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3 魔法学校の聖人候補
457 誘拐
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457
この世界にきた時から、高い魔法力を持つ子供たちが狙われやすい存在である、とは聞いていた。
魔法力が生まれながらに高過ぎれば、その身は貴族たちに買われるようにして養子にとられてしまうことも聞いていたし、誘拐されてしまう子供があることも知ってはいた。だが、まさかこんな風に、その犯罪と出くわすことになるとは思ってもみなかった。
タイチとキッペイがいたのは、どちらかといえば人身売買の組織で身寄りのない子供を〝保護する〟と見せかけたものだった。今回は、それとは違いあからさまな人さらいだ。それも魔法力に恵まれた子供だけを狙い大人数を一気にさらっている。
「で、トルルの妹さんの行方は、まだわからないのね」
チェット・モートさんの表情は沈鬱だ。今は現地で人を集めて山狩りをしているそうだが、捜索範囲が広すぎて、まだなんの成果もない上、山狩り中に新たな誘拐まで起こるという混乱した状況だという。里の人々は疑心暗鬼のパニック状態で、子供は皆、家の奥深くに隠れるように暮らしているという。
「ええ、現在わかっているだけで、あの地域の子供たち11名がここ数日で行方不明になっています。確実に魔法力の多いと知られていた子供を狙っていますし、これは身代金目的とは思えないので、こちらも素早く動かないと逃げられそうなんですが、なにせかなりの田舎なので〝天船〟を使っても数日はかかってしまいまして……」
今も地元の人たちとのやりとりを《伝令》で繰り返しているが、里から一番近い冒険者ギルドを通してのやりとりで、速報とは言えない状況の上、めぼしい情報もない。周囲は隠れやすい山だらけの場所のため捜索は難航し、敵の潜伏先も絞れてはいないそうだ。敵が子供たちを連れてすぐに逃げる気なら、時間との戦いになる。外部からの手が入るまでの数日のロスが命取りになる可能性は高い。
「わかりました。このこと、グッケンス博士にもお伝えしておきます」
「それは有難い。ご迷惑をお掛け致しますが、もし可能であればご助力をお願い致します、とお伝えくださいませ」
そう言って頭を下げたモートさんは、慌ただしく対策を話し合っている人たちの中へ戻っていった。
私は歩きながらグッケンス博士の実験棟にいるソーヤと念話をする。
〔ソーヤ、緊急事態なの。博士にトルルの妹さんを含めた子供たち10名以上が誘拐されたと伝えて〕
〔それは大変でございますね。すぐ、お伝え致します。メイロードさまも、やはり動かれますか?〕
〔ええ、そのつもり。オーライリに事情を伝えたらすぐ出ます。ついてきてね。セーヤもお願い〕
〔もちろんでございます。かしこまりました。動きやすい服と靴をご用意してお持ちしております〕
〔ありがとう。じゃ、あとでね〕
〔あ、今お伝えしましたところグッケンス博士は事務局へまずは行ってみるそうです〕
〔了解。ありがとう、ソーヤ〕
私は早足で歩いてオーライリの元に戻り、掻い摘んで事情を説明した。
「私もグッケンス博士のお手伝いをして、この事件に関わることになるから、しばらく顔を出せないけれど、きっと助けてくるから、心配しないでね。みんなにもそう伝えて」
私の話を聞いて、もう泣きそうなオーライリは、それでもハンカチを握りしめ頷きながら了解してくれた。
「トルルは妹さんのことを自慢していました。7歳ほど離れていたようですが、自分よりずっと才能があるから、後のことが任せられた、と言っていたんです。いづれはこの魔法学校にやってくる子だとも、言っていました。まさか誘拐されるなんて……」
我慢しきれず、大粒の涙をこぼしながら、オーライリは私の前で手を組んでこう言った。
「どうか助けてあげてください! トルルの大事な妹さんや子供たちを奪わせないでください!お願いします、メイロードさま!!」
「もちろんよ。学校の先生方も〝魔法使い予備軍〟を狙った犯行として動こうとしてくださっているし、グッケンス博士もきっと助けてくれる。大丈夫、必ず救い出すわ」
私は焦る気持ちを隠し、笑顔でそう言ってオーライリの元を離れた。そのあとは人目も気にせず、不機嫌も隠さず、大股でブリブリ怒りながら急ぎ足で移動した。
(三学期早々なんなのよ、これ!)
チェット・モートさんの先ほどの話によると、警戒している里の中からも誘拐は行われている。こんなことができる手合いだとすれば、誘拐犯の一味には確実に魔法使いがいるし、姿を隠すことができる魔法かスキルを持った者もいると考えられる。手慣れた感じから、かなり場数を踏んでいる様子がうかがえるし、里の人たちが対峙するにはあまりに危険な相手に思える。
なにより手口のこなれている雰囲気が気にかかる。下手に動いて追い詰め、子供たちを連れて早々に逃げられてしまえば、捜索はより困難になってしまう。
〔私もお連れいただけませんか、メイロードさま〕
念話の主はアタタガ・フライ。
〔あれ? この遠距離でも念話届いてるの?!〕
〔はい。最近では《無限回廊の扉》が空いていると、遠方にいらしてもメイロードさまの念話が届くようになりました〕
これは《無限回廊の扉》の進化なのか、アタタガの進化なのかは不明だが、どうやら遙か遠くにいるアタタガにも状況は伝わっているようだ。
〔ありがとう。ぜひお願いするわ。敵の場所を素早く探すには、あなたの力が必要よ、アタタガ・フライ〕
私の言葉に即答でやってきたアタタガと一緒に、私たちは以前お茶会のための食材探しの時に訪れたトルルの里に作っておいた隠し扉から《無限回廊の扉》を通って一瞬で移動した。
敵がこちらの動きを見張っている可能性を考えると、里の人たちとは今は接触しないほうがいいだろう。博士はきっと状況を聞くため里へ向かうと思うけど、それまでの間だけでも今は相手の警戒心を少しでも緩めておきたい。
「隠密行動で誘拐犯たちのアジトを探しましょう。セーヤ、ソーヤ、アタタガ、行くよ!」
姿を消したセーヤとソーヤが素早く移動を始めると、私もグッケンス博士直伝の《幻影魔法》をかけて姿を隠したアタタガ・フライの移動箱に乗り、空中から探索を始めた。
(早く子供たちを見つけなくちゃ!)
この世界にきた時から、高い魔法力を持つ子供たちが狙われやすい存在である、とは聞いていた。
魔法力が生まれながらに高過ぎれば、その身は貴族たちに買われるようにして養子にとられてしまうことも聞いていたし、誘拐されてしまう子供があることも知ってはいた。だが、まさかこんな風に、その犯罪と出くわすことになるとは思ってもみなかった。
タイチとキッペイがいたのは、どちらかといえば人身売買の組織で身寄りのない子供を〝保護する〟と見せかけたものだった。今回は、それとは違いあからさまな人さらいだ。それも魔法力に恵まれた子供だけを狙い大人数を一気にさらっている。
「で、トルルの妹さんの行方は、まだわからないのね」
チェット・モートさんの表情は沈鬱だ。今は現地で人を集めて山狩りをしているそうだが、捜索範囲が広すぎて、まだなんの成果もない上、山狩り中に新たな誘拐まで起こるという混乱した状況だという。里の人々は疑心暗鬼のパニック状態で、子供は皆、家の奥深くに隠れるように暮らしているという。
「ええ、現在わかっているだけで、あの地域の子供たち11名がここ数日で行方不明になっています。確実に魔法力の多いと知られていた子供を狙っていますし、これは身代金目的とは思えないので、こちらも素早く動かないと逃げられそうなんですが、なにせかなりの田舎なので〝天船〟を使っても数日はかかってしまいまして……」
今も地元の人たちとのやりとりを《伝令》で繰り返しているが、里から一番近い冒険者ギルドを通してのやりとりで、速報とは言えない状況の上、めぼしい情報もない。周囲は隠れやすい山だらけの場所のため捜索は難航し、敵の潜伏先も絞れてはいないそうだ。敵が子供たちを連れてすぐに逃げる気なら、時間との戦いになる。外部からの手が入るまでの数日のロスが命取りになる可能性は高い。
「わかりました。このこと、グッケンス博士にもお伝えしておきます」
「それは有難い。ご迷惑をお掛け致しますが、もし可能であればご助力をお願い致します、とお伝えくださいませ」
そう言って頭を下げたモートさんは、慌ただしく対策を話し合っている人たちの中へ戻っていった。
私は歩きながらグッケンス博士の実験棟にいるソーヤと念話をする。
〔ソーヤ、緊急事態なの。博士にトルルの妹さんを含めた子供たち10名以上が誘拐されたと伝えて〕
〔それは大変でございますね。すぐ、お伝え致します。メイロードさまも、やはり動かれますか?〕
〔ええ、そのつもり。オーライリに事情を伝えたらすぐ出ます。ついてきてね。セーヤもお願い〕
〔もちろんでございます。かしこまりました。動きやすい服と靴をご用意してお持ちしております〕
〔ありがとう。じゃ、あとでね〕
〔あ、今お伝えしましたところグッケンス博士は事務局へまずは行ってみるそうです〕
〔了解。ありがとう、ソーヤ〕
私は早足で歩いてオーライリの元に戻り、掻い摘んで事情を説明した。
「私もグッケンス博士のお手伝いをして、この事件に関わることになるから、しばらく顔を出せないけれど、きっと助けてくるから、心配しないでね。みんなにもそう伝えて」
私の話を聞いて、もう泣きそうなオーライリは、それでもハンカチを握りしめ頷きながら了解してくれた。
「トルルは妹さんのことを自慢していました。7歳ほど離れていたようですが、自分よりずっと才能があるから、後のことが任せられた、と言っていたんです。いづれはこの魔法学校にやってくる子だとも、言っていました。まさか誘拐されるなんて……」
我慢しきれず、大粒の涙をこぼしながら、オーライリは私の前で手を組んでこう言った。
「どうか助けてあげてください! トルルの大事な妹さんや子供たちを奪わせないでください!お願いします、メイロードさま!!」
「もちろんよ。学校の先生方も〝魔法使い予備軍〟を狙った犯行として動こうとしてくださっているし、グッケンス博士もきっと助けてくれる。大丈夫、必ず救い出すわ」
私は焦る気持ちを隠し、笑顔でそう言ってオーライリの元を離れた。そのあとは人目も気にせず、不機嫌も隠さず、大股でブリブリ怒りながら急ぎ足で移動した。
(三学期早々なんなのよ、これ!)
チェット・モートさんの先ほどの話によると、警戒している里の中からも誘拐は行われている。こんなことができる手合いだとすれば、誘拐犯の一味には確実に魔法使いがいるし、姿を隠すことができる魔法かスキルを持った者もいると考えられる。手慣れた感じから、かなり場数を踏んでいる様子がうかがえるし、里の人たちが対峙するにはあまりに危険な相手に思える。
なにより手口のこなれている雰囲気が気にかかる。下手に動いて追い詰め、子供たちを連れて早々に逃げられてしまえば、捜索はより困難になってしまう。
〔私もお連れいただけませんか、メイロードさま〕
念話の主はアタタガ・フライ。
〔あれ? この遠距離でも念話届いてるの?!〕
〔はい。最近では《無限回廊の扉》が空いていると、遠方にいらしてもメイロードさまの念話が届くようになりました〕
これは《無限回廊の扉》の進化なのか、アタタガの進化なのかは不明だが、どうやら遙か遠くにいるアタタガにも状況は伝わっているようだ。
〔ありがとう。ぜひお願いするわ。敵の場所を素早く探すには、あなたの力が必要よ、アタタガ・フライ〕
私の言葉に即答でやってきたアタタガと一緒に、私たちは以前お茶会のための食材探しの時に訪れたトルルの里に作っておいた隠し扉から《無限回廊の扉》を通って一瞬で移動した。
敵がこちらの動きを見張っている可能性を考えると、里の人たちとは今は接触しないほうがいいだろう。博士はきっと状況を聞くため里へ向かうと思うけど、それまでの間だけでも今は相手の警戒心を少しでも緩めておきたい。
「隠密行動で誘拐犯たちのアジトを探しましょう。セーヤ、ソーヤ、アタタガ、行くよ!」
姿を消したセーヤとソーヤが素早く移動を始めると、私もグッケンス博士直伝の《幻影魔法》をかけて姿を隠したアタタガ・フライの移動箱に乗り、空中から探索を始めた。
(早く子供たちを見つけなくちゃ!)
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