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4 聖人候補の領地経営
812 文句たらたら
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「どうしてメイロードちゃんがいないのよぉ! これじゃ婚約のお祝いパーティーの話がちっとも進まないじゃないのぉ!!」
イスの重鎮たちが集まる会合で、サイデムはレシータに思いっきり怒られていた。だが、レシータのこういう態度には慣れっこのサイデムは、ひざ詰め談判の勢いで至近距離に近づき大声で嘆くこの巨体の美魔女の様子にもまったく動じる様子は見せなかった。
「仕方ないだろう。メイロードが見聞を広めるために長期の旅へ出ることは、ずっと以前から決まっていたし、私も了承している。それに、そんなパーティーはしないと以前にも言ったはずだが?」
サイデムの声は冷静だ。
「ウーー」
唸るレシータ。
実はイスの実力者たち、いわゆるイスの六傑が発起人となっての〝サガン・サイデムとメイロード・マリスの婚約を祝う集い〟の準備は、この話が公になった直後から動き始めていた。
レシータ・ゴルム、イス冒険者ギルド代表幹事がその指揮をとっており、サイデム商会催事部も巻き込んだ、極めて盛大で華々しい大宴会が行われる予定なのだった。
ふたりのことを祝いたくて仕方のなかったサイデム商会の従業員たちも、レシータの号令にすぐさま乗り、隠密裡に準備は進められていた。
「メイロードちゃん考案の素敵な花火だって大量発注しちゃったわよ! 〝大地の恵み〟亭だって全面協力してくれる手筈になってるんだからね! 芸人ギルドのマシアさんも伝説級のすごい音楽隊を編成してくれる予定なのよぉ~!! もう、なんで私たちに何にも言わないで旅になんか出ちゃうのよぉぉ!!!」
(お前たちが、そうやって俺たちをダシにして浮かれるからだろうが!)
サイデムはそう言いたいのをなんとか堪えて、大人の対応をしようとした。
「それはすまなかったな。メイロードもこのところいろいろと多忙だったので、皆に挨拶をする時間が取れなかったのだろうが、悪気はないんだ。思い立ったらすぐ動くのも若者の特権というものだよ、ゴルム統括」
実際のところ、挨拶回りなどして引き止められたらたまらないので、メイロードはサイデムにだけ伝えて、そのまま旅に出ると決めた。実際のところメイロードは彼らと直接仕事上の付き合いがあるわけでもないので、それを責められるいわれもない。
「そんなことはわかってるわよ。でも急すぎるじゃない! 正直、サイデム、あんたなんか添え物よ! 私はメイロードちゃんに最高のドレスを好きなだけ着て欲しかったのよぉ~! 絶対かわいい! 絶対綺麗! ああ目に浮かぶようだわ~、あの子はイスの繁栄の象徴なの。あの子の幸せな姿はみんなが見たいのよ!」
(ああ、そうかよ!)
レシータの考えそうなことだと思ったが、見れば他のメンバーも頷いている。
「メイロードちゃんのために、素晴らしい音楽も発注しましたのよ。たくさんの音楽家たちが名乗り出てくれて、もう選考が大変なの。パーティーでは、私の選んだ最高の音楽家たちで編成した楽団に奏でさせるつもりでしたのに……残念です。ああ、肖像画のための画家も吟味しておりましたのに……」
「〝仙鏡院〟の倉庫に保管している貴重な食材を提供するつもりで準備していたのですがねぇ……酒も倉庫に長く寝かせてあるかなり希少なものをご提供するつもりでした」
「俺の工房じゃ、もちろん特注でこの祝いに使う最高級の技を使った装飾品や器を準備していたんだぜ。ああ、なんだよ、使えんのか!」
「魔術師ギルドとイス警備隊は、当日の人員配置や警備計画をずっと話し合っていたのですが……無念です」
イスの傑物たちのはしゃぎっぷりは思った以上だった。
「お前ら~!! 浮かれすぎだぞ!」
ついに叫んでしまったサイデムだが、すぐ我に返ってこう聞いた。
「レシータ、いったいその馬鹿みたいにご立派な祝宴の準備にかかる金はどうしたんだ?」
「ああ、それはね……」
もちろんギルドの代表者たちはこの祝宴のためにたくさんの寄付を行ったが、実は各ギルドにイスの街中の人々から祝い金が集まり続けていたのだ。
サイデム商会では、サイデムの指示で花のように持ち返らせても仕方のないものはともかく、高価な品物や金は絶対に受け取るなと厳命が下っていた。だが、このビッグカップルの婚約に浮かれまくったイスの人々は、祝いごとにはご祝儀がつきものと考え、勝手にそれぞれのギルドに窓口を作らせ祝儀を集めてしまっていたのだ。
「なにを勝手に……」
「みんな祝いたいの! 嬉しいのよ! どうしてわからないのよ!」
頭を抱えるサイデムに、レシータはさらに文句を言い続けた。
だが、レシータはなにがあっても結局はメイロードの味方だ。こうしてサイデムに文句は言っても、メイロードを連れ戻せと言うことはなかった。
「もう仕方ないわね、一時的に待つけどね! メイロードちゃんが戻ったら、盛大に婚約祝いよ! わかってるわね!! 逃げるんじゃないわよ!!」
「はいはい、それはメイロードが帰ってきたらアレに直接聞いてくれ」
(賭けてもいいが、メイロードがそれを望むことは絶対にないと思うがな)
自分がメイロードの〝防波堤〟としての婚約者であることをただひとりしっかりわかっているサイデムは、苦笑いをしつつも、会議の議題を進めるために、席に座り直し、書類へと目を落としながらこう考えていた。
(やっぱり、この地を離れたのは正解だぞメイロード。ここでのお前はあまりに有名すぎる。ただのメイロードになるには不向きな場所さ。だからいまは旅を楽しんでこい。
俺はお前の旅が終わるまで、お前がアイテムボックスに山ほど置いて行った弁当やおかずを食べて待っているさ。たまには、お前のうちの台所を借りて博士やセイリュウと酒も飲ませてもらうからな。秘蔵の酒を飲み干されても文句は言うなよ。
まあ、元気で行ってこい。お前ならきっとどこでも大丈夫さ)
「どうしてメイロードちゃんがいないのよぉ! これじゃ婚約のお祝いパーティーの話がちっとも進まないじゃないのぉ!!」
イスの重鎮たちが集まる会合で、サイデムはレシータに思いっきり怒られていた。だが、レシータのこういう態度には慣れっこのサイデムは、ひざ詰め談判の勢いで至近距離に近づき大声で嘆くこの巨体の美魔女の様子にもまったく動じる様子は見せなかった。
「仕方ないだろう。メイロードが見聞を広めるために長期の旅へ出ることは、ずっと以前から決まっていたし、私も了承している。それに、そんなパーティーはしないと以前にも言ったはずだが?」
サイデムの声は冷静だ。
「ウーー」
唸るレシータ。
実はイスの実力者たち、いわゆるイスの六傑が発起人となっての〝サガン・サイデムとメイロード・マリスの婚約を祝う集い〟の準備は、この話が公になった直後から動き始めていた。
レシータ・ゴルム、イス冒険者ギルド代表幹事がその指揮をとっており、サイデム商会催事部も巻き込んだ、極めて盛大で華々しい大宴会が行われる予定なのだった。
ふたりのことを祝いたくて仕方のなかったサイデム商会の従業員たちも、レシータの号令にすぐさま乗り、隠密裡に準備は進められていた。
「メイロードちゃん考案の素敵な花火だって大量発注しちゃったわよ! 〝大地の恵み〟亭だって全面協力してくれる手筈になってるんだからね! 芸人ギルドのマシアさんも伝説級のすごい音楽隊を編成してくれる予定なのよぉ~!! もう、なんで私たちに何にも言わないで旅になんか出ちゃうのよぉぉ!!!」
(お前たちが、そうやって俺たちをダシにして浮かれるからだろうが!)
サイデムはそう言いたいのをなんとか堪えて、大人の対応をしようとした。
「それはすまなかったな。メイロードもこのところいろいろと多忙だったので、皆に挨拶をする時間が取れなかったのだろうが、悪気はないんだ。思い立ったらすぐ動くのも若者の特権というものだよ、ゴルム統括」
実際のところ、挨拶回りなどして引き止められたらたまらないので、メイロードはサイデムにだけ伝えて、そのまま旅に出ると決めた。実際のところメイロードは彼らと直接仕事上の付き合いがあるわけでもないので、それを責められるいわれもない。
「そんなことはわかってるわよ。でも急すぎるじゃない! 正直、サイデム、あんたなんか添え物よ! 私はメイロードちゃんに最高のドレスを好きなだけ着て欲しかったのよぉ~! 絶対かわいい! 絶対綺麗! ああ目に浮かぶようだわ~、あの子はイスの繁栄の象徴なの。あの子の幸せな姿はみんなが見たいのよ!」
(ああ、そうかよ!)
レシータの考えそうなことだと思ったが、見れば他のメンバーも頷いている。
「メイロードちゃんのために、素晴らしい音楽も発注しましたのよ。たくさんの音楽家たちが名乗り出てくれて、もう選考が大変なの。パーティーでは、私の選んだ最高の音楽家たちで編成した楽団に奏でさせるつもりでしたのに……残念です。ああ、肖像画のための画家も吟味しておりましたのに……」
「〝仙鏡院〟の倉庫に保管している貴重な食材を提供するつもりで準備していたのですがねぇ……酒も倉庫に長く寝かせてあるかなり希少なものをご提供するつもりでした」
「俺の工房じゃ、もちろん特注でこの祝いに使う最高級の技を使った装飾品や器を準備していたんだぜ。ああ、なんだよ、使えんのか!」
「魔術師ギルドとイス警備隊は、当日の人員配置や警備計画をずっと話し合っていたのですが……無念です」
イスの傑物たちのはしゃぎっぷりは思った以上だった。
「お前ら~!! 浮かれすぎだぞ!」
ついに叫んでしまったサイデムだが、すぐ我に返ってこう聞いた。
「レシータ、いったいその馬鹿みたいにご立派な祝宴の準備にかかる金はどうしたんだ?」
「ああ、それはね……」
もちろんギルドの代表者たちはこの祝宴のためにたくさんの寄付を行ったが、実は各ギルドにイスの街中の人々から祝い金が集まり続けていたのだ。
サイデム商会では、サイデムの指示で花のように持ち返らせても仕方のないものはともかく、高価な品物や金は絶対に受け取るなと厳命が下っていた。だが、このビッグカップルの婚約に浮かれまくったイスの人々は、祝いごとにはご祝儀がつきものと考え、勝手にそれぞれのギルドに窓口を作らせ祝儀を集めてしまっていたのだ。
「なにを勝手に……」
「みんな祝いたいの! 嬉しいのよ! どうしてわからないのよ!」
頭を抱えるサイデムに、レシータはさらに文句を言い続けた。
だが、レシータはなにがあっても結局はメイロードの味方だ。こうしてサイデムに文句は言っても、メイロードを連れ戻せと言うことはなかった。
「もう仕方ないわね、一時的に待つけどね! メイロードちゃんが戻ったら、盛大に婚約祝いよ! わかってるわね!! 逃げるんじゃないわよ!!」
「はいはい、それはメイロードが帰ってきたらアレに直接聞いてくれ」
(賭けてもいいが、メイロードがそれを望むことは絶対にないと思うがな)
自分がメイロードの〝防波堤〟としての婚約者であることをただひとりしっかりわかっているサイデムは、苦笑いをしつつも、会議の議題を進めるために、席に座り直し、書類へと目を落としながらこう考えていた。
(やっぱり、この地を離れたのは正解だぞメイロード。ここでのお前はあまりに有名すぎる。ただのメイロードになるには不向きな場所さ。だからいまは旅を楽しんでこい。
俺はお前の旅が終わるまで、お前がアイテムボックスに山ほど置いて行った弁当やおかずを食べて待っているさ。たまには、お前のうちの台所を借りて博士やセイリュウと酒も飲ませてもらうからな。秘蔵の酒を飲み干されても文句は言うなよ。
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