利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

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3 魔法学校の聖人候補

396 クラブの意義

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396

「……なるほど。理解した」

私のプレゼンを聴き終わると、グッケンス博士は資料を睨みつつ、なにやら色々書き込んでいる。
内容にも、私の提示した手法にも興味を持ってくれたようだ。

「それにしても、この〝統計〟というやつは面白いものだな。わしも研究してみたいものだ」

「ええ、そうですね。そういう博士だから、最初にお見せしたかったんですよ」

私たちは今回の統計についての見解や分析を話し合いながら、遅くまで効果的なプレゼン方法を詰めていった。

そして、その2日後の掲示板には

【クラブ活動の申し込み及び承認方法と活動を許可されたクラブ活動に必要な場所および予算の承認について】

という学校からの正式なアナウンスが発表された。

(どうやらグッケンス博士は、上手くやってくれたようね)

掲示板を見ていた私に、レカさんがいきなり抱きついてきた。

「マリスさん、ありがとう!ありがとぉおおお!!」

一番乗りでクラブ活動の承認を受けてきたという彼らは〝文芸クラブ〟とは別に〝広報クラブ〟を新たなクラブ活動として申請し、受理されたそうだ。

「部室も貰えたし、紙もインクも気にせず使える予算がついたの!これからは、新聞だけじゃなく、冊子も作れるかも」

狂喜乱舞のレカ先輩に、私は念押しする。

「2つの約束、守って下さいね」

「分かってる分かってる。あの部屋で見たもの聞いたことは秘密。そして、残念だけど〝お掃除魔法少女〟の活躍は記事にしません!」

これで、私とクローナ嬢の間のゴタゴタをこれ以上拡散されることはなくなった。
私は安心して、レカ先輩とお茶をすることにした。

「今日のお菓子も美味しい!本当に料理上手なのね、マリスさん」

レカ先輩はご機嫌。でもそれはレカ先輩だけじゃないようで、一気にクラブ活動が解禁になったことに、学校中が興奮しているようだった。

「私たちの作ったあの資料は極秘扱いになったみたいね。私たちにも学校当局から改めて、一切口外しないように言われたわ。この話は帝国だけの秘密にしておきたいんでしょうね。今まで誰も気がつかなかったことだもの」

「気がつけは当たり前のことなんですけどね。こういった統計自体珍しいようですから、今まで分からなかったのでしょう。クラブに予算をつける価値はあったと思いますよ」

私の出した資料の目玉は、クラブ活動と魔法実技の成績の相関関係だった。

全体の比率として、クラブ活動に関わっている生徒の分母はかなり小さい。だが10年という長期のデータを比較すると、明らかにどの年もクラブ活動をしている生徒の方が、全体に成績がいいのだ。
生徒単位で見ているとばらつきがあり、かつ〝大きな差〟とまでは言えないため、気づきにくいのだが、統計処理することで、明らかな優位性を示すことができた。

キーワードは〝イメージ〟

魔法は、特に修練途中の魔法使いは、いかに自分の魔法に合ったイメージを作り出せるかで、成長速度に大きく差が出る。ということは、想像力に富み、多種多様の経験があり、豊富なイメージのバックストックがある者の方が上達速度が早い、ということだ。

一見、魔法の習得に関連がないとされてきた〝クラブ活動〟だが、実際には彼らの魔法使いとしての成長のために非常に有益であり、振興してしかるべきものだ、というこちら側の主張は、それを裏打ちするデータを提示することで説得力のあるものになった。

グッケンス博士の魔法とは関係のない研究や図抜けた好奇心に雑多な収集癖、私の異世界から引き継いだ記憶、そうした〝常人にはない経験〟はきっと魔法を使うための大きな助けになっている、ということだ。

(博士の魔法を改良したり、創出できたりする能力が非常に高いのも、その辺に秘密があるのかもしれないな)

データは客観的だが、グラフなどを使って、かなり大げさにその差を際立たせたおかげもあり、博士に学校側への説明をしてもらい資料を渡した翌日には稟議が通り、クラブ活動は魔法学校に正式に認められたものとなった。魔法習得のためになるならば、それはあらゆることに優先されるという、この学校の特徴が良い方に働いた結果、いとも簡単に学校側は方針転換してくれたのだ。

(もちろん、グッケンス博士への信用があってこそだけどね)

私は上々の首尾に満足しながら、これから華やかになっていくだろうみんなの学生生活を思い、微笑んだ。

「これからもいい新聞を作って下さいね。それが、レカ先輩の魔法をきっと今より良いものにしてくれると思います」

「ええ、もちろん頑張るわ。きっとこれからは入部する子も増えるでしょうし、やりたいことがいっぱいあるの。まずは、新しくできたクラブを片っ端から取材していく予定よ。もう他の部員が取材を始めているの。私もこれから行くつもり」

席を立つレカ先輩に、花柄のプリントされた厚手の布に包んだザラメの食感が楽しい大ぶりのクッキーを渡す。先輩はそれを嬉しそうに受け取ると、こう言って去っていった。

「本当は、今、あなたを一番取材したいの!あなたは最高に私の好奇心を刺激するんだもの!
いつか、きっと取材させてね。それまで、私は私で頑張るわ!

ありがとうマリスさん!」
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