41 / 72
第4章 日常編
第41話 懐かしい気持ちになったわ。
しおりを挟む
仕立て屋フィッツシモンズの店内に入ると、お店特有の布と皮の匂いに包まれる。アタシとリディアの来店の音に気が付いた店の従業員が、奥の部屋から1人出てきた。
「あれ、すみません今日は貸し切りで…」
「アタシよお馬鹿。」
声の主はよそ見をしていたらしい。アタシとリディアの顔を見ると、『あー!』と大きな声を出して、こちらに駆け寄ってきた。
「やほやほ、いらっしゃい!アドルディ久しぶり☆」
「ケイティも相変わらずね。変わってないようで安心したわ。」
アタシとケイティは挨拶を交わし、ケイティの視線はアタシの後ろに隠れていたリディアに向いた。
「おや!?君が噂の…!?」
「そうよ。レティシア、挨拶なさい。」
珍しく緊張しているのか、リディアは恐る恐る前へと踏み出す。珍しいわねと思いながら、アタシはリディアに自己紹介を促す。
「初めまして、リ…レティシア・レッドフォードです。よよよよしなに。」
「よしな!?」
「緊張しているみたいなの、いつもはもっと元気なんだけどね。」
ケイティの背が高いから威圧感を感じているのかもしれないわね。それでもこの子がこんなに緊張していること自体珍しいんだけど。
(あれかしら、久しぶりの王都だからってのもあるのかもね。)
表向きには騒ぎになっていないけど、王族や大臣の間では聖女リディアが行方不明だと知れ渡っているらしいわね。オーウェン公爵の件で、見た目ではレティシア・レッドフォードがリディア・アッシュクロフトと同一人物であるとは結び付けられないと証明されたようなものだけど、それでも不安はあるのかもしれないわ。
いや、純粋に楽しみすぎて緊張している可能性が高いかしら。
「ああああのね、こういう可愛いお洋服を着てみたいなって。」
そう言うとリディアは家から持ってきた雑誌類を手提げ鞄の中から取り出し、いくつか広げて見せる。ケイティには事前に、いくつかリディアの求める案を送っておいたから把握はしているはず。だけど、リディアに合わせて腰を低くし、うんうんと大きく頷いて話を聞いてあげているわ。
「おけおけ、こちらでもいくつかデザイン案は考えておいたの。素敵なお洋服にしようね!」
「…!…うん!」
2人は何かの波長が合ったのか、顔を合わせてうんうんと頷きあっている。眩しいわね、2人の若々しさが羨ましくなっちゃう。
…あれ?ケイティとアタシは同い年のはずよね?リディアに至っては数千歳よね?
奥の部屋に通され、荷物を籠の中にまとめて入れる。ケイティはすっと指を動かすと、カーテンを閉めて部屋の空調を調整する。そういえばこの子、魔法使える子だったわね。
「おしゃれして来てくれたところ悪いんだけど…こっちの簡易的な服に着替えてもらっていいかな?きちんと採寸するためには、体のラインが出ていないといけないの。」
そう言ってケイティは、リディアにノースリーブのシャツと灰色のパンツを渡したわ。あっちで着替えてきてねと指示を出され、リディアが素直に従い更衣室に入っていく。
「着替えのお手伝いしてあげなくて大丈夫そう?私行こうか?」
「大丈夫よ。あの子身支度に使用人付けないタイプだから。」
一応リディア専属の使用人として付いてくれているのがクリスティだけど、リディア自身はクリスティに身支度をしてもらってないと言っていた気がするわ。とっ散らかした身の回りの整頓はしてもらっているみたいだけど。
「へえ、意外。貴族ってみんな使用人侍らせているイメージだから。」
「それアンタの店の客層でしょ。アタシだって使用人侍らせていないし。」
「それもそっか!」
ケイティは何かを納得したように、うんうんと頷いている。
_ケイティ・フィッツシモンズ。
アタシの学生時代の同級生で、友達の1人。お爺様であるテオドアさんの後を継ぐために、現在は見習いとして毎日しごかれていると聞いたのが数年前。1年の節目に手紙のやり取りをしたり、プライベートで大きな転機があった時に電話をくれるくらいの間柄になっていたけど、会って話すと学生時代に戻ったように会話が弾むわね。
そして、アタシの両親の事情を知っている、数少ない友人の1人でもあるわ。
リディアの準備が終わるまでの間、アタシとケイティは学生時代の話題で盛り上がった。不思議なもので、いつもは頭の片隅にすらない記憶も、誰かと話すことでこんなに鮮明に思い出していくものなのね。
ケイティとの話しに区切りがついたところで、アタシはどこからか視線を感じて部屋を見回す。更衣室のドアから顔を半分だけ覗かせたリディアが、目を細めながら無言でこちらを見ていた。
「…私、お邪魔かなって。」
「あああごめんねごめんね!つい思い出話で盛り上がっちゃって!」
ケイティは慌ててアタシの元から立ち去り、リディアのところに走っていく。リディアは『えへへ、冗談。2人は学校のお友達って聞いてる』と舌を出して笑った。
________。
「締め付けすぎていたり、逆に緩かったりしたら言ってね!」
「はーい。」
ケイティはリディアの体に布製メジャーを当てていき、テキパキと計測を済ませていく。あの子、お調子者な言動に反して仕事は早くてきっちりしているのよね。
「アドルディ~!?誰がお調子者だってえ!?」
「あらやだ?失礼。思わず口に出してしまっていたみたいね。」
アタシは思わずあははと大きく笑い、ケイティは眉間に皺を寄せながら手の関節をパキパキと鳴らしている。
「…こんなアディ見るの、初めてかも。」
アタシとケイティの様子を見ていたリディアが、ポツンとそんな言葉を漏らした。確かに、こんな気を抜いてぎゃあぎゃあと笑いあう姿は、リディアに見せたことなかったかもしれないわね。
「アドルディのことアディって呼んでるの?可愛い~!私もアディって呼ぼうかな!」
「やめてよ今更そんな風に呼ぶのは!アンタはアドルディ呼びでいいの!」
思わずアタシたちは、無意識に学生時代のようなノリで話してしまっていた。アタシもケイティもお互い社会人になってから結構な日数が経っているけど、まだまだ精神的には未熟者みたいね。
________。
「はい、採寸はこれで終わり。レティシア、動いていいよ~。」
ケイティにそう言われ、体に力が入っていたリディアが脱力する様子が見える。ケイティは引き続き何かをメモしているのか、机の上にある紙に向かって鉛筆を動かしている。
「ふぁ。緊張した。数千年ぶりだもん。」
「数千年?あはは!レティシアって実はおばあちゃん!?」
「レティシア流ジョークよ、気にしないで。」
アタシは思わず心臓が飛び出しそうになりながらも、平常心を保ちながら答える。
『ちょっとリディア、洒落にならないから!』と目で訴えかけてみるも、当のリディアは知らん顔をしている。こんなこと言われても真に受ける人なんていないだろうし、アタシが気にしすぎなだけかもしれないわね…?
「そうそう、さっきマリン風の服が着たいって言ってたじゃん?レティシア、こういうのも好きかなって。」
「む、それは違う。可愛いけど、好きじゃない。」
「あれえ!?」
採寸を終えた2人は次の工程に移ったのか、沢山の資料を取り出しながら仕立てていく服のデザインを考え始めた。リディアは着替えるのも忘れて、服のデザイン案を出すのに夢中になっている。
アタシはああでもないこうでもないと話している2人を微笑ましく思いながら、その後ろ姿を静かに見つめた。
「あれ、すみません今日は貸し切りで…」
「アタシよお馬鹿。」
声の主はよそ見をしていたらしい。アタシとリディアの顔を見ると、『あー!』と大きな声を出して、こちらに駆け寄ってきた。
「やほやほ、いらっしゃい!アドルディ久しぶり☆」
「ケイティも相変わらずね。変わってないようで安心したわ。」
アタシとケイティは挨拶を交わし、ケイティの視線はアタシの後ろに隠れていたリディアに向いた。
「おや!?君が噂の…!?」
「そうよ。レティシア、挨拶なさい。」
珍しく緊張しているのか、リディアは恐る恐る前へと踏み出す。珍しいわねと思いながら、アタシはリディアに自己紹介を促す。
「初めまして、リ…レティシア・レッドフォードです。よよよよしなに。」
「よしな!?」
「緊張しているみたいなの、いつもはもっと元気なんだけどね。」
ケイティの背が高いから威圧感を感じているのかもしれないわね。それでもこの子がこんなに緊張していること自体珍しいんだけど。
(あれかしら、久しぶりの王都だからってのもあるのかもね。)
表向きには騒ぎになっていないけど、王族や大臣の間では聖女リディアが行方不明だと知れ渡っているらしいわね。オーウェン公爵の件で、見た目ではレティシア・レッドフォードがリディア・アッシュクロフトと同一人物であるとは結び付けられないと証明されたようなものだけど、それでも不安はあるのかもしれないわ。
いや、純粋に楽しみすぎて緊張している可能性が高いかしら。
「ああああのね、こういう可愛いお洋服を着てみたいなって。」
そう言うとリディアは家から持ってきた雑誌類を手提げ鞄の中から取り出し、いくつか広げて見せる。ケイティには事前に、いくつかリディアの求める案を送っておいたから把握はしているはず。だけど、リディアに合わせて腰を低くし、うんうんと大きく頷いて話を聞いてあげているわ。
「おけおけ、こちらでもいくつかデザイン案は考えておいたの。素敵なお洋服にしようね!」
「…!…うん!」
2人は何かの波長が合ったのか、顔を合わせてうんうんと頷きあっている。眩しいわね、2人の若々しさが羨ましくなっちゃう。
…あれ?ケイティとアタシは同い年のはずよね?リディアに至っては数千歳よね?
奥の部屋に通され、荷物を籠の中にまとめて入れる。ケイティはすっと指を動かすと、カーテンを閉めて部屋の空調を調整する。そういえばこの子、魔法使える子だったわね。
「おしゃれして来てくれたところ悪いんだけど…こっちの簡易的な服に着替えてもらっていいかな?きちんと採寸するためには、体のラインが出ていないといけないの。」
そう言ってケイティは、リディアにノースリーブのシャツと灰色のパンツを渡したわ。あっちで着替えてきてねと指示を出され、リディアが素直に従い更衣室に入っていく。
「着替えのお手伝いしてあげなくて大丈夫そう?私行こうか?」
「大丈夫よ。あの子身支度に使用人付けないタイプだから。」
一応リディア専属の使用人として付いてくれているのがクリスティだけど、リディア自身はクリスティに身支度をしてもらってないと言っていた気がするわ。とっ散らかした身の回りの整頓はしてもらっているみたいだけど。
「へえ、意外。貴族ってみんな使用人侍らせているイメージだから。」
「それアンタの店の客層でしょ。アタシだって使用人侍らせていないし。」
「それもそっか!」
ケイティは何かを納得したように、うんうんと頷いている。
_ケイティ・フィッツシモンズ。
アタシの学生時代の同級生で、友達の1人。お爺様であるテオドアさんの後を継ぐために、現在は見習いとして毎日しごかれていると聞いたのが数年前。1年の節目に手紙のやり取りをしたり、プライベートで大きな転機があった時に電話をくれるくらいの間柄になっていたけど、会って話すと学生時代に戻ったように会話が弾むわね。
そして、アタシの両親の事情を知っている、数少ない友人の1人でもあるわ。
リディアの準備が終わるまでの間、アタシとケイティは学生時代の話題で盛り上がった。不思議なもので、いつもは頭の片隅にすらない記憶も、誰かと話すことでこんなに鮮明に思い出していくものなのね。
ケイティとの話しに区切りがついたところで、アタシはどこからか視線を感じて部屋を見回す。更衣室のドアから顔を半分だけ覗かせたリディアが、目を細めながら無言でこちらを見ていた。
「…私、お邪魔かなって。」
「あああごめんねごめんね!つい思い出話で盛り上がっちゃって!」
ケイティは慌ててアタシの元から立ち去り、リディアのところに走っていく。リディアは『えへへ、冗談。2人は学校のお友達って聞いてる』と舌を出して笑った。
________。
「締め付けすぎていたり、逆に緩かったりしたら言ってね!」
「はーい。」
ケイティはリディアの体に布製メジャーを当てていき、テキパキと計測を済ませていく。あの子、お調子者な言動に反して仕事は早くてきっちりしているのよね。
「アドルディ~!?誰がお調子者だってえ!?」
「あらやだ?失礼。思わず口に出してしまっていたみたいね。」
アタシは思わずあははと大きく笑い、ケイティは眉間に皺を寄せながら手の関節をパキパキと鳴らしている。
「…こんなアディ見るの、初めてかも。」
アタシとケイティの様子を見ていたリディアが、ポツンとそんな言葉を漏らした。確かに、こんな気を抜いてぎゃあぎゃあと笑いあう姿は、リディアに見せたことなかったかもしれないわね。
「アドルディのことアディって呼んでるの?可愛い~!私もアディって呼ぼうかな!」
「やめてよ今更そんな風に呼ぶのは!アンタはアドルディ呼びでいいの!」
思わずアタシたちは、無意識に学生時代のようなノリで話してしまっていた。アタシもケイティもお互い社会人になってから結構な日数が経っているけど、まだまだ精神的には未熟者みたいね。
________。
「はい、採寸はこれで終わり。レティシア、動いていいよ~。」
ケイティにそう言われ、体に力が入っていたリディアが脱力する様子が見える。ケイティは引き続き何かをメモしているのか、机の上にある紙に向かって鉛筆を動かしている。
「ふぁ。緊張した。数千年ぶりだもん。」
「数千年?あはは!レティシアって実はおばあちゃん!?」
「レティシア流ジョークよ、気にしないで。」
アタシは思わず心臓が飛び出しそうになりながらも、平常心を保ちながら答える。
『ちょっとリディア、洒落にならないから!』と目で訴えかけてみるも、当のリディアは知らん顔をしている。こんなこと言われても真に受ける人なんていないだろうし、アタシが気にしすぎなだけかもしれないわね…?
「そうそう、さっきマリン風の服が着たいって言ってたじゃん?レティシア、こういうのも好きかなって。」
「む、それは違う。可愛いけど、好きじゃない。」
「あれえ!?」
採寸を終えた2人は次の工程に移ったのか、沢山の資料を取り出しながら仕立てていく服のデザインを考え始めた。リディアは着替えるのも忘れて、服のデザイン案を出すのに夢中になっている。
アタシはああでもないこうでもないと話している2人を微笑ましく思いながら、その後ろ姿を静かに見つめた。
101
あなたにおすすめの小説
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです
珂里
ファンタジー
ある日、5歳の彩菜は突然神隠しに遭い異世界へ迷い込んでしまう。
そんな迷子の彩菜を助けてくれたのは王国の騎士団長だった。元の世界に帰れない彩菜を、子供のいない団長夫婦は自分の娘として育ててくれることに……。
日本のお父さんお母さん、会えなくて寂しいけれど、彩菜は優しい大人の人達に助けられて毎日元気に暮らしてます!
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる