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4 聖人候補の領地経営
764 大口の寄付者
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「メイロードさま、どうされましたか?」
学校の設立のため、イスの郊外に用意された土地では、建設が急ピッチで進んでいる。今日は、すでに一部が出来上がっている事務棟で、今後の予定についての打ち合わせだ。
建設の進捗状況と今後の予定の確認と修正、必要な物品のリストアップといった細々として話も終わり解放されたメイロードは、まだ壁面の工事が続いている廊下を歩いていた。
「どうも、この学校のことを探っているらしい人がいるんだよねぇ……」
メイロードの《索敵》には怪しい人物が示されており、数人の男女が、あちこちで潜入調査をしている様子だ。
「まさか、キルム正教会の残党でしょうか?」
「いや、それはないと思うけど、なんだろうね……」
「では、少し探って参りましょう」
いうが早いか、ソーヤはふっと姿を消した。
(相変わらず見事な気配消しだなぁ)
書類を抱えたメイロードは、ソーヤの消えた方を見ながらクスッと笑った。あとは有能な妖精さんの報告を待つとしよう。
「おい、メイロード。打ち合わせは済んだのか?」
後ろから現れたのは、この魔法屋専門学校プロジェクトの総指揮でもあるサイデムおじさまだ。とはいっても、実際はおじさまが集めた有能なプロジェクトメンバーで構成された準備委員会が実務を担当しているのだが、それでもやはりおじさまの存在はこのプロジェクトの要だ。
「はい。予算関係の心配がいらないのが大きいですが、すべて順調ですよ。寄付が早く集まってくれて、本当にありがたいですよね。第一次の建設はもうだいぶ進んでます。突貫工事でお願いしているので資金はかかりますが、とにかくまだ拘束されている子供たちの居場所を早く作ってあげないと……」
「予算なぁ…… まさかあの方たちが、ここに首を突っ込んでくるとは思わなかったからなぁ。ありがたいことではあるが、いろいろとおかしな憶測を生む可能性も出てくる。変なのもうろついているだろう?」
メイロードは、再び《索敵》の状況を確認しながら、苦笑いを浮かべた。
「そうみたいですね。そんなに気になりますかね、新しい学校を作ることって」
「この学校そのものは、その趣旨からして軍事的な要素はないし、他国から警戒されるようなことはない。間者が気にしているのは金の出どころだ」
「お金? 寄付金のことですか?」
実の所、サイデムもここまであの方たちがこの魔法学校設立に積極的な理由がよくわからずにいた。だが、間違いなく、それにはメイロードが関連しているはずだ。
今回の一連の誘拐事件が決着し、メイロードが帰還したところで、ドール参謀を通じて今回の大規模な作戦の全貌について、当然皇帝陛下に報告書が提出された。だがそこでは、潜入調査に関する協力者については記載されておらず、メイロードの名はどこにも記録されてはいなかった。もちろん、それはメイロードの望みだ。
だがそれでは、今回の最終的には三つの国を巻き込んだ大事件の解決に寄与したにもかかわらず、潜入捜査に携わった功労者にはなんの名誉も褒賞も与えられないということになり、それでは国としてあまりに不誠実だろうと問題になってしまったのだ。
そこには、褒賞を与える側の、他の者たちとの褒賞の兼ね合いという、いたって現実的な問題もあった。
ドール参謀は、この協力者は勲章も報奨金も望んでいないと、何度も話したが、さすがになにひとつ報いないでは済まされないという状況になり、このままではメイロードの大活躍を公にせざるを得なくなるところまで追い詰められてしまった。
そこで一計を案じたルミナーレ様が使者となり、リアーナ皇后様にだけ、実は今回の潜入役をしていたのがメイロード・マリス伯爵であることを告げた。それと同時に、メイロードは、ただただ誘拐された子供たちを気の毒に思って志願しただけであり、晴れがましい勲章など受ける気持ちもなく、むしろ子供たちの今後を考えることに集中したいと願っていることを伝えた。
「あのやさしい子は、目立つことで煩わしいことが増え、子供たちのための仕事が遅れることを、とても嫌がっているのです。それに、あの子に軍人の勲章など似合いませんわ」
母でもあるリアーナ皇后は、このメイロードの気持ちを汲んでくださり、皇帝陛下にこの度の潜入役への褒賞を皇后に一任してもらえるよう頼んでくれたという。
「この軍功は、声高に叫ぶべき大きなものではあろうが、それを望まぬ者もいる。皇帝陛下、その者が真の功労者だというのならば、その者の意に叶う褒賞を与えるのがよろしいのではあるまいか」
そして、その説得の結果が、学校建設への皇后からの莫大な寄付金だったのだ。そしてそういった事実は、メイロードの負担にならないよう、直接は伝えられていない。
そのためこの寄付の窓口となっていたサイデムのところに、いきなり莫大な金額がリアーナ皇后そしてユリシルとエーデン皇子からもかなりの寄付金が持ち込まれ、サイデムはそこで寄付の受付をストップした。
(この寄付元は絶対明かさないほうがいい。お優しい皇后様の寄付ということで済ませるには、この金額は莫大すぎる)
「どうかされましたか? おじさま」
のほほんと子供たちのための施設の構想をあれこれ話し始めたメイロードを見ながら、
(それにしても皇后様太っ腹すぎねぇか。俺が寄付する隙がねぇ……どれだけ皇宮と強いパイプ持ってんだよ、コイツ……)
と、呆れ気味に思ってしまうサイデムなのだった。
「メイロードさま、どうされましたか?」
学校の設立のため、イスの郊外に用意された土地では、建設が急ピッチで進んでいる。今日は、すでに一部が出来上がっている事務棟で、今後の予定についての打ち合わせだ。
建設の進捗状況と今後の予定の確認と修正、必要な物品のリストアップといった細々として話も終わり解放されたメイロードは、まだ壁面の工事が続いている廊下を歩いていた。
「どうも、この学校のことを探っているらしい人がいるんだよねぇ……」
メイロードの《索敵》には怪しい人物が示されており、数人の男女が、あちこちで潜入調査をしている様子だ。
「まさか、キルム正教会の残党でしょうか?」
「いや、それはないと思うけど、なんだろうね……」
「では、少し探って参りましょう」
いうが早いか、ソーヤはふっと姿を消した。
(相変わらず見事な気配消しだなぁ)
書類を抱えたメイロードは、ソーヤの消えた方を見ながらクスッと笑った。あとは有能な妖精さんの報告を待つとしよう。
「おい、メイロード。打ち合わせは済んだのか?」
後ろから現れたのは、この魔法屋専門学校プロジェクトの総指揮でもあるサイデムおじさまだ。とはいっても、実際はおじさまが集めた有能なプロジェクトメンバーで構成された準備委員会が実務を担当しているのだが、それでもやはりおじさまの存在はこのプロジェクトの要だ。
「はい。予算関係の心配がいらないのが大きいですが、すべて順調ですよ。寄付が早く集まってくれて、本当にありがたいですよね。第一次の建設はもうだいぶ進んでます。突貫工事でお願いしているので資金はかかりますが、とにかくまだ拘束されている子供たちの居場所を早く作ってあげないと……」
「予算なぁ…… まさかあの方たちが、ここに首を突っ込んでくるとは思わなかったからなぁ。ありがたいことではあるが、いろいろとおかしな憶測を生む可能性も出てくる。変なのもうろついているだろう?」
メイロードは、再び《索敵》の状況を確認しながら、苦笑いを浮かべた。
「そうみたいですね。そんなに気になりますかね、新しい学校を作ることって」
「この学校そのものは、その趣旨からして軍事的な要素はないし、他国から警戒されるようなことはない。間者が気にしているのは金の出どころだ」
「お金? 寄付金のことですか?」
実の所、サイデムもここまであの方たちがこの魔法学校設立に積極的な理由がよくわからずにいた。だが、間違いなく、それにはメイロードが関連しているはずだ。
今回の一連の誘拐事件が決着し、メイロードが帰還したところで、ドール参謀を通じて今回の大規模な作戦の全貌について、当然皇帝陛下に報告書が提出された。だがそこでは、潜入調査に関する協力者については記載されておらず、メイロードの名はどこにも記録されてはいなかった。もちろん、それはメイロードの望みだ。
だがそれでは、今回の最終的には三つの国を巻き込んだ大事件の解決に寄与したにもかかわらず、潜入捜査に携わった功労者にはなんの名誉も褒賞も与えられないということになり、それでは国としてあまりに不誠実だろうと問題になってしまったのだ。
そこには、褒賞を与える側の、他の者たちとの褒賞の兼ね合いという、いたって現実的な問題もあった。
ドール参謀は、この協力者は勲章も報奨金も望んでいないと、何度も話したが、さすがになにひとつ報いないでは済まされないという状況になり、このままではメイロードの大活躍を公にせざるを得なくなるところまで追い詰められてしまった。
そこで一計を案じたルミナーレ様が使者となり、リアーナ皇后様にだけ、実は今回の潜入役をしていたのがメイロード・マリス伯爵であることを告げた。それと同時に、メイロードは、ただただ誘拐された子供たちを気の毒に思って志願しただけであり、晴れがましい勲章など受ける気持ちもなく、むしろ子供たちの今後を考えることに集中したいと願っていることを伝えた。
「あのやさしい子は、目立つことで煩わしいことが増え、子供たちのための仕事が遅れることを、とても嫌がっているのです。それに、あの子に軍人の勲章など似合いませんわ」
母でもあるリアーナ皇后は、このメイロードの気持ちを汲んでくださり、皇帝陛下にこの度の潜入役への褒賞を皇后に一任してもらえるよう頼んでくれたという。
「この軍功は、声高に叫ぶべき大きなものではあろうが、それを望まぬ者もいる。皇帝陛下、その者が真の功労者だというのならば、その者の意に叶う褒賞を与えるのがよろしいのではあるまいか」
そして、その説得の結果が、学校建設への皇后からの莫大な寄付金だったのだ。そしてそういった事実は、メイロードの負担にならないよう、直接は伝えられていない。
そのためこの寄付の窓口となっていたサイデムのところに、いきなり莫大な金額がリアーナ皇后そしてユリシルとエーデン皇子からもかなりの寄付金が持ち込まれ、サイデムはそこで寄付の受付をストップした。
(この寄付元は絶対明かさないほうがいい。お優しい皇后様の寄付ということで済ませるには、この金額は莫大すぎる)
「どうかされましたか? おじさま」
のほほんと子供たちのための施設の構想をあれこれ話し始めたメイロードを見ながら、
(それにしても皇后様太っ腹すぎねぇか。俺が寄付する隙がねぇ……どれだけ皇宮と強いパイプ持ってんだよ、コイツ……)
と、呆れ気味に思ってしまうサイデムなのだった。
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