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最終章 偽聖女編
第69話 偽聖女編⑬
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「よくもまあ、あんな聖女を名乗る不審者の言うことを信じて私を処刑してくれましたね。ローゼシア国王。」
「………申し訳ありません。」
契約成立から十数分後、アタシはリディアを部屋に通して、今後の話し合いを進めていた。リディアは聖女モードの口調になりながら、目の前にいる国王に長々と愚痴をこぼしている。
話しを戻すべく、アタシはリディアの口にクッキーを詰め込み黙らせる。国王とオーウェン公爵と大臣たちが『聖女の扱いそれで良いのか。』って顔をしているけど、アタシは無視して口を開く。
「…ところで、本当にこの者は聖女リディアなのか?我々の知っているリディアは、黒い髪にオレンジの瞳の10歳くらいの少女なのだが…。」
「…そうですね。お見せしましょう、聖女の力を。」
そう言うと、リディアは以前オーウェン公爵が持ってきた似顔絵とそっくりな少女の姿に変身した。目の前にいる国王たちはポカーンとしていて、口が開いたまま塞がっていない。
「…と、こんな感じに、見た目を変えて接していたのです。分かりましたか?話を進めましょう。」
リディアはすぐに元の姿に戻り、その場を仕切ろうと手をパンパンと叩く。その音で現実に引き戻された国王たちは、アタシとリディアに視線を向ける。
「偽聖女ミネルバの捕獲は私とレッドフォード伯爵の2人で充分です。国王たちは、私の復職後の待遇についての対応と、各地で起こっている災害への対応をお願いします。」
「この災害は早急に終わらせることができるのか?」
「今すぐにとはいきませんが、予定より早く収めることができるでしょう。そこは私に任せなさい。」
そして、しばらくアタシたちは今後について話し合いをした。
当初リディアが想定していた通りになって、話しも上手く進んだ。あの子は未来視でこの光景でも見たのかしら。
こうして、アタシとリディアは世界の鎮静とミネルバの捕獲と逆転移を、国王たちは聖女リディア復職への対応と、各地で起こっている災害への対応に尽力することが決まった。
________。
「んーむむむむむ。ほっ、やっ、せいっ。」
「そんな間の抜けた掛け声で世界の調律ができているの?」
_その日の夜。
リディアはよく分からない掛け声と共に、両手を動かしながら何かをしている。アタシの方を見向きもしないで、リディアは世界の調整を進めているらしいわ。目が宝石みたいに鏡面状になっているだけでなく、光を放ちながらキラキラしている。
「口を慎みなさいレッドフォード伯爵。今1割ほど世界の規律を整え終わりました。」
「あと9割ね。どれくらいかかるの?」
ローゼシア国王とオーウェン公爵を含む大臣たちは、打ち合わせの後すぐに帰っていったわ。聖女リディアの契約書があるとはいえ、ポンコツであることが否めないから今後の様子は注意していたほうが良いかもしれないわね。
「最短で明日の夜、最長で明々後日くらいで世界は元に戻ります。ミネルバの捜索はそれからでも遅くはないでしょう。時間を見つけてミネルバを見つけておくので、レッドフォード伯爵は地図と移動手段の用意をしつつ、セントサザール領の仕事をこなして待ちなさい。」
早口でそう言い残すと、リディアは再び目の前の何かに集中し始めた。アタシが見ていても何も進まないし、こっちはこっちでやることやっちゃいましょうかね。
「はい、明日改めてご連絡しますので。ええ、では失礼します。夜分遅くにごめんなさいね。」
セントサザール領は大きな災害には見舞われていないものの、被害が全くないというわけではない。北部の山岳で土砂崩れが起きたらしく、そちらへの対応を急かされている。アタシは各所に電話を回し、これ以上被害が進まないようにあれやこれやと手を回している。
「アディ、電話終わった?」
「…ん?あら、アンタこそ、謎の舞終わったの?」
「世界の調律ね。今日はここまで。一気に直してしまうと、それはそれで不具合が起きるから、少しづつ。」
言いながらリディアは、1人用の椅子を運んでアタシの作業机の目の前に座る。危なっかしいから運ぶのを手伝おうかと思ったけど、先にリディアに静止されてしまった。
「ねえ、アディ。」
リディアは椅子に座り、姿勢を正してこちらを見ている。アタシはそれに倣うように、手に持っていた書類を机に置き、両手を組んで机に肘を置く。
「私はアディのこと好きだよ。」
「ええ、ありがとう。」
「だから、だからね。私が16歳になるまで、待っていてほしいの。…いや、待つとは少し違うかな。」
「………。」
「私は、アディと一緒にいたい。でも、聖女の立場を放置して、今のままでいるつもりはない。そのための魔法具の製作だから。」
リディアが真剣な眼差しをこちらに向ける。曇りなく、迷いもない澄んだ深い青い色。
「私が聖神殿に戻ってから10年、お互いメールの送り合いを…文通をしてほしいの。その間に、アディに他に好きな人ができたら、手紙で教えて。私は、アディを諦めるから。」
「それがアンタの答え?」
「うん。どうかな。もしアディの気持ちが誰のものにもならないまま10年が経過した時、私は改めてアディに告白したい。…その時に、アディが私を拒絶するなら、すっぱり諦める。10年だけ、私は夢を見たい。」
アタシは大きく息を吐きだし、首を下に向ける。背筋を伸ばすように顔を上げ、改めてリディアに向き直る。
「アンタの熱意を蔑ろにするのは、失礼にあたるわね。いいわ、その案、受け入れてあげる。」
「!」
「聖女リディアとしてやることやって、10年経ってもアタシのことが好きなら戻ってきなさい。アタシのお嫁さんにしてあげるわ。あ、別に、アンタが他の人を好きになったからって離れて行っても責めたりしないわよ。」
「私も、アディが他の人のこと好きになっても責めないよ。泣いちゃったりはするけど。それに、私はアディだけが好き。3,000年生きてきて、初めて抱いた感情なんだから。」
そう言うと、リディアは椅子から飛び降りて部屋の出入り口に向かう。扉を開けてそのまま出て行くのかと思いきや、一度だけアタシの方を見て口を開く。
「おやすみ、アディ。」
「おやすみ、リディア。良い夢を。」
アタシの返事を聞き届けたリディアは、微笑みながら部屋を後にした。
「…結婚、ねえ。」
アタシは誰もいない部屋で1人、言葉を呟いた。
別に、結婚する気がないわけではないわ。幼いころは、両親のような仲のいい夫婦に憧れたものよ。こう見えて、今でも、タイミングと相手が合えばしたいとは思うくらいには結婚に憧れを抱いているのよ。
ただし、今のアタシの相手に成り得る可能性のある女性は、女性というには若すぎる少女。
ずっと庇護下に置いていた少女が成長したとして、アタシが同年代の女性と同じような扱いができる気はしない。どこか保護者のような出で立ちは残ってしまう気がする。
人間であるアタシと神の化身であるリディアは、根本的な種として違うと思う。寿命の違いによって、アタシは必ずあの子を置いて死ななければならないでしょうね。
「負けたわよ。アンタの熱意に。」
アタシは窓に向かって歩き、夜空を眺める。世界の自然変動はまだまだ収まっていないけど、ここから見える星空はいつもと変わらない。
ミネルバの件も災害の件も、問題はまだまだ山積みのはずなのに、何故かアタシの胸の内は清々しく感じた。
「………申し訳ありません。」
契約成立から十数分後、アタシはリディアを部屋に通して、今後の話し合いを進めていた。リディアは聖女モードの口調になりながら、目の前にいる国王に長々と愚痴をこぼしている。
話しを戻すべく、アタシはリディアの口にクッキーを詰め込み黙らせる。国王とオーウェン公爵と大臣たちが『聖女の扱いそれで良いのか。』って顔をしているけど、アタシは無視して口を開く。
「…ところで、本当にこの者は聖女リディアなのか?我々の知っているリディアは、黒い髪にオレンジの瞳の10歳くらいの少女なのだが…。」
「…そうですね。お見せしましょう、聖女の力を。」
そう言うと、リディアは以前オーウェン公爵が持ってきた似顔絵とそっくりな少女の姿に変身した。目の前にいる国王たちはポカーンとしていて、口が開いたまま塞がっていない。
「…と、こんな感じに、見た目を変えて接していたのです。分かりましたか?話を進めましょう。」
リディアはすぐに元の姿に戻り、その場を仕切ろうと手をパンパンと叩く。その音で現実に引き戻された国王たちは、アタシとリディアに視線を向ける。
「偽聖女ミネルバの捕獲は私とレッドフォード伯爵の2人で充分です。国王たちは、私の復職後の待遇についての対応と、各地で起こっている災害への対応をお願いします。」
「この災害は早急に終わらせることができるのか?」
「今すぐにとはいきませんが、予定より早く収めることができるでしょう。そこは私に任せなさい。」
そして、しばらくアタシたちは今後について話し合いをした。
当初リディアが想定していた通りになって、話しも上手く進んだ。あの子は未来視でこの光景でも見たのかしら。
こうして、アタシとリディアは世界の鎮静とミネルバの捕獲と逆転移を、国王たちは聖女リディア復職への対応と、各地で起こっている災害への対応に尽力することが決まった。
________。
「んーむむむむむ。ほっ、やっ、せいっ。」
「そんな間の抜けた掛け声で世界の調律ができているの?」
_その日の夜。
リディアはよく分からない掛け声と共に、両手を動かしながら何かをしている。アタシの方を見向きもしないで、リディアは世界の調整を進めているらしいわ。目が宝石みたいに鏡面状になっているだけでなく、光を放ちながらキラキラしている。
「口を慎みなさいレッドフォード伯爵。今1割ほど世界の規律を整え終わりました。」
「あと9割ね。どれくらいかかるの?」
ローゼシア国王とオーウェン公爵を含む大臣たちは、打ち合わせの後すぐに帰っていったわ。聖女リディアの契約書があるとはいえ、ポンコツであることが否めないから今後の様子は注意していたほうが良いかもしれないわね。
「最短で明日の夜、最長で明々後日くらいで世界は元に戻ります。ミネルバの捜索はそれからでも遅くはないでしょう。時間を見つけてミネルバを見つけておくので、レッドフォード伯爵は地図と移動手段の用意をしつつ、セントサザール領の仕事をこなして待ちなさい。」
早口でそう言い残すと、リディアは再び目の前の何かに集中し始めた。アタシが見ていても何も進まないし、こっちはこっちでやることやっちゃいましょうかね。
「はい、明日改めてご連絡しますので。ええ、では失礼します。夜分遅くにごめんなさいね。」
セントサザール領は大きな災害には見舞われていないものの、被害が全くないというわけではない。北部の山岳で土砂崩れが起きたらしく、そちらへの対応を急かされている。アタシは各所に電話を回し、これ以上被害が進まないようにあれやこれやと手を回している。
「アディ、電話終わった?」
「…ん?あら、アンタこそ、謎の舞終わったの?」
「世界の調律ね。今日はここまで。一気に直してしまうと、それはそれで不具合が起きるから、少しづつ。」
言いながらリディアは、1人用の椅子を運んでアタシの作業机の目の前に座る。危なっかしいから運ぶのを手伝おうかと思ったけど、先にリディアに静止されてしまった。
「ねえ、アディ。」
リディアは椅子に座り、姿勢を正してこちらを見ている。アタシはそれに倣うように、手に持っていた書類を机に置き、両手を組んで机に肘を置く。
「私はアディのこと好きだよ。」
「ええ、ありがとう。」
「だから、だからね。私が16歳になるまで、待っていてほしいの。…いや、待つとは少し違うかな。」
「………。」
「私は、アディと一緒にいたい。でも、聖女の立場を放置して、今のままでいるつもりはない。そのための魔法具の製作だから。」
リディアが真剣な眼差しをこちらに向ける。曇りなく、迷いもない澄んだ深い青い色。
「私が聖神殿に戻ってから10年、お互いメールの送り合いを…文通をしてほしいの。その間に、アディに他に好きな人ができたら、手紙で教えて。私は、アディを諦めるから。」
「それがアンタの答え?」
「うん。どうかな。もしアディの気持ちが誰のものにもならないまま10年が経過した時、私は改めてアディに告白したい。…その時に、アディが私を拒絶するなら、すっぱり諦める。10年だけ、私は夢を見たい。」
アタシは大きく息を吐きだし、首を下に向ける。背筋を伸ばすように顔を上げ、改めてリディアに向き直る。
「アンタの熱意を蔑ろにするのは、失礼にあたるわね。いいわ、その案、受け入れてあげる。」
「!」
「聖女リディアとしてやることやって、10年経ってもアタシのことが好きなら戻ってきなさい。アタシのお嫁さんにしてあげるわ。あ、別に、アンタが他の人を好きになったからって離れて行っても責めたりしないわよ。」
「私も、アディが他の人のこと好きになっても責めないよ。泣いちゃったりはするけど。それに、私はアディだけが好き。3,000年生きてきて、初めて抱いた感情なんだから。」
そう言うと、リディアは椅子から飛び降りて部屋の出入り口に向かう。扉を開けてそのまま出て行くのかと思いきや、一度だけアタシの方を見て口を開く。
「おやすみ、アディ。」
「おやすみ、リディア。良い夢を。」
アタシの返事を聞き届けたリディアは、微笑みながら部屋を後にした。
「…結婚、ねえ。」
アタシは誰もいない部屋で1人、言葉を呟いた。
別に、結婚する気がないわけではないわ。幼いころは、両親のような仲のいい夫婦に憧れたものよ。こう見えて、今でも、タイミングと相手が合えばしたいとは思うくらいには結婚に憧れを抱いているのよ。
ただし、今のアタシの相手に成り得る可能性のある女性は、女性というには若すぎる少女。
ずっと庇護下に置いていた少女が成長したとして、アタシが同年代の女性と同じような扱いができる気はしない。どこか保護者のような出で立ちは残ってしまう気がする。
人間であるアタシと神の化身であるリディアは、根本的な種として違うと思う。寿命の違いによって、アタシは必ずあの子を置いて死ななければならないでしょうね。
「負けたわよ。アンタの熱意に。」
アタシは窓に向かって歩き、夜空を眺める。世界の自然変動はまだまだ収まっていないけど、ここから見える星空はいつもと変わらない。
ミネルバの件も災害の件も、問題はまだまだ山積みのはずなのに、何故かアタシの胸の内は清々しく感じた。
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