冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。

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会議

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会議への出席前にシグルドと顔を合わせた。

久しぶりにシグルドに会えてレナンとミューズは喜ぶ。


「元気だったか? 今日は一段とキレイな気がするが、磨いてもらったのか?」
あまり派手すぎない装いなのだが、何かが違う。

「表情は輝き、仕草もいい。何かあったのか?」
レナンとミューズは顔を見合わせる。

「恋する女性はきれいに輝くものですよ」
エリックがそう言ってきた。

目をパチクリとさせ、シグルドは驚く。

エリックがそんな言葉を口にするとは思わず、驚いたのもあるがその内容もだ。

レナンは今は恋をしているというのか。

「恋?……まぁいい。レナンもミューズも前からキレイだものな、元気なら何よりだ」
ハインツとの婚約破棄の話は聞いた。


ショックだろうに健気なレナンの事だ。

きっと気丈に振る舞っているのだろう。

「お祖父様、髭はやめてください」
二人は抱き締められるがやはりシグルドの髭がチクチクとして、痛い。





「入ります」
エリックを先頭に皆が会議室へと入る。

宰相のヒューイ、外務大臣のフォルス、そして国王のアルフレッドがいる。

そして護衛の騎士たちもおり、入室したエリック達に注目が集まる。


特にレナンとミューズはジロジロと見られた。

(この令嬢方が…)
ヒューイがつい値踏みするように見ているとエリックが間に入る。

「ヒューイ宰相、あまり見るのは失礼かと」
ヒューイは驚く。

エリックがこのような事を言い、令嬢を庇うなんて、今までなかった。

エリックの変わり様に驚く。

先程話をしていた国王と宰相、外務大臣の話を聞いたシグルドが、重い口を開いた。






「まずは孫たちをあちらに返さずにすむよう、手配して貰えた事に感謝をする。今リンドールに返されたらどんな目に合うか想像に難くない。この恩は必ず報いるつもりだ。しかし…妻にしたい、とはどういうことかな? アルフレッド殿。説明を求む」
場合によっては斬りかかる、そのような剣幕だ。

「人質としてここにいるのは仕方ないと思っていた、助けてもらってる身分だからな。レナンなのかミューズなのか、どちらにしろそのような縁談はお断りを…「お祖父様、わたくしも望んだことです」
まさかのレナンからの言葉だった。

「しかし、お前はつい先日までハインツ殿と婚約をしていたではないか。まだショックから立ち直れていないだろうし、焦って決めることではないぞ」

「本日破棄の手紙を頂き、心が決まりましたの。彼からの手紙には、残念ながらわたくしを労ったり、心配する言葉一つなかったのです……慰謝料を払ってほしいという事や自分に危害が来ないのかなどの心配ばかり。なればずっと支えて、見守ってくれたエリック様と婚約を結ばせて頂きたいのです。お父様のお母様の同意があれば、正式に」
話の展開の早さにシグルドは目眩がする。


ミューズに縋るような目を向ける。

「レナンは今混乱しているだけだよな? これは、夢だろ?」
ミューズは頭を下げた。

「夢ではないのです、お祖父様。そしてごめんなさい。私もティタン様をお慕いしています」
顔を赤らめつつも二人ははっきりとそう話した。

シグルドはまさかの事に言葉を失っている。

誑かしたアドガルムを切り捨てるかと剣に手を掛けた時に、声がした。

「二人の婚約、よろしいんじゃないかしら?私は賛成しますわ」
突如現れたのは二人の母、リリュシーヌだ。






「お母様!」
レナンとミューズは駆け寄り抱きついた。

周りの目も気にせず泣き出してしまう。

「ごめんなさいね、なかなか来れなくて。本当はもっと早くに来るつもりだったのに」
よしよしと二人を撫で、目線は国王に向ける。

「私の可愛い娘たちを助けて頂きありがとうございます。そちらの王子様たちも」
ちらりと目線を向けた。

「随分と世話になったようですね。私は二人の意志を尊重しますわ、ですが泣かせるような事はしないでください。特にエリック様、レナンの傷心に付け込んだとは思いたくありませんが……もう悲しい思いはさせたくないのです」
母として当然だろう。

エリックは大きく頷いた。

「命に変えても約束を守ります、レナン嬢を悲しませることなど致しません」
それを聞き、リリュシーヌの視線が、ティタンへと移る。

「俺もミューズが好きです、だから婚約者になって欲しいと願います。今はまだ力量不足ではありますが、きっと守れる騎士となります」
頼もしい言葉ではあった。

知り合いのいないこの国で、レナン達を懸命に励ましてくれてたのが容易にわかる様子だ。

誠実さがある。



「ヒューイ殿、父や私達の引き渡しの話が出たのですよね。それはどのくらい返事を伸ばせそうですか」

「……五日、いや一週間程は。こちらとしてもディエス殿の罪について、納得のいく証拠の提示を求めている。他国の我々から見ても、リンドールのやり方はあまりにも酷いと伝えています。杜撰な証拠で人を貶める国とは、今後の交易は出来ないと」

「そうですか、長くて一週間……その間はディエスの無事は保証されそうですが、それ以降は怪しくなりますね。あと少しで犯人が追えそうなので、ぜひアドガルムの皆さんに今一度手を借りたいのです」
リリュシーヌは頭を下げる。

「リンドール国内にて人身売買を手掛ける組織を見つけました。しかし、一部の者がどこに送られているか分からず、リンドールの協力者がわかりません」
早く解決したいのになかなか上手く行かず、悔しい思いだ。

「今回夫であるディエスを陥れようとしたのは大臣ですが、冤罪の証拠を持ち出した他の協力者がわからず、困っています。私が出頭すれば相手方も油断されるし、時間も稼げるかもと考えていましたが……」

「さすがにリリュシーヌ様をリンドールへと送ることは出来ない」
アルフレッドは反対だ。

「どれだけ調査に時間がかかるかもわからないし、アドガルムと繋がっていると公に言われている今、新たな偽の証拠で即処刑となったらどうする? リリュシーヌ様が魔法を使えるのはわかるが、危険すぎる」

「それは…」
リリュシーヌは口を閉ざす。

冤罪を持ち出した者たちが、他に何も用意していないとは思えない。

「お母様、あまり一人で思いつめないで下さい。わたくし達もおりますわ」
レナンはそっと母に触れる。

ミューズもリリュシーヌを支える。

「お父様の為に私達も微力ながらお力になります。一緒に考えましょう」
娘二人にそう請われてリリュシーヌは肩の力をようやっと抜いた。




    
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