俺は善人にはなれない

気衒い

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〜After story〜

第51話:親子2

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「違う。そんなんじゃない……………ただ、俺は」

「嘘をつくなっ!!」

「っ!?」

その時、ビオラの大きな声が店内へと響き渡った。

「シンヤが言ったことは本当なんだろう?じゃないとわざわざ、ぼくをシンヤ達の元へ向かわせるメリットがない。それに偽名を使ったり、身分を偽ったり、やってることのリスクが高すぎるよ……………こうやって旅に同行している今だからこそ、分かる。シンヤ達がどれだけの強者なのかが。そんな人達に対して、生半可な覚悟で無謀な賭けなんかできる訳がないんだ」

「……………」

「大切なんだろう?お父さんの作ったものが」

「っ!?ふざけるな!!誰がこんなクソ親父のことなんか」

「いい加減にしろ!!」

「っ!?」

リクが言葉を言い終える前にビオラは彼の頬を強く叩いた。すると、あまりに突然のことにリクは驚いて固まってしまった。

「2人の間に何があったのかは分からない。でも、こうして父親の元を訪ねてきている時点で君にはまだ未練があるんだよ。ましてや、金のメダルを用意して話の信憑性を増幅し、地図まで作る手の込みよう………………こんなの認めるしかないじゃないか…………」

「………………」

ビオラの言葉にただただ黙って俯くことしかできないリク。ビオラはそんなリクを一旦放っておいて、今度はクニミツの方へ向いた。

「クニミツさん。あなたも本当は息子さんと仲直りしたいんじゃないですか?」

「ふんっ。俺は別に」

「クニミツさん!!」

「っ!?」

リクに対して出した声と同じくらいのボリュームでクニミツへ呼びかけるビオラ。そのあまりの気迫にクニミツはリク同様、驚いて固まってしまった………………やはり、親子だな。

「親子の縁って不思議なもので多分離れていてもどこかで繋がっているんです。たとえお互いに相容れないところがあって、離れてしまってもやっぱり相手のことが気になってしまう。そういうものだと思うんです」

「……………」

「……………実は私も親と喧嘩をして、家を飛び出してしまったんです。それもつい最近まで」

「っ!?」

「だから、本当はこんな偉そうな口を叩ける立場じゃないんです。でも、言わせて下さい…………………正直、飛び出した直後はムカつきました。ええ、ムカつきましたとも。それこそ、一生あんな奴とは口を利かないってぐらいに………………でも、気が付けば父のことを気にしている自分がいたんです。まぁ、それでも認めたくはなかったんですけど、シンヤ達の元を訪れたことで父とは和解しました」

「「………………」」

「2人とも素直になりましょうよ。ほら、手出して!!」

ビオラは2人の背中を押して向かい合わせ、さらにそれぞれ右手と左手を出させた。

「はい、握手」

そうして、似たような表情をした2人に握手をさせた。

「……………すぐには許せそうにないが、一旦停戦だ」

「……………ここは大人の俺が少しだけ折れてやる」

やや不服そうな表情を浮かべた2人だったが、一瞬だけその顔が綻んでいたのを俺達は見逃さなかった。


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