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3 魔法学校の聖人候補
435 競技会、各会場の様子
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435
他の競技会場を回った人たちの情報も、こうして競技場に座っていると耳に入ってくる。
二年生の競う競技場は、以前オーライリから聞いた二年生でありながら生徒会副会長を務めているアーシアン・シルベスターが圧倒的な強さで勝ち進んでいるそうだ。彼の魔法は力押しだけではなくとても洗練されているそうで、早くも軍部の人たちから注目を集めているという。シルベスター家は、文武両道に優れた傑物を何人も輩出している名門貴族の家柄だそうで、彼も入学した時からトップを独走している。シルベスター家は軍属の精鋭魔法騎士として活躍している者が多いので、アーシアン・シルベスターも完全に魔法を収めてから、騎士となるのではないかという噂だ。
(そんな人が、なんでクローナに私と戦うようけしかけたりするのか……謎だなぁ)
三年生はお互いに攻撃し合う対戦形式のため、かなり派手な対決が続いたそうで、怪我人続出。〝魔法薬研究会〟でもこの日のために、学校からの依頼で〝ポーション〟を始めとする《魔法薬》を準備してそれに備えていた。きっと、ずいぶん役に立っていることだろう。決勝は見応えのある《火魔法》と《水魔法》の対決だったそうで、生徒会長を務める名門公爵家の三男と〝魔法薬研究会〟の部長サマル・ラビ先輩の対決となったそうだ。
(ラビ先輩って、薬作りだけじゃなく強かったんだ。すごいなぁ。でも、決勝では負けちゃったみたい)
概ね順当な結果だと話されているところを見ると、ラビ先輩の評価はもともとかなり高かったようだ。いつも飄々としているラビ先輩は、負けてもあまり悔しいとは思っていないだろうけれど、部活の先輩の活躍はやっぱり嬉しいものだ。
噂話に聞き耳を立てているうちに、一年生の対戦は早々に終了した。
ちなみに、私と戦った脳筋騎士アゴル・ブレイアード君は、次の試合で敗退している。
というより、魔法力切れでリタイヤだった。
私との戦いで、魔法力を使い過ぎ、次の試合では課題をクリアできずに力尽きたそうだ。考えなしにもほどがあるが、第二試合は私との試合とは違い、氷の中からその中心にある赤い玉を取り出すというものだったのだから、壊すのは私との時よりずっと楽だった。にもかかわらず負けたことに、本人は相当ショックを受けているそうで、魔法騎士を諦めるとまで言っているそうだ。
「その方がいいのかもね。ブレイアード君は、魔法使いに向いてない気がする」
私の言葉に、控室まで来てくれたオーライリが大きく頷いてくれた。
「あれは、いくら《基礎魔法》に合格しても、魔法を使うための頭がなさすぎですし、周りも危険です。絶対、普通の騎士になったほうがいいと思います。さっきの試合だって、いつマリスさんにあいつの石がぶつかるかとヒヤヒヤしましたよ」
トルルも私の演武を見るために一緒に戻ってきてくれた。
「確かに、ああも無様に魔法力切れで倒れちゃうと自信失っちゃうよね。魔法力の管理は魔法使いの一番気をつけなければいけない技術だって、一番最初の授業で言われたのにね。全然考えてないんだもん」
確かにブレイアード君は、私との戦いの時、私が《火魔法》を使って石の中の空気を膨張させ作った裂け目を自分が作ったと思い、必死にそれを広げようと能力の限界まで夢中で《風魔法》を使い続けてしまった。だが実際のところそれは自分の使った魔法によるものではないから、実感が伴わず力の加減も分からず、完全に状況を見誤ってしまったのだ。
おそらく、私に勝ちはしたものの彼には二回戦を戦えるほどの魔法力はもう残ってはいなかったのかもしれない。ブレイアード君は、私との試合には勝ったが魔法使いとしてはとても恥ずかしい勝ち方になってしまったのだ。かなり多い魔法力を持つ貴族を相手にして、そこまで追い詰めた私はむしろ誇るべきだと、トルルとオーライリは言ってくれた。
「脳筋騎士の力技に対して、初級の技だけで静かで洗練された方法を使って戦い抜いたメイロ……マリスさんこそ、本当の勝者だと、私は思います。演武、楽しみにしていますね」
オーライリは自分のことのように嬉しそうにそういい、トルルもそうだと同調した。
「ありがとう、ふたりとも。試合には負けちゃったけど、せっかく見にきてくれたふたりのためにも演武頑張るね」
私の横に置いてある縄の束を見て、捕縛術でも見せるのかというオーライリに私はいたずらっぽく、
「違うよー、まぁ、見ててね」
と、笑った。そんなのんびりした私たちの様子に、
「早々に負けた方は緊張感がなくていいわね」
そんな嫌味が飛んできたりもしたが、それには決勝まで残り、惜しくも2位に終わったクローナが
「緊張していればいい演武ができるわけじゃないでしょう。くだらないことを言うのはやめなさい」
と、言い返して撃退してくれた。私がお礼を言うと、クローナは自分が不愉快だったから怒っただけだと、顔を赤くした。相変わらず、素直じゃないけどいい子だ。
「さて、では有終の美を飾りに行くとしましょうか」
そろそろ、演武の時間だ。
アナウンスでは、アゴル・ブレイアード君の魔法力切れによる演武不参加が告げられていた。彼以外にも、もう2名負傷と魔法力切れで演武にはリタイヤが出ているという。一年生も、どうやらそれなりに厳しい戦いだったようだ。
(ブレイアード君、剣の腕はかなり良いらしいので、彼の行くべき道が決まってよかったのかもしれないね。騎士として頑張った方がいいと思う)
魔法使いの向き不向きについていろいろ考えながら、私は演武のため競技場へ向かう廊下を歩いていった。
他の競技会場を回った人たちの情報も、こうして競技場に座っていると耳に入ってくる。
二年生の競う競技場は、以前オーライリから聞いた二年生でありながら生徒会副会長を務めているアーシアン・シルベスターが圧倒的な強さで勝ち進んでいるそうだ。彼の魔法は力押しだけではなくとても洗練されているそうで、早くも軍部の人たちから注目を集めているという。シルベスター家は、文武両道に優れた傑物を何人も輩出している名門貴族の家柄だそうで、彼も入学した時からトップを独走している。シルベスター家は軍属の精鋭魔法騎士として活躍している者が多いので、アーシアン・シルベスターも完全に魔法を収めてから、騎士となるのではないかという噂だ。
(そんな人が、なんでクローナに私と戦うようけしかけたりするのか……謎だなぁ)
三年生はお互いに攻撃し合う対戦形式のため、かなり派手な対決が続いたそうで、怪我人続出。〝魔法薬研究会〟でもこの日のために、学校からの依頼で〝ポーション〟を始めとする《魔法薬》を準備してそれに備えていた。きっと、ずいぶん役に立っていることだろう。決勝は見応えのある《火魔法》と《水魔法》の対決だったそうで、生徒会長を務める名門公爵家の三男と〝魔法薬研究会〟の部長サマル・ラビ先輩の対決となったそうだ。
(ラビ先輩って、薬作りだけじゃなく強かったんだ。すごいなぁ。でも、決勝では負けちゃったみたい)
概ね順当な結果だと話されているところを見ると、ラビ先輩の評価はもともとかなり高かったようだ。いつも飄々としているラビ先輩は、負けてもあまり悔しいとは思っていないだろうけれど、部活の先輩の活躍はやっぱり嬉しいものだ。
噂話に聞き耳を立てているうちに、一年生の対戦は早々に終了した。
ちなみに、私と戦った脳筋騎士アゴル・ブレイアード君は、次の試合で敗退している。
というより、魔法力切れでリタイヤだった。
私との戦いで、魔法力を使い過ぎ、次の試合では課題をクリアできずに力尽きたそうだ。考えなしにもほどがあるが、第二試合は私との試合とは違い、氷の中からその中心にある赤い玉を取り出すというものだったのだから、壊すのは私との時よりずっと楽だった。にもかかわらず負けたことに、本人は相当ショックを受けているそうで、魔法騎士を諦めるとまで言っているそうだ。
「その方がいいのかもね。ブレイアード君は、魔法使いに向いてない気がする」
私の言葉に、控室まで来てくれたオーライリが大きく頷いてくれた。
「あれは、いくら《基礎魔法》に合格しても、魔法を使うための頭がなさすぎですし、周りも危険です。絶対、普通の騎士になったほうがいいと思います。さっきの試合だって、いつマリスさんにあいつの石がぶつかるかとヒヤヒヤしましたよ」
トルルも私の演武を見るために一緒に戻ってきてくれた。
「確かに、ああも無様に魔法力切れで倒れちゃうと自信失っちゃうよね。魔法力の管理は魔法使いの一番気をつけなければいけない技術だって、一番最初の授業で言われたのにね。全然考えてないんだもん」
確かにブレイアード君は、私との戦いの時、私が《火魔法》を使って石の中の空気を膨張させ作った裂け目を自分が作ったと思い、必死にそれを広げようと能力の限界まで夢中で《風魔法》を使い続けてしまった。だが実際のところそれは自分の使った魔法によるものではないから、実感が伴わず力の加減も分からず、完全に状況を見誤ってしまったのだ。
おそらく、私に勝ちはしたものの彼には二回戦を戦えるほどの魔法力はもう残ってはいなかったのかもしれない。ブレイアード君は、私との試合には勝ったが魔法使いとしてはとても恥ずかしい勝ち方になってしまったのだ。かなり多い魔法力を持つ貴族を相手にして、そこまで追い詰めた私はむしろ誇るべきだと、トルルとオーライリは言ってくれた。
「脳筋騎士の力技に対して、初級の技だけで静かで洗練された方法を使って戦い抜いたメイロ……マリスさんこそ、本当の勝者だと、私は思います。演武、楽しみにしていますね」
オーライリは自分のことのように嬉しそうにそういい、トルルもそうだと同調した。
「ありがとう、ふたりとも。試合には負けちゃったけど、せっかく見にきてくれたふたりのためにも演武頑張るね」
私の横に置いてある縄の束を見て、捕縛術でも見せるのかというオーライリに私はいたずらっぽく、
「違うよー、まぁ、見ててね」
と、笑った。そんなのんびりした私たちの様子に、
「早々に負けた方は緊張感がなくていいわね」
そんな嫌味が飛んできたりもしたが、それには決勝まで残り、惜しくも2位に終わったクローナが
「緊張していればいい演武ができるわけじゃないでしょう。くだらないことを言うのはやめなさい」
と、言い返して撃退してくれた。私がお礼を言うと、クローナは自分が不愉快だったから怒っただけだと、顔を赤くした。相変わらず、素直じゃないけどいい子だ。
「さて、では有終の美を飾りに行くとしましょうか」
そろそろ、演武の時間だ。
アナウンスでは、アゴル・ブレイアード君の魔法力切れによる演武不参加が告げられていた。彼以外にも、もう2名負傷と魔法力切れで演武にはリタイヤが出ているという。一年生も、どうやらそれなりに厳しい戦いだったようだ。
(ブレイアード君、剣の腕はかなり良いらしいので、彼の行くべき道が決まってよかったのかもしれないね。騎士として頑張った方がいいと思う)
魔法使いの向き不向きについていろいろ考えながら、私は演武のため競技場へ向かう廊下を歩いていった。
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