利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

文字の大きさ
742 / 840
6 謎の事件と聖人候補

931 提案

しおりを挟む
931

私はここまでに得られた情報を頭の中で整理しながら、なるべく落ち着いて見えるよう口調に注意しながら話し始めた。

「まずは、私をそれぞれのクランの専属魔術師にとのお話についてお返事をさせていただきます。

とても高額な契約料をご提示していただいたことに驚きはしましたが、これはみなさまが私の魔法を評価してくださっているということ……とてもうれしくも思います。ではございますが、たとえこれ以上どんな素晴らしい条件を提示していただいたとしても、私はどのクランからの専属契約も受けることはございません」

私はキッパリとした口調で宣言した。

「私にはすべきことがございます。みなさんもご存知のように、私は冒険者としての仕事に専念できるような状態ではないのです」

そして今度は少し困ったような申し訳なさそうな顔で、私は彼らの希望が叶えられることはないと告げた。

「……」

私の専属契約拒否に三名とも小さなため息はついていたが、これについては反論やそれ以上の勧誘の言葉は誰からも出なかった。どのクランも領主である貴族を冒険者として囲い込むということに相当無理があることはわかっているのだ。それでも莫大な契約金の提示によって領地運営に困っているような状況があれば一縷の望みはあるかもしれないと、賭けてみたというところなのだろう。

(きっと〝やっぱりダメか〟って思っているんだろうね。私がもし貴族でなかったら、もしかしたらその道もあったかもしれないけど、いまとなっては無理だよねぇ……ごめんなさい)

静かになってしまった部屋の空気を切り替えるように、私はこう提案した。

「ですが、みなさんのお話をお伺いして、どちらのクランも新ダンジョンの危険を憂い、一刻も早くその攻略に挑戦し、この国のそして帝都パレスの安全を確かめたいという強い志をお持ちであると感心させていただきました。

そのために、すでに新ダンジョン攻略を一部ながら果たしてみせた私の魔法が必要だということもわかります……」

私は微笑みながらゆっくり私の譲歩案について語っていく。

「ならば、この国の貴族である私には、人々の安全を守るため、あの〝新ダンジョン〟に挑む責務があるでしょう」

レシータさんが私の言葉にあわてる。

「メイロードちゃん! あなたにそんな責任はないわ! あなたは立派に領地を納め人々の生活を豊かにしてる。それで十分だし、軍属でもないんだし、そもそもパレスはあなたの領地に遥か遠くよ。領主としての責任の及ぶ範囲じゃないでしょう!」

「まぁ……そうかもしれませんが、私はパレスに店を持っておりますし、たくさんの知人がいます。状況が逼迫しているとなったら無関係は決め込めないですよ」

「まぁ、それはそうかもしれないけど……」

私は三つのクランにおそらく彼らも経験がないだろうやり方を提示する。

「パレス近郊新ダンジョン攻略のために三クラン合同のパーティーを結成しませんか? この難しいダンジョンを踏破するためには、多くの力が必要です。ですから、私は誰かを選ぶのではなく、みなさんを選びたいと考えます」

「なっ!」
「ええ!!」
「ほう?」

三人は私からの提案にしばし絶句した。彼らにとってこの提案は突然しのぎを削っているライバル企業と手を結べと提案したようなものなので、驚かれるのは当然だが、私が得られなければ攻略の可能性が一気に低くなるダンジョン攻略なのだ。ならば、キャスティングボードは私に握らせてもらおう。

「このダンジョンの危険性、そして可能性…‥どちらにせよ迅速な確認が必要です。ならば、最も効率の良いパーティーを組みましょう。もちろん、そのパーティーに私は参加させていただきます」

海千山千のクランリーダーたちを目の前に、満面の笑顔で彼らの瞳を覗き込む私にはなかなか凄みがあった、とあとでレシータさんにからかわれたが、彼らは少し青い顔をしたままのしばしの沈黙のあと、三者だけで相談させて欲しいと言ってきた。

「もちろん、どうぞ十二分なお話し合いを」

そして私の言葉に三人は軽く会釈すると、猛スピードで席を立ちどこかに行ってしまった。その背中にレシータさんは声をかける。

「それぞれに控室と三者が集まれる会議室を用意してあげるから、早めに結論出してねー!」

これから彼らは大変面倒で熾烈な交渉を繰り広げるのだろうが、どんな条件になるにせよ、あとは彼らの問題だ。

「メイロードちゃん、何時になるかわからないし、私は仕事に戻るわね」
「そうですね、私も家に一度もどります。交渉が終わったら《伝令》を飛ばしてください」
「くくく、あの子たち、どんな腹の探り合いをしているのかしらね」

レシータさんにとっては、彼らもまだひよっこに見えるのだろう。頭を悩ませているだろう彼らの方を見ながら、おもしろそうに笑った。
しおりを挟む
感想 3,006

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。