【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

文字の大きさ
84 / 151
剣聖の娘、裏組織と戦う!

囚われの少女たち2

しおりを挟む

 ついに攫われた女性たちの監禁場所に潜入を果たしたエステル。
 そこには想像以上に多くの美しい少女たちが囚われており、皆一様に暗い表情だ。
 もう既に諦めた様子の者、さめざめと泣いている者、呆然として無表情の者……何れにしても言えることは、誰もが己の不幸を嘆き希望を失っている事だろう。

 エステルが入ってきても、ちら……と一瞥しただけで、彼女たちに大きな反応は見られない。
 また可哀想な女の子がやってきたのか、くらいの認識だろう。



 彼女たちのその様子を見たエステルは、悪の組織に対する怒りが再燃し、絶対に壊滅させると決意を新たにする。
 そして。

(……みんな、絶対に助けるからね!もう少しの辛抱だから。……あれ?あの子、どこかで見たような……?あ!もしかして……?)


 エステルは少女の一人に見覚えがあるような気がして……心当たりの人物を思い出した。
 

「……ねぇねぇ。もしかしてあなた……クララさん?」

「え!?ど、どうして私の名前を……?」

 悲しげにうつむいていた少女はエステルに声をかけられ、驚きで顔をバッ!と上げた。


「あ、やっぱり!ティーナさんに似てたから……直ぐに分かったよ」

 少女……クララは、姉と似たような金髪に近い茶色の髪と緑色の瞳をしており、姉よりやや幼いその容姿もよく似ていた。
 年のころはエステルと同じくらい。
 ここに囚われている少女たちは何れも見目麗しい容姿の者ばかりだが……やはり彼女も、人攫いに目を付けられれしまったのか納得できるくらいの美貌の持ち主だった。


「お姉ちゃんの知り合いの方なんですか?」

「うん、私はエステル。ティーナさんにあなたを助けて欲しいって頼まれたんだ。あ、それは一応秘密ね」

 エステルはクララを安心させるように微笑むと、少し声を落としてそう答える。
 一応、彼女も潜入作戦である事は理解しているので、極力目立たないように……とは考えているのだ。
 意外なことに。
 極秘任務という言葉に酔ってるだけかも知れないが。


「助けるって……無理よ、ここはいつも見張られてるし、凄く強い用心棒がいるって聞いたわ」

「へぇ……強い用心棒かぁ……(戦う機会があるかな?)」

 クララの『強い用心棒』という話に興味を示すエステル。
 全く、ぶれない娘である。


「それよりも、怪我とかは無い?酷い目にあったりは……」

「それは大丈夫。手荒な真似はされてないし、食事もちゃんと出されてる。湯浴みもさせてもらえるし……衣食住は保証されてる。でも……それだけだわ」

 それはあくまでも彼女たちが『商品』だから……と、言外にクララは言っている。
 待遇に問題がないからと言って、楽観できるわけがないのだ。


「私達はね、これからオークションにかけられて、どこか遠くの外国に奴隷として売られて……誰かの所有物になって、慰み者にされる。それはもう、どうしようもないのよ……」

 そう言って彼女は、ポロポロと涙を零す。
 もうすっかり希望を失って諦めてしまっているが、二度と家族に会えないと思うと……耐え難い悲しみが心に去来するのは、彼女にはどうする事もできなかった。


「大丈夫……大丈夫だよ。いま、国王陛下や騎士団が裏組織壊滅のために動いてくれてるから」

 エステルはクララを優しく抱き寄せながら言った。


「え……?どうして……あなたがそんなことを知ってるの?」

 自分とさほど変わらない歳の少女が自信満々にそんなことを言うのを、彼女は不思議に思った。
 自分と同じように、こんな場所に攫われてきたのに……何でこんなにも落ち着いてるのだろう、とも。

「私は『聖女騎士』のエステルだよ!陛下から『極秘任務』を命じられたの!」

「聖女騎士……?陛下から……?本当に……?」

「うん!だから……今は私を信じて。クララちゃんも、他のみんなも……必ず助け出してみせるから!」

 その言葉をクララは直ぐには信じられず呆然とした様子でエステルを見つめる。
 しかし、聖女騎士と名乗った少女が余りにも自信たっぷりに断言したので、やがて彼女の瞳にも希望の光が宿り、力強く頷き返す。



 と、そこでアルドからの念話が届く。

(エステル、囚われた女性たちは確認できたか?)

(あ、陛下!はい、私もいま監禁場所に連れてこられました。二~三十人はいますね)

(結構な人数だな……捜索願が出てる者以外にも攫われた者がいるようだ)

 ここ最近の王都で、行方不明になって捜索願が出ている娘たちの人数よりも多い事にアルドは驚く。


(女性たちの様子はどうだ?)

(元気はないですけど……ディセフさんが言ってた通り、取り敢えず乱暴はされてないみたいです)

(そうか。一先ずは良かった。エステル、すまないが……)

(分かってます。悪の親玉が姿を見せるまでは大人しくしてます)

 エステルはアルドが申し訳無さそうに言おうとするのを先回りして応えた。

 その時。


「エステルさん、どうしたの?」

 
 突然黙り込んだエステルに、少し不安そうにクララが聞いてきた。


「あ、ううん、何でもないよ」

(陛下、しばらくは暇そうなんで、私は他の女の人たちからも情報を集めますね。出来る女ですから!)

(ふふ……そうだな、頼りにしている)

(任せてください!)

 一先ず女性たちが無事であることが分かったので、エステルは暫くは落ち着いて情報収集を行うことにし、アルドもそれを了承する。

 そして……二人とも、自分たちが暴走しかけていた事など忘却の彼方なのは言うまでもない。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

処理中です...