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パクパクですわぁ。
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「うんしょ、うんしょ……。えいっ。えへへ」
執務机の下から這い出てきたジズは、ルシフェルの膝にちょこんと座った。
抱っこである。
「あっ、このおチビ! 何をしていますの⁉︎」
「ジズ、それはいけないよ。ルシフェル様のお膝からすぐ降りなさい」
守護天使たちは言い争いを中断し、口々にジズを注意する。
けれどもルシフェルはそれをまぁまぁと宥めた。
ジズは抱っこされながら、キラキラの瞳でルシフェルを見つめる。
「ルシフェル様、ルシフェル様ぁ! えっとね。ジズ、連れてって欲しいの! いいでしょ? ジズ、ルシフェル様とずっと一緒にいたいのー!」
直球な願い。
押しが強い。
ジズは自分は必ず同行できると信じきっている。
この無邪気な圧力をスルーできるほどの肝の太さは、ルシフェルにはなかった。
流されるままに同意する。
「う、うーん。わかった。じゃあジズも一緒に行こうか」
「わぁい! ルシフェル様、大好きー!」
ジズはルシフェルに抱きついた。
◇
一人目の同行者はジズに決まった。
だがジズは精神的にまだ未成熟だ。
人界に降りるに当たり、そんな幼いジズと異世界に不慣れなルシフェルの二人では、流石に心許ない。
ルシフェルはあと一人、守護天使の中から同行者を選ぶことにした。
誰を連れて行くかは基本的にルシフェルの自由だ。
とは言え既に同行が決まっているジズと折り合いの悪いメンバーでは都合が悪い。
意見を聞いてみる。
「あともうひとり着いてきてもらおうと思うんだけど、ジズは誰と一緒がいい?」
「……んー、ジズはねぇ。あっそうだ」
ジズはポンと手を打ってから、グウェンドリエルを指差した。
「ジズ、ドリルがいいと思うの!」
「あら、おチビ。なかなか天使を見る目がありますわね!」
選ばれたグウェンドリエルは金髪縦ロールをかき上げた。
キラキラと光を反射して綺麗だ。
他の守護天使たちは悔しそうにしている。
グウェンドリエルは高らかに笑う。
「おーほっほ。褒めて差し上げますわ! でも私を『ドリル』と呼ぶのはおよしなさい!」
「そんなの知らないの。ドリルはドリルなの」
二人のやり取りを眺めながら、ルシフェルは思う。
なるほど、グウェンドリエルを略してドリルか。
金髪縦ロールの形状も何となくドリルに見えないことはないし、言い得て妙だ。
ルシフェルはジズに尋ねる。
「一応聞かせてもらっていいかな? どうしてグウェンドリエルなの?」
「んっとね。ドリルなら人界に詳しいかなーって思うの。だってドリル、ちょくちょく空のお城を抜け出して人界に行ってるもん。ジズ知ってる」
「そうなの?」
「うん。たまにね『パクパクですわぁ!』って言って、涎を垂らしながら抜け出すの」
天使は高位階になるほど存在構成に霊的な要素が増え、食事を必要としなくなっていく。
だが別に食べられないという訳ではない。
そして見た目お嬢様風なグウェンドリエルは、こう見えて実は食べるのが趣味である。
特にB級グルメが大好きだ。
天国の樹木に実る甘い果物より、人間が作るジャンキーで粗暴な味の料理を好むのである。
だからグウェンドリエルは、たまに天空城を抜け出しては人界に降り、食べ歩きをしていた。
ヴェルレマリーが音もなく忍び寄りグウェンドリエルの背後に立つ。
肩に手を乗せた。
ボソッと呟く。
「……何をしているんだ、お前は……」
「お、おほほ。わ、私、いったい何のことやら……」
「あとで私のところに来い。お説教だ」
ギルセリフォンが口を挟む。
「時折り天界を抜け出していた件については後で追求するとして、グウェンドリエルをお連れになるという人選は良いかもしれませんね。……まぁ一番良いのは私をお連れになられることですが、選ばれなかった以上は大人しく留守を任されましょう」
グウェンドリエルは能力的に防御が得意だ。
ありていにいえば盾役である。
その護りの堅牢さたるや、威力1であれば神罰にも耐えてしまうほど。
同行者としてルシフェルを守るのに、まさにうってつけなのである。
「ルシフェル様、よろしいでしょうか」
「うん? どうしたのシェバト」
シェバトはグウェンドリエルとジズを交互に見てから、ルシフェルに訴える。
「やはり私ども七座天使メイド隊もお連れ下さいませ。失礼ながらグウェンドリエル様とジズ様では、御身の身の回りのお世話は勤まりません」
グウェンドリエルにしてもジズにしても、家事なんかの能力は皆無だ。
秘書的なことも出来ない。
いくら戦闘能力がずば抜けていても、それだけで主人をサポートし切れるものではないのである。
「ルシフェル様、ボクもそうした方が良いと思います!」
「ええ、そうねぇ。シェバトちゃんたちが一緒なら安心ね。本当なら私がルシフェルちゃんのお世話をしたいんだけど」
守護天使たちが賛同する。
こうして最終的に、人界に降りるメンバーはルシフェル、ジズ、グウェンドリエル、七座天使メイド隊に決定した。
執務机の下から這い出てきたジズは、ルシフェルの膝にちょこんと座った。
抱っこである。
「あっ、このおチビ! 何をしていますの⁉︎」
「ジズ、それはいけないよ。ルシフェル様のお膝からすぐ降りなさい」
守護天使たちは言い争いを中断し、口々にジズを注意する。
けれどもルシフェルはそれをまぁまぁと宥めた。
ジズは抱っこされながら、キラキラの瞳でルシフェルを見つめる。
「ルシフェル様、ルシフェル様ぁ! えっとね。ジズ、連れてって欲しいの! いいでしょ? ジズ、ルシフェル様とずっと一緒にいたいのー!」
直球な願い。
押しが強い。
ジズは自分は必ず同行できると信じきっている。
この無邪気な圧力をスルーできるほどの肝の太さは、ルシフェルにはなかった。
流されるままに同意する。
「う、うーん。わかった。じゃあジズも一緒に行こうか」
「わぁい! ルシフェル様、大好きー!」
ジズはルシフェルに抱きついた。
◇
一人目の同行者はジズに決まった。
だがジズは精神的にまだ未成熟だ。
人界に降りるに当たり、そんな幼いジズと異世界に不慣れなルシフェルの二人では、流石に心許ない。
ルシフェルはあと一人、守護天使の中から同行者を選ぶことにした。
誰を連れて行くかは基本的にルシフェルの自由だ。
とは言え既に同行が決まっているジズと折り合いの悪いメンバーでは都合が悪い。
意見を聞いてみる。
「あともうひとり着いてきてもらおうと思うんだけど、ジズは誰と一緒がいい?」
「……んー、ジズはねぇ。あっそうだ」
ジズはポンと手を打ってから、グウェンドリエルを指差した。
「ジズ、ドリルがいいと思うの!」
「あら、おチビ。なかなか天使を見る目がありますわね!」
選ばれたグウェンドリエルは金髪縦ロールをかき上げた。
キラキラと光を反射して綺麗だ。
他の守護天使たちは悔しそうにしている。
グウェンドリエルは高らかに笑う。
「おーほっほ。褒めて差し上げますわ! でも私を『ドリル』と呼ぶのはおよしなさい!」
「そんなの知らないの。ドリルはドリルなの」
二人のやり取りを眺めながら、ルシフェルは思う。
なるほど、グウェンドリエルを略してドリルか。
金髪縦ロールの形状も何となくドリルに見えないことはないし、言い得て妙だ。
ルシフェルはジズに尋ねる。
「一応聞かせてもらっていいかな? どうしてグウェンドリエルなの?」
「んっとね。ドリルなら人界に詳しいかなーって思うの。だってドリル、ちょくちょく空のお城を抜け出して人界に行ってるもん。ジズ知ってる」
「そうなの?」
「うん。たまにね『パクパクですわぁ!』って言って、涎を垂らしながら抜け出すの」
天使は高位階になるほど存在構成に霊的な要素が増え、食事を必要としなくなっていく。
だが別に食べられないという訳ではない。
そして見た目お嬢様風なグウェンドリエルは、こう見えて実は食べるのが趣味である。
特にB級グルメが大好きだ。
天国の樹木に実る甘い果物より、人間が作るジャンキーで粗暴な味の料理を好むのである。
だからグウェンドリエルは、たまに天空城を抜け出しては人界に降り、食べ歩きをしていた。
ヴェルレマリーが音もなく忍び寄りグウェンドリエルの背後に立つ。
肩に手を乗せた。
ボソッと呟く。
「……何をしているんだ、お前は……」
「お、おほほ。わ、私、いったい何のことやら……」
「あとで私のところに来い。お説教だ」
ギルセリフォンが口を挟む。
「時折り天界を抜け出していた件については後で追求するとして、グウェンドリエルをお連れになるという人選は良いかもしれませんね。……まぁ一番良いのは私をお連れになられることですが、選ばれなかった以上は大人しく留守を任されましょう」
グウェンドリエルは能力的に防御が得意だ。
ありていにいえば盾役である。
その護りの堅牢さたるや、威力1であれば神罰にも耐えてしまうほど。
同行者としてルシフェルを守るのに、まさにうってつけなのである。
「ルシフェル様、よろしいでしょうか」
「うん? どうしたのシェバト」
シェバトはグウェンドリエルとジズを交互に見てから、ルシフェルに訴える。
「やはり私ども七座天使メイド隊もお連れ下さいませ。失礼ながらグウェンドリエル様とジズ様では、御身の身の回りのお世話は勤まりません」
グウェンドリエルにしてもジズにしても、家事なんかの能力は皆無だ。
秘書的なことも出来ない。
いくら戦闘能力がずば抜けていても、それだけで主人をサポートし切れるものではないのである。
「ルシフェル様、ボクもそうした方が良いと思います!」
「ええ、そうねぇ。シェバトちゃんたちが一緒なら安心ね。本当なら私がルシフェルちゃんのお世話をしたいんだけど」
守護天使たちが賛同する。
こうして最終的に、人界に降りるメンバーはルシフェル、ジズ、グウェンドリエル、七座天使メイド隊に決定した。
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