163 / 191
レティシア15歳 輝く未来へ
第147話 対抗戦三日目〜サバイバル(2)
しおりを挟む大講堂のモニターに映るカティアの行動に視線が集まる。
それは彼女のクラスメイトたちだけでない。
実況アナウンスが言っていた通り、やはりそれだけ注目されているのだろう。
カティアのスタート地点は薔薇園。
スタート直後は植え込みに身を潜めていた彼女だったが、あたりの気配を探ったあと地図を確認し、少しがっくりした様子を見せた。
しかしすぐに気を取り直して動き出す。
彼女は花々を楽しむこともなく、しかしごく自然で気負いのない足取りで他の場所に向かって歩き始めた。
彼女が歩を進めるに従って、モニターの映像も後を追うように切り替わっていく。
「何か、ふつ~に散歩してるみたいだね」
絵面だけ見ればレティシアにはそう感じられた。
表情からも緊張の様子はうかがえず、これから戦いに臨むようには思えなかったのだ。
「自然体で平常心を保ちながら、それでも警戒は最大限に高める……なかなか難しいことですわ」
「ああいうところは冒険者の経験が活きてるんでしょうね」
ただ歩く姿だけでも、見る者が見れば違いが分かるらしい。
「でも、カティアだけ他の三人から離れちゃったみたいだね……なんか、がっかりしてたよ」
映像の様子から四人のおおよその位置を確認したレティシアが残念そうに呟く。
「まあ、カティアは単独行動でも問題ないでしょう。それより、他の三人が比較的近い位置でスタート出来たのが良かったわ」
「ですわね。ステラさんとユーグさんは後衛ですから、フリードさんが合流すれば安定するでしょう」
シフィルの見解にルシェーラも同意し、それぞれのモニターをチェックする。
どうやら当の三人も合流を目指して動き始めたようだ。
そしてカティアの映像に目をやれば、彼女は薔薇園から庭園の方……池の手前までやって来ると、そこでいったん足を止めた。
そして池の反対側の茂みに視線を向け……突然、大きく跳躍し、一気に池を跳び超え茂みの向こう側に躍り出る。
そこでモニターの映像が切り替わると、カティアに肉薄され慌てふためく男子生徒の様子が映し出される。
そしてまともに構えを取る事もできない彼を、瞬く間に撃破してしまった。
男子生徒は結界を破られて失格となり、近くにある校舎内へと避難する。
なお、今回のカティアの武器は剣ではなく薙刀だ。
武神杯でも使っていたので、それが一番の得意武器であることはレティシアのみならず多くの生徒たちも知っていた。
なんなら武術の授業の時は教師であるスレインをサポートして、彼女が薙刀の教師役をつとめている。
レティシアもその授業で、彼女から薙刀を教わっていた。
さっそく一人撃破……と余韻に浸る間もなく、今度は校舎の陰から不意打ちで放たれた魔法がカティアに襲いかかる。
しかし、背後から迫るそれに即座に反応し、彼女は振り向きざまに回避しながら魔法で反撃。
そしてそれは、魔法を放った直後で硬直した女生徒に直撃。
あっという間に二人目も撃破してしまった。
「あ、あれ……合唱部の部長さんだよ。クラブ内抗争だったんだね。先輩、めっちゃ悔しがってる」
メリエルが不意打ちしてきた女生徒の正体に気が付いて言った。
「下剋上ですわね」
「大物殺しに失敗したのは先輩の方だけど」
モニターには、悔しがる先輩女子と、彼女に近づいて慰めるカティアの様子が映し出されていた。
「それにしても、まだ始まったばかりなのに……もう二人も撃破しちゃったわね。これはカティア無双が始まるかな」
シフィルは楽観的な様子でそんな事をいう。
順当にいけば、きっとそれはその通りになるだろう。
しかし……
カティアが別の場所に移動すると、モニターの場面も切り替わる。
今度彼女がやって来たのは厩舎の近く。
そして再び彼女の前に敵が立ちふさがる。
今度は隠れもせずに、真正面から。
その相手は……
「あ、ガエル!1組と2組の対決だね。カティアには悪いけど、ここはガエルを応援するよ!」
カティアと対峙するのは、メリエルのクラスメイトである男子生徒だ。
二メートル近くありそうな巨漢であり、その体格に見合った大剣を携えていた。
彼は武術対抗戦にも出場しており、トーナメントを順調に勝ち上がっている強者だ。
当然ながら、2組の中では最強の実力者ということである。
「ガエルさんは学生にしてはかなりの実力者ですが……それでもカティアさんには敵わないでしょう」
クラブ活動や授業で彼と対戦した経験のあるルシェーラが冷静にそう評する。
真正面からぶつかれば、カティアの勝ちは揺るぎない……と。
「む~……でも、勝負はやってみなくちゃ最後まで結果は分からないよ!」
「……確かに、それはそうですわね」
メリエルの言葉を肯定するルシェーラ。
実際に戦ってみなければ結果は分からない……確かにその通りだ。
だが、そんな言葉よりも……ルシェーラはガエルの雰囲気に何かこれまでと違うものを感じていた。
それは、武術に精通していないはずのレティシアも同様だった。
二人とも、画面越しではそれが何なのかははっきりとは分からないが……
正面から対峙するカティアとガエルは、一言二言の言葉を交わしたあとそれぞれの武器を構えた。
レティシアたちを含め、カティアに注目していた多くの生徒たちが固唾をのんで成り行きを見守る。
否が応でも緊張感が高まり……その瞬間、大講堂は静寂に包まれる。
そして、戦いの火蓋が切られた。
何かが起こりそうな予感とともに。
33
あなたにおすすめの小説
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。
本条蒼依
ファンタジー
山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、
残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして
遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。
そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を
拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、
町から逃げ出すところから始まる。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる