利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

文字の大きさ
820 / 840
6 謎の事件と聖人候補

1009 きた道これからの道

しおりを挟む
1009

神様たちとお茶を飲んでいるということは、なんだと私は理解した。

さすが神様、用意してくれた茶葉やミルクは素晴らしい品質の一級品だ。

私はその芳しい香りに包まれながら思う。

(もうこの場所に来るのも三回目になるのかぁ……)

事故で命を失い、その直後にいま目の前にいるキラキラした美しすぎる方々からなぜか〝聖人〟にならないかとリクルートされた。〝聖人〟というパワーワードに驚きつつも、それをキレ気味に全力拒否しての異世界転生……

(あのときはかなりやさぐれた気分でいたような気がするなぁ。新生活へのワクワクで破裂しそうな気分からの急転直下だったし……)

そして二回目にここへ来ることになったのは、まだ自分の能力がよくわからず手探りだったころ。使ったことのなかった《癒しの手》というスキルを全力で使ってしまい〝魔法力〟と体力の使いすぎて死にかけてしまったとき。

(あのときに、これからは命を大切に、絶対無理はしないって誓ったんだけど……結局こうなってしまったなぁ。セーヤ・ソーヤ、ホントにごめんね)

だが、そのことを私は後悔していないし、みんなのために絶対やらなければいけないことだったと思っている。

(だって、私以外にエピゾフォールを押し戻せるタイミングがある人はいなかったんだもの)

「それがあなたの良きところで、困ったところね、メイロードちゃん」

私の思考が筒抜けの女神様が、とてもおだやかで、でも困った子供を諭すような表情で私を見る。

「常に大局を見て冷静に状況判断し……自らを最後に置いてしまう。あなたが人のために動くことにためらいがないのは昔から変わらないのね。そして、この世界はそんなやさしいあなたに助けられた」

(って、私はこの世界で結構好き勝手にやりたいことをやってきたと思うんだけどな)

ちょっと不服そうな私の顔を見てふたりの神様は苦笑している。

「そうね、あなたはあなたの望む通りこの世界で生きてきたのね。その結果が、いまのこの世界なのだわ」

そう女神様が言いながら空中に手をかざすと、たくさんの映像がテーブルの周りに浮かんできた。

そこには私の知るこの世界の人々がたくさん映っていた。

(サイデムおじさま、グッケンス博士、タイチ、キッペイ……ハルリリさん、シラン村のみんな、マリス領のみんな、エジン先生、キルム王国の子供たち…‥ああ、みんな元気そう)

幸せな気持ちに満たされながら、笑顔で働いている彼らの映像を見つめていると、神様が話し始めた。

「あなたはこの世界に降り立ったときからこれまで、本当に多くの人を救ってきたのよ。あなた自身は隠そう隠そうとしていたしあまり自覚はないみたいだけれど、直接の影響だけでなく、間接的な影響を含めれば、何万、何十万という人を救っているの」

「え⁉︎ そう…‥なんですか?」

「ロームバルトとシドの友好を結んだこともとても大きいわ。あなたの活躍で、無事に両国の血を受け継ぐ皇子が誕生し、健やかに成長しているでしょう? これで長く両国は友好を結べ争うこともなくなりました」

「キルムの暴走を止めたことも大きいね。あれは世界を巻き込みかねない事態だった。あの事件が本格化していたら、とても凄惨な大戦に発展していたよ、きっとね」

(そういえば、あの事件の影にもエピゾフォールがいたみたいだし、ほんといろいろやってくれたわよね)

謎の孤児院へ潜入捜査まですることになった事件だったけれど、いまとなってはあれもいい経験だったと思える。

(あの子たち、元気でやってるといいなぁ)

「そうそう! 〝魔法屋〟という仕事の価値を高めたことも多くの人の助けとなった。メイロードのおかげでたくさんの人たちが新たな可能性と仕事を得ることができた。この世界の発展にも大きく寄与した出来事だ」

「そのほかにも滅びそうだった港町を建て直し、エントを救い、健康的な食生活について多くの貢献をし……本当にあなたはこの世界に尽くしてきましたね」

「……ええと、それは結果というか……本当に個人的な思いからのもので……」

「結果がすべてを示していますよ。これがメイロードがこの世界にいることで出来上がったいまの世界の姿……」

そこには〝ラーメン横丁〟で楽しそうに食事をしている人たち、〝魔法屋〟で難しいドレスの染み抜きや剣の修復に成功して感謝されている様子、パレスの〝カカオの誘惑〟のチョコレートを楽しそうに選ぶ人々、シラン村の居酒屋でメイロードソースを使った名物料理に舌鼓を打ちながら乾杯しているたくさんの笑顔…‥そのほかにもたくさんの人たちの姿が映し出された。

「あなたはすでに聖人に相応しい仕事をこの世界でしています…‥この世界を導いてくれてありがとう、メイロード」

(ああ、あたしはいよいよ〝聖人〟とかいうものになって神様にお仕えするのか……)

感慨深く、今回も若くしてこの世を去ることになってしまった事実を受け止めていると、神様がしれっとこう言った。

「えっ? メイロードはまだ生きてるよ?」
しおりを挟む
感想 3,006

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。