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6 謎の事件と聖人候補
1008 ミルクティー
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1008
そして……私は再び見覚えのあるあの場所に座り込んでいた。
もう見慣れてしまった生産と豊穣のふたりの神様が、私を見て微笑んでいる。
「お久しぶり…‥です」
バツの悪さを誤魔化すように微笑む私に、女神様はやさしく微笑んでくれた。
「大変だったわね、メイロードちゃん。まあ座って座って、美味しい紅茶を飲みながら少しお話ししましょう」
見れば素敵なティーセット、そしてサイドテーブルにはお茶を入れるための本格的な道具がしっかり用意されていた。でも、それを扱う女神様の手つきはなんだかぎこちない。
「ええと……まずはコレを入れるのかしら?」
なんて言いながらいきなり大量の茶葉をティーポットに入れようとするので、私は思わず手を出してしまった。
「私がお淹れした方が良さそうです。すぐできますので、お任せください」
「そお? ありがとう、嬉しいわ」
女神様はパッと手を離すとストンと席に座り、私に任せてニコニコと微笑んでいる。
(さては、最初から私に任せようと思っていたのでは?)
そんなことを思いつつ、まずはポットのお湯を確認。そして新鮮なお湯をポットとカップに注ぎ入れる。これをしておかないと、せっかくの紅茶の飲みごろの温度を逃してしまう。
「私はミルクティーにしようかと思いますが、おふたりはどうされます?」
そう聞くとおふたりもミルクティーにするとのこと。
「それじゃ、少し長めに置いた方がいいですね」
(さて、ミルクティーなら茶葉はアッサムかディンブラ……)
と私が考えていると、サイドテーブルの上に私もよく知っている有名店の紅茶缶がふたつ現れた。
(ちょっと個性を出すなら、ウバとかキーマンもありかな)
そう思うと間髪を入れずにテーブルにその茶葉が出現した。
「便利ですけど…‥あんまり私の頭の中覗かないでくださいね」
そういう私に神様たちは少し気まずそうに笑っている。とはいえ相手は神様なので、私の考えが筒抜けなのは仕方がないのかもしれない。
少し考えて茶葉を選び、ティースプーンで山盛り掬い上げた。すでに私は楽しい気分だ。人数分プラス一杯をティーポットへ入れて、その上からしっかり沸騰させ空気を含ませたお湯を勢いよく注ぐと蓋をし、すかさずビクトリアンスタイルの美しいティーコゼーをかぶせて保温する。これで、温度を下げずに中の茶葉が勢いよくポットの中で回転し、より美味しい紅茶が抽出できるのだ。
私はテーブルに置かれていた二分計の砂時計を返す。ミルクティーのために長めの四分間抽出をするのでもう一回返せば出来上がりだ。
(その間にミルクも温めておこうかな……)
そう思うと、テーブルの上にはミルクピッチャーが現れた。
「脂肪分高めの低温殺菌牛乳でしょ?」
「……ありがとうございます」
そして四分後、テーブルに香り高い紅茶を入れたティーポットを運び、紅茶を飲むのに最適な朝顔のように口の開いたティーカップに注ぎ込む。
ミルクの分量は少なめにして、お好みで微調整してもらう。
(このミルクティーの注ぎ方にも、同時に注ぐ派とかいろんな流儀があって面白いよね)
「お待たせいたしました。お召し上がりください。今回の茶葉には濃厚さのあるアッサムを使っています。ミルクの風味を引き立てるのに少し甘さを入れるのもおすすめです」
女神様は砂糖を少し、神様は結構たっぷり砂糖もミルクも入れている。楽しそうなふたりのその様子に私も嬉しくなってしまう。
そしてふたりの神様は子供のようの目を輝かせ、それぞれの前に置かれたティーカップをゆっくりと持ち上げた。
「ああ、素敵ね。いい香りだわ。うん、美味しい。さすがメイロードちゃん、流れるような所作にも感心したし、なによりやさしさにあふれてるわ」
「そうだね、実にキビキビとしながらも優雅だった。このコクのあるミルクティー、大好きだな」
「ありがとうございます……」
そこからしばし、ほっこりとした時間が流れ、やがて気がついたように神様が話し始めた。
「《全属性耐性》はしっかりメイロードを守ったようだね」
「はい、すごく気持ちは悪かったのですが、エピゾフォールの毒やら呪いやらの攻撃には抵抗できたようです」
「うんうん、あの加護は強力だからね。守りきれてよかった」
「でも、まさかメイロードちゃんが防御魔法を使えない状況になっちゃうなんてね……」
女神様が大きくため息をついた。
そう、私には膨大な〝魔法力〟があり《全属性耐性》の対象外となる物理攻撃にもいくらでも対処できるはずだったのだ。
だが、私はあのときそれをしない選択をした。
あの短い時間《生産の陣》にすべての〝魔法力〟を集中するためだ。
破壊衝動に支配された魔王の暴走に危機感を募らせた私は、セイリュウにエピゾフォールの視界から外れた場所に〝雲〟を作ってくれるよう《念話》で話し、セーヤとソーヤには小島に開けてあった《無限回廊の扉》から〝マジックバッグ〟を持ち出して、その〝雲〟へ向かうよう伝えた。
〔絶対エピゾフォールに感づかれないよう気をつけてね〕
〔はい!〕
〔はい!〕
〔わかったよ、メイロード〕
私はそこから時間を稼ぐことにした。魔王とピリピリした会話をしながら、雲の上に《生産の陣》を展開し、球体に入った〝神の聖雫〟の量産を急ピッチで開始したのだ。
(このために十個の〝神の聖雫〟の生成なんていう無茶をしておいたのよ)
《生産の陣》から大量に出来上がっていく〝神の聖雫〟をセーヤ・ソーヤがどんどん〝マジックバッグ〟へ詰め込み、短時間で数百個の〝神の聖雫〟がマジックバッグに詰め込まれていった。
〔あとはお願いね。これ全部〝聖なる壁〟に投げてきて!〕
〔はい、必ず!〕
〔はい、お任せください!〕
ここまで私は魔法が使えなかった。《生産の陣》使用中は、常に次を作る指示を与える必要があるので、他の魔法を使う時間が取れなかったのだ。
「それで、結局防御系の魔法の発動が間に合わず、あの強力な〝鞭〟に締め上げられた私の躰はもたなかったんですね……」
私はミルクティーを見つめながら、小さくため息をついた。
そして……私は再び見覚えのあるあの場所に座り込んでいた。
もう見慣れてしまった生産と豊穣のふたりの神様が、私を見て微笑んでいる。
「お久しぶり…‥です」
バツの悪さを誤魔化すように微笑む私に、女神様はやさしく微笑んでくれた。
「大変だったわね、メイロードちゃん。まあ座って座って、美味しい紅茶を飲みながら少しお話ししましょう」
見れば素敵なティーセット、そしてサイドテーブルにはお茶を入れるための本格的な道具がしっかり用意されていた。でも、それを扱う女神様の手つきはなんだかぎこちない。
「ええと……まずはコレを入れるのかしら?」
なんて言いながらいきなり大量の茶葉をティーポットに入れようとするので、私は思わず手を出してしまった。
「私がお淹れした方が良さそうです。すぐできますので、お任せください」
「そお? ありがとう、嬉しいわ」
女神様はパッと手を離すとストンと席に座り、私に任せてニコニコと微笑んでいる。
(さては、最初から私に任せようと思っていたのでは?)
そんなことを思いつつ、まずはポットのお湯を確認。そして新鮮なお湯をポットとカップに注ぎ入れる。これをしておかないと、せっかくの紅茶の飲みごろの温度を逃してしまう。
「私はミルクティーにしようかと思いますが、おふたりはどうされます?」
そう聞くとおふたりもミルクティーにするとのこと。
「それじゃ、少し長めに置いた方がいいですね」
(さて、ミルクティーなら茶葉はアッサムかディンブラ……)
と私が考えていると、サイドテーブルの上に私もよく知っている有名店の紅茶缶がふたつ現れた。
(ちょっと個性を出すなら、ウバとかキーマンもありかな)
そう思うと間髪を入れずにテーブルにその茶葉が出現した。
「便利ですけど…‥あんまり私の頭の中覗かないでくださいね」
そういう私に神様たちは少し気まずそうに笑っている。とはいえ相手は神様なので、私の考えが筒抜けなのは仕方がないのかもしれない。
少し考えて茶葉を選び、ティースプーンで山盛り掬い上げた。すでに私は楽しい気分だ。人数分プラス一杯をティーポットへ入れて、その上からしっかり沸騰させ空気を含ませたお湯を勢いよく注ぐと蓋をし、すかさずビクトリアンスタイルの美しいティーコゼーをかぶせて保温する。これで、温度を下げずに中の茶葉が勢いよくポットの中で回転し、より美味しい紅茶が抽出できるのだ。
私はテーブルに置かれていた二分計の砂時計を返す。ミルクティーのために長めの四分間抽出をするのでもう一回返せば出来上がりだ。
(その間にミルクも温めておこうかな……)
そう思うと、テーブルの上にはミルクピッチャーが現れた。
「脂肪分高めの低温殺菌牛乳でしょ?」
「……ありがとうございます」
そして四分後、テーブルに香り高い紅茶を入れたティーポットを運び、紅茶を飲むのに最適な朝顔のように口の開いたティーカップに注ぎ込む。
ミルクの分量は少なめにして、お好みで微調整してもらう。
(このミルクティーの注ぎ方にも、同時に注ぐ派とかいろんな流儀があって面白いよね)
「お待たせいたしました。お召し上がりください。今回の茶葉には濃厚さのあるアッサムを使っています。ミルクの風味を引き立てるのに少し甘さを入れるのもおすすめです」
女神様は砂糖を少し、神様は結構たっぷり砂糖もミルクも入れている。楽しそうなふたりのその様子に私も嬉しくなってしまう。
そしてふたりの神様は子供のようの目を輝かせ、それぞれの前に置かれたティーカップをゆっくりと持ち上げた。
「ああ、素敵ね。いい香りだわ。うん、美味しい。さすがメイロードちゃん、流れるような所作にも感心したし、なによりやさしさにあふれてるわ」
「そうだね、実にキビキビとしながらも優雅だった。このコクのあるミルクティー、大好きだな」
「ありがとうございます……」
そこからしばし、ほっこりとした時間が流れ、やがて気がついたように神様が話し始めた。
「《全属性耐性》はしっかりメイロードを守ったようだね」
「はい、すごく気持ちは悪かったのですが、エピゾフォールの毒やら呪いやらの攻撃には抵抗できたようです」
「うんうん、あの加護は強力だからね。守りきれてよかった」
「でも、まさかメイロードちゃんが防御魔法を使えない状況になっちゃうなんてね……」
女神様が大きくため息をついた。
そう、私には膨大な〝魔法力〟があり《全属性耐性》の対象外となる物理攻撃にもいくらでも対処できるはずだったのだ。
だが、私はあのときそれをしない選択をした。
あの短い時間《生産の陣》にすべての〝魔法力〟を集中するためだ。
破壊衝動に支配された魔王の暴走に危機感を募らせた私は、セイリュウにエピゾフォールの視界から外れた場所に〝雲〟を作ってくれるよう《念話》で話し、セーヤとソーヤには小島に開けてあった《無限回廊の扉》から〝マジックバッグ〟を持ち出して、その〝雲〟へ向かうよう伝えた。
〔絶対エピゾフォールに感づかれないよう気をつけてね〕
〔はい!〕
〔はい!〕
〔わかったよ、メイロード〕
私はそこから時間を稼ぐことにした。魔王とピリピリした会話をしながら、雲の上に《生産の陣》を展開し、球体に入った〝神の聖雫〟の量産を急ピッチで開始したのだ。
(このために十個の〝神の聖雫〟の生成なんていう無茶をしておいたのよ)
《生産の陣》から大量に出来上がっていく〝神の聖雫〟をセーヤ・ソーヤがどんどん〝マジックバッグ〟へ詰め込み、短時間で数百個の〝神の聖雫〟がマジックバッグに詰め込まれていった。
〔あとはお願いね。これ全部〝聖なる壁〟に投げてきて!〕
〔はい、必ず!〕
〔はい、お任せください!〕
ここまで私は魔法が使えなかった。《生産の陣》使用中は、常に次を作る指示を与える必要があるので、他の魔法を使う時間が取れなかったのだ。
「それで、結局防御系の魔法の発動が間に合わず、あの強力な〝鞭〟に締め上げられた私の躰はもたなかったんですね……」
私はミルクティーを見つめながら、小さくため息をついた。
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