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6 謎の事件と聖人候補
1000 《神の聖雫》
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1000
おお! メイロードの異世界生活もいよいよ1000話目でございます。
こんなに長く続けてこられたのは、このお話におつきあいくださっている皆様のおかげです。
ありがとうございます。楽しんでいただけていたら嬉しいです。
諸事情ございまして最近更新頻度ゆる目になっておりますが、これからもちびちび最後まで書いていきますので、どうぞメイロードの物語にお付き合いくださいませ。
やまなぎ
ーーーーーーーー
セイリュウは私を説得してなんとか思いとどまらせようとしてくれたが、もうすでに私の覚悟は決まっていた。
「あの〝糸〟が増えるほど、魔王の力は強くなるんでしょう? しかも確実に〝糸〟ができるまでの時間は速くなってきているじゃない! これから条件の合う〝魔術師〟を集めて……なんてどう考えても待ってられないよね。いまを逃したら、事態はさらに悪くなる。いましかないの!」
「それはわかるよ、メイロード。だけど、そのために君が……」
「ありがとう、セイリュウ。わかってる……わかってる。でも、いまあの〝聖なる壁〟を修復するために使えるのは私だけよ。それにあの壁さえ修復できれば当面の脅威は避けられるのでしょう?」
私の言葉にセイリュウは少し考えて答えた。
「ああ、そうだね。その通りだよ。エピゾフォールが、あれだけ必死で〝聖なる壁〟の破壊を続けてきたのは、おそらく魔族の住むエイガン大陸では、もうすでにエピゾフォールのスキル王への供物で屠れる対象がないからだと思う」
「えっ……?」
セイリュウの青く美しい瞳は攻撃を受け続ける〝聖なる壁〟と二本の〝糸〟を見上げ、青ざめて見えるほど表情をなくしていた。
「魔王はすでに自分の眷属を喰らい尽くしたんだろう。それでなくとも寿命の長い魔族の数は人間のように多くはないんだ。しかもヤツの忌まわしい権能は同族に対して強烈な広範囲の催眠暗示を伴う。おそらく魔族たちは喜んで自分たちから魔王へ身を差し出しただろうね」
「それじゃ、エイガン大陸には……もう魔族はいない?」
「おそらくね。少なくとも、エピゾフォールの贄になりうるほどの魔力を持つモノは狩り尽くされていると考えるべきだ。だから……」
「だから、エピゾフォールは新たな〝狩場〟にしようと、こちらの世界に食指を動かし始めたんですね」
いまも魔王からの執拗な攻撃が加えられ続けている〝聖なる壁〟を私も見つめてから、深くため息をついた。
「そうだね。だから、もしいまこの壁を完璧に修復できたら、エピゾフォールはそれ以上の魔力の取り込みを断たれることになる。そうなれば二度とこの〝聖なる壁〟は破られない。この神の創りし結界は完全な状態ならば自己修復される。現在の攻撃を完全に押さえ込んで塞げたら、エピゾフォールが再度壁を壊すためにはいま以上の力を使わなければならない。だけどイルガン大陸との接触が絶たれれば魔王の力は決して増えない」
「……つまり、ここさえ塞げれば魔王は魔力を得る機会を絶たれるってことですか」
「そこまで徹底的に自らの眷属を根絶やしにしたエピゾフォールの気持ちは解りようもないけど、そういうことだね。もしかしたら魔王しか持たない王への供物というスキルには負の側面……たとえば中毒性があるのかもしれない。そのスキルの〝飢え〟に魔王は逆らえないのかもしれないね」
「ひどいスキルがあったものですね」
私は最強のスキルとされていた王への供物のあまりにも恐ろしい副作用に背筋が凍った。
それを知ってあの壁へ加えられている絶え間ない攻撃をみると、その狂気がさらに伝わってくる。
「止めなくちゃ……絶対止めなくちゃ! エピゾフォールの思い通りになんてどんなことがあったってさせちゃダメ!」
私の言葉にセイリュウがうなずく。
「そうだね……〝聖なる壁〟が修復されれば、エピゾフォールはエイガン大陸という牢獄に永遠に幽閉されることになる。孤独と飢えに耐えながらね。それがあの自分しか愛せない哀れな魔王に相応しい世界だね」
セイリュウも私の決意とこの切迫した状況に観念したようだ。
「いいかい、これから君にとても特殊な《聖魔法》を教えるよ。これは本来大人数で構築する大魔法だけれど、メイロードの魔法力ならばひとりでも発動可能なはずだ」
そこからセイリュウは丁寧に魔法の発動方法を教えてくれた。
「まず空中に魔法で丈夫で大きな空気の玉を作る。両手で抱えられるぐらいの大きさで作ろうか」
その透明な球体の中に、つぎは聖属性の強力な水魔法を複雑な手順で練り上げていく。これは《神の聖雫》と呼ばれる奇跡の液体で、エリクサーよりも強力な再生効果を持つ、本来人には扱えないとされる魔法らしい。
「これが使えるのはこの〝聖なる壁〟のある神域の中だけなんだ。ここから持ち出せば無効化するよ。あまりにも強力で、逆に危険だからね」
そう言ってにっこり笑うセイリュウ。
(どう危険なのかは、怖すぎて聞けない雰囲気ね。いきすぎると薬も毒ってことかな?)
私が手順を間違えないように気をつけながら慎重に〝魔法力〟を流し始めると、球体の中にちょっとづつ少しだけ青みがかった水のような液体が満たされていった。
「さすがメイロードだね。この速さで《神の聖雫》が作り出せるのは、この世界に君だけだよ」
セイリュウの言葉には感嘆の響きがこもっていた。
(これまでグッケンス博士とセイリュウから教わってきたたくさんの魔法の訓練があってこそできる私の魔法……ふたりの教えに報いるためにも全力で使うわ!)
私はこれまでの厳しくも楽しかった魔法修行を思い出し、少し懐かしい気分になりながら、この美しい魔法で《神の聖雫》を創り続けた。
おお! メイロードの異世界生活もいよいよ1000話目でございます。
こんなに長く続けてこられたのは、このお話におつきあいくださっている皆様のおかげです。
ありがとうございます。楽しんでいただけていたら嬉しいです。
諸事情ございまして最近更新頻度ゆる目になっておりますが、これからもちびちび最後まで書いていきますので、どうぞメイロードの物語にお付き合いくださいませ。
やまなぎ
ーーーーーーーー
セイリュウは私を説得してなんとか思いとどまらせようとしてくれたが、もうすでに私の覚悟は決まっていた。
「あの〝糸〟が増えるほど、魔王の力は強くなるんでしょう? しかも確実に〝糸〟ができるまでの時間は速くなってきているじゃない! これから条件の合う〝魔術師〟を集めて……なんてどう考えても待ってられないよね。いまを逃したら、事態はさらに悪くなる。いましかないの!」
「それはわかるよ、メイロード。だけど、そのために君が……」
「ありがとう、セイリュウ。わかってる……わかってる。でも、いまあの〝聖なる壁〟を修復するために使えるのは私だけよ。それにあの壁さえ修復できれば当面の脅威は避けられるのでしょう?」
私の言葉にセイリュウは少し考えて答えた。
「ああ、そうだね。その通りだよ。エピゾフォールが、あれだけ必死で〝聖なる壁〟の破壊を続けてきたのは、おそらく魔族の住むエイガン大陸では、もうすでにエピゾフォールのスキル王への供物で屠れる対象がないからだと思う」
「えっ……?」
セイリュウの青く美しい瞳は攻撃を受け続ける〝聖なる壁〟と二本の〝糸〟を見上げ、青ざめて見えるほど表情をなくしていた。
「魔王はすでに自分の眷属を喰らい尽くしたんだろう。それでなくとも寿命の長い魔族の数は人間のように多くはないんだ。しかもヤツの忌まわしい権能は同族に対して強烈な広範囲の催眠暗示を伴う。おそらく魔族たちは喜んで自分たちから魔王へ身を差し出しただろうね」
「それじゃ、エイガン大陸には……もう魔族はいない?」
「おそらくね。少なくとも、エピゾフォールの贄になりうるほどの魔力を持つモノは狩り尽くされていると考えるべきだ。だから……」
「だから、エピゾフォールは新たな〝狩場〟にしようと、こちらの世界に食指を動かし始めたんですね」
いまも魔王からの執拗な攻撃が加えられ続けている〝聖なる壁〟を私も見つめてから、深くため息をついた。
「そうだね。だから、もしいまこの壁を完璧に修復できたら、エピゾフォールはそれ以上の魔力の取り込みを断たれることになる。そうなれば二度とこの〝聖なる壁〟は破られない。この神の創りし結界は完全な状態ならば自己修復される。現在の攻撃を完全に押さえ込んで塞げたら、エピゾフォールが再度壁を壊すためにはいま以上の力を使わなければならない。だけどイルガン大陸との接触が絶たれれば魔王の力は決して増えない」
「……つまり、ここさえ塞げれば魔王は魔力を得る機会を絶たれるってことですか」
「そこまで徹底的に自らの眷属を根絶やしにしたエピゾフォールの気持ちは解りようもないけど、そういうことだね。もしかしたら魔王しか持たない王への供物というスキルには負の側面……たとえば中毒性があるのかもしれない。そのスキルの〝飢え〟に魔王は逆らえないのかもしれないね」
「ひどいスキルがあったものですね」
私は最強のスキルとされていた王への供物のあまりにも恐ろしい副作用に背筋が凍った。
それを知ってあの壁へ加えられている絶え間ない攻撃をみると、その狂気がさらに伝わってくる。
「止めなくちゃ……絶対止めなくちゃ! エピゾフォールの思い通りになんてどんなことがあったってさせちゃダメ!」
私の言葉にセイリュウがうなずく。
「そうだね……〝聖なる壁〟が修復されれば、エピゾフォールはエイガン大陸という牢獄に永遠に幽閉されることになる。孤独と飢えに耐えながらね。それがあの自分しか愛せない哀れな魔王に相応しい世界だね」
セイリュウも私の決意とこの切迫した状況に観念したようだ。
「いいかい、これから君にとても特殊な《聖魔法》を教えるよ。これは本来大人数で構築する大魔法だけれど、メイロードの魔法力ならばひとりでも発動可能なはずだ」
そこからセイリュウは丁寧に魔法の発動方法を教えてくれた。
「まず空中に魔法で丈夫で大きな空気の玉を作る。両手で抱えられるぐらいの大きさで作ろうか」
その透明な球体の中に、つぎは聖属性の強力な水魔法を複雑な手順で練り上げていく。これは《神の聖雫》と呼ばれる奇跡の液体で、エリクサーよりも強力な再生効果を持つ、本来人には扱えないとされる魔法らしい。
「これが使えるのはこの〝聖なる壁〟のある神域の中だけなんだ。ここから持ち出せば無効化するよ。あまりにも強力で、逆に危険だからね」
そう言ってにっこり笑うセイリュウ。
(どう危険なのかは、怖すぎて聞けない雰囲気ね。いきすぎると薬も毒ってことかな?)
私が手順を間違えないように気をつけながら慎重に〝魔法力〟を流し始めると、球体の中にちょっとづつ少しだけ青みがかった水のような液体が満たされていった。
「さすがメイロードだね。この速さで《神の聖雫》が作り出せるのは、この世界に君だけだよ」
セイリュウの言葉には感嘆の響きがこもっていた。
(これまでグッケンス博士とセイリュウから教わってきたたくさんの魔法の訓練があってこそできる私の魔法……ふたりの教えに報いるためにも全力で使うわ!)
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