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第5章 呪いの手紙編
第52話 呪いの手紙編⑨
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_あれから数日。
アタシとリディアとオーブリー夫妻は、マリア・オーブリーのお墓に来ていた。定期的に夫妻が来ているのか、彼女のお墓は苔1つ無い綺麗な墓石だった。
「この国では、お墓参りというのは頻繁にするものではないでしょう?だけど、私と妻は、定期的にここに来ているんです。マリアが寂しくないように。」
そう言ったのは、夫のシド・オーブリーさんだった。手慣れているのか、夫婦はテキパキとお墓のお手入れをしていく。アタシとリディアは部外者だから、お花とお供え物を持って端で待機しているわ。
「…お嬢様が亡くなられた日のこと、覚えています。間に合わなくて申し訳ありません。」
「あらあら、やめてくださいレッドフォード伯爵。伯爵は私たち夫婦の無茶なお願いを叶えてくれたではありませんか。」
そう言って、アタシは妻のロベルタ・オーブリーさんに窘められた。供えられた花の香りが、風に乗ってアタシの鼻に届く。
_______。
「一通りお祈りも済みましたし、帰りましょうか。レッドフォード伯爵とレティシアちゃん、是非うちに寄っていってください。マリアの好きだったアップルパイとポテトフライを用意したんです。…ちぐはぐなメニューで申し訳ないですけど。」
この国の故人への弔いにはいくつかの方法があり、親族や関係者で集まって故人の好物を食べる食事会もその1つだったりするわ。
「ええ、お邪魔しますわ。」
「その時に娘の手紙をお渡ししますね。…すみません、本当はここで渡そうと思ったんですけど、無くしてしまいそうで怖くてね…。」
「いえいえ、大丈夫ですわ。」
オーブリー夫妻はお墓の周りを軽く片付け、アタシたちは墓地を後にする。
「…あ、待って。」
それまで無言を貫いていたリディアが口を開き、マリアのお墓の前に駆け寄った。
「あらら、どうかしましたか?レティシア様。」
「…個人的に、マリアにご挨拶したくて。」
「まあ、嬉しい。マリアもきっと喜びますわ。」
リディアはお墓の前でお祈りをすると、小さく呟く。
「マリア・オーブリーに聖女リディアの祝福がありますように。」
「…まあ、あらあら。」
「ははは、素敵ですね。マリアにも、きっと届くことでしょう。」
オーブリー夫妻はリディアの祝福を本気にしていないのか、微笑ましい表情でリディアを見守っている。
まあ、それが普通の反応ね。小さい子供が、聖女リディアの名前を借りているようにしか見えないものね。
今度こそ本当に、アタシたちはマリアのお墓を後にした。
_______。
_帰りの移動車の中。
オーブリー夫妻と別れたアタシとリディアはそのまま、バナハン共同墓地に向かっていた。
「マリアの遺品の中に、ヘンリーに宛てた手紙があったんだね。」
「ええ。この後に病状が悪化して、それどころではなくなってしまったと言っていたわ。この手紙のことを知ったのは、マリアが亡くなってからだって。」
オーブリー夫妻はアタシたちの話を聞いてくれた。呪いの手紙のこと、ヘンリー・マッカリース少年のことを。
最初は半信半疑といった調子だったけど、話を進めていくうちに娘に関する核心的な情報がいくつか出てきたおかげて、夫婦は2人とも信じてくれたわ。
娘の唯一のお友達であった彼が苦しんでいるのなら協力してあげたいと申し出てくれて、アタシとリディアに手紙を託してくれたの。
「アンタの力にかかっているわ。最後まで気を抜かないようにね。」
「もちろん。アディもね?」
この呪いの手紙騒動は終わりに近づいている。呪いの主も救われてほしいわね。
アタシは動かしづらい左腕に力を込めて、移動車のハンドルを握りしめた。
アタシとリディアとオーブリー夫妻は、マリア・オーブリーのお墓に来ていた。定期的に夫妻が来ているのか、彼女のお墓は苔1つ無い綺麗な墓石だった。
「この国では、お墓参りというのは頻繁にするものではないでしょう?だけど、私と妻は、定期的にここに来ているんです。マリアが寂しくないように。」
そう言ったのは、夫のシド・オーブリーさんだった。手慣れているのか、夫婦はテキパキとお墓のお手入れをしていく。アタシとリディアは部外者だから、お花とお供え物を持って端で待機しているわ。
「…お嬢様が亡くなられた日のこと、覚えています。間に合わなくて申し訳ありません。」
「あらあら、やめてくださいレッドフォード伯爵。伯爵は私たち夫婦の無茶なお願いを叶えてくれたではありませんか。」
そう言って、アタシは妻のロベルタ・オーブリーさんに窘められた。供えられた花の香りが、風に乗ってアタシの鼻に届く。
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「一通りお祈りも済みましたし、帰りましょうか。レッドフォード伯爵とレティシアちゃん、是非うちに寄っていってください。マリアの好きだったアップルパイとポテトフライを用意したんです。…ちぐはぐなメニューで申し訳ないですけど。」
この国の故人への弔いにはいくつかの方法があり、親族や関係者で集まって故人の好物を食べる食事会もその1つだったりするわ。
「ええ、お邪魔しますわ。」
「その時に娘の手紙をお渡ししますね。…すみません、本当はここで渡そうと思ったんですけど、無くしてしまいそうで怖くてね…。」
「いえいえ、大丈夫ですわ。」
オーブリー夫妻はお墓の周りを軽く片付け、アタシたちは墓地を後にする。
「…あ、待って。」
それまで無言を貫いていたリディアが口を開き、マリアのお墓の前に駆け寄った。
「あらら、どうかしましたか?レティシア様。」
「…個人的に、マリアにご挨拶したくて。」
「まあ、嬉しい。マリアもきっと喜びますわ。」
リディアはお墓の前でお祈りをすると、小さく呟く。
「マリア・オーブリーに聖女リディアの祝福がありますように。」
「…まあ、あらあら。」
「ははは、素敵ですね。マリアにも、きっと届くことでしょう。」
オーブリー夫妻はリディアの祝福を本気にしていないのか、微笑ましい表情でリディアを見守っている。
まあ、それが普通の反応ね。小さい子供が、聖女リディアの名前を借りているようにしか見えないものね。
今度こそ本当に、アタシたちはマリアのお墓を後にした。
_______。
_帰りの移動車の中。
オーブリー夫妻と別れたアタシとリディアはそのまま、バナハン共同墓地に向かっていた。
「マリアの遺品の中に、ヘンリーに宛てた手紙があったんだね。」
「ええ。この後に病状が悪化して、それどころではなくなってしまったと言っていたわ。この手紙のことを知ったのは、マリアが亡くなってからだって。」
オーブリー夫妻はアタシたちの話を聞いてくれた。呪いの手紙のこと、ヘンリー・マッカリース少年のことを。
最初は半信半疑といった調子だったけど、話を進めていくうちに娘に関する核心的な情報がいくつか出てきたおかげて、夫婦は2人とも信じてくれたわ。
娘の唯一のお友達であった彼が苦しんでいるのなら協力してあげたいと申し出てくれて、アタシとリディアに手紙を託してくれたの。
「アンタの力にかかっているわ。最後まで気を抜かないようにね。」
「もちろん。アディもね?」
この呪いの手紙騒動は終わりに近づいている。呪いの主も救われてほしいわね。
アタシは動かしづらい左腕に力を込めて、移動車のハンドルを握りしめた。
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