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3 魔法学校の聖人候補
546 私のギルドカードは
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546
「それじゃ、最後にあなたのお得意の魔法を見せていただきましょうか」
なんだかものすごくワクワクした目を試験官から向けられた私は、研究棟を出るとき博士から向けられた何とも言えない顔を思い出していた。
(いや、抑えましたよ。きっちり抑えた感じでやってますよ。でも、お得意……どうしようかなぁ)
もうこれ以上試験官の期待には応えたくない。とすれば、はやりここはいつものやつでいくことにしよう。そう決めた私は、何枚かの布をマジックバッグから取り出し、空中に投げた。それを《エア・バブル》で囲み、中に《水出》で水を作り出し、それを振動させて洗濯を開始。その後、《圧縮》を使って水を抜き、洗濯を終了した。
「これは……」
「洗濯魔法です」
「洗濯……魔法?」
きまずい沈黙が流れたが、魔法には何ら問題はないはずだ。最後に火魔法と風魔法を組み合わせた魔法乾燥法を使って、プレスしてぎっちり水分を抜いた布を風の中でくるくると回転させて、ふんわりと仕上げた。
個人的には洗濯物はお日様に干すのが好きなのだが、これはこれでとても便利な魔法だ。洗濯物が多いときには、とても時短になるし、この方法だと出るふっくら感がたまらない。
洗濯が終わった布をたたみながら悦に入っている私に試験官は、ため息をつきながら近づいてきた。
「素晴らしい魔法でした。合格です……合格ですが、ひとこと言わせていただいてもよろしいでしょうか?」
若干厳しい表情の試験管の様子に腰が引けつつもこっくりとうなづいた私に、彼は子供に諭す感じでゆっくりと話し始めた。
「では……よろしいですか。魔法を使えるということはとても素晴らしいことです。しかもあなたには天賦の才能がある。魔法の発動の速さ、正確性、技術の習熟度……、その年でこれだけのことができるのです。これからの研鑽次第では、もしかしたらかの天才ハンス・グッケンス様のような歴史に名を残される魔法使いになれるかもしれない。
その才能を、こんなことに使ってはいけません。魔法力は有限なのです。あなたの魔法力がたとえ潤沢だとしても、やはり有限なのです。こんな誰でもできることのために、あなたの大事な魔法力を使ったりしていてはだめですよ。わかりますね」
至極まっとうなお説教をくらってしまった。ものすごく今更だけど、私の家事魔法があまり評価を受けない理由を、至極真っ当に教えてもらってしまった。
(みんな大事な魔法力をこんなことに使うなんて……、ってあきれていたのね)
残念ながら彼の心配はまったくの杞憂で、私の持つ膨大な魔法力はこの程度の家事魔法を一日中使い続けたところで1パーセントも減ったりはしないのだが、だから安心してくださいとこの試験官に伝えることはできない。それこそ私の最大の秘密なのだから。
(ここは素直にお説教されておくのが吉とみた。しおらしくしておくことにしよっと)
「これからの魔法修行に大切な諫言をありがとうございます。これから一生懸命修行して、偉大な魔法使いとなれるよう精進致します」
私のしおらしい言葉に満足したらしい試験官は、私の評価を記した紙を手渡してくれ、盛大に私とトルルを励ましてくれた。どうやら、とても気のいい方らしい。彼自身も魔法使いにあこがれて、あこがれて、でも魔法力が足りなくてあきらめたという方だった。
「君のように才能のある子は、この国の宝だからね。平民だって関係ない、魔法使いは実力がすべての世界だ。君の名前は覚えておくよ、メイロード・マリス君! きっと君なら大成するさ!」
(この方の魔法使いの能力を見抜く力は本物ね)
たくさんの魔法使いの試験を担当することで得た能力なのだろう。面白い人だった。彼に見送られて、申請窓口まで戻ると、私たちは試験結果の書かれた紙を提出。無事に魔法使いのライセンスカードであるギルドカードを手に入れた。
(?)
「どうしたのマリスさん?」
「あ、いや……」
トルルのカードは予定通り10級なのだが、私のカードは一人前の魔法使いを現すとされる5級と表示されていた。
私は慌ててカードの発行を担当してくれたお姉さんのところへ行き、何かの間違いではないかと聞いてみた。
「確かにお嬢ちゃんのような小さな子が5級ってことはないわよね、もう一度チェックしますね。ええと、試験結果の用紙はどこだったかしら……」
お姉さんが再度調べてくれた結果は、やはり5級相当の判断だった。
(どーしてよぉ! めっちゃ魔法力は絞ったよ。やりすぎないようがんばったよ!)
だが、教えてもらった理由を聞いて、本当に私は脱力した。原因は私の家事魔法だったのだ。特に私が最後に使った魔法を使ったドライヤーは魔法名の登録のない技術で、オリジナル魔法と認定されていた。魔法創造はとても高い評価を受けるため、私は一人前と認められてしまったらしい。多分にあの試験官の個人的身びいきもありそうな気はするが、そう言われてしまったら、違いますとも言えない。
(たしかに、あれは私のオリジナルなんだよね。普段使いし過ぎていてそんな意識全然なかったんだけど、というかオリジナルの家事魔法を作る魔法使いがそもそもいないもんね)
というわけで、私はなんと子供魔法使いとして認定されてしまった。窓口のおねえさん曰く“おそらく最年少記録”で……
トルルはすごいすごいと言って喜んでくれているが、私は普通に修業がしたい。
(このレベルじゃもうインターン制度も使えないじゃん!)
がっくりと肩を落とした私を無視して、トルルが早速依頼を見に行こうと私の手を引っ張る。
(試験官さん! あなたは悪くない、悪くないけど、うらむからね!)
「それじゃ、最後にあなたのお得意の魔法を見せていただきましょうか」
なんだかものすごくワクワクした目を試験官から向けられた私は、研究棟を出るとき博士から向けられた何とも言えない顔を思い出していた。
(いや、抑えましたよ。きっちり抑えた感じでやってますよ。でも、お得意……どうしようかなぁ)
もうこれ以上試験官の期待には応えたくない。とすれば、はやりここはいつものやつでいくことにしよう。そう決めた私は、何枚かの布をマジックバッグから取り出し、空中に投げた。それを《エア・バブル》で囲み、中に《水出》で水を作り出し、それを振動させて洗濯を開始。その後、《圧縮》を使って水を抜き、洗濯を終了した。
「これは……」
「洗濯魔法です」
「洗濯……魔法?」
きまずい沈黙が流れたが、魔法には何ら問題はないはずだ。最後に火魔法と風魔法を組み合わせた魔法乾燥法を使って、プレスしてぎっちり水分を抜いた布を風の中でくるくると回転させて、ふんわりと仕上げた。
個人的には洗濯物はお日様に干すのが好きなのだが、これはこれでとても便利な魔法だ。洗濯物が多いときには、とても時短になるし、この方法だと出るふっくら感がたまらない。
洗濯が終わった布をたたみながら悦に入っている私に試験官は、ため息をつきながら近づいてきた。
「素晴らしい魔法でした。合格です……合格ですが、ひとこと言わせていただいてもよろしいでしょうか?」
若干厳しい表情の試験管の様子に腰が引けつつもこっくりとうなづいた私に、彼は子供に諭す感じでゆっくりと話し始めた。
「では……よろしいですか。魔法を使えるということはとても素晴らしいことです。しかもあなたには天賦の才能がある。魔法の発動の速さ、正確性、技術の習熟度……、その年でこれだけのことができるのです。これからの研鑽次第では、もしかしたらかの天才ハンス・グッケンス様のような歴史に名を残される魔法使いになれるかもしれない。
その才能を、こんなことに使ってはいけません。魔法力は有限なのです。あなたの魔法力がたとえ潤沢だとしても、やはり有限なのです。こんな誰でもできることのために、あなたの大事な魔法力を使ったりしていてはだめですよ。わかりますね」
至極まっとうなお説教をくらってしまった。ものすごく今更だけど、私の家事魔法があまり評価を受けない理由を、至極真っ当に教えてもらってしまった。
(みんな大事な魔法力をこんなことに使うなんて……、ってあきれていたのね)
残念ながら彼の心配はまったくの杞憂で、私の持つ膨大な魔法力はこの程度の家事魔法を一日中使い続けたところで1パーセントも減ったりはしないのだが、だから安心してくださいとこの試験官に伝えることはできない。それこそ私の最大の秘密なのだから。
(ここは素直にお説教されておくのが吉とみた。しおらしくしておくことにしよっと)
「これからの魔法修行に大切な諫言をありがとうございます。これから一生懸命修行して、偉大な魔法使いとなれるよう精進致します」
私のしおらしい言葉に満足したらしい試験官は、私の評価を記した紙を手渡してくれ、盛大に私とトルルを励ましてくれた。どうやら、とても気のいい方らしい。彼自身も魔法使いにあこがれて、あこがれて、でも魔法力が足りなくてあきらめたという方だった。
「君のように才能のある子は、この国の宝だからね。平民だって関係ない、魔法使いは実力がすべての世界だ。君の名前は覚えておくよ、メイロード・マリス君! きっと君なら大成するさ!」
(この方の魔法使いの能力を見抜く力は本物ね)
たくさんの魔法使いの試験を担当することで得た能力なのだろう。面白い人だった。彼に見送られて、申請窓口まで戻ると、私たちは試験結果の書かれた紙を提出。無事に魔法使いのライセンスカードであるギルドカードを手に入れた。
(?)
「どうしたのマリスさん?」
「あ、いや……」
トルルのカードは予定通り10級なのだが、私のカードは一人前の魔法使いを現すとされる5級と表示されていた。
私は慌ててカードの発行を担当してくれたお姉さんのところへ行き、何かの間違いではないかと聞いてみた。
「確かにお嬢ちゃんのような小さな子が5級ってことはないわよね、もう一度チェックしますね。ええと、試験結果の用紙はどこだったかしら……」
お姉さんが再度調べてくれた結果は、やはり5級相当の判断だった。
(どーしてよぉ! めっちゃ魔法力は絞ったよ。やりすぎないようがんばったよ!)
だが、教えてもらった理由を聞いて、本当に私は脱力した。原因は私の家事魔法だったのだ。特に私が最後に使った魔法を使ったドライヤーは魔法名の登録のない技術で、オリジナル魔法と認定されていた。魔法創造はとても高い評価を受けるため、私は一人前と認められてしまったらしい。多分にあの試験官の個人的身びいきもありそうな気はするが、そう言われてしまったら、違いますとも言えない。
(たしかに、あれは私のオリジナルなんだよね。普段使いし過ぎていてそんな意識全然なかったんだけど、というかオリジナルの家事魔法を作る魔法使いがそもそもいないもんね)
というわけで、私はなんと子供魔法使いとして認定されてしまった。窓口のおねえさん曰く“おそらく最年少記録”で……
トルルはすごいすごいと言って喜んでくれているが、私は普通に修業がしたい。
(このレベルじゃもうインターン制度も使えないじゃん!)
がっくりと肩を落とした私を無視して、トルルが早速依頼を見に行こうと私の手を引っ張る。
(試験官さん! あなたは悪くない、悪くないけど、うらむからね!)
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