冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。

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陥れた者

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期間は短い。

真犯人を見つけるためアドガルムもますます調査に力を入れたが、なかなか情報がない。

リリュシーヌの調査と王家の諜報隊の調べで、人身売買で売りに出された者達は、リンドールから他国へと移らされていたまではわかった。

その手引をしているのがラーラという娘であったが、そこからが難しかった。

調べるとラーラは北の寒い国、ナ=バークの民だそうだが、そのラーラと大臣を繋げる者、またどうやって他国ヘ送り出しているのかがどうしてもわからない。

大臣が人身売買に関与していると疑ったのは不明瞭な資産の増加、及びディエスを陥れようと偽造した報告書を提出したのが、彼だったからだ。

明確な証拠ではない為に、疑わしいが白とも黒ともまだ言えない。

「……ナ=バークといえば、ハインツ様も北国の訛が少々お有りでしたわね」
それを聞いて皆が驚く。

「そうなの?あまりわからなかったけど」
リリュシーヌも首をかしげた。

訛など気にした事はない。

「少しだけ、イントネーションが違ったのですが…勘違いならすみません!」

「レナンが言うならそうなのだろう」
エリックが助け舟を出す。

レナンが言うならば、調べる価値はありそうだ。

「このラーラがどの貴族と手引してたかが分からなかったけど……ハインツとの関係を調べてみましょう」
リリュシーヌは俄然やる気となる。

ディエスの解放に繋がるかもしれない。

接触がないかなど徹底的に張り付いて見つけてやる。

「アドガルムも勿論協力するぞ」
国王も大きく頷いた。






かなりの数の手練れをハインツの調査にあてさせた。

間違っていたら大幅なタイムロスとなるが、レナンの言うことを信じる。

その結果、彼ら二人は、会うときに髪色を変えたり、時には幻術で姿を変えてまで会っているとわかった。

二人は別な場所を数カ所経由してから会うため、なかなか根気のいる証拠集めとなった。





ラーラは一人で転移術を使えるほどの魔術師だった。

追うのが大変だったが、転移魔法を使えると分かればリリュシーヌにとっては簡単だった。

ほぼほぼ消えている魔力の痕跡を正確に辿って、ハインツとの逢引を見つけだす。

目星がつけば、記憶を映す水晶で証拠取りを始めた。





「ディエスを陥れたのが、ハインツだったなんて」
娘の元婚約者に殺意しかわかなかった。

容疑者として目星をつけてからは、ことが一気に進んだ。

それまではただの女好きな伯爵令息という認識しかなかったのだが、まさかこんなだいそれた事をするとは。

書類上では残っていなかったので、ハインツを養子にしていた子爵と伯爵を拘束し、自白剤を与えた。

アドガルムまでは流石に連れてこられなかったので、リンドールでの協力者であるリリュシーヌの弟、ロキ=ガードナーの隠れ家の一つに監禁した。

「どういった経緯であの坊っちゃんを養子にしたか、吐いてもらおうか?」
多量の自白剤を使われ、朦朧とする意識の中、二人はぼんやりとする頭で答えた。






ハインツと最初に会ったのは賭博場。

見目も良く、話も上手な彼と話をするととても癒やされ、心地いいものだった。

会えないとイライラし、彼と会うと落ち着く。

そのうちに、
「僕を養子にしてくれない?」
と言われた。

ただの平民を何故? と思ったが、何故か抗い難いものだった。

そして子爵家へ養子入りしたが、実子達も皆ハインツの虜になる。

やがて、子爵の友人であった伯爵もハインツを気に入り、金と引き換えに養子にした。

ハインツは麻薬を用いて皆を支配していた。

子爵家へも度々訪れることがあり、ハインツから多額のお金を渡される。

その代わり時には汚い仕事の後始末をさせられた。

ハインツに頼まれて娼館にて身寄りのない見目のいい女を買い、ラーラに頼んで転移術で取り引き相手に送ったりした。

時には身寄りのないメイドも。

経験の少ない方がいいという好事家のニーズに合わせて商売をしていた。

「クズだな」
尋問するロキはバッサリと言い切り、二人をそのまま監禁した。





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