利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

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3 魔法学校の聖人候補

548 最初の獲物

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548

今日は早い時間に〝魔術師ギルド〟へ向かったこともあり、すべての手続きを終えて外に出た時はまだお昼を過ぎたぐらいの時間だった。

「どうする? これから狩りに行ってみる?」

顔にいますぐ行きたい、と書いてあるやる気満々のトルル。確かに日数は限られているし、とにかく早く現金収入を得てあげないとトルルも宿代が気になって仕方ないだろう。この依頼が成功すれば、宿代だけじゃなく、滞在費としても十分すぎる金額が手に入る。今後に余裕を持たせるためにも、ちゃっちゃと片付けるのがいいかもしれない。

「それじゃ、一旦宿へ戻ってお昼を軽く食べたらすぐ出かけましょうか」

私の言葉に飛び跳ねんばかりのトルルは

「うん! いこう! やるぞー!」

と、言いながら走り出した。

(では、魔法使いとしての初めての正式な依頼……やってみますか)

宿へ戻るとちょうど昼どき、ミノンさんの食堂はお昼もかなり繁盛している様子だ。ミノンさんは私たちのためにカウンター席を用意していてくれたので、そこで慌ただしく昼食を取ることにした。

「これから狩りに行くことのなったのであまり時間がないのですが、すぐにできるものをお願いできますか?」

私の言葉にミノンさんは合点承知とばかり、作り置きのお惣菜のワンプレートを出してくれた。

「着いたばかりなのにセワしないねぇ、怪我には気をつけてね」

ボイルした数種の野菜にハムに近い食感の肉料理、それに煮豆、なかなか健康的なメニューだ。私は携帯用に持っている調味料入れを取り出して、胡椒、唐辛子、それにエジン先生からもらった開発中の醤油もどき、それに食卓に置かれていたお酢などを使って即席のソースを作り、野菜やハムにつけて食べてみた。ミノンさんのお料理はとても美味しいのだが、やはり同じような味が続くと飽きてしまうのは致し方ない。ミノンさんはチラチラとこちらをみていたが、忙しい時間帯だったのとこちらも急いでいたのとで、この味変グッズについては触れないまま、宿を出てしまった。

(まぁ、まだ数日いるわけだし。きっとそのうち聞かれるでしょ)

狩りの支度を整えた私たちは、セジャムの裏門からゼリアンのいる丘を目指してしばらく歩いていった。15分ほど歩くと《索敵》に反応が出た。バレーボールぐらいのサイズの丸いものが2、30匹背の高い草陰に密集している。

かなりの遠距離だが《鑑定》を試してみるとなんとか情報が取れた。

〉ゼリアンーースライム属 草原や低地の林に住む魔物。集団で生活し、主食は植物。好戦的ではないが、切る叩くといった物理攻撃は無効。火系攻撃が最も有効。魔法による火、氷などの攻撃が推奨される。虹色の小さな石を内包。ゼリアン石と呼ばれるこの石には宝飾品としての価値がある。ごく稀に小さな魔石を内包することもある。

(おお、なるほどね。やっぱり、トルルの話の通り物理攻撃は厳しいか。火と氷以外はダメなのかな?)

「トルル、ちょっと試してみてもいい?」

私が《索敵》を使って調査した結果、前方の草むらにゼリアンの群れがいた。そこでその群れにいくつか攻撃法を試し、有効な魔法を探ってみることにした。

(まずは魔法を使った物理攻撃《流風弾エア・バレット》を試してみよう)

私は《的指定ターゲット》を使って草むらのゼリアンの一匹へと照準を定め、小石を風に乗せて打ち込んでみた。小石は難なくゼリアンを貫通し、一瞬その半透明な魔物に穴を開けたが、その穴はすぐに塞がってしまった。

「マリスさん。やっぱり、直接叩くのは全然効いてないよ。攻撃したやつも群も全部逃げちゃったし……」

確かに、打ち抜いた個体以外も、たくさんいたはずのゼリアンが一瞬でいなくなっている。どうやらゼリアンの生存戦略は逃げる一択のようで、その逃げ足はかなり早い。だが長距離を逃げるわけではないようで、目視では追えないところまで全速力で移動する、ということらしい。

(それぐらいじゃ私の《完全脳内地図把握パーフェクト・ナビゲーション》からは逃げられないんだよねぇ)

「トルル、このゼリアンはひとつ狙うと周囲にいる仲間が全部逃げちゃう。1匹づつ狙うのはかなり効率が悪いと思うの」

「そうだね、200匹も捕まえるとなるとけっこう大変かも……5日以内に終われるかなぁ……」
どうやら数匹を捕まえるという話とはまったく大変さが違うと、トルルも気がついたようだ。ゼリアンの逃げ足の速さに、どうしたらいいのかわからないという困り顔だ。

「これは、追いかけていては時間ばかりかかってラチが開かないと思う。そうだな……トルルちょっと頑丈で高さのある土壁を作れるとこを探して、そこに壁を作って欲しいんだけど頼める?」

「わかった。でも、それでどうするの?」

「1匹づつ追いかけるのが大変なら、一か所に集めてから叩きましょう」

私たちは手分けをして、魔法を使った〝追い込み漁〟で、ゼリアンの大量捕獲を狙う作戦を開始した。
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