異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗

文字の大きさ
11 / 69

七元徳の護り手 【勇気】【正義】

しおりを挟む
守護天使のひとりがおごそかに述べる。

「――輝ける明けの明星。父なる神に最も近き尊き御方。御身の前に矮小なるこの身を晒す無礼をお許しください」

全身を厳めしい白銀の鎧ですっぽりと覆ったこの守護天使こそは、七元徳のひとつ『勇気』の担い手。
その名をセアネレイアという。

セアネレイアを包む巨大鎧が、みるみる変形していく。
やがて鎧は聖光を発する重厚な斧槍ハルバードへと変化し、肌にぴったり貼り付くレオタード衣装を身に付けたセアネレイアが生身を露わにした。

守護天使ガーディアンいち、セアネレイアにございます。……ああ、ルシフェル様……我が愛と信仰を、至上なる貴方様に」

鎧を脱いだセアネレイアは、理知的で小柄な少女だった。
しかしこの幼げな見た目に騙されてはいけない。

第一天ヴィロンを護りしセアネレイアは、守護天使においても随一の戦闘能力を持つ。

有事の際には、如何なる形にも千変万化する神級武装『メギドの火』を手に、天の軍団を率いて、真っ先に敵に立ち向かう役目を負う勇猛果敢な守護天使なのである。



「それでは次は、このわたくしがルシフェル様にご挨拶をさせて頂く番ですわね!」

自信満々の表情で立ち上がったこの者は、七元徳がひとつ『正義』を司る守護天使。
その名をグウェンドリエルという。
第二天、ラキアの管理者である。

グウェンドリエルは金色の美しい髪――というか、ぶっちゃけ金髪縦ロールである――を、指先でふわりとかき上げる。
控えめな胸の前で軽く腕組みすると、片方の手を頬に当てた。
歓喜を溢れさせながら、ルシフェルに話す。

「グウェンドリエルですわ! ああ、ルシフェル様。いと高き天の頂におわす貴方様に、この身のすべてを捧げることのできる幸せ……。わたくし、いまとても感動しております!」

グウェンドリエルは喜びのあまり恍惚こうこつとし、ぷるぷると震えている。
今にもルシフェルに向かって飛び出しそうな雰囲気だ。
いや実際に一歩踏み出した。

それは羽ばたく為の予備動作。
つまり今、グウェンドリエルは飛び立とうとしている。

しかし玉座へ飛び出すなど、もってのほかだ。
隣にいたセアネレイアは、大慌てでグウェンドリエルの袖を掴んで制止した。

「こ、こら、グウェンドリエル! ルシフェル様の御前だぞ! 止まれ! 嬉しいのは凄くよく分かるけど、ちゃんと控えないか!」
「――はっ⁉︎ こ、この私としたことが……」

正気に戻ったグウェンドリエルが、慌てて控える。
地に低く身体を伏せ、深く頭を下げた。
土下座である。

「も、申し訳ございませんわ! 私ったら、ルシフェル様の御前だというのに、なんて端ない真似を……!」

グウェンドリエルは真っ青だ。
普段は元気溌剌な金髪縦ロールも、今ばかりは心なしか、へにゃっとして見える。

「この通りですわ! 平に! 平にご容赦下さいませ!」



「ルシフェルさま。どうなさいますか?」

アイラリンドがルシフェルの様子を伺った。
けれどもルシフェルは、さっきからずっとぽかんとしているだけだ。
完全に思考停止している。
というか「アイラリンドって秘書みたいだなー」とか、そんなどうでも良いことを考えて現実逃避中である。

そのルシフェルの態度をどう解釈したのか。
アイラリンドはゆっくりと頷いた。
壇上に据えられた玉座の脇から、グウェンドリエルに向けて語りかける。

「……グウェンドリエル様。お顔をおあげ下さいませ」

グウェンドリエルは言われた通りに面を上げた。
しかし顔面蒼白で、その表情は不安に彩られている。
アイラリンドが優しく微笑みかける。

「ふふふ。グウェンドリエル様、まことにようございましたね。我らが主人ルシフェル様は、貴女様をお許しになりました。そしてこのように仰られております。『グウェンドリエルは第二天ラキアにて数多の下位天使を住まわし、まだ赤子同然のその者たちに神の正義とは如何なるものかを教育する、崇高な使命を持った守護天使。この程度の些事で処罰はせぬ。今後ともその責務に勤しむことで、此度の無礼は許そう』と」

ルシフェルは内心「……ふぁ?」っとなった。
そんなこと俺いつ言ったっけ?
首を捻る。

アイラリンドから間接的にルシフェルの言葉を伝え聞いたグウェンドリエルは、へなへなと脱力してホッと安堵の息を吐いた。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

処理中です...