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第27話 ただいまの場所
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目の前に広がっていたのは、見慣れたオフィスの天井だった。
(……うわ、蛍光灯。ひさしぶり)
灰色のデスク。コーヒーと汗が染みついた書類の山。コピー機の音と電話の着信音が入り混じった、あの戦場。
――そう。俺の、前世の職場。
あまりの懐かしさに、胸の奥がきゅうっと締めつけられるような感覚に襲われた。何もかもがつらかったはずの場所なのに、思い出の中ではやけに温かく見えるのが不思議で――思わず、少し泣きそうになった。
……けれど、それもほんの束の間だった。
「おい新人! また寝てんのか!」
耳元で怒鳴り声が響いた。
「すみませんッ! いま起きました!」
――って、返事しちゃったよ俺!?夢だぞこれ!完全に夢なのに、なんで俺、反射で応答してんの!?しかもあの声、たぶん前世の上司のやつだろ……!?うわあ、反射で服従するようになってるとか、どんだけブラック脳なんだよ俺!!
それと同時に、バンッと机が叩かれる音がして、デジャヴが全身を駆け巡る。ああ、この怒られ方、マジでよくされてた……。
「クライアントに渡す資料まだか? 5分で出せって言ったよな!? 何分経ってると思ってる!」
(ひぃぃぃ……理不尽の権化! 無理だよこの人間風ブラックホール!)
しかも妙にリアル。怒鳴り声のクセとか、資料の束の匂いとか。おまけに机の引き出しにカロリーメイトもある。再現度、すごい。
(あれ? ていうか俺、魔獣と戦って……倒して……?)
ふと、左腕に違和感を覚えた瞬間。
――ズキンッ。
「ッ……いっ……!!」
現実に引き戻された。
目を開けると、そこは見慣れない天井だった。木じゃない。しっかりした石材で、清潔な白い壁。鼻に刺さるのは薬草系のツンとした匂い。
(あ、現代じゃない。異世界だ)
自分の左腕には包帯がびっしり巻かれていて、右手には細い管みたいなものが刺さっていた。おそらく回復薬の点滴的な何か。
そして、何より――
「……ユーリ!」
声がしたかと思ったら、母さんが勢いよく泣きついてきた。
胸に顔をうずめながら、ぼろぼろと涙をこぼしている。そんなに泣かれたら俺まで泣いちゃうじゃん。
「よ、よかったぁ……ほんとに、よかったぁ……!」
「……母さん、俺、生きてる……?」
「生きてる! ちゃんと息してる……!」
そのすぐ後ろから、父さんの大きな手が、そっと俺の額に触れた。
「……熱はもう下がってるみたいだな。寝汗もひいてる」
「……あ、父さん。心配かけて……」
「バカヤロー」
その声は、思ったより優しかった。
顔をしかめながらも、額の手はそのままだった。たぶん、それなりに本気で心配してたんだと思う。いや、絶対。
「ようやく目が覚めたか」
ベッドの横に立っていたのは、ガルドだった。相変わらずガタイが良くて、でもどこかほっとしたような顔をしている。
「お前、ほんっとに……! あんな危険なことをよく……!」
「ガルドさん、怒鳴っちゃダメ。いま起きたばっかりなんだから」
と、すぐ隣からミレイナの声が入る。控えめなようで、こういうときはびしっと言ってくれる。
さらにその横には、書き物をしていたっぽいカイが、小さく頷いた。
「目覚めた……よかった……。三日間も眠ってたから、正直……心配で」
「三日……?」
「うん。森から担ぎ出して、町の診療院に運んで……丸三日間、ずっと寝てたんだよ」
(そ、そんなに!?)
どうやら、あの戦いのあと俺はそのまま意識を失って、ガルドたちがすぐに応急処置をしてくれて、近くの町まで運んでくれたらしい。
「左腕は、骨までは無事だった。ただ、筋がかなりやられてたから、しばらく動かしちゃダメだってさ」
そう言ったのはミレイナだった。あの冷静な目で診察内容を覚えてたっぽい。
でも、動かしちゃダメって言われても……。
「剣、しばらく振れないってことか……」
「使ってた木剣、見事に折れてたよな。あれじゃもう振れないだろ。――一応、他のは残ってるけどさ」
横から、いつの間にか現れたボリスが、苦笑いを浮かべながら言ってきた。気づけば壁際に寄りかかっていて、腕を組んだまま、俺たちの会話をずっと聞いていたらしい。その表情はどこか呆れたようでいて、でも少しだけ安心したようにも見えた。
「まあ、折れて当然だけどな。あの雷閃、俺たちのとこまで響いてきたぞ。あれは……やばかった」
「ほんとに……。あれで気づいたから、間に合ったんです」
カイは、静かに頷いている。手にはお馴染みの記録用のノートと羽ペンを持っていて、ついさっきまで何かを書き込んでいたらしい。小柄な身体をすっと起こして、ペン先を紙から離すと、そのまま俺のベッド脇に寄ってくる。いつものように控えめな態度だけど、その目は真っ直ぐにこちらを見ていて、言葉はなくとも、心配と安堵がにじみ出ていた。
「お前がぶっ放したあの一撃、雷が落ちたかと思ったんだ。でかい音と風圧で、森中の鳥が一斉に飛び立ってた」
「すご……そんなに?」
そりゃあ倒した実感はあったけど、そんなに派手だったのか。自分で出した衝撃にちょっと引く。
「で、それを聞いてすっ飛んでいったら……お前がボロボロの状態で座り込んでてさ。でっかい魔獣が、ドサッて横に倒れてたんだよ。あのときの光景、今でも忘れられないよ」
ガルドが苦笑しながら言うその声には、どこかまだ信じきれない気配が混じっていた。俺はその言葉に、ふと顔を上げる。
「……あれって、結局、なんて魔獣だったんだ?」
そう口にした瞬間、周囲が一瞬だけ静かになる。ボリスが「お、今気づいたのか」とでも言いたげな顔をしたのを横目に、カイが手元のノートを軽く開いた。
「“ナイトウルフ”。Dランクの魔獣で、この地域でも生息が確認されている。けど、今回のは明らかに大型個体だった。通常よりも攻撃力も耐久力も高い、危険なやつだよ」
「ナイトウルフ……」
その名前を聞いた瞬間、あの咆哮、鋭い牙、そして装甲のような体毛が脳裏に蘇る。俺の左腕に走ったあの激痛と、雷閃を叩き込んだときの手応え――すべてが繋がって、ようやく実感が追いついた。
「……夢じゃ、ないんだな。ほんとに、やったんだ」
思わずこぼれたその声は、自分でも驚くほどかすれていた。けれど、確かにそれは俺の声で、今この場所で響いた。
周囲にいたみんなが、静かに、けれど力強く頷いてくれる。
「夢じゃねぇよ」
そう言ったのは、ガルドだった。いつもより少しだけ低く、噛みしめるような声。
「お前が、あそこで立っててくれた。それがどれだけすごいことか、みんな、よくわかってる。……とにかく、無事でよかった」
真っ直ぐな目でそう言い切るその表情に、どこか安堵と誇らしさが混じっていた。
だけど――
「……ねぇ、ガルド団長。ルッカたちは……その、みんなは……無事、だった?」
俺はそれだけが心配で、ようやく声に出せた。あの戦いの間中、ずっと頭の片隅で引っかかっていた思いが、ようやく言葉になった。
ガルドは一瞬、目を見開き――すぐに、安心させるように頷いた。
「ああ。ルッカも、ティオも、ハルトも、ミアちゃんも、みんな無事だ。怪我も、かすり傷程度だった。ちゃんと、うちの奴らが保護してくれたよ」
それを聞いた瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなる。張りつめていた何かが、ふっと緩むような感覚。
「……そっか。……よかった」
自然と、息がこぼれた。
本当に、よかった――それだけで、救われた気がした。
「お前が……あの場にいてくれて、戦ってくれたからだ」
ガルドの声が、静かに続く。
「誰も命を落とさなかった。それは、紛れもなくお前の行動のおかげだ。……誇れ、ユーリ」
その言葉が、まっすぐに胸に突き刺さった。
誇りなんて――そんな大層なこと、俺にあるのかわからない。
でも、たしかに――あの時、俺は守りたかった。
その気持ちが、間違っていなかったって、今なら少しだけ、思える。
ちょっと泣きそうになった。けど、ここで泣いたら母さんがまた泣く。絶対泣く。さっきもこっそり目を拭ってたし。
だから、我慢する。
……いや、ほんとは泣いていい場面なんだろうけど。
そんな空気に包まれていた、その時。
「――で?」
ガルドの声が、唐突に低くなる。
おっと、と思って顔を上げた瞬間、真正面に団長の顔。笑ってない。いや、目がむしろ怖い。何かが始まる気配――うん、完全に“それ”だ。
「お前さ、なんで森に入ったんだ?」
「……あっ、えっと……あの、それは……」
俺の視線がぐるぐると周囲を彷徨う。誰か助けてって目で見ても、みんな目を逸らした。父さんなんか、そっぽ向いたまま頷いてるし。母さんは両手を握りしめてるし。ボリスは明らかにニヤニヤしてるし。ミレイナは「やっちまったなぁ」って顔してるし。全然味方がいない。
「ユーリ」
重ねて、ガルドの声が来る。呼び捨てなのが逆に怖い。
「お前がどうして森にいたのか、その理由を俺たちは“まだ”聞いてないんだよな。……どうする? いま、ちゃんと話すか?」
「……いや、その、だから……黙っていられなかったんだ。みんながいなくなって、大人たちも本気で探そうとしてた。でも俺、どうしてもじっとしていられなかった。だから、自分でも探しに行こうって……!」
言い訳なのか説明なのかわからない言葉が口からだばーっと溢れていく。
だけど、ガルドはそれを全部ちゃんと聞いてくれて、それから、少しだけ息を吐いた。
「……お前の気持ちは、わかる。実際、お前がいなかったらどうなってたかわからない」
「……うん」
「でも、勝手に森に入るのは、絶対に駄目だ」
その言葉には、重みがあった。俺がどれだけ頷いても足りないくらいに。
「無事だったからいいって話じゃない。もし、お前がいなくなってたら、誰がその責任を背負う? お前の父さんか? 母さんか? 俺たちか? 違う。“お前自身”だ。命の価値を軽く見ていい理由は、どこにもない」
「……っ」
言葉が、詰まった。
そうだ。わかってる。勝手に森に入ったのは、誰にどう言われても仕方ない。命懸けだったのは、俺も痛いほど実感した。あの魔獣の爪の痛みが、まだ腕に焼き付いてる。
「……行きたいって言ってたのは、ちゃんと覚えてる。だけどな――だからこそ、勝手に動いちゃダメなんだ。次からは、ちゃんと一緒に行く方法を考えろ。わかったな?」
否定する理由なんて、どこにもなかった。
思い返せば、自分の行動は危なっかしさだらけで――もし途中で倒れていたら、あの子たちも自分も助からなかったかもしれない。
「……うん、わかった」
確かにその通りだ。
俺は、ただ黙って頷いた。
ガルドの説教は、短いけれど重い。そして、ちゃんと俺のために言ってくれてるのが伝わってくる。
ちょっとだけうつむいた俺の頭を、ぽん、と誰かが優しく撫でた。
母さんだった。目が赤い。父さんも、ぎこちなく笑ってるけど、たぶんかなり怒ってたはずだ。
それでも、みんな――誰も、俺を責めるだけじゃなく、ちゃんと帰ってきたことを喜んでくれていた。
……でもまあ、きっとこの後、母さんと父さんのお説教が待ってるんだろうな。
母さんは泣きながら怒るタイプだし、父さんは無言で背中をぽんってやるくせに、目が全然笑ってない。
ああ、想像しただけで胃が痛くなってきた……。
その後、俺は医師に簡単な診察を受けた。左腕の傷は深かったものの、予想よりも回復は早いらしい。
「この年齢でこれだけの外傷から三日でここまで回復するとは……驚いたな」
なんて医師が苦笑しながら言うくらいには、順調すぎるくらいだった。
病院食的なもの――白いスープにやわらかいパンとハーブ風味の粥みたいなのが出されたんだけど、正直すごく美味しかった。
(入院食がうまいって……どんだけ異世界優秀なの!?)
ただし、箸じゃなくて木製スプーンしかなかったので、全部右手でゆっくり食べるハメになった。左手、使えないって地味に不便……。
そして、父さんは俺のベッドのすぐ横にどっかりと腰を下ろして、まるでここが定位置ですって顔でずっと座っていた。
スープを飲むたび、パンをかじるたびに、いちいち顔をのぞき込んでくる。
「それ……うまいか?」
「……うん、普通においしいよ」
そんなふうに聞いてくるのは、これで三回目。
もしかして――心配してるのか? いや、絶対そうだ。わかりやすすぎるくらい、わかりやすい。
そのたびに、近くで水差しを整えていた母さんが小さくため息をついて、
「もう、静かにして。消化に悪いでしょ」
って、やんわり――でも確実に釘を刺していた。
父さんは「へいへい」って肩をすくめてたけど、その顔はなんだかちょっと嬉しそうだった。
(……いや、なにその空気。仲良しか)
突っ込みたくなる気持ちを押さえつつ、俺はそっとスープをすすった。
そして夕方。
ベッドの脇でカイが記録帳をぱらぱらめくりながらつぶやいた。
「今回の一件、報告書どう書こうか……」
「子どもが魔獣を討伐しましたって書くの?」
「やめてください。読み返すたびに俺が震えます」
「なあカイ、記録に残すなら雷落とした少年あらわるで頼むわ」
「ボリスさん、それ何の報告になるんですか……」
ああ、この雰囲気。やっぱり、俺、帰ってきたんだなって思った。
そんなこんなで、俺の目覚めはやけににぎやかで、少し泣けて、ちょっと笑える感じだった。
もちろん、これで全部終わったわけじゃない。村の子たちの安全、魔獣の動向、魔法の謎――いろいろ残ってる。
でも、今は。
「……ただいま」
ぽつりとそう呟いた俺の言葉に、周囲からふっと優しい空気が広がった。誰かが小さく笑い、誰かが静かにうなずき、誰かが「おかえり」と返してくれる。嘘みたいに温かい、その雰囲気に包まれて、胸の奥がじんわり熱くなった。
父さんが何も言わずに背中をぽん、と叩いてくれて、母さんは目元をぬぐいながら、それでも「もう、心配かけて……」と呟く。その言葉さえ、今の俺には嬉しかった。
(ああ……帰ってこれたんだ、ちゃんと)
あの森の中で、あの一瞬の中で、何度も無理かもしれないと思った。でも――諦めなかった。その先に、ちゃんと帰れる場所があった。こんなふうに迎えてくれる人たちがいた。
(だから俺は、また強くなろう。もっと、ちゃんと守れるように)
そんな気持ちが、静かに胸の奥から湧き上がってくる。でも、それを今すぐ口にするのは――なんだか照れくさくて。
(……ま、決意表明は明日でいっか)
今は、ちゃんと休もう。
まだ体は重いし、左腕も痛む。でも、町の人たちが手配してくれたこの病院は清潔で、静かで、安心できる。しばらくはこの町で過ごすことになりそうだ。きっと明日も、明後日も、誰かが顔を見に来てくれる。
(……うわ、蛍光灯。ひさしぶり)
灰色のデスク。コーヒーと汗が染みついた書類の山。コピー機の音と電話の着信音が入り混じった、あの戦場。
――そう。俺の、前世の職場。
あまりの懐かしさに、胸の奥がきゅうっと締めつけられるような感覚に襲われた。何もかもがつらかったはずの場所なのに、思い出の中ではやけに温かく見えるのが不思議で――思わず、少し泣きそうになった。
……けれど、それもほんの束の間だった。
「おい新人! また寝てんのか!」
耳元で怒鳴り声が響いた。
「すみませんッ! いま起きました!」
――って、返事しちゃったよ俺!?夢だぞこれ!完全に夢なのに、なんで俺、反射で応答してんの!?しかもあの声、たぶん前世の上司のやつだろ……!?うわあ、反射で服従するようになってるとか、どんだけブラック脳なんだよ俺!!
それと同時に、バンッと机が叩かれる音がして、デジャヴが全身を駆け巡る。ああ、この怒られ方、マジでよくされてた……。
「クライアントに渡す資料まだか? 5分で出せって言ったよな!? 何分経ってると思ってる!」
(ひぃぃぃ……理不尽の権化! 無理だよこの人間風ブラックホール!)
しかも妙にリアル。怒鳴り声のクセとか、資料の束の匂いとか。おまけに机の引き出しにカロリーメイトもある。再現度、すごい。
(あれ? ていうか俺、魔獣と戦って……倒して……?)
ふと、左腕に違和感を覚えた瞬間。
――ズキンッ。
「ッ……いっ……!!」
現実に引き戻された。
目を開けると、そこは見慣れない天井だった。木じゃない。しっかりした石材で、清潔な白い壁。鼻に刺さるのは薬草系のツンとした匂い。
(あ、現代じゃない。異世界だ)
自分の左腕には包帯がびっしり巻かれていて、右手には細い管みたいなものが刺さっていた。おそらく回復薬の点滴的な何か。
そして、何より――
「……ユーリ!」
声がしたかと思ったら、母さんが勢いよく泣きついてきた。
胸に顔をうずめながら、ぼろぼろと涙をこぼしている。そんなに泣かれたら俺まで泣いちゃうじゃん。
「よ、よかったぁ……ほんとに、よかったぁ……!」
「……母さん、俺、生きてる……?」
「生きてる! ちゃんと息してる……!」
そのすぐ後ろから、父さんの大きな手が、そっと俺の額に触れた。
「……熱はもう下がってるみたいだな。寝汗もひいてる」
「……あ、父さん。心配かけて……」
「バカヤロー」
その声は、思ったより優しかった。
顔をしかめながらも、額の手はそのままだった。たぶん、それなりに本気で心配してたんだと思う。いや、絶対。
「ようやく目が覚めたか」
ベッドの横に立っていたのは、ガルドだった。相変わらずガタイが良くて、でもどこかほっとしたような顔をしている。
「お前、ほんっとに……! あんな危険なことをよく……!」
「ガルドさん、怒鳴っちゃダメ。いま起きたばっかりなんだから」
と、すぐ隣からミレイナの声が入る。控えめなようで、こういうときはびしっと言ってくれる。
さらにその横には、書き物をしていたっぽいカイが、小さく頷いた。
「目覚めた……よかった……。三日間も眠ってたから、正直……心配で」
「三日……?」
「うん。森から担ぎ出して、町の診療院に運んで……丸三日間、ずっと寝てたんだよ」
(そ、そんなに!?)
どうやら、あの戦いのあと俺はそのまま意識を失って、ガルドたちがすぐに応急処置をしてくれて、近くの町まで運んでくれたらしい。
「左腕は、骨までは無事だった。ただ、筋がかなりやられてたから、しばらく動かしちゃダメだってさ」
そう言ったのはミレイナだった。あの冷静な目で診察内容を覚えてたっぽい。
でも、動かしちゃダメって言われても……。
「剣、しばらく振れないってことか……」
「使ってた木剣、見事に折れてたよな。あれじゃもう振れないだろ。――一応、他のは残ってるけどさ」
横から、いつの間にか現れたボリスが、苦笑いを浮かべながら言ってきた。気づけば壁際に寄りかかっていて、腕を組んだまま、俺たちの会話をずっと聞いていたらしい。その表情はどこか呆れたようでいて、でも少しだけ安心したようにも見えた。
「まあ、折れて当然だけどな。あの雷閃、俺たちのとこまで響いてきたぞ。あれは……やばかった」
「ほんとに……。あれで気づいたから、間に合ったんです」
カイは、静かに頷いている。手にはお馴染みの記録用のノートと羽ペンを持っていて、ついさっきまで何かを書き込んでいたらしい。小柄な身体をすっと起こして、ペン先を紙から離すと、そのまま俺のベッド脇に寄ってくる。いつものように控えめな態度だけど、その目は真っ直ぐにこちらを見ていて、言葉はなくとも、心配と安堵がにじみ出ていた。
「お前がぶっ放したあの一撃、雷が落ちたかと思ったんだ。でかい音と風圧で、森中の鳥が一斉に飛び立ってた」
「すご……そんなに?」
そりゃあ倒した実感はあったけど、そんなに派手だったのか。自分で出した衝撃にちょっと引く。
「で、それを聞いてすっ飛んでいったら……お前がボロボロの状態で座り込んでてさ。でっかい魔獣が、ドサッて横に倒れてたんだよ。あのときの光景、今でも忘れられないよ」
ガルドが苦笑しながら言うその声には、どこかまだ信じきれない気配が混じっていた。俺はその言葉に、ふと顔を上げる。
「……あれって、結局、なんて魔獣だったんだ?」
そう口にした瞬間、周囲が一瞬だけ静かになる。ボリスが「お、今気づいたのか」とでも言いたげな顔をしたのを横目に、カイが手元のノートを軽く開いた。
「“ナイトウルフ”。Dランクの魔獣で、この地域でも生息が確認されている。けど、今回のは明らかに大型個体だった。通常よりも攻撃力も耐久力も高い、危険なやつだよ」
「ナイトウルフ……」
その名前を聞いた瞬間、あの咆哮、鋭い牙、そして装甲のような体毛が脳裏に蘇る。俺の左腕に走ったあの激痛と、雷閃を叩き込んだときの手応え――すべてが繋がって、ようやく実感が追いついた。
「……夢じゃ、ないんだな。ほんとに、やったんだ」
思わずこぼれたその声は、自分でも驚くほどかすれていた。けれど、確かにそれは俺の声で、今この場所で響いた。
周囲にいたみんなが、静かに、けれど力強く頷いてくれる。
「夢じゃねぇよ」
そう言ったのは、ガルドだった。いつもより少しだけ低く、噛みしめるような声。
「お前が、あそこで立っててくれた。それがどれだけすごいことか、みんな、よくわかってる。……とにかく、無事でよかった」
真っ直ぐな目でそう言い切るその表情に、どこか安堵と誇らしさが混じっていた。
だけど――
「……ねぇ、ガルド団長。ルッカたちは……その、みんなは……無事、だった?」
俺はそれだけが心配で、ようやく声に出せた。あの戦いの間中、ずっと頭の片隅で引っかかっていた思いが、ようやく言葉になった。
ガルドは一瞬、目を見開き――すぐに、安心させるように頷いた。
「ああ。ルッカも、ティオも、ハルトも、ミアちゃんも、みんな無事だ。怪我も、かすり傷程度だった。ちゃんと、うちの奴らが保護してくれたよ」
それを聞いた瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなる。張りつめていた何かが、ふっと緩むような感覚。
「……そっか。……よかった」
自然と、息がこぼれた。
本当に、よかった――それだけで、救われた気がした。
「お前が……あの場にいてくれて、戦ってくれたからだ」
ガルドの声が、静かに続く。
「誰も命を落とさなかった。それは、紛れもなくお前の行動のおかげだ。……誇れ、ユーリ」
その言葉が、まっすぐに胸に突き刺さった。
誇りなんて――そんな大層なこと、俺にあるのかわからない。
でも、たしかに――あの時、俺は守りたかった。
その気持ちが、間違っていなかったって、今なら少しだけ、思える。
ちょっと泣きそうになった。けど、ここで泣いたら母さんがまた泣く。絶対泣く。さっきもこっそり目を拭ってたし。
だから、我慢する。
……いや、ほんとは泣いていい場面なんだろうけど。
そんな空気に包まれていた、その時。
「――で?」
ガルドの声が、唐突に低くなる。
おっと、と思って顔を上げた瞬間、真正面に団長の顔。笑ってない。いや、目がむしろ怖い。何かが始まる気配――うん、完全に“それ”だ。
「お前さ、なんで森に入ったんだ?」
「……あっ、えっと……あの、それは……」
俺の視線がぐるぐると周囲を彷徨う。誰か助けてって目で見ても、みんな目を逸らした。父さんなんか、そっぽ向いたまま頷いてるし。母さんは両手を握りしめてるし。ボリスは明らかにニヤニヤしてるし。ミレイナは「やっちまったなぁ」って顔してるし。全然味方がいない。
「ユーリ」
重ねて、ガルドの声が来る。呼び捨てなのが逆に怖い。
「お前がどうして森にいたのか、その理由を俺たちは“まだ”聞いてないんだよな。……どうする? いま、ちゃんと話すか?」
「……いや、その、だから……黙っていられなかったんだ。みんながいなくなって、大人たちも本気で探そうとしてた。でも俺、どうしてもじっとしていられなかった。だから、自分でも探しに行こうって……!」
言い訳なのか説明なのかわからない言葉が口からだばーっと溢れていく。
だけど、ガルドはそれを全部ちゃんと聞いてくれて、それから、少しだけ息を吐いた。
「……お前の気持ちは、わかる。実際、お前がいなかったらどうなってたかわからない」
「……うん」
「でも、勝手に森に入るのは、絶対に駄目だ」
その言葉には、重みがあった。俺がどれだけ頷いても足りないくらいに。
「無事だったからいいって話じゃない。もし、お前がいなくなってたら、誰がその責任を背負う? お前の父さんか? 母さんか? 俺たちか? 違う。“お前自身”だ。命の価値を軽く見ていい理由は、どこにもない」
「……っ」
言葉が、詰まった。
そうだ。わかってる。勝手に森に入ったのは、誰にどう言われても仕方ない。命懸けだったのは、俺も痛いほど実感した。あの魔獣の爪の痛みが、まだ腕に焼き付いてる。
「……行きたいって言ってたのは、ちゃんと覚えてる。だけどな――だからこそ、勝手に動いちゃダメなんだ。次からは、ちゃんと一緒に行く方法を考えろ。わかったな?」
否定する理由なんて、どこにもなかった。
思い返せば、自分の行動は危なっかしさだらけで――もし途中で倒れていたら、あの子たちも自分も助からなかったかもしれない。
「……うん、わかった」
確かにその通りだ。
俺は、ただ黙って頷いた。
ガルドの説教は、短いけれど重い。そして、ちゃんと俺のために言ってくれてるのが伝わってくる。
ちょっとだけうつむいた俺の頭を、ぽん、と誰かが優しく撫でた。
母さんだった。目が赤い。父さんも、ぎこちなく笑ってるけど、たぶんかなり怒ってたはずだ。
それでも、みんな――誰も、俺を責めるだけじゃなく、ちゃんと帰ってきたことを喜んでくれていた。
……でもまあ、きっとこの後、母さんと父さんのお説教が待ってるんだろうな。
母さんは泣きながら怒るタイプだし、父さんは無言で背中をぽんってやるくせに、目が全然笑ってない。
ああ、想像しただけで胃が痛くなってきた……。
その後、俺は医師に簡単な診察を受けた。左腕の傷は深かったものの、予想よりも回復は早いらしい。
「この年齢でこれだけの外傷から三日でここまで回復するとは……驚いたな」
なんて医師が苦笑しながら言うくらいには、順調すぎるくらいだった。
病院食的なもの――白いスープにやわらかいパンとハーブ風味の粥みたいなのが出されたんだけど、正直すごく美味しかった。
(入院食がうまいって……どんだけ異世界優秀なの!?)
ただし、箸じゃなくて木製スプーンしかなかったので、全部右手でゆっくり食べるハメになった。左手、使えないって地味に不便……。
そして、父さんは俺のベッドのすぐ横にどっかりと腰を下ろして、まるでここが定位置ですって顔でずっと座っていた。
スープを飲むたび、パンをかじるたびに、いちいち顔をのぞき込んでくる。
「それ……うまいか?」
「……うん、普通においしいよ」
そんなふうに聞いてくるのは、これで三回目。
もしかして――心配してるのか? いや、絶対そうだ。わかりやすすぎるくらい、わかりやすい。
そのたびに、近くで水差しを整えていた母さんが小さくため息をついて、
「もう、静かにして。消化に悪いでしょ」
って、やんわり――でも確実に釘を刺していた。
父さんは「へいへい」って肩をすくめてたけど、その顔はなんだかちょっと嬉しそうだった。
(……いや、なにその空気。仲良しか)
突っ込みたくなる気持ちを押さえつつ、俺はそっとスープをすすった。
そして夕方。
ベッドの脇でカイが記録帳をぱらぱらめくりながらつぶやいた。
「今回の一件、報告書どう書こうか……」
「子どもが魔獣を討伐しましたって書くの?」
「やめてください。読み返すたびに俺が震えます」
「なあカイ、記録に残すなら雷落とした少年あらわるで頼むわ」
「ボリスさん、それ何の報告になるんですか……」
ああ、この雰囲気。やっぱり、俺、帰ってきたんだなって思った。
そんなこんなで、俺の目覚めはやけににぎやかで、少し泣けて、ちょっと笑える感じだった。
もちろん、これで全部終わったわけじゃない。村の子たちの安全、魔獣の動向、魔法の謎――いろいろ残ってる。
でも、今は。
「……ただいま」
ぽつりとそう呟いた俺の言葉に、周囲からふっと優しい空気が広がった。誰かが小さく笑い、誰かが静かにうなずき、誰かが「おかえり」と返してくれる。嘘みたいに温かい、その雰囲気に包まれて、胸の奥がじんわり熱くなった。
父さんが何も言わずに背中をぽん、と叩いてくれて、母さんは目元をぬぐいながら、それでも「もう、心配かけて……」と呟く。その言葉さえ、今の俺には嬉しかった。
(ああ……帰ってこれたんだ、ちゃんと)
あの森の中で、あの一瞬の中で、何度も無理かもしれないと思った。でも――諦めなかった。その先に、ちゃんと帰れる場所があった。こんなふうに迎えてくれる人たちがいた。
(だから俺は、また強くなろう。もっと、ちゃんと守れるように)
そんな気持ちが、静かに胸の奥から湧き上がってくる。でも、それを今すぐ口にするのは――なんだか照れくさくて。
(……ま、決意表明は明日でいっか)
今は、ちゃんと休もう。
まだ体は重いし、左腕も痛む。でも、町の人たちが手配してくれたこの病院は清潔で、静かで、安心できる。しばらくはこの町で過ごすことになりそうだ。きっと明日も、明後日も、誰かが顔を見に来てくれる。
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現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
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異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
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農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
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