利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

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3 魔法学校の聖人候補

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476

「どうなのだ。お前のしたことなのだろう。即答せぬか!」

チェンチェン工房を糾弾するためには、自らの行った妨害工作について答えなければならない状況に追い込まれたマバロンガは、急にしおらしい態度でこんなことを言い始めた。

「まったくもってお恥ずかしいことですが、私どもの三男は長くチェンチェン工房に勤めておりまして、一番弟子のはずでございました。それが親方に認めてもらえず、苦悩の末、自分の工房を構えることになりました。悲しいことですが、工房から追い出されたザイザロンガは、チェンチェン親方の息子、そこにいるプーアと対立することになってしまったのでございます。

私は息子可愛さに、確かに懇意の皮革問屋にチェンチェン工房との取引を控えてくれないか、ともいたしました。反省しております。

ですが、それはそれ!! だからと言って、この街の問屋を一切通さないような怪しい商人から手に入れた出自もわからない皮革を使った鞍を〝鞍揃え〟に出すなど、言語道断ではございませんか! どう考えてもこの短期間でこれだけのものを真っ当な手段で手に入れられるはずがないのですよ!」

「自らの不正を〝親心〟と申すか。物は言いようだな、マバロンガ」

「まったくもってお恥ずかしいことで……ですが、圧力をかけたとか、そんな大げさなことではございませんで……」

相変わらずもみ手をしながら、薄ら笑いのマバロンガは意地悪をしたに過ぎないと言い募った。

「それより、どこぞの闇商人と怪しい取引をした、このチェンチェン工房の若造が用意した高級皮革、きっと偽物や品質の悪いものに違いございません。もしかしたら盗品かも…… この格式高い〝鞍揃え〟からは絶対排除されるべきです!」

「そうなのか? プーア」

サラエ隊長の問いに、プーアは首を振り、こう答えた。

「私の工房が、急に取引を止められたせいで窮地にあったことは事実です。迅速に私どもの求める高品質の皮革を揃えられるあてもありませんでした。ですが、私の父と長年親交のあった方がこの窮地に手を差し伸べてくださいました。私どもに今回、この見事な革素材をご用意下さった方は、エルリベット・バレリオ様のご友人でイスや帝都でも手広く商売をされている方でございます。とてもお忙しい方ですので、こちらに来られてはおりませんが、もしもの時のために、とあるものをお預かりしております」

プーアさんはそう言って、布の包まれた一枚のカードをサラエ隊長へと差し出した。

それは私こと、メイロード・マリスの商人ギルドが発行した身分証明書でもあるギルドカードだった。

カードを開いて一瞥したサラエ隊長は、一瞬目を見開き

「チェンチェン工房の素材の仕入れに、一切の詮議の余地なし! 商人の身元は保障された!」

そうマバロンガたちに向かって言い放った。

「そんなバカな!!」

まだグズグズと何か言おうとするマバロンガに、サラエ隊長は私の商人ギルドカードの裏書きを目の前に近づけて見せた。

「これを見ても、まだ言うか、マバロンガ!」

そこには帝国で最も力のあると言われている大都市イスの名だたるギルドマスターの名と、現〝帝国の代理人〟サガン・サイデムの名が記されていた。そして、最後に金文字で記されていたのはシド帝国正妃であるリアーナの名前だった。

「ひぃ!! せ、正妃様の御用商人!!」

マバロンガとザイザロンガは、その場で崩れるように腰砕けになり、その場でへたり込んだまま言葉もなくうなだれた。これ以上、一言でも素材について文句を挟むことは即、皇室への侮辱とみなされ〝不敬罪〟に問われるとさすがにわかったのだろう。

「チェンチェン工房の皮革取引はすべて正当に行われた。このことに疑問の余地はないと、このサラエ・マッツアが確認した。まだ、意義がある者は、いますぐ名乗り出よ!」

そして静まり返る会場で、サラエ・マッツア騎馬隊長は高らかに宣言した。

「今回の〝鞍揃え〟第一席は、工房長プーア率いる〝チェンチェン工房〟とする!」

その言葉に、観衆からは大きな拍手と歓声が上がり、プーアさんは目に涙を浮かべてエルさんと握手をしていた。プーアさんの周りには次々と人が集まり、口々に賞賛の言葉とお祝いの言葉をかけている。

その後ろで、呆然としていたザイザロンガたちは、肩を落としてコソコソと立ち去ろうとしたが、彼らの前にはセルツ騎馬隊が現れ、行く手を塞いだ。

そして、彼らの間から現れたサラエ隊長は、スッキリとした笑顔でこう言った。

「そう急ぐな。まだ、貴様たちには聞かねばならんことがあるのだからな」

優勝者を囲んでの大騒ぎを後ろに聴きながら、ザイザロンガとマバロンガ親子は、騎馬隊に囲まれて連行されていく。

(一応、最後まで見届けておくべきだよね)

あまり気は進まなかったが、連行されるふたりの様子を見た私は《迷彩魔法》で隠れながら、ソーヤとともに彼らの後を追っていった。
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