差し出された毒杯

しろねこ。

文字の大きさ
15 / 36

新たな婚約者

しおりを挟む
「あなたは…ジュリア王妃ですね」

「アドガルムへの招待状はティタン殿下へと送らせてもらったはずですが。まさかあなたがいらっしゃるとは、思いませんでしたわ」
扇で口元を隠しているが、目元だけで微笑をたたえているとわかる。

「僕が代理で出席させて頂きました。生憎とこのような宴は久しぶりだった為、挨拶が遅くなってしまいすみません」
リオンとジュリアは二人共笑顔だ。

カミュは気配を消し、黙って見ている。

万が一自分の事がバレて、リオンとの関係を疑われては、リオンの命が危ない。

そのため距離を取り、そっと見守るにとどめていた。

「素晴らしい魔法でした。ここには結界もあり、生半可な魔法は使えません。それを超えるとは相当な魔力をお持ちですね」

「ありがとうございます。ご息女より許可を得て使用させて頂きました。微力ながら体力回復、そして滋養強壮の効果があります」
ジュリアは首肯する。

確かにあの鱗粉を浴びただけで、体が軽い。

「あのような魔法、どこで取得したのです?」
王妃は表情を読まれないよう、ずっと扇で口元を隠している。

「異国にて。僕は旅行が好きなのですよ、異国の文化に触れるのは楽しいものです。そこで覚えた一つをカレン様の為に披露したく、使用させて頂きました」
リオンは両手を広げ、大仰にアピールした。

「えぇ、お母様。彼は凄い魔法の持ち主なのです。私のためにと使ってくれたのよ」
興奮気味にカレンは話す。

見つめ合う二人は両思いのように見えた。






ジュリアは迷った。

リオンの腹の内が見えないのだ。

そもそも外遊に出ていた第三王子、情報そのものが少ない。

ジュリアは後ろ盾欲しさに、アドガルムへと婚姻の打診をしていた。

王族であればいい。

魔力の高さ、そしてカレンが気に入っているのであれば、このリオンで構わないと思った。

ティタンはわかりやすい男だが、もともとミューズへと婚姻の打診をしていたのを考えると、素直に婚約者を替えさせてくれるとは思えない。

両思いであるこの二人を結ばせた方が早いだろう。

「娘が許したというのであれば、魔法の使用は不問にします。しかしリオン様。娘を気に入って頂けたのでしょうか? あのような大掛かりな魔法の使用は、魔力も体力もだいぶ消費したでしょう」

「カレン様に喜んで頂けたのならば、それだけで良いのですよ」
目的は他にもあるのだから。

リオンは油断しない。

まだ敵地だ。

王妃がどう出るか、それで今後の計画も変わる。

「現在我がリンドールからティタン様とカレンの婚姻を打診していました。ですが、好き合う者同士の方が良いのかと。リオン様がもしカレンの良人となってくれるのならば、改めて書簡を用意しようと思います」

「そうですね、僕としては異論はありません。しかし、国と国の話ですから、アドガルム国王陛下にも話を聞かねば、僕からは何も出来ません」
周囲から少し残念そうな声が聞こえる。

リオンのような魔力が強く、そして高貴な血筋の人間は、引く手数多の貴重な人材だ。

「ではすぐに書簡を用意します。その間部屋を用意しますの、そちらでお待ち下さい」
王妃が踵を返し、その場を離れる。






二人の仲が母に認められたと、カレンは嬉しそうだ。

「リオン様、私嬉しいですわ」

「ありがとうございます、頑張った甲斐がありました」
嬉しそうなカレンと微笑むリオン。

傍から見ても、いい雰囲気だ。

魔法の使用で疲れたと、リオンはその後のダンスを断り、用意された部屋へとカミュと共に移る。






ため息をついて遠慮なくベッドに横になった。

リオンもカミュも一言も話さない。

どこで何を聞かれてるかわからないし、見られてる可能性も高い。

なので何も言わないし、何もしない。

リオンだけは目を閉じ、忙しくしていた。

先程の蝶が撒いた鱗粉を通し、目ぼしい相手と次々とリンクしていく。

鱗粉とは名ばかりで、正体はリオンの魔力の結晶だ。

あの場にいた全ての者をマーキングした。

必要な時には情報を引き出さなければならない。

今は取り敢えず王妃の動向、そして王女の様子だ。


集中すると現在何をしているか見えてくる。

(まずは僕を探るよね…)
王妃が命じたのはリオンの情報を得ること。

婿入りしても、裏切ることがないよう弱みを掴むつもりだ。

自然な事だ。別にいい。

「ふふっ…」
リオンの口から笑みが溢れる。

「リオン様…?」
主の様子にカミュは眉を寄せた。

「大丈夫。ただ…あぁ、後で話す」
リオンが居なくなれば、カレンは堂々と他の者と話しているのだ。

先程のリオンとの事が嘘のように。

数々の男性へと靡いている。

高位貴族なら誰でもいいらしいな。

予想通り過ぎてリオンは声を殺して笑ってしまった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢

秋野 林檎 
恋愛
「わ……私と結婚してください!」と叫んだのは、男爵令嬢ミーナ プロポーズされたのは第一騎士団の団長、アークフリード・フェリックス・ブランドン公爵 アークフリードには、13年前に守りたいと思っていた紫の髪に紫の瞳をもつエリザベスを守ることができず死なせてしまったという辛い初恋の思い出があった。 そんなアークフリードの前に現れたのは、赤い髪に緑の瞳をもつミーナ 運命はふたりに不思議なめぐりあいの舞台を用意した。 ⁂がついている章は性的な場面がありますので、ご注意ください。 「なろう」でも公開しておりますが、そちらではまだ改稿が進んでおりませんので、よろしければこちらでご覧ください。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~

朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。 婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」 静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。 夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。 「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」 彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。

あなたにわたくしは相応しくないようです

らがまふぃん
恋愛
物語の中だけの話だと思っていました。 現実に起こることでしたのね。 ※本編六話+幕間一話と後日談一話の全八話、ゆるゆる話。何も考えずにお読みください。 HOTランキング入りをしまして、たくさんの方の目に触れる機会を得られました。たくさんのお気に入り登録など、本当にありがとうございました。 完結表示をしようとして、タグが入っていなかったことに気付きました。何となく今更な感じがありますが、タグ入れました。

恋は雪解けのように

ミィタソ
恋愛
王国アルテリア。 公爵家の令嬢エステルは幼馴染の侯爵嫡子クロードと婚約していた。 しかし社交界デビューを目前に、突然の婚約破棄を通告される。 「貴女の瞳には野心がない。装飾品でしかない女性に、我が家の未来は託せぬ」 冷徹に宣告するクロードの手元に、安物とは思えぬ新たな指輪が光っていた。 屈辱に震えるエステルは、古びた温室で偶然出会った謎の青年に差し出された赤い薔薇を握りしめる。 「この花のように、貴女は凍てついた大地でも咲ける」 そう囁いた青年こそ、政敵である辺境伯爵家の嗣子レオンだった。 雪解けと共に芽吹く二人の恋は、王家の陰謀に巻き込まれていく――。

婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします

たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。 荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。 「この猫に構うな。人間嫌いだから」 冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。 猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。

侍女は婚約が内定している俺様属性の男と縁を切りたい。

彩柚月
恋愛
 リリアは侯爵令嬢。オスカーとは、婚約予定。あくまでも予定で、まだ結んでいません。オスカーは何故かリリアにだけ、威圧的な態度を取るらしい。嫌で仕方がないので、オスカーの兄とプレ婚約期のやり直し。 今が幸せなので、あなたのことは助けてあげられません。   ※ご都合主義満載 ※細かい部分はサラッと流してください。

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載

処理中です...