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第39話 宴の夜に
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村の空き家にベルス村の一行を案内してから、夕暮れの準備は一気に慌ただしくなった。
「ユーリー! お鍋、持ってってくれるー?」
「はーい! ……って、うおっ、重っ!」
母さんから受け取った大鍋は、持ち手が熱くなってるうえに、たっぷり詰まったスープでずっしりと重い。気合いで持ち上げて、広場に急ぐと、すでに長机が並べられていて、子どもたちと大人たちが手分けして準備を進めていた。
「おー、ユーリ、鍋係か? 頑張ってんなぁ」
ロイがニコニコ笑いながら、どこからか椅子を抱えてやってくる。その肩には布を巻かれた酒瓶が2本くくりつけられている。
「ロイさん、宴なのに働いてるの?」
「そりゃそうだろーが。宴で飲むには準備が終わってるって前提があるんだぞ?」
なんかそれっぽいこと言ってるけど、片手に酒持ってるのどうなんだろ。
ほどなく、スープ鍋は無事に設置され、村の女の人たちが順に料理を並べていく。グリル野菜、焼いた魚、山菜の和え物、香ばしく焼かれた肉の串……どれも美味しそうな匂いを立てて、広場全体を包みこんでいった。
「うわっ……これ、すっごいごちそうだ!」
「肉がこんなに!うわあ……宴って、すごいんだね……!」
「ユーリくん! これ全部、ほんとに食べていいの!?」
もう、ベルス村の子たちは大興奮。さっきまで緊張してたのが嘘みたいなはしゃぎっぷりだ。リノアも俺の隣で小さく笑っていた。
「……まるで、小さいお祭りだね」
その横では、うちの村の子たちも負けじとテンションが上がっていて、
「見て見て! あの串焼き、めっちゃでっかい!」
「ほら、あれ絶対食べなきゃだめだよ!」
「……ちょ、引っ張らないでってば!」
なんて声があちこちから飛び交っている。
陽が完全に沈む頃には、広場の中心には篝火が焚かれ、みんなそれぞれに席を取って、ごはんやお酒を楽しみ始めていた。
俺も一息ついて、母さんの横に腰を下ろす。父さんはガルドやアーベルたちと同じ席にいて、大人の会話に混ざっている。
「母さんたち、これ……ほんとに全部作ったの?」
「ふふふ、何日か前から準備してたのよ~。こういうの、張り切っちゃうわよね」
母さんが満足そうに笑う。隣ではメアリがスープを両手で抱えながら、「……おいしっ」って小さく呟いていた。
ハルトは串を片手に「肉だー! うまー!」って叫んでるし、ティオもスープを飲みながら静かに頷いていた。リノアは、ベルス村の子たちと楽しそうに話してる。
「なあ、ユーリ」
ふと、俺の背中越しに声がかかる。振り返ると、そこにはガルドがいた。
「よかったら、こっちの席来るか?」
「えっ、いいの?」
「おう。たまには大人の話、聞いてみるのもいいだろ」
ガルドたちが座っているのは、広場の一角の少し静かな場所。そこにアーベルやロイ、ミレイナ、それにボリスとエマもいた。カイはひとり離れて、帳簿のようなものを開いて何やら確認していたが、気づいて軽く手を振ってくれた。
「おっ、ユーリじゃねえか。どうだ、楽しんでるか?」
「うん! でも、ちょっと緊張するな、ここの席……」
「気にすんなって。今夜は宴だ。楽しまなきゃ損だぜ」
ロイが豪快に笑いながら杯を掲げる。アーベルもそれに倣って乾杯の声を上げた。
しばらく、にぎやかに食べたり飲んだりしていたが、ふとアーベルがガルドに向かって言った。
「しかし、あんたが村の自警団のそれも団長をやってるなんてな。昔の面構えと、ぜんぜん違うじゃねえか」
「……ま、そうかもな」
ガルドが、すこし照れたように髭を撫でる。
「……あんた、昔は峻嶺の獅子って呼ばれてたよな?」
ふとした静けさの中で、アーベルさんの低い声が響く。
広場の喧騒から少し離れた場所。焚き火のはぜる音だけが、間をつなぐ。
ガルドが、少しだけ眉を上げた。
「……その名を知ってるとはな。懐かしい呼び名だ」
「昔、エルデン村に来たときに、誰かが話してたのを覚えててさ。ガルドって名前と一緒に、その異名も聞いた。今思えば、あんただったんだなって」
「よく覚えてたな。もう、ずいぶん昔のことだ」
団長が苦笑しながら酒の器を傾ける。
それを聞いていた俺は、びっくりして声を上げた。
「えっ、ガルド団長って、傭兵団の団長だったの!?」
「知らなかったのか?」
アーベルが少し驚いたようにこちらを見る。
「そんな話、初めて聞いたよ……!でも、峻嶺の獅子ってめっちゃかっこいい……!」
目の前の人物と、かつて戦場を駆けていたという姿がなかなか結びつかなくて、けど、すごくしっくりも来る。不思議な気持ち。
(俺もいつか、そういう……香ばしくないかっこいい異名がもらえるような男になれるかな……)
そんな妄想をしていたら、隣にいたロイがぼそっとつぶやいた。
「お前にはもう雷の王子って異名があるだろ」
「や、それはちょっと方向性が違う!」
言い返しながらも、顔が熱くなるのは止められなかった。
「うわー……いいなぁ、そういう異名。僕にもほしい……でも、雷の王子はちょっと……」
思わず顔をしかめながらつぶやくと、ロイとミレイナが吹き出した。
「ぷっ、そりゃあの異名は、本人の意志と関係ないからな」
「でも、悪くないと思うけど? 本人が真顔で否定してるのも含めて」
「いやいや、絶対おかしいってあれ。王子って!」
俺がぶつぶつ文句を言っていると、ガルドが微笑を浮かべながらぽつりと一言。
「……異名ってのは、勝手に付けられるもんさ。気にするだけ損だぞ、ユーリ」
「えっ、それ、慰めになってませんけど!?」
広場に笑いが広がるなか、俺は密かに誓った。
(……いつか俺にも、もっとカッコよくて渋い異名がつくくらいの活躍をしてやる!)
「峻嶺の獅子――まったく、懐かしい名だよな。あの頃を思い出すと、体が勝手に反応しそうになるぜ」
ロイが苦笑しながら肩をすくめて続ける。
「俺もその団にいたよ。今でも忘れねぇ。正直、死ぬほど鍛えられたって意味で、思い出すとちょっと泣きたくなるけどな」
「私もよ。今とは違って、ずいぶん厳しかったわね」
ミレイナが穏やかに笑って加わる。
「でもな、最終的にはこの村に根を張るのも悪くねぇなって思えたんだよ」
ロイが空を見上げるように呟く。
(えっ、ロイも……? ミレイナまで)
思わず目を見開いた。
いつも気さくなロイと、冷静沈着なミレイナが――傭兵団に所属していたとはまったく想像してなかった。
(すごい……本当に、ただ者じゃない人たちだったんだ……!)
でも――なんで、そんな人たちが今、この村にいるんだ?
異名があるほどの実力者なら、王都にでも行って、どこかの貴族に腕を売り込めば、それこそ出世のチャンスなんていくらでもありそうなのに。
(……それでも、ここにいるってことは――何か、大事な理由があるのか?)
そんな中、エマが串をむしゃむしゃと食べながら、もごもごと話しだした。
「私とボリスは……昔、冒険者だったんです。ある依頼の帰りに、この村へ立ち寄りまして」
エマさんは、穏やかな笑みを浮かべて話を続けた。
「そのとき、村の皆さんがとても優しくしてくださって。ちょうどその頃、このあたりでは盗賊や魔獣の被害が出ていて……。しばらく滞在して、お手伝いをしていたんですけれど――」
「気づいたら、すっかり居心地がよくなっちゃってさ。そのまま住むことにしちゃった、ってわけ」
ボリスは口元を緩め、楽しげに笑っている。
「でも、正解だったと思ってるよ。騒がしい毎日だけど、こうして人と繋がって、守るものがある生活って――いいもんだ」
誰も口にしないけど、たぶん――この人たちは、いろんな修羅場をくぐってきたんだと思う。
「そういや、カイは昔からこの村なんだっけ?」
ロイが声をかけると、帳簿を閉じたカイが穏やかに頷きながら近づいてきた。
「ええ。僕はずっとこの村で暮らしていました。自警団に加わったのは……皆さんが来てからですけど」
「でもな、来る前からもう実質団員みたいなもんだったよな。村のことも人のことも、全部カイが把握しててさ。細かいところまで気が利くし、ほんと助かってる」
「いえ、それは……昔から気にしてただけですよ。誰かがやらなきゃいけないと思って、つい手を動かしてただけです」
カイはそう言いながら、少しだけ照れたように笑っていた。
「村と町をつなぐ連絡役とか、物資の管理とか、医薬の手配とか……全部、あいつがまとめてんだ。いなきゃ困るのよ、ほんと」
ボリスの声に、カイが苦笑する。
「やめてくださいよ、照れるじゃないですか。……でもまあ、少しは役に立ってるなら、嬉しいです」
夜が深まり、子どもたちは焚き火を囲んで、村の歌を聞いたり、簡単な手遊びや踊りに興じていた。
その中に交じって、シノが俺に駆け寄ってきた。
「ユーリくん、これ……さっき食べすぎて余っちゃったから、おすそわけ!」
そう言って渡されたのは、焼きリンゴ。香ばしい香りが広がる。
「ありがとう。でも、ほんとは君のぶんじゃないの?」
「いいのいいの! だって……今日すっごく楽しかったし!」
「ふふっ……そっか。なら、また遊びに来てよ。……あ、いや、こっちから行くってのもありだね」
「それ、いいね!」
パチパチと、焚き火の音が夜の静けさに映える。
俺たちはただ、それを眺めていた。
宴は、夜更けまで続いた。
けれど、不思議と疲れは感じなかった。むしろ、心が満たされて、ぽかぽかしてる。
夜空を見上げる。
やっぱり、星がきれいだ。前世じゃ、ビルとネオンばっかで星なんて滅多に見えなかったっけ。
……うん、いい世界だ。虫さえいなければもっと最高。
「ユーリー! お鍋、持ってってくれるー?」
「はーい! ……って、うおっ、重っ!」
母さんから受け取った大鍋は、持ち手が熱くなってるうえに、たっぷり詰まったスープでずっしりと重い。気合いで持ち上げて、広場に急ぐと、すでに長机が並べられていて、子どもたちと大人たちが手分けして準備を進めていた。
「おー、ユーリ、鍋係か? 頑張ってんなぁ」
ロイがニコニコ笑いながら、どこからか椅子を抱えてやってくる。その肩には布を巻かれた酒瓶が2本くくりつけられている。
「ロイさん、宴なのに働いてるの?」
「そりゃそうだろーが。宴で飲むには準備が終わってるって前提があるんだぞ?」
なんかそれっぽいこと言ってるけど、片手に酒持ってるのどうなんだろ。
ほどなく、スープ鍋は無事に設置され、村の女の人たちが順に料理を並べていく。グリル野菜、焼いた魚、山菜の和え物、香ばしく焼かれた肉の串……どれも美味しそうな匂いを立てて、広場全体を包みこんでいった。
「うわっ……これ、すっごいごちそうだ!」
「肉がこんなに!うわあ……宴って、すごいんだね……!」
「ユーリくん! これ全部、ほんとに食べていいの!?」
もう、ベルス村の子たちは大興奮。さっきまで緊張してたのが嘘みたいなはしゃぎっぷりだ。リノアも俺の隣で小さく笑っていた。
「……まるで、小さいお祭りだね」
その横では、うちの村の子たちも負けじとテンションが上がっていて、
「見て見て! あの串焼き、めっちゃでっかい!」
「ほら、あれ絶対食べなきゃだめだよ!」
「……ちょ、引っ張らないでってば!」
なんて声があちこちから飛び交っている。
陽が完全に沈む頃には、広場の中心には篝火が焚かれ、みんなそれぞれに席を取って、ごはんやお酒を楽しみ始めていた。
俺も一息ついて、母さんの横に腰を下ろす。父さんはガルドやアーベルたちと同じ席にいて、大人の会話に混ざっている。
「母さんたち、これ……ほんとに全部作ったの?」
「ふふふ、何日か前から準備してたのよ~。こういうの、張り切っちゃうわよね」
母さんが満足そうに笑う。隣ではメアリがスープを両手で抱えながら、「……おいしっ」って小さく呟いていた。
ハルトは串を片手に「肉だー! うまー!」って叫んでるし、ティオもスープを飲みながら静かに頷いていた。リノアは、ベルス村の子たちと楽しそうに話してる。
「なあ、ユーリ」
ふと、俺の背中越しに声がかかる。振り返ると、そこにはガルドがいた。
「よかったら、こっちの席来るか?」
「えっ、いいの?」
「おう。たまには大人の話、聞いてみるのもいいだろ」
ガルドたちが座っているのは、広場の一角の少し静かな場所。そこにアーベルやロイ、ミレイナ、それにボリスとエマもいた。カイはひとり離れて、帳簿のようなものを開いて何やら確認していたが、気づいて軽く手を振ってくれた。
「おっ、ユーリじゃねえか。どうだ、楽しんでるか?」
「うん! でも、ちょっと緊張するな、ここの席……」
「気にすんなって。今夜は宴だ。楽しまなきゃ損だぜ」
ロイが豪快に笑いながら杯を掲げる。アーベルもそれに倣って乾杯の声を上げた。
しばらく、にぎやかに食べたり飲んだりしていたが、ふとアーベルがガルドに向かって言った。
「しかし、あんたが村の自警団のそれも団長をやってるなんてな。昔の面構えと、ぜんぜん違うじゃねえか」
「……ま、そうかもな」
ガルドが、すこし照れたように髭を撫でる。
「……あんた、昔は峻嶺の獅子って呼ばれてたよな?」
ふとした静けさの中で、アーベルさんの低い声が響く。
広場の喧騒から少し離れた場所。焚き火のはぜる音だけが、間をつなぐ。
ガルドが、少しだけ眉を上げた。
「……その名を知ってるとはな。懐かしい呼び名だ」
「昔、エルデン村に来たときに、誰かが話してたのを覚えててさ。ガルドって名前と一緒に、その異名も聞いた。今思えば、あんただったんだなって」
「よく覚えてたな。もう、ずいぶん昔のことだ」
団長が苦笑しながら酒の器を傾ける。
それを聞いていた俺は、びっくりして声を上げた。
「えっ、ガルド団長って、傭兵団の団長だったの!?」
「知らなかったのか?」
アーベルが少し驚いたようにこちらを見る。
「そんな話、初めて聞いたよ……!でも、峻嶺の獅子ってめっちゃかっこいい……!」
目の前の人物と、かつて戦場を駆けていたという姿がなかなか結びつかなくて、けど、すごくしっくりも来る。不思議な気持ち。
(俺もいつか、そういう……香ばしくないかっこいい異名がもらえるような男になれるかな……)
そんな妄想をしていたら、隣にいたロイがぼそっとつぶやいた。
「お前にはもう雷の王子って異名があるだろ」
「や、それはちょっと方向性が違う!」
言い返しながらも、顔が熱くなるのは止められなかった。
「うわー……いいなぁ、そういう異名。僕にもほしい……でも、雷の王子はちょっと……」
思わず顔をしかめながらつぶやくと、ロイとミレイナが吹き出した。
「ぷっ、そりゃあの異名は、本人の意志と関係ないからな」
「でも、悪くないと思うけど? 本人が真顔で否定してるのも含めて」
「いやいや、絶対おかしいってあれ。王子って!」
俺がぶつぶつ文句を言っていると、ガルドが微笑を浮かべながらぽつりと一言。
「……異名ってのは、勝手に付けられるもんさ。気にするだけ損だぞ、ユーリ」
「えっ、それ、慰めになってませんけど!?」
広場に笑いが広がるなか、俺は密かに誓った。
(……いつか俺にも、もっとカッコよくて渋い異名がつくくらいの活躍をしてやる!)
「峻嶺の獅子――まったく、懐かしい名だよな。あの頃を思い出すと、体が勝手に反応しそうになるぜ」
ロイが苦笑しながら肩をすくめて続ける。
「俺もその団にいたよ。今でも忘れねぇ。正直、死ぬほど鍛えられたって意味で、思い出すとちょっと泣きたくなるけどな」
「私もよ。今とは違って、ずいぶん厳しかったわね」
ミレイナが穏やかに笑って加わる。
「でもな、最終的にはこの村に根を張るのも悪くねぇなって思えたんだよ」
ロイが空を見上げるように呟く。
(えっ、ロイも……? ミレイナまで)
思わず目を見開いた。
いつも気さくなロイと、冷静沈着なミレイナが――傭兵団に所属していたとはまったく想像してなかった。
(すごい……本当に、ただ者じゃない人たちだったんだ……!)
でも――なんで、そんな人たちが今、この村にいるんだ?
異名があるほどの実力者なら、王都にでも行って、どこかの貴族に腕を売り込めば、それこそ出世のチャンスなんていくらでもありそうなのに。
(……それでも、ここにいるってことは――何か、大事な理由があるのか?)
そんな中、エマが串をむしゃむしゃと食べながら、もごもごと話しだした。
「私とボリスは……昔、冒険者だったんです。ある依頼の帰りに、この村へ立ち寄りまして」
エマさんは、穏やかな笑みを浮かべて話を続けた。
「そのとき、村の皆さんがとても優しくしてくださって。ちょうどその頃、このあたりでは盗賊や魔獣の被害が出ていて……。しばらく滞在して、お手伝いをしていたんですけれど――」
「気づいたら、すっかり居心地がよくなっちゃってさ。そのまま住むことにしちゃった、ってわけ」
ボリスは口元を緩め、楽しげに笑っている。
「でも、正解だったと思ってるよ。騒がしい毎日だけど、こうして人と繋がって、守るものがある生活って――いいもんだ」
誰も口にしないけど、たぶん――この人たちは、いろんな修羅場をくぐってきたんだと思う。
「そういや、カイは昔からこの村なんだっけ?」
ロイが声をかけると、帳簿を閉じたカイが穏やかに頷きながら近づいてきた。
「ええ。僕はずっとこの村で暮らしていました。自警団に加わったのは……皆さんが来てからですけど」
「でもな、来る前からもう実質団員みたいなもんだったよな。村のことも人のことも、全部カイが把握しててさ。細かいところまで気が利くし、ほんと助かってる」
「いえ、それは……昔から気にしてただけですよ。誰かがやらなきゃいけないと思って、つい手を動かしてただけです」
カイはそう言いながら、少しだけ照れたように笑っていた。
「村と町をつなぐ連絡役とか、物資の管理とか、医薬の手配とか……全部、あいつがまとめてんだ。いなきゃ困るのよ、ほんと」
ボリスの声に、カイが苦笑する。
「やめてくださいよ、照れるじゃないですか。……でもまあ、少しは役に立ってるなら、嬉しいです」
夜が深まり、子どもたちは焚き火を囲んで、村の歌を聞いたり、簡単な手遊びや踊りに興じていた。
その中に交じって、シノが俺に駆け寄ってきた。
「ユーリくん、これ……さっき食べすぎて余っちゃったから、おすそわけ!」
そう言って渡されたのは、焼きリンゴ。香ばしい香りが広がる。
「ありがとう。でも、ほんとは君のぶんじゃないの?」
「いいのいいの! だって……今日すっごく楽しかったし!」
「ふふっ……そっか。なら、また遊びに来てよ。……あ、いや、こっちから行くってのもありだね」
「それ、いいね!」
パチパチと、焚き火の音が夜の静けさに映える。
俺たちはただ、それを眺めていた。
宴は、夜更けまで続いた。
けれど、不思議と疲れは感じなかった。むしろ、心が満たされて、ぽかぽかしてる。
夜空を見上げる。
やっぱり、星がきれいだ。前世じゃ、ビルとネオンばっかで星なんて滅多に見えなかったっけ。
……うん、いい世界だ。虫さえいなければもっと最高。
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