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レティシア15歳 輝く未来へ
第165話 一番列車
しおりを挟むアクサレナ・イスパル中央駅での開業式典は盛大に行われ、国王ユリウスやレティシアが挨拶を終えると、起工式の時を超える大歓声が上がった。
そして開業一番列車に招待客が乗り込む。
一般にも募集をかけたところ、膨大な数の応募が殺到した。
応募定員500名に対して応募数は数千にも及んだことからも、鉄道に対する国民の関心の高さを示しているだろう。
列車は、01型魔導力機関車を先頭に客車8両を連結した編成で、前方5両は一般招待客が乗る一等~三等客車。
そして、国王一家や高位貴族、特にレティシアと親しい友人たちは、編成の後方に3両連結された特等車両に乗車する。
ホーム上では関係者が式典最後のイベントの準備を行っている。
出発を見送る人たちに応えるため、列車最後尾の特等ラウンジ車の展望デッキには国王一家やレティシアたちが立ち出発の時間を待っていた。
『まもなく、7時発のイスパルナ北駅行き一番列車が発車します。ご利用の方はご乗車のうえお待ち下さい。途中停車駅は、プレナ、キルシュヒル、アレイスト、リンデブルック、トゥージスです』
この日から日常の光景となるであろう出発案内のアナウンスの声が駅構内に響く。
そして、出発時間直前になるとホーム上ではテープが張られ、都市計画室室長のアドレアン伯爵がその前に立つ。
そして……
「イスパル邦有鉄道、レティシア鉄道、一番列車!!出発!!進行!!」
アドレアン伯爵が大きな声で宣言すると、テープカットが行われる。
ピィーーッッ!!!
警笛の音も高らかに、ゆっくりと列車が動き出す。
「いってきま~すっ!!!」
レティシアが満面の笑顔で、大きな声でホームの人々に別れを告げる。
それに合わせてデッキに立つユリウスたちが手を降ると、集まった人々から大きな歓声が上がるのだった。
こうして、7時ちょうどのイスパルナ北行き一番列車は、無事定刻でアクサレナを出発するのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「レティ、泣いてるの?」
「うん。もちろん、嬉し涙だよ」
ここに至るまでの様々な苦労と喜びを思い出し……列車が走り出したとき、彼女は涙をこらえることが出来なかった。
そんな彼女の想いを察した他の者たちは、存分に感慨に浸ってもらおうと、その場をカティアに任せて一足先に室内で寛いでいる。
「ふふ……そんなんじゃあ、せっかくの景色が楽しめないじゃない。乗り鉄なんでしょ?」
「ぐすっ……だって……もう、最近涙もろすぎるよ、私……」
そんなレティシアに苦笑しながら、カティアは遠ざかっていくアクサレナの街と、尽きることなく流れ去っていくレールを眺める。
「すごい……ね。あっという間に景色が流れていく。きっと、こんなスピードで世界もどんどん変わっていくのかな……」
「うん……なに?不安なの?」
「ふふ、まさか!もう、希望しか無いよ!わくわくするね!」
カティアはそう言うが、実際のところ変わっていくことに対する不安は少しある。
だが、それ以上に……希望の方がはるかに大きいのは確かだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「あ、レティシアさん、カティアさん。もう外は良いのですか?」
「レティ、目が赤いわよ」
「シフィル、そういう事は言わないの」
「もう、感無量……って感じだったもんね!」
レティシアとカティアが車内に戻ると、特等ラウンジの豪華なソファーに座ってお喋りを楽しんでいた学友たちが声をかけてきた。
彼女たちだけでなく、広々とした車内では特別招待の乗客たちが思い思いに車窓を眺めながら会話を楽しんでいた。
ちょっとした社交界といった雰囲気である。
「どう?カティアやルシェーラちゃんは前に試験運転で乗ったことあると思うけど、他の皆は初めてでしょ?」
「凄いよ!!もう……とにかく凄いよ!!」
「メリエル、語彙がアレよ。まあ、でも、とにかく凄いのはその通りね。これは世界が一変するわよ」
メリエルは子供のようにはしゃぎながら、その驚きを表現する言葉が見つからない。
それはシフィルも同じで、興奮を隠しきれない様子。
「私は一度乗ってますけど、やっぱり驚きですわ。早くブレゼンタムまで延伸して下さいね、レティシアさん」
「ブレゼタムから先、アダレットもよろしくお願いね」
「ルシェーラちゃんも、ステラも気が早いね……」
まだ開業したばかりだと言うのに、もう延伸の話をするルシェーラとステラに、レティシアは思わず苦笑する。
「まあ、計画はしてるけど、まずは開業路線が成功しないことにはね」
「それは大丈夫でしょ。今日のあの盛況ぶりを見たら……。もうモーリス商会でツアー商品売り出したりしてるんでしょ?」
「うん!『古都イスパルナとフィラーレ温泉を巡る旅』とかね。宿と乗車券をセットにした商品ね。売れ行きも順調みたい。……そうだ!今度の冬休み、皆で温泉旅行行こうよ!」
「お!いいね!!」
レールの継ぎ目を車輪が刻む小気味よい音と、少女たちの楽しそうな笑い声がラウンジに響く。
そんなふうに、人々の驚きと喜びを乗せて……列車は順調にイスパルナに向けて走るのだった。
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