40 / 151
剣聖の娘、後宮に入る……?
寛ぎの空間
しおりを挟む騎士の登用試験を受けに来たはずが、何故か後宮に泊まることになったエステル。
平民がそんなところに泊まることになれば気後れしそうなものであるが……我らがエステルは全く気にしない。
エステル・ハートは鋼で出来ているのだ。
「こちらがエステル様のお部屋になります。ごゆっくりお寛ぎ頂ければと思います」
「ふわぁ……凄く広い……」
クレハに案内されて宿泊する部屋へやって来たエステル。
そこは彼女が今まで泊まっていた宿などとは比較にならない豪華な部屋だ。
扉を開けて中に入ると、先ずは広々とした玄関が迎える。
ここだけでクレイと一緒に泊まっていた宿の二人部屋と良い勝負である。
更に玄関奥の扉を開くと、三人が並んで歩けるくらいに広々とした廊下が伸びる。
廊下の突き当りに大きな扉があり、左右にも幾つかの扉が並ぶ。
「突き当りの部屋が居間、続きに寝室や浴室などが御座います。左右にあるのは使用人の控え部屋やキッチンなど……私達がエステル様のお世話をするための部屋となってます」
クレハが各部屋の説明をするが、あまりのスケールの違いにエステルは目を白黒させている。
「……え~と、クレハさん、ここに何人泊まるんですか?」
「こちらはエステル様お一人のためのお部屋です。あ、私も使用人控室は使わせて頂きますね」
「ふわぁ……」
流石に豪胆で物事を深く考えないたちのエステルであっても、驚きのあまり感嘆のため息しか出てこないようだ。
そして、案内されるままに廊下奥の扉から居間に入ったエステルだが……
「ふぇ~……」
またもや驚きの声が漏れる。
とにかく広い。
一人で使うような空間とは思えないほどだ。
10人ほど集まってパーティをしても十分な余裕があるだろう。
部屋を入って突き当りの壁は大きなガラス張りの窓になっていて、更にその先はバルコニーに出られるようだ。
部屋の中は魔法の照明で照らされて非常に明るいが、窓の外はもう夕暮れ時で暗くなりつつあった。
部屋の右手の扉は寝室や衣装部屋、お手洗い、浴室に続いているとの事。
(うわぁ……こんなところに泊まれるなんて……騎士って凄いんだぁ!)
そんなわけあるか。
誰か早く彼女に説明をしてください……
「それでは……先ずはお着替えいたしましょうか。そのドレスのままではごゆっくり出来ないでしょうから」
「あ、そうですね。そう言えば私の服と剣は……」
「エステル様のお召し物は、洗濯して後ほど剣と一緒にお返しいたします。こちらに部屋着のご用意がありますので、そちらに着替えていただければと思います」
「分かりました~。わざわざ洗濯して頂いてありがとうございます!」
そしてエステルは居間から続く衣装部屋に通される。
ご多分に漏れずその部屋もかなりの広さがある。
ずら~……と並ぶクローゼットに化粧台、大きな姿見。
クローゼットの1つを開けると……がらんとしてほとんど服は入っていなかったが、それは当然だろう。
幾つかかかっていた服の一つをクレハは手にとる。
「こちらのワンピースで如何でしょうか?」
「え~と……よく分からないのでお任せします。……そう言えばドレスもそうですけど、なんで私のサイズにピッタリの服が用意されてるんです?」
そんな疑問を口にするエステル。
ドレスの時点で気が付いても良さそうなものだが……
「提出していただいた書類に身長、体重を書いて頂いてたかと思います。そこから大体のサイズは分かりますし、ご用意させていただいたのは、ある程度調整の効くものですので」
「あ、そっか~!」
クレハの説明にエステルは納得する。
だが実際は……
エステルが提出した書類からおおよそのサイズを用意したのはその通りだ。
ある程度調整が効く服を用意した……というのも。
しかし、先日彼女が王城を訪れたとき、丁度いい機会だ……と言う事でアランがこっそり指示し、使用人たちが目算で測っていたのである。
王城の使用人……恐るべし。
「それではお着替えも済みましたし、居間でゆっくりお寛ぎ下さい。いまお茶をお淹れしますね」
そうして、着替え終わったエステルは居間に一人取り残される。
取り敢えずソファにちょこん、と腰掛けるが……
「……何だか落ち着かない」
エステルは非常に活動的な娘である。
何もせず座っているだけ……というのは、どうにも落ち着かないのだ。
「お茶を淹れてくれるって言ってたし、それは頂きたいけど……せっかくだし探検に行きたいな~」
まだ座ったばかりだというのにそんな事を言い出す始末。
もう少し大人しくしていられないのだろうか……
29
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる