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3 魔法学校の聖人候補
593 受賞パーティー
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593
「リ、リリ、リアーナ妃殿下……」
私の言ったことの意味を理解した途端、まともに口が聞けなくなった公爵は、何度も言葉を発しようとして、失敗するという状況に陥った。そんな公爵を、生徒会長が舞台袖に冷静に誘導し、そのまま公爵はフェードアウト。私も壇上でお辞儀をして受賞者たちの並ぶ列へと下がった。
(よーし、計画通り!)
私は心の中でニンマリしながら、極めてしおらしく授賞式をやり過ごした。このちょっとした事件の後も、プレゼンターを何処かへと連れて行かれた公爵様から学校長に変えて表彰式はつつがなく進行した。
(貴族ってこういう時のスルースキルがとても高いのね。みんな何事もなかったかのように平然としてたもの)
引き続いて、祝賀パーティーが始まり、軽快な音楽が流れる中、受賞者たちは多くの人たちから祝福を受け、乾杯し、踊っている。やはりこの《魔法競技会》でいい成績を残すことは、一族の誉れのようで、クローナも親族や知り合いに囲まれ、褒めちぎられている。
(私がいなければ優勝だったのかもしれないと思うと、ちょっと気の毒しちゃったな、とは思う。ごめんね、クローナ)
私は壇上から降りた途端に貴族たちに取り囲まれ、質問攻めだ。
「皇妃様とはどのようにお知り合いに?」
「いままで本当にご自身の出自を知らなかったのですか?」
「今日の攻撃はどれも難しいものではなかったようですが、どれぐらい魔法力を使われたのでしょう?」
次から次へとくり出される質問を微笑みつつはぐらかしていると、いいタイミングで「グッケンス博士がお呼びです」とセーヤ伝えにきてくれた。私は〝内弟子の立場上、博士優先〟のため、好奇心でパンパンに膨らんだみなさんを残して、すぐにその場を離れた。
もちろん、事前の打ち合わせ通りだ。
「グッケンス博士、ありがとうございます。助かりました」
壁際の目立たない場所でお酒を飲んでいた博士と会って、私は少し緊張が抜けた。ソーヤが飲み物を持ってきてくれたので、それを飲んで一息つく。
そのあと周囲を見渡すと、こんな目立たない場所にいるのに、私とグッケンス博士の周りには、話しかけたそうにしている人がたくさんうろうろしている。でも、誰も話しかけてはこない。それぐらい博士は怖がられているし、敬われているのだ。
以前聞いたことがあるが、様々な武勲を立て、多くの重要な発明発見をシド帝国にもたらした博士は、勲章やら爵位やらをその度にもらうことになったため、すでに次に位をあげると皇帝を超えるとまで噂されているのだ。
博士が最後に願った褒美が〝貴族としての公式行事や義務的行動の免除〟であったため、爵位すら名乗ることのない博士だが、立場としては皇帝の次ぐらいに高位の人物なのだ。
だから、こうした公式な場では、博士から話しかけられない限り、誰も博士に話しかけることができない。
そのため、まわりをうろうろしながら遠巻きに見る人たちがたくさん出てくる。皆伝説の魔法使いに話しかけられたくてそうしているのだが、博士はいつも全無視だ。というか、こうした行事そのものに出てすらこない。
いまはさらにセーヤとソーヤがガッチリガードしているため、そばにいる私も話しかけられずに済んでいる。
私と博士は、そんな彼らに聞かれないよう《消音》の魔法を使いながら立ち話。
「一応出席はしたのだし、元々このパーティーは、強制参加でもない。メイロードはこのまま仕事にかこつけて、わしと一緒に出てしまうのが良かろう。彼らに広めさせたい情報は、セーヤとソーヤに適当に広めさせておけばいいじゃろう。あとは彼らに任せれば勝手に拡散される。お前の立場はすでに衆人の知るところとなったのだから、公爵家はこれ以上何もできん」
「……だと、いいのですが、そう言っていただけて、ちょっとほっとしました」
「アーシアン・シルベスターも、そろそろわしの研究棟にやってきているだろう。あれはいい仕事をしてくれた。しっかり礼を言っておくことだ」
「そうですね。あの方のおかげで、公爵が動く前に迅速に計画を立てることができました。先先代のシルベスター公爵が、ヴァイス=アーサー・シルベスターに爵位を与えていた事実も突き止めてくれましたし……」
メイロードの祖父は、大人になったヴァイス=アーサーと再会を果たした後、彼がいつ貴族に戻ってもいいよう正式に伯爵位を与えていた。貴族には、名誉の戦死者だけでなく、病気で亡くなったり、事故にあったりした子供に〝名誉として爵位を与える〟という習慣がある。先先代の公爵はこれを利用して、行方不明の息子に爵位を与えていたのだ。
サイデムおじさまをみてもわかるように、庶民が貴族として家を構えるためには非常に高い壁がある。おじさまは若い頃仕事を通じてとても親しくなった地方の有力者に養子にしてもらい、その家の名字〝サイデム〟を名乗れるようになった。こうして苗字を得ても、爵位を得られるまでには、さらに十年以上の時間がかかっている。
反対に高い位にある貴族の直系の子孫であれば、その継承はとてもスムースなのだ。
私たちは多くの人に見つめられながら、ゆっくりと会場を後にした。
メイロード女伯爵の話は、すぐに貴族たちへ広まるだろう。
(でも、この後が実は大変なんだよね……)
「リ、リリ、リアーナ妃殿下……」
私の言ったことの意味を理解した途端、まともに口が聞けなくなった公爵は、何度も言葉を発しようとして、失敗するという状況に陥った。そんな公爵を、生徒会長が舞台袖に冷静に誘導し、そのまま公爵はフェードアウト。私も壇上でお辞儀をして受賞者たちの並ぶ列へと下がった。
(よーし、計画通り!)
私は心の中でニンマリしながら、極めてしおらしく授賞式をやり過ごした。このちょっとした事件の後も、プレゼンターを何処かへと連れて行かれた公爵様から学校長に変えて表彰式はつつがなく進行した。
(貴族ってこういう時のスルースキルがとても高いのね。みんな何事もなかったかのように平然としてたもの)
引き続いて、祝賀パーティーが始まり、軽快な音楽が流れる中、受賞者たちは多くの人たちから祝福を受け、乾杯し、踊っている。やはりこの《魔法競技会》でいい成績を残すことは、一族の誉れのようで、クローナも親族や知り合いに囲まれ、褒めちぎられている。
(私がいなければ優勝だったのかもしれないと思うと、ちょっと気の毒しちゃったな、とは思う。ごめんね、クローナ)
私は壇上から降りた途端に貴族たちに取り囲まれ、質問攻めだ。
「皇妃様とはどのようにお知り合いに?」
「いままで本当にご自身の出自を知らなかったのですか?」
「今日の攻撃はどれも難しいものではなかったようですが、どれぐらい魔法力を使われたのでしょう?」
次から次へとくり出される質問を微笑みつつはぐらかしていると、いいタイミングで「グッケンス博士がお呼びです」とセーヤ伝えにきてくれた。私は〝内弟子の立場上、博士優先〟のため、好奇心でパンパンに膨らんだみなさんを残して、すぐにその場を離れた。
もちろん、事前の打ち合わせ通りだ。
「グッケンス博士、ありがとうございます。助かりました」
壁際の目立たない場所でお酒を飲んでいた博士と会って、私は少し緊張が抜けた。ソーヤが飲み物を持ってきてくれたので、それを飲んで一息つく。
そのあと周囲を見渡すと、こんな目立たない場所にいるのに、私とグッケンス博士の周りには、話しかけたそうにしている人がたくさんうろうろしている。でも、誰も話しかけてはこない。それぐらい博士は怖がられているし、敬われているのだ。
以前聞いたことがあるが、様々な武勲を立て、多くの重要な発明発見をシド帝国にもたらした博士は、勲章やら爵位やらをその度にもらうことになったため、すでに次に位をあげると皇帝を超えるとまで噂されているのだ。
博士が最後に願った褒美が〝貴族としての公式行事や義務的行動の免除〟であったため、爵位すら名乗ることのない博士だが、立場としては皇帝の次ぐらいに高位の人物なのだ。
だから、こうした公式な場では、博士から話しかけられない限り、誰も博士に話しかけることができない。
そのため、まわりをうろうろしながら遠巻きに見る人たちがたくさん出てくる。皆伝説の魔法使いに話しかけられたくてそうしているのだが、博士はいつも全無視だ。というか、こうした行事そのものに出てすらこない。
いまはさらにセーヤとソーヤがガッチリガードしているため、そばにいる私も話しかけられずに済んでいる。
私と博士は、そんな彼らに聞かれないよう《消音》の魔法を使いながら立ち話。
「一応出席はしたのだし、元々このパーティーは、強制参加でもない。メイロードはこのまま仕事にかこつけて、わしと一緒に出てしまうのが良かろう。彼らに広めさせたい情報は、セーヤとソーヤに適当に広めさせておけばいいじゃろう。あとは彼らに任せれば勝手に拡散される。お前の立場はすでに衆人の知るところとなったのだから、公爵家はこれ以上何もできん」
「……だと、いいのですが、そう言っていただけて、ちょっとほっとしました」
「アーシアン・シルベスターも、そろそろわしの研究棟にやってきているだろう。あれはいい仕事をしてくれた。しっかり礼を言っておくことだ」
「そうですね。あの方のおかげで、公爵が動く前に迅速に計画を立てることができました。先先代のシルベスター公爵が、ヴァイス=アーサー・シルベスターに爵位を与えていた事実も突き止めてくれましたし……」
メイロードの祖父は、大人になったヴァイス=アーサーと再会を果たした後、彼がいつ貴族に戻ってもいいよう正式に伯爵位を与えていた。貴族には、名誉の戦死者だけでなく、病気で亡くなったり、事故にあったりした子供に〝名誉として爵位を与える〟という習慣がある。先先代の公爵はこれを利用して、行方不明の息子に爵位を与えていたのだ。
サイデムおじさまをみてもわかるように、庶民が貴族として家を構えるためには非常に高い壁がある。おじさまは若い頃仕事を通じてとても親しくなった地方の有力者に養子にしてもらい、その家の名字〝サイデム〟を名乗れるようになった。こうして苗字を得ても、爵位を得られるまでには、さらに十年以上の時間がかかっている。
反対に高い位にある貴族の直系の子孫であれば、その継承はとてもスムースなのだ。
私たちは多くの人に見つめられながら、ゆっくりと会場を後にした。
メイロード女伯爵の話は、すぐに貴族たちへ広まるだろう。
(でも、この後が実は大変なんだよね……)
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