利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

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2 海の国の聖人候補

299 異世界風流しそうめんの楽しみ方

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299

ひと騒動の余韻と大量の布や糸を抱えて、マホロの別荘に戻った私は、久しぶりに落ち着いて別荘ライフを楽しんでいる。

沿海州は元々気候が熱帯性で、更に夏っぽい季節になってきているため、セーヤとソーヤにはアロハと短パンとセットを作ってみた。白とグリーンの大きな花があしらわれた柄物をソーヤ、青と白の波と魚の柄物をセーヤに、短パンは白とカーキーを作った。普段の執事っぽい服装もいいが、これまた少年ぽくなって、とっても可愛い。

さて、暑い日が続いているので、今日はたくさんの薬味で食べる流し素麺に庭で挑戦することにした。

竹と思しき植物を別荘の近くで見つけたので、地主さんに取ってもいいか聞いたところ、好きなだけ持っていってもらって構わない、むしろ持って行って欲しい、とのことだったので、力持ちの妖精ふたりに担いできてもらった。

色々な野菜を細切りにして、生で食べられるものはそのまま、その他には火を通して味付けした。香味野菜や夏野菜はとてもこの料理に合う。さらにふわふわの錦糸玉子、鳥を蒸して細く裂いたものなども用意。
マホロの魚市場で見つけた海苔と異世界から取り寄せた胡麻も加え、とってもカラフルな薬味が出来上がった。

久しぶりの新作異世界料理にソーヤはテンション爆上がり中。

異世界っぽいのは竹製スライダーの上部に〝水の魔石〟を置いて水を流し、その前に〝氷の魔石〟を置いてさらに水をキンキンに冷やしているところ。〝水の魔石〟から採れる水は純度が高く本当に美味しいので、以前の世界と比較しても、遜色ないどころかむしろ美味しいはずだ。

もちろん、味の決め手の出汁つゆは自慢の自家製〝かえし〟を使った本格派。

今回は出汁用の鰹節にもこだわりたかったので異世界から鰹の荒節と鯖節も購入。昆布はバンダッタのタイチが定期的に送ってくれるので、そちらを使用。この昆布から、また最高の出汁が取れるのだ。

素麺は自作していない。今回は、大量に私の大好きなブランドの素麺を《異世界召喚の陣》で購入した。
大食い妖精のために、いくら大量に買ったって、素麺ごときでは、もう私はビビったりしないのだ。

(もちろん、パッケージはなしで買ったけどね)

取り敢えず、試運転を兼ねてソーヤのために、流し素麺をやってみる。

水と氷のふたつの魔石を起動すると、綺麗な水音を立てて水が流れていく。なんとも涼しげで、楽しい気分になってくる光景だ。

「じゃ、流すから箸ですくい取って、出汁つゆにつけて食べてみてね~」

大量の茹でたて素麺を持った私は、脚立に乗って高い位置からソーヤに声をかける。

「了解です!じゃんじゃんお願い致します!」

ものすごく嬉しそうなソーヤの声に思わす笑ってしまう。

「いくよ~」

私は一口分に小分けしたそうめんを綺麗な水に浮かべる。白いふわふわとしたものは、スルスルと流れていく。それをソーヤは上手にすくい取り、電光石火のスピードで口に運ぶ。

「おお!これは素晴らしい味でございます。そして、外で食べる意味が分かります。この野趣溢れる食の面白さ!
冷たさがまた、味を引き立てます。なんという清冽さでございましょうか!

メイロードさまの今日のお出汁が、これまた深みがありながら爽やかで、もういくらでも食べられますね、これは!
薬味で味を変えながらですから、飽きる暇もございません。

早く次をお願い致します!」

辛口批評家の高評価をもらえたようなので、そこからはじゃんじゃん流した。
でもきりがないので、途中からセーヤに流し役を交代してもらい、別に作ったレーンの方で、私や博士、セイリュウも食べ始めた。

「この細い麺、とても良いな。食欲があまり湧かない暑い時期には特にいい。
この薬味というやつ、酒のつまみにも良さそうだ」

「僕もスッキリした酒で、キュッといきたいところだね、メイロード」

博士とセイリュウは〝蕎麦屋で一杯〟が、ご希望のようなので〝吟醸原酒 かち割りまんさく〟で日本酒ロックにし、蕎麦屋風のつまみを作ってみた。熱々の出汁巻きや自作のかまぼこを使った板わさも好評。

オイル漬けの貝もいいつまみになっている。

しばらく留守をしていた間に、タイチ率いる新生バンダッタは、着々と復興を始めていた。
私の《緑の手》は本当にいい仕事をしてくれたようで、もう、一部の魚介類は出荷も可能になったそうだ。
でも、まだ量としては多くないため、そのままではなく付加価値を付けてからの販売を選択。
新たにオイル漬けの工場を作ったそうだ。

実は、これも私の入れ知恵のひとつ。
生産が過去の実績に戻らないうちは、単価を上げる方法を考えたほうがいいとアドバイスし、使えそうな色々な方法を教えてきたのだ。

その後タイチから、オイル漬けの工場を作りたいという話がきたので、今回商品化されたような貝にぴったりのハーブの使い方なども徹底指導した。きっとかなりいい出来になっているはずだ。

高級感のあるオイル漬けは、栄養価も高く富裕層に大変支持された。
しかも、コレ、とても日持ちがいいのだ。
買い置きが可能なため、富裕層は大量に買ってくれる。今までにない珍味であるため、パーティなどでも話題になり、バンダッタは干し貝の時の5倍近い収入を得ているそうだ。

類似品はおそらく近いうちに出回るだろうが、タイチたちが丹精込めたバンダッタの質の高い海産物と私の《鑑定》と料理経験が合わさった製品、そう簡単に真似できるとは思わないでもらいたいものだ。

そんな得意げな気分で浮かれていた私だったが、流しそうめんの箸休めに、その美味しい貝のオイル漬け一口食べ、とっても悲しい気分になった。

(コレ、最高のアテだわ。なのに……どうして私はまだ10歳なの!日本酒飲みたいよぉ~)
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