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3 魔法学校の聖人候補
528 〝銀の骨〟研究の始まり
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528
私は机の上の〝火の魔石〟〝雷の魔石〟そして銀に輝く小さな骨を眺めていた。
《火魔法》《雷魔法》は共に攻撃力の高い魔法であり《基礎魔法》の段階から使うことができる汎用性の高いものだ。だが、より強力で威力の高い魔法に行使しようと思えば、いくつかの魔法を組み合わせた、より高度な魔法を習得しなければならない。
《基礎魔法》を習得できていないと系統の上位の魔法は使えない。かといって自分の得意としない上位系統の魔法が欲しいとなれば、適性のない新たな《基礎魔法》を習得せざるを得なくなり、それはそれで茨の道となる。地道な《基礎魔法》の訓練を行うためには、集中できる環境や優秀な教師、不測の事態に備えてくれる設備など様々な条件が必要となるからだ。何より悩ましいのは、その間は〝魔法力〟をそちらにすべて使ってしまうため、他のことに〝魔法力〟を使う余力はなくなってしまうこと。当然、その間は勉強を一時停滞させざるをえなくなってしまうため、それに踏み切れる人は少ない。
(適性のない魔法に踏み込むのはかなりめんどくさいってことだよね。だからどうしても《基礎魔法》の勉強は、自分に適性のあるもの中心になっちゃうってわけか……)
魔法学校卒業後となれば、さらに新たな《基礎魔法》の獲得は厳しくなる。数少ない魔法使いには、たとえ新米であっても多くの依頼があるため、それを蹴ってまで長期間無給となる覚悟で新たな《基礎魔法》習得をする必要はあまりないからだ。
キングリザードの《王の審判》ほどではないにせよ、強力な魔法攻撃は存在する。だが、複数系統の魔法を極めた攻撃に至るその道は、険しく遠いということだ。
(ええと……このキングリザードのような攻撃って、結局魔法使いにできるのかな?)
魔法使いがきちんと体系的に魔法を習得し使えるようになる過程では、まず一定水準までの数の《基礎魔法》を習得しなければならない。それは、威力や効果の高い魔法を学ぶために絶対必要なものだ。魔法使いはこうして学んだ《基礎魔法》をベースにその組み合わせによる複雑な魔法を習得していく。これが魔法学校での二年生以上の勉強となるわけだが、当然〝魔法力〟の消費は増えるし、複雑になればなるほど習得は難しくなり、成功率も下がっていく。
さらに悩ましい現実もある。多くの魔法使いは得意の強力な魔法をいくつか持っているが、ほとんどの魔法使いは中級以上の複雑な魔法を同時に使うことはできない。例えば最も基本的な《火魔法》と《雷魔法》でも同時に発動するとなるとかなりの修練が必要だし、これに大きな攻撃力を与えるために《増幅》の重ねがけをしようとしたとする。だが強力になるにつれ魔法は不安定になっていき、それを補うための《的指定》を追加して……となってくると、多くの場合キャパオーバーとなってしまうのだ。
つまりキングリザードがやったように、完全に同期させたふたつの強力な攻撃力を持つ魔法を正確に一点に向かって放出するというのは、とても大変なことなのだ。もちろん魔石を使って同様のことをさせようとする場合でも、ふたつの力を完全に同期させることは難しい。
もちろん魔石をコンロに使ったり、水を出すために起動する場合、特に大きな魔法力は必要とされない。だが、それを攻撃に使うとなると話は別だ。強い攻撃力を引き出すためにはたくさんの魔法力を注ぎ込まねばいけないし、その場合は魔石の力の制御や着弾ポイントについても魔法でのコントロールが必要となる。それが難しいため、魔石が攻撃の道具に使われることはない。魔術師自らが魔法を発動するほうがずっと簡単だからだ。
「だからキングリザードの《王の審判》のようなとてつもない威力の多重攻撃は、人には不可能とされているんだよね。もちろん魔法を使って再現するのはさらに無理」
だが、ここに面白いものがある。ふたつの石の間を繋ぐように配置されていたというこの小さな骨だ。
私の立てた仮説はこうだ。キングリザードが実際にやってみせたあの強力極まりない攻撃のことを考えると、これには魔法力を均一化し、ふたつの方向へ流すという作用があるのではないか、そう私には思える。
キングリザードは非常に珍しい大型魔獣だし、《王の審判》はほとんど目撃例がないほど珍しい攻撃だ。それに、死体の解体作業は専門の狩人たちやギルドの職人が行うことが多く、高値で売れる魔石にしか注目は集まらないため、この銀の小さなかけらのような骨に意味があるとは、誰も考えなかったのだろう。
(これを持ってきてくれたニパに感謝だね)
まだ仮説……だが、幸運なことにこの銀の小さな骨は、あまり価値が認められていないため思ったより手に入りやすい。いくつか手に入れて実験することはできそうだし、魔石については、まぁ、タネ石がふんだんにあるので、これも実験に使う程度の数を用意することに問題はない。
ただ、この実験はかなり危ない気がするので、学校内ではやらない方がいいだろう。私にもそのぐらいの分別はある。
もちろん学校内には危険な魔法を練習するための施設などもあるが、そこでなにかやって仕舞えばすぐに学校中の噂のなるだろうし、研究発表会まではできるだけ秘密にしておきたい、という気持ちもある。
(しょうがない。またセイリュウの聖域のそばの岩場を借りようかなぁ。ミゼルにうるさいって怒られないようにしないと……)
私は机の上の〝火の魔石〟〝雷の魔石〟そして銀に輝く小さな骨を眺めていた。
《火魔法》《雷魔法》は共に攻撃力の高い魔法であり《基礎魔法》の段階から使うことができる汎用性の高いものだ。だが、より強力で威力の高い魔法に行使しようと思えば、いくつかの魔法を組み合わせた、より高度な魔法を習得しなければならない。
《基礎魔法》を習得できていないと系統の上位の魔法は使えない。かといって自分の得意としない上位系統の魔法が欲しいとなれば、適性のない新たな《基礎魔法》を習得せざるを得なくなり、それはそれで茨の道となる。地道な《基礎魔法》の訓練を行うためには、集中できる環境や優秀な教師、不測の事態に備えてくれる設備など様々な条件が必要となるからだ。何より悩ましいのは、その間は〝魔法力〟をそちらにすべて使ってしまうため、他のことに〝魔法力〟を使う余力はなくなってしまうこと。当然、その間は勉強を一時停滞させざるをえなくなってしまうため、それに踏み切れる人は少ない。
(適性のない魔法に踏み込むのはかなりめんどくさいってことだよね。だからどうしても《基礎魔法》の勉強は、自分に適性のあるもの中心になっちゃうってわけか……)
魔法学校卒業後となれば、さらに新たな《基礎魔法》の獲得は厳しくなる。数少ない魔法使いには、たとえ新米であっても多くの依頼があるため、それを蹴ってまで長期間無給となる覚悟で新たな《基礎魔法》習得をする必要はあまりないからだ。
キングリザードの《王の審判》ほどではないにせよ、強力な魔法攻撃は存在する。だが、複数系統の魔法を極めた攻撃に至るその道は、険しく遠いということだ。
(ええと……このキングリザードのような攻撃って、結局魔法使いにできるのかな?)
魔法使いがきちんと体系的に魔法を習得し使えるようになる過程では、まず一定水準までの数の《基礎魔法》を習得しなければならない。それは、威力や効果の高い魔法を学ぶために絶対必要なものだ。魔法使いはこうして学んだ《基礎魔法》をベースにその組み合わせによる複雑な魔法を習得していく。これが魔法学校での二年生以上の勉強となるわけだが、当然〝魔法力〟の消費は増えるし、複雑になればなるほど習得は難しくなり、成功率も下がっていく。
さらに悩ましい現実もある。多くの魔法使いは得意の強力な魔法をいくつか持っているが、ほとんどの魔法使いは中級以上の複雑な魔法を同時に使うことはできない。例えば最も基本的な《火魔法》と《雷魔法》でも同時に発動するとなるとかなりの修練が必要だし、これに大きな攻撃力を与えるために《増幅》の重ねがけをしようとしたとする。だが強力になるにつれ魔法は不安定になっていき、それを補うための《的指定》を追加して……となってくると、多くの場合キャパオーバーとなってしまうのだ。
つまりキングリザードがやったように、完全に同期させたふたつの強力な攻撃力を持つ魔法を正確に一点に向かって放出するというのは、とても大変なことなのだ。もちろん魔石を使って同様のことをさせようとする場合でも、ふたつの力を完全に同期させることは難しい。
もちろん魔石をコンロに使ったり、水を出すために起動する場合、特に大きな魔法力は必要とされない。だが、それを攻撃に使うとなると話は別だ。強い攻撃力を引き出すためにはたくさんの魔法力を注ぎ込まねばいけないし、その場合は魔石の力の制御や着弾ポイントについても魔法でのコントロールが必要となる。それが難しいため、魔石が攻撃の道具に使われることはない。魔術師自らが魔法を発動するほうがずっと簡単だからだ。
「だからキングリザードの《王の審判》のようなとてつもない威力の多重攻撃は、人には不可能とされているんだよね。もちろん魔法を使って再現するのはさらに無理」
だが、ここに面白いものがある。ふたつの石の間を繋ぐように配置されていたというこの小さな骨だ。
私の立てた仮説はこうだ。キングリザードが実際にやってみせたあの強力極まりない攻撃のことを考えると、これには魔法力を均一化し、ふたつの方向へ流すという作用があるのではないか、そう私には思える。
キングリザードは非常に珍しい大型魔獣だし、《王の審判》はほとんど目撃例がないほど珍しい攻撃だ。それに、死体の解体作業は専門の狩人たちやギルドの職人が行うことが多く、高値で売れる魔石にしか注目は集まらないため、この銀の小さなかけらのような骨に意味があるとは、誰も考えなかったのだろう。
(これを持ってきてくれたニパに感謝だね)
まだ仮説……だが、幸運なことにこの銀の小さな骨は、あまり価値が認められていないため思ったより手に入りやすい。いくつか手に入れて実験することはできそうだし、魔石については、まぁ、タネ石がふんだんにあるので、これも実験に使う程度の数を用意することに問題はない。
ただ、この実験はかなり危ない気がするので、学校内ではやらない方がいいだろう。私にもそのぐらいの分別はある。
もちろん学校内には危険な魔法を練習するための施設などもあるが、そこでなにかやって仕舞えばすぐに学校中の噂のなるだろうし、研究発表会まではできるだけ秘密にしておきたい、という気持ちもある。
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