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6 謎の事件と聖人候補
862 〝国家魔術師〟たちの軋轢
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862
どういう手段を使ったのかはわからないが、私が戻って一週間も経たないうちに、皇宮からの招集がかかってしまった。しかも〝天舟〟をチャーターするからそれに乗って一週間以内に来いという。ちなみに私を呼び出した書面のサインは、第一皇子、つまり次の皇帝と目されているゼン皇子のものだった。
(レジェーナ姫を助けたことぐらいしか大きな接点がない方のはずなんだけどね。それにしても、帰ってきたことは極力秘密にしてたのに、なんで⁉︎ 情報早すぎでしょ)
書面の文言はとても丁寧で〝お願いだから来てください〟というトーンなので、どちらかというは頼みごとをされるのかな、という雰囲気が感じられた。とはいうものの、そうだとしてもなんだか面倒そうな頼まれごとの予感しかしないし、現状を考えると私はマリス領を離れないようにしたいところだ。しかし、すでにこの国で爵位を得てしまっている以上、皇族のサインの入った呼び出し状を無碍にしたり、皇宮からの招集を断ったりすることは難しい。
(しかも私が領地に戻っていることを掴まれてるわけだから、きっと体調不良でもないとわかっているんだろうし、仮病も使えないよねぇ…… だからって沿海州であった事件の話をするのもなぁ……)
私が夕食のとき、セイリュウや博士に今回の呼び出しについて愚痴っていると、博士から今回の呼び出しの理由かもしれない出来事を聞くことができた。
「最近若い〝国家魔術師〟たちの間で、ちょっとした小競り合いが増えてきたことが発端なのじゃが、メイロード、これはお前さんも全く関係ないわけではないぞ」
グッケンス博士の意外な言葉に、私は菜箸で青菜と貝の炒め物を取り分けていた手を止めた。
「えっ?〝国家魔術師〟と私になんの接点があるんですか? その小競り合いも仲間内なんでしょう?」
「まあそうだが、問題は新しく入った魔術師たちのレベルが、総じて先輩たちを上回っていたことが、日々の訓練の過程で明らかになってきてしまったことじゃな」
「有能な子が多く入ってきたなら、いいことじゃないんですか?」
「そこは……まぁ、人というものは面倒でな。まだ子供のような若い後輩に侮られるというのは、なかなかに耐え難いことらしいのよ。しかも〝国家魔術師〟というやつは生え抜きの魔法使いの集団じゃ。無駄に誇り高いのよ」
「でも確か……以前にグッケンス博士は彼らを模擬戦でコテンパンにしたんじゃなかったでしたっけ?」
「そんなこともあったが、そのときとは状況が違う。それにわしが一喝する分には、奴らは受け入れざるをえまい。一応わしは〝特級魔術師〟じゃからの」
「まぁ、確かにグッケンス博士に負けるのであれば、納得するしかないですか……それにしても、なんで優秀なんでしょうね、最近の〝国家魔術師〟の皆さんは」
私ののほほんとした言葉に、博士とセイリュウは呆れたような顔で盃を持ったまま私を諭し始めた。
「それは、どう考えたってメイロードが魔法学校に行ったせいなんじゃない?」
「そうじゃ、お前が行った多くの魔法学校改革が成果を上げる中で卒業し、配属された魔術師たちが実践配備され始めたことが、今回の軋轢の根底にある原因なんじゃぞ!」
「アッ……えっ! ええ⁈」
もうすでに懐かしささえ感じる私の魔法学校での生活の中で、確かにいろいろなことがあった。食事を改善し、参考書を作り、課外活動の重要性も認めさせた。
「わかったかい? メイロードが魔法学校にもたらした改革が実を結んで、その新しい校風の中で育った子たちが魔術師になっているんだよ。そして、メイロードの考えた通り、彼らは一様に以前より高い魔法力と技術を手に入れているそうだ」
「つまり……私が魔術師間の格差を産んでしまったってことですか?」
「全体が向上したのだから、褒められるべきことなのじゃが、問題は他を圧倒するほどの向上でもないという微妙な差である点なのじゃ」
「先輩は大した差じゃないのに生意気だと思い、後輩は大した実力じゃないのに先輩ヅラをされると不愉快だ、と考えるわけですね」
こうした軋轢はその差が微妙である方がむしろ深刻だ。
「こうした問題が大きくなれば帝国軍全体の士気にも関わるということで、内々に魔法学校にも対策を考えるよう通達がきたところじゃ」
「まさか……そこで私の名前が出ちゃったんですか?」
「学校側も徹底的に、ここ数年での学校の変化に関する調べをやったらしくてのぉ……わしはすっとぼけておいたが、それでもお前さんの暗躍をだいぶ掴まれたらしい」
「暗躍って……掴まれたって……ええええええ!」
私は取り分けていた芋の煮っ転がしを取り落とし、ただただ困惑するしかなかった。
どういう手段を使ったのかはわからないが、私が戻って一週間も経たないうちに、皇宮からの招集がかかってしまった。しかも〝天舟〟をチャーターするからそれに乗って一週間以内に来いという。ちなみに私を呼び出した書面のサインは、第一皇子、つまり次の皇帝と目されているゼン皇子のものだった。
(レジェーナ姫を助けたことぐらいしか大きな接点がない方のはずなんだけどね。それにしても、帰ってきたことは極力秘密にしてたのに、なんで⁉︎ 情報早すぎでしょ)
書面の文言はとても丁寧で〝お願いだから来てください〟というトーンなので、どちらかというは頼みごとをされるのかな、という雰囲気が感じられた。とはいうものの、そうだとしてもなんだか面倒そうな頼まれごとの予感しかしないし、現状を考えると私はマリス領を離れないようにしたいところだ。しかし、すでにこの国で爵位を得てしまっている以上、皇族のサインの入った呼び出し状を無碍にしたり、皇宮からの招集を断ったりすることは難しい。
(しかも私が領地に戻っていることを掴まれてるわけだから、きっと体調不良でもないとわかっているんだろうし、仮病も使えないよねぇ…… だからって沿海州であった事件の話をするのもなぁ……)
私が夕食のとき、セイリュウや博士に今回の呼び出しについて愚痴っていると、博士から今回の呼び出しの理由かもしれない出来事を聞くことができた。
「最近若い〝国家魔術師〟たちの間で、ちょっとした小競り合いが増えてきたことが発端なのじゃが、メイロード、これはお前さんも全く関係ないわけではないぞ」
グッケンス博士の意外な言葉に、私は菜箸で青菜と貝の炒め物を取り分けていた手を止めた。
「えっ?〝国家魔術師〟と私になんの接点があるんですか? その小競り合いも仲間内なんでしょう?」
「まあそうだが、問題は新しく入った魔術師たちのレベルが、総じて先輩たちを上回っていたことが、日々の訓練の過程で明らかになってきてしまったことじゃな」
「有能な子が多く入ってきたなら、いいことじゃないんですか?」
「そこは……まぁ、人というものは面倒でな。まだ子供のような若い後輩に侮られるというのは、なかなかに耐え難いことらしいのよ。しかも〝国家魔術師〟というやつは生え抜きの魔法使いの集団じゃ。無駄に誇り高いのよ」
「でも確か……以前にグッケンス博士は彼らを模擬戦でコテンパンにしたんじゃなかったでしたっけ?」
「そんなこともあったが、そのときとは状況が違う。それにわしが一喝する分には、奴らは受け入れざるをえまい。一応わしは〝特級魔術師〟じゃからの」
「まぁ、確かにグッケンス博士に負けるのであれば、納得するしかないですか……それにしても、なんで優秀なんでしょうね、最近の〝国家魔術師〟の皆さんは」
私ののほほんとした言葉に、博士とセイリュウは呆れたような顔で盃を持ったまま私を諭し始めた。
「それは、どう考えたってメイロードが魔法学校に行ったせいなんじゃない?」
「そうじゃ、お前が行った多くの魔法学校改革が成果を上げる中で卒業し、配属された魔術師たちが実践配備され始めたことが、今回の軋轢の根底にある原因なんじゃぞ!」
「アッ……えっ! ええ⁈」
もうすでに懐かしささえ感じる私の魔法学校での生活の中で、確かにいろいろなことがあった。食事を改善し、参考書を作り、課外活動の重要性も認めさせた。
「わかったかい? メイロードが魔法学校にもたらした改革が実を結んで、その新しい校風の中で育った子たちが魔術師になっているんだよ。そして、メイロードの考えた通り、彼らは一様に以前より高い魔法力と技術を手に入れているそうだ」
「つまり……私が魔術師間の格差を産んでしまったってことですか?」
「全体が向上したのだから、褒められるべきことなのじゃが、問題は他を圧倒するほどの向上でもないという微妙な差である点なのじゃ」
「先輩は大した差じゃないのに生意気だと思い、後輩は大した実力じゃないのに先輩ヅラをされると不愉快だ、と考えるわけですね」
こうした軋轢はその差が微妙である方がむしろ深刻だ。
「こうした問題が大きくなれば帝国軍全体の士気にも関わるということで、内々に魔法学校にも対策を考えるよう通達がきたところじゃ」
「まさか……そこで私の名前が出ちゃったんですか?」
「学校側も徹底的に、ここ数年での学校の変化に関する調べをやったらしくてのぉ……わしはすっとぼけておいたが、それでもお前さんの暗躍をだいぶ掴まれたらしい」
「暗躍って……掴まれたって……ええええええ!」
私は取り分けていた芋の煮っ転がしを取り落とし、ただただ困惑するしかなかった。
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