利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

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6 謎の事件と聖人候補

976 サイデム子爵

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長いお休みになりまして、申し訳ありません。

まだいろいろキツい状況なので、しばらくは更新が安定しないと思いますが、
ちびちび書いていきますので、どーかお見捨てなく(土下座)

それから、休載中にたくさんの応援やお見舞いコメントをありがとうございました。
とても励まされました。ただただ感謝でございます。
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申し訳ない(再度土下座)

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976

パレスにあるシド帝国で最も大きな〝天舟アマフネ〟発着基地では、今日も大量の品物の荷下ろしと検品が行われていた。

建設当初この場所はシド帝国軍のための施設だったが、貴族の〝天舟アマフネ〟所有が広がってから、軍部以外の利用者のための離発着場が増設され、やがて整備施設まで整った巨大基地となった。基地内では軍部専用とそれ以外で完全に場所は分けられており、貴族が主に利用するエリアは非常に豪華な設備となっている。

だがサガン・サイデムによる〝天舟アマフネ〟流通網の整備により、施設内には民間利用荷下ろし場や倉庫なども増えており、いまも増築が続いている。

現在〝サイデム商会〟では貴族であるサガン・サイデム所有の三隻の〝天舟アマフネ〟を中心に、他の貴族からものを加えた九隻が常時稼働し、その他の臨時便も運行している。比較的軽量でしかも緊急性の高い品物は空路で、近距離の場合は陸路、海路では主に重量があり大きな品物を、と分担して運ぶという方法は、従来では考えられなかった高速輸送網を作り出した。

そして今回サイデムは、過去最大の取引のため大量の積荷とともに帝都パレスへと降り立っていた。

「サイデム子爵、ご到着早々申し訳ございませんが〝マジックバッグ〟でお持ち込みいただいた貴重品の検品ののち、すぐ軍部へおいでくださいますようお願い申し上げます」

「ああわかった。〝マジックバック〟での持ち込み分はこの五つだ。封印の魔法も解除しておこう。検品を頼む」

「ありがとうございます。それではしばらく応接室にてお待ちください」

「そうさせてもらおう」

サイデムは自分が検品作業に加わった方が圧倒的に早いとわかっているため、動きたくてうずうずしている気持ちをグッと抑え込みながら威厳を持ってうなずくと、軍部にある貴族専用の豪華な応接室へと向かっていった。

彼がサガン・サイデムとなったのはごく最近のことだ。

それは異例すぎる速さの陞爵しょうしゃくであったが、誰もがそれを歓迎し、不満が出ることはなかった。

エスライ・タガローサが失脚し、それまで長く御用商人を務めていたタガローサ一族の支配が解かれたことは、あらゆる方面の風通しを良くし、パレスに大きな変化をもたらした。

そしてそのは、サガン・サイデムが新たな〝帝国の代理人〟となってからの采配によって加速した。その成果は誰の目からみても明らかだった。

その変化の最たるものは、物価の安定と市場に供給される商品の充実で、特に生活必需品の突然の高値といった急な値動きの頻発に日常的に苦しんでいた人々は、これに喜んだ。公設市場も増設、強化され、それまでは手に入りにくかった食品や日用品それに沿海州からの織物の充実も、確実に人々の生活を向上させていった。

そうした市場の影響は冒険者や軍部にも変化をもたらした。

まず、武器や防具といった仕事の質に直結する物資の質が向上し、潤沢となったため、戦う者たちの怪我や死亡リスクが確実に下がり、生産性も向上したのだ。

それまでは、あらゆるものの価格にタガローサ一族が口を出したため、ものの価格は常に高値で統制され、新たなアイディアや商材には重税が課せられることも多くあった。すべての物資はタガローサ一族の利益となりうるかどうかが優先されたからだ。

こうした圧力が日常的だったパレスでは、新たな発明や商売は非常にやりにくく、便利な商品の普及も遅れていたが、イスからの商品の大量流入と、サイデムが打ち出した規制緩和で、市場は急激に強化され商人の数も増え、購入者の選択肢が増えていった。

当然新たな〝帝国の代理人〟に対する庶民の評判は鰻登りとなったが、もちろんサイデムは貴族に対しての対応も忘れなかった。それまでにも〝北東部式牧場運営〟のコンサルティング事業を通じて効率的な酪農を貴族に紹介し、その事業で培った信頼を基に多くの貴族とパイプを繋いてきたサイデム商会は、すでに貴族から絶大な支持を得ていた。

さらに貴族には欠かせない催事において、革新的で評判の良いプロデュースを提供してきたサイデム商会は、すっかり貴族たちから頼られる存在となっていた。もちろんその機会を利用して抜け目なくさまざまな営業がかけられ、サイデム商会はあらゆる貴族たちの屋敷へと入り込み、イス発の化粧品など多くの商品がパレスの貴族たちに愛用されることとなったのだ。

このおかげで貴族の奥向き、つまり女性陣からもサイデムは好感度を獲得でき、社交界での地位も確保できた。

もちろん皇室対策もぬかりなく、なによりリアーナ皇后のお気に入りマリス女伯爵の後見人という立場は、とても大きかった。リアーナ皇后はサイデムを皇宮で重用し、その注文にしっかりとした結果を出したサイデムもまた皇后のお気に入りという立場を得ることとなった。

こうした状況の中、今回の〝巨大暴走〟に対抗するための莫大な物資調達に多大なる貢献をしたという理由で、誰もが歓迎する状況が作り出され、サガン・サイデムは男爵から子爵へと異例の出世を遂げたのだった。

実のところ、サイデム自身は貴族として高い地位へ進むことにさしたる感慨はなく、その価値もあまり感じてはいない。

むしろ動きにくさすら感じていたが、この国でこの〝名誉〟を拒否するわけのはいかないこともよくわかっていた。

(ったく、面倒なことだな)

貴族らしい態度を保つつ、サイデムはご立派な貴族用ソファーで小さくため息を吐くのだった。
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