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3 魔法学校の聖人候補
567 希少素材のお値段
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567
〝ヒールロック〟の核は、その巨体からすると本当に小さなものだった。テニスボールぐらいの大きさで、表面は乳白色と薄い黄色が渦巻いて動いている不思議なテクスチャーをしている。
皆のハイテンションな胴上げが終わりやっと解放された私に、取り出されたその希少な素材を、スフィロさんが恭しく差し出した。
「これはあなた方がいなければ決して得ることができなかった宝です。地上に出るまで是非お持ちください」
“剣士の荷馬車”の皆さんは感謝を表すため跪いて、私とトルルに礼を取ってくれた。なかなかいいシーンなのだが、残念ながら感動している暇はなかった。この頃には階層のいたるところでドーン、とかゴツッといった大きな音がかなりうるさく響き渡り始めていたのだ。
崩れ落ちた〝ヒールロック〟の振動がかなり大きかったので、少し離れた位置に囲い込んでいた〝ロックバイター〟にもそれが伝わり動き始めてしまったのだ。もう動きの連鎖が始まっているようで、音の数はどんどん増えている。もし“ロックバイター”の周囲に壁を作っていなかったら逃げ切れる気がしないほど、かなり危ない状況だ。
(これ壁がなかったら、大量のボールが猛スピードで行き交うビリヤード台の上を逃げるような状況になっちゃうよね)
スフィロさんももっと話したそうだったが、この危うい状況を見て切り替え、ともかく即時撤収となった。
「これは……思った以上に早く壁が崩れてしまうかもしれません。この階層からすぐに退避しましょう!」
スフィロさんの指示で、私たちは回収したお宝を持ち、全速力で安全地帯である第十階層へと向かった。
急ぐときのお約束で、私は有無を言わさずスフィロさんに抱えられ、躰が振動を感じるドーンといった大きな音やガツンガツンといった何度も壁にものが激突する音が絶え間なく響き渡る壁の間を駆け抜けた。
いつ私とトルルが設置した魔法の壁が破られてしまうかとハラハラしながらも、どうやら無事に安全な第十階層まで戻り、やっと一息つくことができたときには、さすがに全員動けないほど疲れていた。
ここで十分な休息をとることにした私たちは、土埃だらけの躰を《清浄》の魔法で綺麗にし、落ち着いた後、軽い食事をしながら今回の戦利品を眺めていた。
私は味噌と牛乳で味をつけ、たっぷりの野菜と鳥団子を入れた熱々の和風シチューと薄切り肉を大量に挟んだボリューム感のあるサンドウイッチを提供し、たっぷりのピクルスを添えて疲労回復も促した。とても気に入ってもらえたようで、ご飯作り担当として〝剣士の荷馬車〟にいつでも高給で採用するよ、と冗談とも本気ともつかない口調で何度も誘われてしまった。
「では、マリスさんの《鑑定》によると、この〝ヒールロックの核〟からは、〝ハイパーポーション〟60本相当の魔法薬が精製可能ということですね」
私はうなずいてからさらに詳しく説明した。《鑑定》したところ、この“ヒールロックの核”の素材の品質は最上級にはややおよばないが、高品質で混ざり物も少なく薬の素材として十分の使えるものだった。
〝ヒールロックの核〟自体が、あまりに希少な素材のため、その使用法についての研究は進んでおらず、最高級の魔法治癒薬をほぼ単体で作ることができるということしかわかっていない。もちろんそれだけでも十分すぎる希少素材だ。だが、もっと研究が進めば、いろいろな薬が作れる素材の可能性もあるかもしれない。
「大金貨10枚は堅いでしょうが、いまの素材不足状況を考えますと、おそらくもっと高く売れるでしょう。うちのクランの売買交渉担当は、もしかしたら売り時を考えて少し時間を置くことにするかもしれません。
その場合、おふたりには売却確定まで待っていただくか、もしくはすぐにご入用でしたら現時点での売値予想から計算した金額をお支払いすることになります」
スフィロさんの言葉に、トルルが考え込みウンウンと唸っている。目先の大金か、少し待ってさらなる大金をもらうか、確かに悩ましい選択だろう。彼らのことは十分信用できると思っているので、余計に迷うのだろう。
「現物支給はダメですか?」
「はい?」
私の言葉にスフィロさんが不思議そうな顔をする。
「お売りになるのでしたら、うちの交渉担当はいい仕事をしてくれますよ。きっとご満足いただける金額を……」
私が自分で売り捌くつもりだと思ったらしいスフィロさんはそう言ったが、私の本意はそこにはない。
「いえ、そうじゃないんです。この〝ヒールロックの核〟は、とても珍しいのですよね。実は、私は魔法薬の勉強もしているので、素材として少し欲しいな、と思いまして……」
「メイロードさまは、魔法薬にまで通じておられたのですか! いやはや」
スフィロさんは目を丸くしている。
(それにいま、なんて言った?)
「もしかして、わかってます?」
「何のことでございましょう?」
「ああ、いえ、いいです」
突っ込むと墓穴を掘りそうなので、ここは知らん振りをしておくことにしよう。
(多分、スフィロさんは気がついているんだろうけど、いまは言わずにいてくれるつもりらしいし……)
〝ヒールロック〟の核は、その巨体からすると本当に小さなものだった。テニスボールぐらいの大きさで、表面は乳白色と薄い黄色が渦巻いて動いている不思議なテクスチャーをしている。
皆のハイテンションな胴上げが終わりやっと解放された私に、取り出されたその希少な素材を、スフィロさんが恭しく差し出した。
「これはあなた方がいなければ決して得ることができなかった宝です。地上に出るまで是非お持ちください」
“剣士の荷馬車”の皆さんは感謝を表すため跪いて、私とトルルに礼を取ってくれた。なかなかいいシーンなのだが、残念ながら感動している暇はなかった。この頃には階層のいたるところでドーン、とかゴツッといった大きな音がかなりうるさく響き渡り始めていたのだ。
崩れ落ちた〝ヒールロック〟の振動がかなり大きかったので、少し離れた位置に囲い込んでいた〝ロックバイター〟にもそれが伝わり動き始めてしまったのだ。もう動きの連鎖が始まっているようで、音の数はどんどん増えている。もし“ロックバイター”の周囲に壁を作っていなかったら逃げ切れる気がしないほど、かなり危ない状況だ。
(これ壁がなかったら、大量のボールが猛スピードで行き交うビリヤード台の上を逃げるような状況になっちゃうよね)
スフィロさんももっと話したそうだったが、この危うい状況を見て切り替え、ともかく即時撤収となった。
「これは……思った以上に早く壁が崩れてしまうかもしれません。この階層からすぐに退避しましょう!」
スフィロさんの指示で、私たちは回収したお宝を持ち、全速力で安全地帯である第十階層へと向かった。
急ぐときのお約束で、私は有無を言わさずスフィロさんに抱えられ、躰が振動を感じるドーンといった大きな音やガツンガツンといった何度も壁にものが激突する音が絶え間なく響き渡る壁の間を駆け抜けた。
いつ私とトルルが設置した魔法の壁が破られてしまうかとハラハラしながらも、どうやら無事に安全な第十階層まで戻り、やっと一息つくことができたときには、さすがに全員動けないほど疲れていた。
ここで十分な休息をとることにした私たちは、土埃だらけの躰を《清浄》の魔法で綺麗にし、落ち着いた後、軽い食事をしながら今回の戦利品を眺めていた。
私は味噌と牛乳で味をつけ、たっぷりの野菜と鳥団子を入れた熱々の和風シチューと薄切り肉を大量に挟んだボリューム感のあるサンドウイッチを提供し、たっぷりのピクルスを添えて疲労回復も促した。とても気に入ってもらえたようで、ご飯作り担当として〝剣士の荷馬車〟にいつでも高給で採用するよ、と冗談とも本気ともつかない口調で何度も誘われてしまった。
「では、マリスさんの《鑑定》によると、この〝ヒールロックの核〟からは、〝ハイパーポーション〟60本相当の魔法薬が精製可能ということですね」
私はうなずいてからさらに詳しく説明した。《鑑定》したところ、この“ヒールロックの核”の素材の品質は最上級にはややおよばないが、高品質で混ざり物も少なく薬の素材として十分の使えるものだった。
〝ヒールロックの核〟自体が、あまりに希少な素材のため、その使用法についての研究は進んでおらず、最高級の魔法治癒薬をほぼ単体で作ることができるということしかわかっていない。もちろんそれだけでも十分すぎる希少素材だ。だが、もっと研究が進めば、いろいろな薬が作れる素材の可能性もあるかもしれない。
「大金貨10枚は堅いでしょうが、いまの素材不足状況を考えますと、おそらくもっと高く売れるでしょう。うちのクランの売買交渉担当は、もしかしたら売り時を考えて少し時間を置くことにするかもしれません。
その場合、おふたりには売却確定まで待っていただくか、もしくはすぐにご入用でしたら現時点での売値予想から計算した金額をお支払いすることになります」
スフィロさんの言葉に、トルルが考え込みウンウンと唸っている。目先の大金か、少し待ってさらなる大金をもらうか、確かに悩ましい選択だろう。彼らのことは十分信用できると思っているので、余計に迷うのだろう。
「現物支給はダメですか?」
「はい?」
私の言葉にスフィロさんが不思議そうな顔をする。
「お売りになるのでしたら、うちの交渉担当はいい仕事をしてくれますよ。きっとご満足いただける金額を……」
私が自分で売り捌くつもりだと思ったらしいスフィロさんはそう言ったが、私の本意はそこにはない。
「いえ、そうじゃないんです。この〝ヒールロックの核〟は、とても珍しいのですよね。実は、私は魔法薬の勉強もしているので、素材として少し欲しいな、と思いまして……」
「メイロードさまは、魔法薬にまで通じておられたのですか! いやはや」
スフィロさんは目を丸くしている。
(それにいま、なんて言った?)
「もしかして、わかってます?」
「何のことでございましょう?」
「ああ、いえ、いいです」
突っ込むと墓穴を掘りそうなので、ここは知らん振りをしておくことにしよう。
(多分、スフィロさんは気がついているんだろうけど、いまは言わずにいてくれるつもりらしいし……)
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