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帝国軍 vs 天使メイド
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バザック傭兵団の疲労はすでに頂点に達していた。
ルシフェルからの支援もあり、ここまでの戦闘では何とか一人の死者も出さずに堪えてきた。
しかしそれも限界だ。
傭兵たちはボロボロで、身体はもう思うように動かない。
そこに帝国第五軍、弓兵部隊が襲い掛かった。
前後二列に整列した弓兵たちは、弓に矢を番えて弦を引く。
一斉に矢が放たれた。
狙う先はバザック傭兵団だ。
弓兵隊は前列と後列で休みなく入れ替わり、間を置かず続け様に矢を放つ。
数百、数千もの鉄の鏃が、雨霰となって傭兵たちに降り注ぐ。
「ひ、ひい……! 誰か、誰か助けてくれえ!」
襲われた傭兵たちが叫んだ。
この矢からは逃げられない。
逃げ場がない。
バザック傭兵団の傭兵たちは襲いくる痛みに備えて、身を固めた。
しかしそこに――
ヒュンと、風切り音がする。
一陣の風が吹いた。
遅れて豪と大気が震え、猛烈な突風が吹き抜ける。
何者かが駆けて来たのだ。
突如として現れた人影は跳び上がり、宙空で駒のように全身を高速回転させる。
飛来してきた無数の矢をあっという間に弾き飛ばした。
傭兵たちが目を見張る。
音もなく着地した人影を見つめる。
そこにはひとりのメイドが佇んでいた。
彼女の名はリション。
座天使メイド隊末の妹であり、かつ格闘家。
疾風の如く駆けつけたリションは、視認すら叶わぬほどの超高速で動いた。
帝国弓兵を目掛けて駆け出す。
接敵した。
リションが技を繰り出す。
ムエタイ式ハイキック。
中国武術の鉄山靠。
日本武道の合気。
系統の異なる様々な武術、体術を駆使して帝国兵を次々昏倒させていく。
今度は手加減もばっちりだ。
誰も殺していない。
リションは瞬きする程度の時間で、帝国弓兵部隊の全てを気絶させた。
僅かに乱れた着衣を直す。
傭兵たちに向き直り、頬についた返り血をハンカチで拭ってから丁寧な口調で言う。
「バザック傭兵団の皆様、ご安心下さいませ。今この時よりこの私、日曜の座天使リションが、貴方様方をお守りいたします」
バザック傭兵団の傭兵たちは、呆気に取られた。
帝国弓兵隊が全滅……。
やはりこのメイドは化け物だ。
傭兵の一人が恐る恐る尋ねる。
彼の脳裏には先日の恐怖の光景がまざまざと過ぎっている。
「リ、リションさん……⁉︎ な、なんであんたが、お、俺たちを守ってくれるってんだ⁉︎」
「いと尊き我が主人、ルシフェル様の命にございます。それに私は皆様の教育係。言わば教師メイド。そして皆様は私の教え子にございます。なれば主の命がなくともお守りするに吝かではありません」
薄く微笑むリション。
傭兵たちは戦慄した。
教師メイドってなんだ?
それに教え子?
そんな者になったつもりはないぞ。
というか、リションはめちゃくちゃ怖いからもう関わりたくない。
傭兵たちはひとまず窮地を凌げたことに安堵しながらも、教師メイドを自称するリションの笑顔に怯えた。
◇
散開した七座天使メイド隊は、ルシフェルの言い付け通り各所で傭兵たちを守り始めた。
帝国軍は戸惑った。
メイド服の女どもが、突如として現れた。
かと思うと鉄壁の防御で傭兵たちを守る。
歩兵、騎兵隊、戦車隊、砲兵隊――すべての帝国兵の攻撃がそれら少数の見目麗しいメイドに無効化されている。
歩兵は木偶人形のように蹴散らされ、騎兵を乗せた軍馬はメイドに近づくだけで原因不明の恐慌をきたす。
苦し紛れに撃った砲弾などは如何なる理由か、敵方に届く前に宙で霧散した。
綺麗さっぱり消えて跡形もない。
この不測の事態に逸った戦車隊が、大型軍馬二頭立ての装甲戦車を何台も突っ込ませても、メイドの一人が細腕を軽く振るうだけで吹き飛ばされる。
帝国兵たちは思った。
まるで白昼夢でも見ているようだ。
いや悪夢だ。
メイドたちは生き残りの傭兵たちを一箇所に集めて、その周囲に陣を敷く。
巧みに防戦を展開している。
数千から成る帝国兵の軍勢が全力で攻撃した。
なのにたった六人のメイドが倒せない。
あり得ない事態である。
現実味がない。
帝国兵はもはや笑うしかなかった。
◇
帝国兵にとって理解不能な事態は、メイド以外にもまだあった。
金髪縦ロールの貴族令嬢風の女がひとり、誰にも邪魔をされずに戦場を悠々とした足取りで闊歩しているのだ。
我が物顔である。
金髪縦ロールの可憐な女は鼻歌混じりに戦場を歩く。
その進行方向には帝国第五軍が誇る重装歩兵部隊が展開していた。
その数、六百。
まさに極厚の鉄鎧の壁であった。
ルシフェルからの支援もあり、ここまでの戦闘では何とか一人の死者も出さずに堪えてきた。
しかしそれも限界だ。
傭兵たちはボロボロで、身体はもう思うように動かない。
そこに帝国第五軍、弓兵部隊が襲い掛かった。
前後二列に整列した弓兵たちは、弓に矢を番えて弦を引く。
一斉に矢が放たれた。
狙う先はバザック傭兵団だ。
弓兵隊は前列と後列で休みなく入れ替わり、間を置かず続け様に矢を放つ。
数百、数千もの鉄の鏃が、雨霰となって傭兵たちに降り注ぐ。
「ひ、ひい……! 誰か、誰か助けてくれえ!」
襲われた傭兵たちが叫んだ。
この矢からは逃げられない。
逃げ場がない。
バザック傭兵団の傭兵たちは襲いくる痛みに備えて、身を固めた。
しかしそこに――
ヒュンと、風切り音がする。
一陣の風が吹いた。
遅れて豪と大気が震え、猛烈な突風が吹き抜ける。
何者かが駆けて来たのだ。
突如として現れた人影は跳び上がり、宙空で駒のように全身を高速回転させる。
飛来してきた無数の矢をあっという間に弾き飛ばした。
傭兵たちが目を見張る。
音もなく着地した人影を見つめる。
そこにはひとりのメイドが佇んでいた。
彼女の名はリション。
座天使メイド隊末の妹であり、かつ格闘家。
疾風の如く駆けつけたリションは、視認すら叶わぬほどの超高速で動いた。
帝国弓兵を目掛けて駆け出す。
接敵した。
リションが技を繰り出す。
ムエタイ式ハイキック。
中国武術の鉄山靠。
日本武道の合気。
系統の異なる様々な武術、体術を駆使して帝国兵を次々昏倒させていく。
今度は手加減もばっちりだ。
誰も殺していない。
リションは瞬きする程度の時間で、帝国弓兵部隊の全てを気絶させた。
僅かに乱れた着衣を直す。
傭兵たちに向き直り、頬についた返り血をハンカチで拭ってから丁寧な口調で言う。
「バザック傭兵団の皆様、ご安心下さいませ。今この時よりこの私、日曜の座天使リションが、貴方様方をお守りいたします」
バザック傭兵団の傭兵たちは、呆気に取られた。
帝国弓兵隊が全滅……。
やはりこのメイドは化け物だ。
傭兵の一人が恐る恐る尋ねる。
彼の脳裏には先日の恐怖の光景がまざまざと過ぎっている。
「リ、リションさん……⁉︎ な、なんであんたが、お、俺たちを守ってくれるってんだ⁉︎」
「いと尊き我が主人、ルシフェル様の命にございます。それに私は皆様の教育係。言わば教師メイド。そして皆様は私の教え子にございます。なれば主の命がなくともお守りするに吝かではありません」
薄く微笑むリション。
傭兵たちは戦慄した。
教師メイドってなんだ?
それに教え子?
そんな者になったつもりはないぞ。
というか、リションはめちゃくちゃ怖いからもう関わりたくない。
傭兵たちはひとまず窮地を凌げたことに安堵しながらも、教師メイドを自称するリションの笑顔に怯えた。
◇
散開した七座天使メイド隊は、ルシフェルの言い付け通り各所で傭兵たちを守り始めた。
帝国軍は戸惑った。
メイド服の女どもが、突如として現れた。
かと思うと鉄壁の防御で傭兵たちを守る。
歩兵、騎兵隊、戦車隊、砲兵隊――すべての帝国兵の攻撃がそれら少数の見目麗しいメイドに無効化されている。
歩兵は木偶人形のように蹴散らされ、騎兵を乗せた軍馬はメイドに近づくだけで原因不明の恐慌をきたす。
苦し紛れに撃った砲弾などは如何なる理由か、敵方に届く前に宙で霧散した。
綺麗さっぱり消えて跡形もない。
この不測の事態に逸った戦車隊が、大型軍馬二頭立ての装甲戦車を何台も突っ込ませても、メイドの一人が細腕を軽く振るうだけで吹き飛ばされる。
帝国兵たちは思った。
まるで白昼夢でも見ているようだ。
いや悪夢だ。
メイドたちは生き残りの傭兵たちを一箇所に集めて、その周囲に陣を敷く。
巧みに防戦を展開している。
数千から成る帝国兵の軍勢が全力で攻撃した。
なのにたった六人のメイドが倒せない。
あり得ない事態である。
現実味がない。
帝国兵はもはや笑うしかなかった。
◇
帝国兵にとって理解不能な事態は、メイド以外にもまだあった。
金髪縦ロールの貴族令嬢風の女がひとり、誰にも邪魔をされずに戦場を悠々とした足取りで闊歩しているのだ。
我が物顔である。
金髪縦ロールの可憐な女は鼻歌混じりに戦場を歩く。
その進行方向には帝国第五軍が誇る重装歩兵部隊が展開していた。
その数、六百。
まさに極厚の鉄鎧の壁であった。
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