利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

文字の大きさ
370 / 840
3 魔法学校の聖人候補

559 遭遇

しおりを挟む
559

早速オルダンさんと話をしようとしたのだが、周りは戦闘状態の修羅場中。

私は2匹の〝ビッグマモット〟と戦闘中のスフィロさんに大声で叫んだ。

「この怪我をした方たちを隔離したいんですが、私がいなくても大丈夫ですかーー?」

私の言葉に、スフィロさんも大声で返してくる。

「大丈夫だ。これぐらいなら私たちだけで充分さ。君たちの目的はその人なんだろう。なら彼の安全を確保してやってくれ!」

「ありがとうございまーす!」

と話しているところへ、私とオルダンさんに向かって“鉄爪アイアンクロービッテ”が飛びかかってきた。

危ないと思った私は、ほぼ無意識で瞬時に《土壁》に圧力を加えて強化した《岩壁》を作り、“鉄爪アイアンクロービッテ”はそれに全速力で体当たりをして気絶した。

(痛ったそー)

そのまま、倒れた冒険者のみなさんとオルダンさんの周囲も《岩壁》でガードしたので、これでもう襲われる心配はないはずだ。

他の冒険者の皆さんは、さすがにそこまでひどい傷はなく、体力の消耗が一番大きい感じだったので、〝ポーション〟を各々に配って飲んでもらい、回復を促した。オルダンさんには、もちろん〝ハイパーポーション〟だとは言わず、ひどい足の傷に少しかけてようすをみる。

「どうです。歩けそうですか?」

私はオルダンさんにもポーションを渡しながらそう聞いた。

「あ、ありがとうございます。痛みは引きました。すごいお薬をお持ちですね。私は……私はもう、ここで死んで天国で妻と会うのだと、思っていました……」

涙目のオルダンさんに私は少しいたずらっぽく返した。

「え、天国に奥様はいませんよ。もしオルダンさんが行ってたら、まちぼうけでしたね」

「マリスさんは、妻の容態をご存じなんですか? まだ、妻は生きていてくれるんですか? ああ、でもヒールロックがなかったら、もう長くは……」

「奥様は全快なさいました。もちろんお腹の赤ちゃんも無事です」

「へっ?」

号泣の準備に入っていたオルダンさんが、なんだかものすごく間抜けな顔でこちらを見ている。

「ですから、奥様の病気は治ったんです。私たちが見たときはまだお休みになっていましたが、意識はしっかり戻っていますし、病気は去りました」

それから、私たちがオルダンさんのお店に行ったこと。そして奥さんのことを聞き診察したこと。私が持っていた薬が奥さんに効いたこと、そんなちょっと嘘交じりの顛末を手短に話した。

「だから、こんなところで足を怪我して動けなくなっている場合じゃないんです。早く帰ってあげなきゃダメじゃないですか!」

一瞬涙が止まったかに見えたオルダンさんは、

「帰ります。帰ります。いますぐ帰りますう~」

っと言って、嬉しさと安堵で、再び大号泣。

大人の男性の大号泣を止める術もなく見ていると《石壁》を剣でたたく音がして、このあたりの魔物の駆除が終わったと知らせがあった。私の《索敵》でも、周囲に敵はいないことが確認できたので、《石壁》も撤去した。

「どうだ? 彼らは大丈夫そうか?」
「ありがとうございます。自力で帰れる程度だと思います。できればこの階層の入り口まで送っていきたいのですが、お願いできますか」

スフィロさんは仕方ないという顔をしつつも、了承してくれた。

「基本的に冒険者はほかの冒険者を助けない。それが冒険者の矜持だし、そんなことをしていたら共倒れになる可能性の方がずっと高いからだ。

だが、今回は事情が事情で、商人交じりのパーティーだったし、しかも君たちを雇用する条件が彼らの発見と救助だったからね。ちゃんと面倒見させてもらうよ」

「ありがとうございます。私たちは引き続きしっかりお仕事をいたしますので、任せてください」

最後までしっかり彼らを守ろうとしてくれる〝剣士の荷馬車〟の皆さんに、私はとても感謝していた。彼らの紳士的で誠実な対応には、私も誠実に応えたい。

「ああ、君らには期待している。ここから下の層はより《鑑定》が必要な素材も魔物も増えていくはずだ。君らとなら、かなり調査が進みそうで助かるよ」

ちょっと意味ありげな頬笑みを浮かべたスフィロさんだが、それ以上は何も言わず“ポーション”でなんとか回復したパーティーの皆さんを第三階層入り口まで護衛して送っていった。

「“剣士の荷馬車”の皆様、そしてマリスさん、トルルさん、本当にありがとうございました。生きてこのダンジョンを出られて、本当にうれしいです」

オルダンさんが頭を下げる。

「いまは一刻も早く奥様のところへ向かってください。お気をつけて」
「こんな無茶、もうしちゃだめだよ! ダンジョンは危険なんだからね!」

私たちのお説教に頭をかきながら、何度もお礼を言って彼らは上の階層へと上がっていった。

「ありがとうございました。皆さんのおかげでオルダンさんたちを助け、大事な伝言を伝えることができました。

さて、これで私たちの目的は達成されました。あとはスフィロさんたちのサポートに徹します。行ける階層までいきましょう」

私の言葉にスフィロさんは優しく微笑んで頷いた。

「ああ、頼むぞ」

そして私たちはまだ地図のない階層のダンジョンへ向かって、進み始めた。
しおりを挟む
感想 3,006

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。