3 / 36
療養期間
しおりを挟む
マオがミューズの為に水とはちみつ湯を用意した。
水で口内をさっぱりとさせた後、甘みのあるはちみつ湯で、ゆっくりと口直しをする。
「ありがとうございます…私はミューズ=スフォリアと申します。この度は助けて頂きありがとうございました」
深々と頭を下げる。
「俺の名はティタン=ウィズフォード。よかった、君が助かって」
ようやっと、彼の姿が見られた。
短めな薄紫色の髪を後ろに撫で付け、瞳は黄緑色をしている。
身長も高く、体格もがっしりとしている。
ミューズをずっと抱えていた腕もとても太く、逞しい。
今更ながら思い出して恥ずかしくなる。
男性に触れられていたなんて、信じられない事だ。
「こちらはマオ。俺の従者だ」
「よろしくお願いします」
黒髪、黒目の少女だ。
長い髪は後ろで纏めている。
ズボンを履いており、パッと見は少年にしか見えない。
体格は小柄で、背丈はミューズくらいだ。
「皆さん本当にありがとうございます、何とお礼を言ったらいいのか…」
シュナイとサミュエルにもそれぞれお礼を伝えた。
本当に助かるなんて、夢のようだ。
今更ながら、あの痛みと恐怖で身体が震え、涙が出てくる。
「大丈夫か?どこか痛むか?」
ティタンが目線を合わせ、屈んでくれた。
優しい人だ。
「いえ、ただ、怖くて……本当に、死んじゃうかと……思って……」
一度出た嗚咽はなかなか止められない。
言葉が言葉にならないのだ。
「そうだよな、怖かったよな……よく一人で頑張ったものだ」
大きな手がミューズの背を優しく擦る。
ミューズは暫く涙を流していた。
ようやく落ち着くと、今度は今の自分の行動に恥ずかしさがこみ上げる。
人前で子どものように泣くなど、王族としてあり得ない。
どう話を切り出していいかわからなくなった。
「落ち着いたかな…」
ティタンの声にこくりと頷く。
ずっと彼は付き添ってくれていた。
気づけば部屋にはミューズとティタンとシュナイがいるだけだった。
サミュエルとマオはそれぞれの仕事に戻ったようだ。
ミューズが落ち着いたのを見て、ティタンはベルを鳴らす。
少ししてマオがやって来た。
「ミューズ嬢の部屋は準備できたか?いつまでも医務室では落ち着かないだろうし、そちらに移りたいのだが」
「大丈夫だと聞いてるです」
マオがコクリと頷いた。
「ミューズ嬢、歩けるかい?」
ミューズは身体に力を入れようとしたが、入らない。
「ティタン様、数日は動くのは無理だ。
毒の影響もあるし、数日動けず寝返りも出来ない状態にいたのだ、体への影響は大きい。
栄養も取らないといけないし、リハビリも行なわなくては。暫くは誰か付き添いの者をつけた方がいい」
「そうか」
シュナイの言葉に、ティタンは躊躇いもなくミューズを横抱きにする。
「ティタン様!」
突然の事に驚いて、大声が出てしまった。
「失礼、部屋まで運ばせてもらう」
止める間もなくティタンは歩き出した。
廊下では道行く人達が、驚きの表情でこちらを見ている。
恥ずかしさでミューズは顔を上げられない。
マオに案内された部屋はとても広く綺麗だった。
天蓋付きのベッドにそっと降ろされ、ミューズはようやっと抗議する。
「ティタン様、急にあのようにされては困ります!恥ずかしかったですわ!」
「す、すまない…」
ティタンはそのように怒られるとは思ってなかったようで、ションボリとしてしまった。
「皆にあのような姿を見られるなんて…有りえません!私が歩けないからって、あんな……」
カァーっと頬が赤くなる。
「殿方に触れられるなんて、初めてなのに……」
思い出すだけで、もう駄目だ。
好意とか嫌悪とかに関わらず、ただただ羞恥で死にそうだ。
「まぁまぁミューズ様。ティタン様も悪気があったわけではないのです。ティタン様はミューズ様の事を…「マオっ!」
フォローを入れようとしたマオの言葉をティタンは遮る。
こちらも顔が赤い。
「そこから先は、まだ駄目だ」
「早いうちがいいと思うのですが」
「タイミングは俺が決める!」
深呼吸したティタンは未だに顔を隠すミューズに話しかける。
「移動が必要な時は呼んでくれ。こちらのマオ、もしくは侍女のチェルシーを君の専属としてつけるから、要望があればこの二人に言うように。まずは食事と休養を取るといい」
コンコンとノックの音がし、侍女が入ってくる。
先程名前が上がったチェルシーだそうだ。
「俺は一旦席を外す、だがいつでも呼んでもらって構わないからな。マオ、チェルシー、あとは頼んだぞ」
あっという間に部屋の外へと出てしまった。
ミューズは不愉快にさせてしまったのかと少し申し訳なく思う。
荒っぽい行動ではあったが、ミューズの為にしたことだ。
「ミューズ様、お気になさらずに。まずは少しお食事を召し上がりましょう」
重湯とスープのようだ。
「暫く何も召し上がってないと聞きました。胃の負担が少ないこちらから始めましょう、様子を見て少しずつ増やしましょうね」
チェルシーはニッコリとする。
「ありがとう…」
ゆっくりと咀嚼し、飲み込んでいく。
喉に少し痛みが走るが、飲み込めない程ではない。
「何か体に違和感があれば、僕に言ってほしいのです。すぐにシュナイ医師に伝えるです」
マオは少し変わった話し方をするようだ。
「少し喉が痛むの…アルレンを用いた薬と、先程の蜂蜜が欲しいわ」
「アルレン…よく飲む薬ですか?」
ミューズは首を横に振る。
「風邪ではなく傷がついてるのだと思うの。だから傷の修復と殺菌作用のある蜂蜜でいいかなぁって。サミュエルさんが掛けてくれた回復魔法のおかげでだいぶ良いんだけど…」
自分で魔法を掛けるにはまだ体力が足りない。
今はゆっくり休むしかなさそうだ。
「ミューズ様、さすがお詳しいのです。病院や救護院でお手伝いをしていたとは聞いてるのですが」
「何故それを?」
この人達はどこまで自分を知っているのだろうか。
そう言えば、なぜあの時あの場にいたのか。
どこかへ行く途中だったのか。
疑問は色々湧いてきたが、今は食事に集中することにした。
水で口内をさっぱりとさせた後、甘みのあるはちみつ湯で、ゆっくりと口直しをする。
「ありがとうございます…私はミューズ=スフォリアと申します。この度は助けて頂きありがとうございました」
深々と頭を下げる。
「俺の名はティタン=ウィズフォード。よかった、君が助かって」
ようやっと、彼の姿が見られた。
短めな薄紫色の髪を後ろに撫で付け、瞳は黄緑色をしている。
身長も高く、体格もがっしりとしている。
ミューズをずっと抱えていた腕もとても太く、逞しい。
今更ながら思い出して恥ずかしくなる。
男性に触れられていたなんて、信じられない事だ。
「こちらはマオ。俺の従者だ」
「よろしくお願いします」
黒髪、黒目の少女だ。
長い髪は後ろで纏めている。
ズボンを履いており、パッと見は少年にしか見えない。
体格は小柄で、背丈はミューズくらいだ。
「皆さん本当にありがとうございます、何とお礼を言ったらいいのか…」
シュナイとサミュエルにもそれぞれお礼を伝えた。
本当に助かるなんて、夢のようだ。
今更ながら、あの痛みと恐怖で身体が震え、涙が出てくる。
「大丈夫か?どこか痛むか?」
ティタンが目線を合わせ、屈んでくれた。
優しい人だ。
「いえ、ただ、怖くて……本当に、死んじゃうかと……思って……」
一度出た嗚咽はなかなか止められない。
言葉が言葉にならないのだ。
「そうだよな、怖かったよな……よく一人で頑張ったものだ」
大きな手がミューズの背を優しく擦る。
ミューズは暫く涙を流していた。
ようやく落ち着くと、今度は今の自分の行動に恥ずかしさがこみ上げる。
人前で子どものように泣くなど、王族としてあり得ない。
どう話を切り出していいかわからなくなった。
「落ち着いたかな…」
ティタンの声にこくりと頷く。
ずっと彼は付き添ってくれていた。
気づけば部屋にはミューズとティタンとシュナイがいるだけだった。
サミュエルとマオはそれぞれの仕事に戻ったようだ。
ミューズが落ち着いたのを見て、ティタンはベルを鳴らす。
少ししてマオがやって来た。
「ミューズ嬢の部屋は準備できたか?いつまでも医務室では落ち着かないだろうし、そちらに移りたいのだが」
「大丈夫だと聞いてるです」
マオがコクリと頷いた。
「ミューズ嬢、歩けるかい?」
ミューズは身体に力を入れようとしたが、入らない。
「ティタン様、数日は動くのは無理だ。
毒の影響もあるし、数日動けず寝返りも出来ない状態にいたのだ、体への影響は大きい。
栄養も取らないといけないし、リハビリも行なわなくては。暫くは誰か付き添いの者をつけた方がいい」
「そうか」
シュナイの言葉に、ティタンは躊躇いもなくミューズを横抱きにする。
「ティタン様!」
突然の事に驚いて、大声が出てしまった。
「失礼、部屋まで運ばせてもらう」
止める間もなくティタンは歩き出した。
廊下では道行く人達が、驚きの表情でこちらを見ている。
恥ずかしさでミューズは顔を上げられない。
マオに案内された部屋はとても広く綺麗だった。
天蓋付きのベッドにそっと降ろされ、ミューズはようやっと抗議する。
「ティタン様、急にあのようにされては困ります!恥ずかしかったですわ!」
「す、すまない…」
ティタンはそのように怒られるとは思ってなかったようで、ションボリとしてしまった。
「皆にあのような姿を見られるなんて…有りえません!私が歩けないからって、あんな……」
カァーっと頬が赤くなる。
「殿方に触れられるなんて、初めてなのに……」
思い出すだけで、もう駄目だ。
好意とか嫌悪とかに関わらず、ただただ羞恥で死にそうだ。
「まぁまぁミューズ様。ティタン様も悪気があったわけではないのです。ティタン様はミューズ様の事を…「マオっ!」
フォローを入れようとしたマオの言葉をティタンは遮る。
こちらも顔が赤い。
「そこから先は、まだ駄目だ」
「早いうちがいいと思うのですが」
「タイミングは俺が決める!」
深呼吸したティタンは未だに顔を隠すミューズに話しかける。
「移動が必要な時は呼んでくれ。こちらのマオ、もしくは侍女のチェルシーを君の専属としてつけるから、要望があればこの二人に言うように。まずは食事と休養を取るといい」
コンコンとノックの音がし、侍女が入ってくる。
先程名前が上がったチェルシーだそうだ。
「俺は一旦席を外す、だがいつでも呼んでもらって構わないからな。マオ、チェルシー、あとは頼んだぞ」
あっという間に部屋の外へと出てしまった。
ミューズは不愉快にさせてしまったのかと少し申し訳なく思う。
荒っぽい行動ではあったが、ミューズの為にしたことだ。
「ミューズ様、お気になさらずに。まずは少しお食事を召し上がりましょう」
重湯とスープのようだ。
「暫く何も召し上がってないと聞きました。胃の負担が少ないこちらから始めましょう、様子を見て少しずつ増やしましょうね」
チェルシーはニッコリとする。
「ありがとう…」
ゆっくりと咀嚼し、飲み込んでいく。
喉に少し痛みが走るが、飲み込めない程ではない。
「何か体に違和感があれば、僕に言ってほしいのです。すぐにシュナイ医師に伝えるです」
マオは少し変わった話し方をするようだ。
「少し喉が痛むの…アルレンを用いた薬と、先程の蜂蜜が欲しいわ」
「アルレン…よく飲む薬ですか?」
ミューズは首を横に振る。
「風邪ではなく傷がついてるのだと思うの。だから傷の修復と殺菌作用のある蜂蜜でいいかなぁって。サミュエルさんが掛けてくれた回復魔法のおかげでだいぶ良いんだけど…」
自分で魔法を掛けるにはまだ体力が足りない。
今はゆっくり休むしかなさそうだ。
「ミューズ様、さすがお詳しいのです。病院や救護院でお手伝いをしていたとは聞いてるのですが」
「何故それを?」
この人達はどこまで自分を知っているのだろうか。
そう言えば、なぜあの時あの場にいたのか。
どこかへ行く途中だったのか。
疑問は色々湧いてきたが、今は食事に集中することにした。
0
あなたにおすすめの小説
紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢
秋野 林檎
恋愛
「わ……私と結婚してください!」と叫んだのは、男爵令嬢ミーナ
プロポーズされたのは第一騎士団の団長、アークフリード・フェリックス・ブランドン公爵
アークフリードには、13年前に守りたいと思っていた紫の髪に紫の瞳をもつエリザベスを守ることができず死なせてしまったという辛い初恋の思い出があった。
そんなアークフリードの前に現れたのは、赤い髪に緑の瞳をもつミーナ
運命はふたりに不思議なめぐりあいの舞台を用意した。
⁂がついている章は性的な場面がありますので、ご注意ください。
「なろう」でも公開しておりますが、そちらではまだ改稿が進んでおりませんので、よろしければこちらでご覧ください。
【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~
朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。
婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」
静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。
夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。
「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」
彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。
あなたにわたくしは相応しくないようです
らがまふぃん
恋愛
物語の中だけの話だと思っていました。
現実に起こることでしたのね。
※本編六話+幕間一話と後日談一話の全八話、ゆるゆる話。何も考えずにお読みください。
HOTランキング入りをしまして、たくさんの方の目に触れる機会を得られました。たくさんのお気に入り登録など、本当にありがとうございました。
完結表示をしようとして、タグが入っていなかったことに気付きました。何となく今更な感じがありますが、タグ入れました。
恋は雪解けのように
ミィタソ
恋愛
王国アルテリア。
公爵家の令嬢エステルは幼馴染の侯爵嫡子クロードと婚約していた。
しかし社交界デビューを目前に、突然の婚約破棄を通告される。
「貴女の瞳には野心がない。装飾品でしかない女性に、我が家の未来は託せぬ」
冷徹に宣告するクロードの手元に、安物とは思えぬ新たな指輪が光っていた。
屈辱に震えるエステルは、古びた温室で偶然出会った謎の青年に差し出された赤い薔薇を握りしめる。
「この花のように、貴女は凍てついた大地でも咲ける」
そう囁いた青年こそ、政敵である辺境伯爵家の嗣子レオンだった。
雪解けと共に芽吹く二人の恋は、王家の陰謀に巻き込まれていく――。
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
侍女は婚約が内定している俺様属性の男と縁を切りたい。
彩柚月
恋愛
リリアは侯爵令嬢。オスカーとは、婚約予定。あくまでも予定で、まだ結んでいません。オスカーは何故かリリアにだけ、威圧的な態度を取るらしい。嫌で仕方がないので、オスカーの兄とプレ婚約期のやり直し。
今が幸せなので、あなたのことは助けてあげられません。
※ご都合主義満載
※細かい部分はサラッと流してください。
ジェリー・ベケットは愛を信じられない
砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。
母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。
それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。
しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。
だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。
学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。
そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。
※世界観はゆるゆる
※ざまぁはちょっぴり
※他サイトにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる