29 / 72
第3章 リディア誘拐編
第29話 リディア誘拐編⑬
しおりを挟む
「どうも。アタシはアドルディ・レッドフォード伯爵。アンタが銃を突き付けているその女の子の保護者よ。」
「知ってま~す。」
男ことジャッドは、ふざけた口調でアタシに対峙する。アタシは先ほどの刃物に魔法を纏わせて持ち、相手を牽制する。
ジャッドが左手を振ると、後ろから部下らしい男たちが次々と出てきた。ここにいる敵の数はジャッドを含め5人ね。あとは先ほど相手をして戦意を消失した人たちだけど、縄で縛ったから放置で良いと思うわ。
アタシの背後にいたレノルドが手の内に魔法を、アランが銃を構えて対峙する。そんな様子にジャッドは動じることなく、喉を鳴らして笑っている。
「ねえねえ、アドルディ・レッドフォード伯爵~。こんな逸材、どこで見つけてきたの?」
「逸材?」
「この女の子だよ~!6歳って聞いたけど、もう既に中級以上の魔法が使えるってね!」
ジャッドの言葉を聞いてドキッとする。リディアは魔法適性持ちであることがバレたとだけ言っていた。だけど実際は、魔法適性どころか使用可能な魔法の階級まで知られていた。リディア自身が言葉を漏らしたとは考えにくい。
ジャッドは裏社会を相手に商売をしているような人だから、違法な魔法適性検査キットとかもあるのかもしれないわね。
「でもこの子すっとぼけちゃってさぁ!『私初めて知りました~』みたいな顔してんの!」
「へえ、そうなのね。アタシも初耳。魔法適性持ちなのは知ってたけどね。」
「………ふーん、伯爵もとぼけちゃうんだ?」
言葉を言い終わるのと同時に、ジャッドがアタシの背後目掛けて銃を発砲する。レノルドとアランは対応が遅れ、手と肩と足を撃たれてその場に崩れ落ちる。
「レノルド!!アラン!!」
アタシは2人に駆け寄り、傷口の様子を見る。
すると、傷口からどす黒い呪いをまとった、薔薇の蔦のようなものが生えてくる。蔦はぐちゃぐちゃと音を立てて傷口を抉り、傷口周辺に絡まりついていく。2人は声も出せないのか、口からはくぐもった音しか出てこない。
「これはまさか…。」
「はーい、まさかの”魔法弾”でーす。しかも呪い付きのやつ!言ってなかったかな、僕も魔法適性あるって。」
ジャッドは満面の笑みを浮かべながら、魔法銃をチラつかせている。彼の背後にいる部下の男たちは、ニヤニヤしながらこちらに近づいてきた。
_魔法銃。
魔法適性持ちのみが正式に扱える武器の一種。込める魔法の力によって相手に与える効果が変わるのが特徴。
_魔法弾。
魔法銃に使用する弾丸。魔法銃を通してこの弾丸に魔法の効果が込められる。
両方とも基本的に一般人には所有権が認められていなくて、一部の軍人や国境防衛隊にのみ使用が許されている武器よ。さっきまで魔法適性持ちがいなくて頭になかったけど、裏の商売をしているこの人たちなら持っていてもおかしくなかったわね。失敗したわ。
しかも、彼が放った弾丸には呪いまで付与されていた。おそらくあの呪いの魔法は上級魔法。アタシが扱えるのは中級魔法までだから、特殊防御魔法は通用しない。
厄介ね、ジャッドは上級魔法適性持ちなのね。
「ウッドヴィルの犬共には興味ないからそこに転がしておけばいいよ。僕の本命は君だよ、レッドフォード伯爵。」
ジャッドがリディアを人質に取りながら、ゆっくりと舞台の階段を降りてくる。
「僕はこの子に秘められた力が見たくて仕方ないんだ。だからぁ…」
バァン!!
「っう…!」
「レティシア!!」
「おっと伯爵、そこから動かないで?動くと今度はこの子の脳天撃っちゃうかも。」
ジャッドがリディアの左腕を魔法銃で撃ち抜く。アタシは顔の血の気が引いて、手先が冷たくなっていくのを感じた。
…だけど、リディアの腕に傷は1つも付かなかった。弾は確かにリディアの腕を通ったはずなのに、まるでそこに何もないかのようにすり抜けていったように見えた。リディアの腕をすり抜けた弾は、確かに床に当たったわ。でも、リディアには当たらなかった。
リディアは以前の通信魔法で、催眠魔法をかけられて寝たふりをしたと言っていた。もしかしてあの子、一部の魔法が通じないのかもしれないわね。
「君ぃ、レティシアって言うんだ。良い名前だねえ!」
ジャッドは上機嫌な口調でレティシアの顎を持ち上げる。
「でも…今のどういうこと?僕、確かに君のこと撃ったよね?なのになんで無傷なの?」
ジャッドがリディアに詰め寄る。リディアは何も知らないふりをしているのか、無言でふるふると首を振っている。
「…本当に分かっていないのか、無知のフリか。…まあいいや。」
ジャッドは銃を持ち替え、ナイフを取り出す。あれは魔法をまとったナイフではなく、普通のナイフ。だから…
「痛っ…!」
ジャッドはためらいもなく、リディアの腕を切りつける。リディアの腕に赤い線ができ、プツプツと血の玉が滲み出てくる。
「ジャッド!!やめなさい!!」
「やっぱり、実体はあるんだよね?幽霊とかじゃないよね?何だろう、君の持っている魔法の力が強すぎるのかなあ。」
ジャッドが持っているナイフをリディアの首に突き立てる。リディアは自分の血が付いたナイフを見て怯えて、ぎゅっと目を閉じている。
「やっぱり試すべきだよね。…レッドフォード伯爵!」
「…何?」
アタシは何もできないまま、呆然と立ち尽くしている。
下手に動いたらリディアに危害が行く。だけど、何もしないわけにはいかない。ジャッドの周りにいる部下はおそらく魔法適性を持っていないから放置しても大丈夫だとは思うけど…。
どうすれば、どうすれば_!
「っあ”ああ!!」
「!?…!!アディ!!」
隙を突かれて、ジャッドに魔法銃で右の二の腕を撃ち抜かれた。撃たれた拍子に、手に持っていたナイフが地面に落ちて刺さる。傷口からは蔦が生え、蔦の棘が傷口を抉る。傷口が熱を帯び、とても熱くて痛い…!!
ちらっと後ろを見ると、辛うじて意識を保っていたレノルドとアランがジャッドの部下たちに手酷く殴られ蹴られているのが見えた。魔法弾による呪いの痛みもあり、2人は気絶してしまったらしい。
(あらアタシ、ピンチかしら?)
思わずアタシは膝をつく。そんなアタシの周りに、先ほどレノルドとアランを気絶させていた、ジャッドの残りの部下たちが群がる。アタシは傷の痛みに耐えるのが精一杯で、汗が伝う歪な顔のまま部下の男たちを睨みつける。
「お前たち~。伯爵を殺さない程度に、惨たらしく、手酷く、陰惨に、痛めつけてあげて~!…でぇ、その姿をぉ、この女の子に見せてあげな?」
「知ってま~す。」
男ことジャッドは、ふざけた口調でアタシに対峙する。アタシは先ほどの刃物に魔法を纏わせて持ち、相手を牽制する。
ジャッドが左手を振ると、後ろから部下らしい男たちが次々と出てきた。ここにいる敵の数はジャッドを含め5人ね。あとは先ほど相手をして戦意を消失した人たちだけど、縄で縛ったから放置で良いと思うわ。
アタシの背後にいたレノルドが手の内に魔法を、アランが銃を構えて対峙する。そんな様子にジャッドは動じることなく、喉を鳴らして笑っている。
「ねえねえ、アドルディ・レッドフォード伯爵~。こんな逸材、どこで見つけてきたの?」
「逸材?」
「この女の子だよ~!6歳って聞いたけど、もう既に中級以上の魔法が使えるってね!」
ジャッドの言葉を聞いてドキッとする。リディアは魔法適性持ちであることがバレたとだけ言っていた。だけど実際は、魔法適性どころか使用可能な魔法の階級まで知られていた。リディア自身が言葉を漏らしたとは考えにくい。
ジャッドは裏社会を相手に商売をしているような人だから、違法な魔法適性検査キットとかもあるのかもしれないわね。
「でもこの子すっとぼけちゃってさぁ!『私初めて知りました~』みたいな顔してんの!」
「へえ、そうなのね。アタシも初耳。魔法適性持ちなのは知ってたけどね。」
「………ふーん、伯爵もとぼけちゃうんだ?」
言葉を言い終わるのと同時に、ジャッドがアタシの背後目掛けて銃を発砲する。レノルドとアランは対応が遅れ、手と肩と足を撃たれてその場に崩れ落ちる。
「レノルド!!アラン!!」
アタシは2人に駆け寄り、傷口の様子を見る。
すると、傷口からどす黒い呪いをまとった、薔薇の蔦のようなものが生えてくる。蔦はぐちゃぐちゃと音を立てて傷口を抉り、傷口周辺に絡まりついていく。2人は声も出せないのか、口からはくぐもった音しか出てこない。
「これはまさか…。」
「はーい、まさかの”魔法弾”でーす。しかも呪い付きのやつ!言ってなかったかな、僕も魔法適性あるって。」
ジャッドは満面の笑みを浮かべながら、魔法銃をチラつかせている。彼の背後にいる部下の男たちは、ニヤニヤしながらこちらに近づいてきた。
_魔法銃。
魔法適性持ちのみが正式に扱える武器の一種。込める魔法の力によって相手に与える効果が変わるのが特徴。
_魔法弾。
魔法銃に使用する弾丸。魔法銃を通してこの弾丸に魔法の効果が込められる。
両方とも基本的に一般人には所有権が認められていなくて、一部の軍人や国境防衛隊にのみ使用が許されている武器よ。さっきまで魔法適性持ちがいなくて頭になかったけど、裏の商売をしているこの人たちなら持っていてもおかしくなかったわね。失敗したわ。
しかも、彼が放った弾丸には呪いまで付与されていた。おそらくあの呪いの魔法は上級魔法。アタシが扱えるのは中級魔法までだから、特殊防御魔法は通用しない。
厄介ね、ジャッドは上級魔法適性持ちなのね。
「ウッドヴィルの犬共には興味ないからそこに転がしておけばいいよ。僕の本命は君だよ、レッドフォード伯爵。」
ジャッドがリディアを人質に取りながら、ゆっくりと舞台の階段を降りてくる。
「僕はこの子に秘められた力が見たくて仕方ないんだ。だからぁ…」
バァン!!
「っう…!」
「レティシア!!」
「おっと伯爵、そこから動かないで?動くと今度はこの子の脳天撃っちゃうかも。」
ジャッドがリディアの左腕を魔法銃で撃ち抜く。アタシは顔の血の気が引いて、手先が冷たくなっていくのを感じた。
…だけど、リディアの腕に傷は1つも付かなかった。弾は確かにリディアの腕を通ったはずなのに、まるでそこに何もないかのようにすり抜けていったように見えた。リディアの腕をすり抜けた弾は、確かに床に当たったわ。でも、リディアには当たらなかった。
リディアは以前の通信魔法で、催眠魔法をかけられて寝たふりをしたと言っていた。もしかしてあの子、一部の魔法が通じないのかもしれないわね。
「君ぃ、レティシアって言うんだ。良い名前だねえ!」
ジャッドは上機嫌な口調でレティシアの顎を持ち上げる。
「でも…今のどういうこと?僕、確かに君のこと撃ったよね?なのになんで無傷なの?」
ジャッドがリディアに詰め寄る。リディアは何も知らないふりをしているのか、無言でふるふると首を振っている。
「…本当に分かっていないのか、無知のフリか。…まあいいや。」
ジャッドは銃を持ち替え、ナイフを取り出す。あれは魔法をまとったナイフではなく、普通のナイフ。だから…
「痛っ…!」
ジャッドはためらいもなく、リディアの腕を切りつける。リディアの腕に赤い線ができ、プツプツと血の玉が滲み出てくる。
「ジャッド!!やめなさい!!」
「やっぱり、実体はあるんだよね?幽霊とかじゃないよね?何だろう、君の持っている魔法の力が強すぎるのかなあ。」
ジャッドが持っているナイフをリディアの首に突き立てる。リディアは自分の血が付いたナイフを見て怯えて、ぎゅっと目を閉じている。
「やっぱり試すべきだよね。…レッドフォード伯爵!」
「…何?」
アタシは何もできないまま、呆然と立ち尽くしている。
下手に動いたらリディアに危害が行く。だけど、何もしないわけにはいかない。ジャッドの周りにいる部下はおそらく魔法適性を持っていないから放置しても大丈夫だとは思うけど…。
どうすれば、どうすれば_!
「っあ”ああ!!」
「!?…!!アディ!!」
隙を突かれて、ジャッドに魔法銃で右の二の腕を撃ち抜かれた。撃たれた拍子に、手に持っていたナイフが地面に落ちて刺さる。傷口からは蔦が生え、蔦の棘が傷口を抉る。傷口が熱を帯び、とても熱くて痛い…!!
ちらっと後ろを見ると、辛うじて意識を保っていたレノルドとアランがジャッドの部下たちに手酷く殴られ蹴られているのが見えた。魔法弾による呪いの痛みもあり、2人は気絶してしまったらしい。
(あらアタシ、ピンチかしら?)
思わずアタシは膝をつく。そんなアタシの周りに、先ほどレノルドとアランを気絶させていた、ジャッドの残りの部下たちが群がる。アタシは傷の痛みに耐えるのが精一杯で、汗が伝う歪な顔のまま部下の男たちを睨みつける。
「お前たち~。伯爵を殺さない程度に、惨たらしく、手酷く、陰惨に、痛めつけてあげて~!…でぇ、その姿をぉ、この女の子に見せてあげな?」
136
あなたにおすすめの小説
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです
珂里
ファンタジー
ある日、5歳の彩菜は突然神隠しに遭い異世界へ迷い込んでしまう。
そんな迷子の彩菜を助けてくれたのは王国の騎士団長だった。元の世界に帰れない彩菜を、子供のいない団長夫婦は自分の娘として育ててくれることに……。
日本のお父さんお母さん、会えなくて寂しいけれど、彩菜は優しい大人の人達に助けられて毎日元気に暮らしてます!
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ
水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。
それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。
黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。
叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。
ですが、私は知らなかった。
黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。
残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる