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4 聖人候補の領地経営
736 宣誓権
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736
「メイロードさまは、私たちをここから解放したいとお考えなのでしたね」
ソルトーニ君は、私がむいたうさぎリンゴを不思議そうな顔をして見ながらそう言った。
「ええ、でも他の子供たちは、まだまだあのアーティファクトの洗脳下にいるわ。あなたのように、彼らから押し付けられたニセの記憶が脱けている人は他にはいないでしょうし……どうしたらいいのか、難しいところね」
悩む私に、少し考えてからソルトーニ君はこう言った。
「メイロードさま、メイロードさまはこの〝孤児院〟の背後について調べをしてから〝孤児院〟に手をつけるおつもりなのですよね」
「ええ、そちらをある程度明らかにしてからでないと、この〝孤児院〟が続いてしまう可能性もあるしね。そちらをなんとかしてからでないと、子供たちの今後のことに専念できないでしょう?
助け出すだけなら、いますぐにでも行動に移すことは可能かもしれないけど、それは誠実じゃない気がするの。
だから、あと少しの間だけは私のお菓子や食べ物で、体力や思考力を徐々に回復してもらいながら、ここでの生活を続けてもらおうと思うの。もちろんなるべく早く解放したいけどね」
「そういうお考えでしたら〝聖戦士〟を宣誓なさってはどうでしょう」
「〝宣誓〟?」
ソルトーニ君によると、いまだかつて誰もしたことはないが、八組一位の生徒には〝宣誓権〟なるものがあるのだという。
「実はこの〝孤児院〟最強は院長先生なのです。我々八組は院長先生直々の指導が受けられる特典があるのですが、私たちは誰もまだ院長先生には敵いません。ですが〝宣誓権〟を使い、自分は〝聖戦士〟であると主張し、院長先生との試合に勝てば、おそらくすぐにメイロードさまがお望みの、さらに上の方々の元に行くことができるはずです」
最初に出会った、あのアーティファクトを首にかけていた男性がこの〝孤児院〟の院長であることは、私もすでに知っていたが、まだ八組へ上がったばかりの私には、彼がここの最強魔術師だというのは初耳だった。
院長は普段魔法を使わないそうで、八組の子たちへの指導も決まった数日のみだという。
(おかしいわね……優秀な人材を切実に望んでいるのなら、もっとしっかり子供たちを鍛えたらいいのに……)
私の疑問は尽きなかったが、ここでその答えを得るのは難しいだろう。
ともかく私は〝宣誓権〟を行使することで、あの院長と対戦することができる。そしてそれに勝てば私は彼らが望む〝聖戦士〟として、どこかへ連れていかれるはずだ。そして、そのどこかこそ、この大規模な誘拐組織の心臓部だと考えていいだろう。
ただひとつ問題がある。
この院長に関しては、事前情報がほとんどなく、これから得られる情報もあまり期待できないという点だ。特に魔法に関しては、その実態を知る者がいるかどうかもわからないし、魔法を使っている姿を見ること稀だというのだからお手上げだ。
(ここまで事前情報がない相手と試合形式で戦うのは、さすがにちょっと怖いなぁ……)
「院長の魔法について、何か知っておることがあったら教えてくれる?」
「もちろんです……と言いたいところですが、私にわかることは院長が火魔法の使い手であること。そして、非常に高い魔法力を持っていて〝消えぬ炎〟というふたつ名を持つ聖戦士であったということぐらいなのです。一度だけ八組全員と四対一で模擬戦をしたのですが、その名の通り次々と高度な魔法を繰り出してもまったく平静のままで、こちらは全員魔法力切れで負けました。持久戦になったら、絶対にかないません」
どうやら院長もソルトーニ君と同じく火魔法特化型の魔術師のようだ。だが、大きく違うのはその魔法力。強力な魔法を多弾で長時間撃ち続けられるという、戦闘時にはとても頼りになりそうな能力だ。
「実態はわかりませんが、四千を超えているのではないかという恐ろしい噂もございます……あの、どうかなさいましたか、メイロードさま」
「いや、べつになんでもないの。そう、四千以上なの……すごいのねぇ」
院長の魔法力については、先生方の話をもう少しセーヤとソーヤに聞き込んでもらって精査する必要はあるが、実際に五百を超える魔法力を有する四人で対戦したソルトーニ君の印象では、最後にはやや疲れは見えたもののまだ余裕は十分にあるようだったそうなので、四千という数字はかなり近い線だという気はする。
(そうか……四千超えたら〝消えぬ炎〟なんていうふたつ名が付いちゃうのね。じゃあ、私の魔法力量がバレたらどんなふたつ名がついちゃうんだろう)
ソルトーニ君から、ふたりといない稀有な人物という勢いで院長の魔法力量がいかにすごいかという話を聞きながら、実はそれの一桁上の魔法力をすでに持ってしまっている私は、しみじみ
(やっぱり、私ってバケモノ級なのねぇ……)
と、しみじみ自らの能力の行き過ぎぶりを噛み締めていた。
「メイロードさまは、私たちをここから解放したいとお考えなのでしたね」
ソルトーニ君は、私がむいたうさぎリンゴを不思議そうな顔をして見ながらそう言った。
「ええ、でも他の子供たちは、まだまだあのアーティファクトの洗脳下にいるわ。あなたのように、彼らから押し付けられたニセの記憶が脱けている人は他にはいないでしょうし……どうしたらいいのか、難しいところね」
悩む私に、少し考えてからソルトーニ君はこう言った。
「メイロードさま、メイロードさまはこの〝孤児院〟の背後について調べをしてから〝孤児院〟に手をつけるおつもりなのですよね」
「ええ、そちらをある程度明らかにしてからでないと、この〝孤児院〟が続いてしまう可能性もあるしね。そちらをなんとかしてからでないと、子供たちの今後のことに専念できないでしょう?
助け出すだけなら、いますぐにでも行動に移すことは可能かもしれないけど、それは誠実じゃない気がするの。
だから、あと少しの間だけは私のお菓子や食べ物で、体力や思考力を徐々に回復してもらいながら、ここでの生活を続けてもらおうと思うの。もちろんなるべく早く解放したいけどね」
「そういうお考えでしたら〝聖戦士〟を宣誓なさってはどうでしょう」
「〝宣誓〟?」
ソルトーニ君によると、いまだかつて誰もしたことはないが、八組一位の生徒には〝宣誓権〟なるものがあるのだという。
「実はこの〝孤児院〟最強は院長先生なのです。我々八組は院長先生直々の指導が受けられる特典があるのですが、私たちは誰もまだ院長先生には敵いません。ですが〝宣誓権〟を使い、自分は〝聖戦士〟であると主張し、院長先生との試合に勝てば、おそらくすぐにメイロードさまがお望みの、さらに上の方々の元に行くことができるはずです」
最初に出会った、あのアーティファクトを首にかけていた男性がこの〝孤児院〟の院長であることは、私もすでに知っていたが、まだ八組へ上がったばかりの私には、彼がここの最強魔術師だというのは初耳だった。
院長は普段魔法を使わないそうで、八組の子たちへの指導も決まった数日のみだという。
(おかしいわね……優秀な人材を切実に望んでいるのなら、もっとしっかり子供たちを鍛えたらいいのに……)
私の疑問は尽きなかったが、ここでその答えを得るのは難しいだろう。
ともかく私は〝宣誓権〟を行使することで、あの院長と対戦することができる。そしてそれに勝てば私は彼らが望む〝聖戦士〟として、どこかへ連れていかれるはずだ。そして、そのどこかこそ、この大規模な誘拐組織の心臓部だと考えていいだろう。
ただひとつ問題がある。
この院長に関しては、事前情報がほとんどなく、これから得られる情報もあまり期待できないという点だ。特に魔法に関しては、その実態を知る者がいるかどうかもわからないし、魔法を使っている姿を見ること稀だというのだからお手上げだ。
(ここまで事前情報がない相手と試合形式で戦うのは、さすがにちょっと怖いなぁ……)
「院長の魔法について、何か知っておることがあったら教えてくれる?」
「もちろんです……と言いたいところですが、私にわかることは院長が火魔法の使い手であること。そして、非常に高い魔法力を持っていて〝消えぬ炎〟というふたつ名を持つ聖戦士であったということぐらいなのです。一度だけ八組全員と四対一で模擬戦をしたのですが、その名の通り次々と高度な魔法を繰り出してもまったく平静のままで、こちらは全員魔法力切れで負けました。持久戦になったら、絶対にかないません」
どうやら院長もソルトーニ君と同じく火魔法特化型の魔術師のようだ。だが、大きく違うのはその魔法力。強力な魔法を多弾で長時間撃ち続けられるという、戦闘時にはとても頼りになりそうな能力だ。
「実態はわかりませんが、四千を超えているのではないかという恐ろしい噂もございます……あの、どうかなさいましたか、メイロードさま」
「いや、べつになんでもないの。そう、四千以上なの……すごいのねぇ」
院長の魔法力については、先生方の話をもう少しセーヤとソーヤに聞き込んでもらって精査する必要はあるが、実際に五百を超える魔法力を有する四人で対戦したソルトーニ君の印象では、最後にはやや疲れは見えたもののまだ余裕は十分にあるようだったそうなので、四千という数字はかなり近い線だという気はする。
(そうか……四千超えたら〝消えぬ炎〟なんていうふたつ名が付いちゃうのね。じゃあ、私の魔法力量がバレたらどんなふたつ名がついちゃうんだろう)
ソルトーニ君から、ふたりといない稀有な人物という勢いで院長の魔法力量がいかにすごいかという話を聞きながら、実はそれの一桁上の魔法力をすでに持ってしまっている私は、しみじみ
(やっぱり、私ってバケモノ級なのねぇ……)
と、しみじみ自らの能力の行き過ぎぶりを噛み締めていた。
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