、新たな遊びを提案した。スイカ割りやビーチバレーなど様々な遊びがまだ残っており、幸い周りには俺達以外誰もいない。その為、迷惑をかけることもなく思う存分、羽を伸ばすことができるのだ。
「「「「「は~い!!!!!」」」」」
束の間のバカンスはまだ始まったばかりだった。
0
あなたにおすすめの小説
目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する
うーぱー
ファンタジー
アーサーはハズレスキル『レベル1固定』を授かったため、家を追放されてしまう。
そして、ショック死してしまう。
その体に転成した主人公は、とりあえず、目の前にいた弟を腹パンざまぁ。
屋敷を逃げ出すのであった――。
ハズレスキル扱いされるが『レベル1固定』は他人のレベルを1に落とせるから、ツヨツヨだった。
スキルを活かしてアーサーは大活躍する……はず。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる