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猛攻
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おかしい。
こんなひょろっとしたリオンがここまで戦えるなんて。
「僕に尽くしてくれている従者は、王家の諜報部隊でした。彼には常時身のこなしについて教えてもらってましたよ」
諜報部隊に必要だったのは命を奪うのではなく、命を奪われないこと。
外遊中リオンとカミュはずっと一緒だったので、学ぶ機会など沢山あった。
他の者も騎士達に負けぬ腕でリンドールの兵を退けている。
時折リオンが蝶を飛ばし、防御壁を張りそびれた兵を眠らせていく。
「遅くなりました」
リオン達が時間稼ぎをしている間に、カミュとサミュエルも合流する。
「お疲れ、大丈夫だった?」
「問題ありません」
カミュは短く言うと、リオンを守るように立ち塞がる。
手に持つは黒い細身の剣。
リオンには常にカミュが付きそい、盾となり剣となり動く。
カミュは不思議な黒い魔法も使い、それは自在に動き、敵が放つ魔法はその黒い影に吸い込まれるようにして消える。
時には影の中へ入り、背後から現れ、首を掻き切っていった。
お互い拮抗状態である。
リオン側は魔法で持久力をあげていて攻撃を受けることは少ないが、決定打がない。
王妃側は人数はいるものの、持久力が乏しく時折リオンが飛ばす蝶で、じわじわと人数が削がれている。
王妃が繰り出す魔法はリオンとサミュエルに防がれていた。
そんな空気を破ったのは傷ついたリンドールの兵士だ。
「王城内にアドガルム兵が侵入、王妃様すぐに逃げてください!」
そこまで言って、伝令の男が倒れる。
瀕死の重傷のようだ。
その男を一瞥し、大柄な男性が現れる。
「リオン、良く耐えた」
身の丈ほどの大剣を担いだティタンが現れる。
鎧を纏い、顔にも剣にも血がついている。
その後ろにはミューズが立っていた。
王妃の目が極限まで見開かれる。
「何故あなたが生きてるの……!」
死んだはずだ。
あの量の毒を飲み、生きてるわけがない。
生きてたとしてもこのように歩けるわけがない。
「王妃様……大人しく投降してください。このままでは人が死ぬだけです。民の、兵の命を思うなら、もうお止めください」
「何を馬鹿な事を!」
ジュリアは荒ぶる炎の塊をミューズの方へ向かい放つ。
ルドとライカが剣を構え前に飛び出す。
王妃が出した業火の炎を剣で絡め取り、鎮めた。
「さすがの魔力です、二人がかりでやっとでした」
二人の剣は赤く、色が変わっていた。
「俺達と同じ属性魔法のため防げましたが。ティタン様、ミューズ様、お怪我はありませんか?」
ルドとライカは何事もなかったかのように、剣を構え直した。
「なんてこと…!」
魔術師ですらない騎士に防がれるとは。
ジュリアの命令に兵士が毒薬を持ってきた。
それを手にしたジュリアは直ぐ様毒薬の入った瓶を勢いよく床に叩きつける。
衝撃を受け、瓶が割れた。
「皆! 息を止めて、姿勢を低くして!」
ミューズの叫び声に鼻と口を覆い、言われた通りに屈む。
外気に触れた薬は瞬時に気化し、部屋中を覆い尽くした。
リオンが防御壁を張る。
「これは毒薬の霧です! 魔法じゃ防げません!」
「何だと?」
魔力ではないため、防御壁を通過してしまうらしい。
空気と同じで通過してしまう。
ミューズの言葉を聞いたマオとサミュエルが、風魔法を使用し空気の流れを変えたおかげで助かった。
王妃側は近くにいた魔術師に命じていたのか無事である。
だが、遠くにいたリンドールの兵は逃げるのに間に合わなかった。
喉を押さえ、苦しげ呻いて倒れる。
王妃はミューズに見破られ、苦々しげな表情で睨んでいる。
「余計な事を!」
ミューズが言わねば、防御壁のみで対策を終わらせていたかもしれない。
そうであれば、アドガルムの者は何もわからず倒れていたはずだ。
「自分の味方まで巻き込むとは!」
ティタンが怒りの目で睨みつける。
大剣を構え、歩みを進めた。
「ティタン様、お待ちを」
ミューズが慌ててその腕に縋り、改めて防御魔法をかける。
「無茶はしないでくださいね」
「あぁ」
温かなミューズに改めてリンドールに怒りが沸く。
こんな優しい女性を迫害した奴らを許せるわけがない。
「俺はアドガルム国王第二王子、ティタン=ウィズフォードだ。王妃ジュリア、お前が犯した罪を裁きに来た。リンドールを己が物とし、あまつさえミューズ王女を冤罪にて毒殺しようとした。許し難き所業だ!」
臆すことなくティタンは中央に立つ。
数多の兵に囲まれようが、剣を突きつけられようが、ティタンは恐れもしなかった。
実戦経験のない者がいくら集まろうと、自分の敵ではないと。
そして兵の中には動揺している者もいる。
目の前で王妃が敵味方関係なく毒を使ったのだから、無理もない。
「今投降し、俺に歯向かわなければ命は助ける。そうでないものは、掛かってこい」
ティタンは、腰を落とし大剣を構えた。
「剣を捨てられなくば、切り捨てられないよう後ろに下がれ! 巻き込まれるぞ!」
王妃の前で反逆出来ない者への最期の慈悲だ。
ティタンは身体強化の術を掛けると一閃した。
ティタンの腕に掛かれば、鎧など無きに等しい。
剣も鎧も関係なく、力で捻じ伏せ、体を潰すように引き千切っていく。
ティタンの大剣が人体に食い込むと、体が紙で出来ているんじゃないかと思う程呆気なくバラバラになった。
圧倒的な力の差を見せつけて、兵士達を屠っていく。
兵の剣はティタンに届かない。
防御障壁もあるが、そもそも鎧で弾かれる。
急所に当たらせるような真似などティタンがさせない。
「この、化け物が!」
放たれた魔法を片手で弾き飛ばす。
天井に穴が開いた。
ティタン自体は無事だ。
「万が一ミューズに当たったら、どうするつもりか!」
怒声とともに、更に斬りかかっていく。
魔法も剣も効かないティタンは、確かに化け物のようだ。
重たい大剣を軽々しく担ぎ、振り回している。
こんなひょろっとしたリオンがここまで戦えるなんて。
「僕に尽くしてくれている従者は、王家の諜報部隊でした。彼には常時身のこなしについて教えてもらってましたよ」
諜報部隊に必要だったのは命を奪うのではなく、命を奪われないこと。
外遊中リオンとカミュはずっと一緒だったので、学ぶ機会など沢山あった。
他の者も騎士達に負けぬ腕でリンドールの兵を退けている。
時折リオンが蝶を飛ばし、防御壁を張りそびれた兵を眠らせていく。
「遅くなりました」
リオン達が時間稼ぎをしている間に、カミュとサミュエルも合流する。
「お疲れ、大丈夫だった?」
「問題ありません」
カミュは短く言うと、リオンを守るように立ち塞がる。
手に持つは黒い細身の剣。
リオンには常にカミュが付きそい、盾となり剣となり動く。
カミュは不思議な黒い魔法も使い、それは自在に動き、敵が放つ魔法はその黒い影に吸い込まれるようにして消える。
時には影の中へ入り、背後から現れ、首を掻き切っていった。
お互い拮抗状態である。
リオン側は魔法で持久力をあげていて攻撃を受けることは少ないが、決定打がない。
王妃側は人数はいるものの、持久力が乏しく時折リオンが飛ばす蝶で、じわじわと人数が削がれている。
王妃が繰り出す魔法はリオンとサミュエルに防がれていた。
そんな空気を破ったのは傷ついたリンドールの兵士だ。
「王城内にアドガルム兵が侵入、王妃様すぐに逃げてください!」
そこまで言って、伝令の男が倒れる。
瀕死の重傷のようだ。
その男を一瞥し、大柄な男性が現れる。
「リオン、良く耐えた」
身の丈ほどの大剣を担いだティタンが現れる。
鎧を纏い、顔にも剣にも血がついている。
その後ろにはミューズが立っていた。
王妃の目が極限まで見開かれる。
「何故あなたが生きてるの……!」
死んだはずだ。
あの量の毒を飲み、生きてるわけがない。
生きてたとしてもこのように歩けるわけがない。
「王妃様……大人しく投降してください。このままでは人が死ぬだけです。民の、兵の命を思うなら、もうお止めください」
「何を馬鹿な事を!」
ジュリアは荒ぶる炎の塊をミューズの方へ向かい放つ。
ルドとライカが剣を構え前に飛び出す。
王妃が出した業火の炎を剣で絡め取り、鎮めた。
「さすがの魔力です、二人がかりでやっとでした」
二人の剣は赤く、色が変わっていた。
「俺達と同じ属性魔法のため防げましたが。ティタン様、ミューズ様、お怪我はありませんか?」
ルドとライカは何事もなかったかのように、剣を構え直した。
「なんてこと…!」
魔術師ですらない騎士に防がれるとは。
ジュリアの命令に兵士が毒薬を持ってきた。
それを手にしたジュリアは直ぐ様毒薬の入った瓶を勢いよく床に叩きつける。
衝撃を受け、瓶が割れた。
「皆! 息を止めて、姿勢を低くして!」
ミューズの叫び声に鼻と口を覆い、言われた通りに屈む。
外気に触れた薬は瞬時に気化し、部屋中を覆い尽くした。
リオンが防御壁を張る。
「これは毒薬の霧です! 魔法じゃ防げません!」
「何だと?」
魔力ではないため、防御壁を通過してしまうらしい。
空気と同じで通過してしまう。
ミューズの言葉を聞いたマオとサミュエルが、風魔法を使用し空気の流れを変えたおかげで助かった。
王妃側は近くにいた魔術師に命じていたのか無事である。
だが、遠くにいたリンドールの兵は逃げるのに間に合わなかった。
喉を押さえ、苦しげ呻いて倒れる。
王妃はミューズに見破られ、苦々しげな表情で睨んでいる。
「余計な事を!」
ミューズが言わねば、防御壁のみで対策を終わらせていたかもしれない。
そうであれば、アドガルムの者は何もわからず倒れていたはずだ。
「自分の味方まで巻き込むとは!」
ティタンが怒りの目で睨みつける。
大剣を構え、歩みを進めた。
「ティタン様、お待ちを」
ミューズが慌ててその腕に縋り、改めて防御魔法をかける。
「無茶はしないでくださいね」
「あぁ」
温かなミューズに改めてリンドールに怒りが沸く。
こんな優しい女性を迫害した奴らを許せるわけがない。
「俺はアドガルム国王第二王子、ティタン=ウィズフォードだ。王妃ジュリア、お前が犯した罪を裁きに来た。リンドールを己が物とし、あまつさえミューズ王女を冤罪にて毒殺しようとした。許し難き所業だ!」
臆すことなくティタンは中央に立つ。
数多の兵に囲まれようが、剣を突きつけられようが、ティタンは恐れもしなかった。
実戦経験のない者がいくら集まろうと、自分の敵ではないと。
そして兵の中には動揺している者もいる。
目の前で王妃が敵味方関係なく毒を使ったのだから、無理もない。
「今投降し、俺に歯向かわなければ命は助ける。そうでないものは、掛かってこい」
ティタンは、腰を落とし大剣を構えた。
「剣を捨てられなくば、切り捨てられないよう後ろに下がれ! 巻き込まれるぞ!」
王妃の前で反逆出来ない者への最期の慈悲だ。
ティタンは身体強化の術を掛けると一閃した。
ティタンの腕に掛かれば、鎧など無きに等しい。
剣も鎧も関係なく、力で捻じ伏せ、体を潰すように引き千切っていく。
ティタンの大剣が人体に食い込むと、体が紙で出来ているんじゃないかと思う程呆気なくバラバラになった。
圧倒的な力の差を見せつけて、兵士達を屠っていく。
兵の剣はティタンに届かない。
防御障壁もあるが、そもそも鎧で弾かれる。
急所に当たらせるような真似などティタンがさせない。
「この、化け物が!」
放たれた魔法を片手で弾き飛ばす。
天井に穴が開いた。
ティタン自体は無事だ。
「万が一ミューズに当たったら、どうするつもりか!」
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魔法も剣も効かないティタンは、確かに化け物のようだ。
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