94 / 151
剣聖の娘、裏組織と戦う!
色欲の王
しおりを挟む(君の母……エドナがエル・ノイア神殿の聖女だったことは知ってるのだろう?)
かつての事件の話について……アルドはまず、その話から切り出した。
(あ、はい。それは知ってます。……お母さんから直接聞いたわけじゃないですけど)
エドナは娘に昔のこと……特に王都に住んでいたときのことをあまり話したがらない。
なので、彼女は自分が神殿に所属する聖女であったことも、娘に直接教えてはいない。
エステルがそれを知ったのは、シモン村の長老がポロッとこぼしたのを聞いたからだ。
(そうか……。まず一つ言えるのは、かつての『事件』の中心には彼女……『赤の聖女エドナ』の存在があった)
(……そう言えば、何で『赤の聖女』なんですか?お母さん、ぜんぜん赤くないですよ?アイツらも何か勘違いしていたみたいですけど……)
エステルは鮮やかな赤い髪をしているが、それは父ジスタルから受け継いだもの。
エドナは金髪碧眼だ。
だから、エステルは母がなぜ『赤の聖女』などと呼ばれているのかが不思議であった。
(そうなのか……?俺もてっきり……君と同じ赤髪なのだと思ったが)
(私の赤髪は、どちらかと言えばお父さん譲りですね。お母さんは金髪です)
(ふむ、確かに気になるが……まぁ、今はそれは置いておこう。とにかく、君の母親は『事件』に深く関わっていた人物の一人だった……ということだ)
エドナの二つ名の由来は気になったものの、とりあえずは今の話に関係ないと思い、アルドはそのように続けた。
(……でも、その事件は解決したんですよね?それが……今回の誘拐事件と何の関係があるんです?)
(それは、今から順を追って説明しよう。エドナが事件の中心人物の一人と言うのは今言った通りだが、他にも何人か重要人物がいる。その一人が……先代の国王であるバルド、俺の伯父だ)
(先代の国王……へ~かの伯父さん?)
(そうだ。知ってるか?)
(いえ、知らないです!)
きっぱり。
それで良いのか国民よ。
しかしアルドは苦笑しつつも、それも仕方ないというふうに続ける。
(まぁ、最近になって俺が正式に王になるまでは、長らく空位だったから……君が知らないのも無理はないな)
いや、そもそも彼女は現国王の名前も知らなかったのだが。
流石のアルドもそれを聞いたら凹んだかもしれないが、その事実を告げるものがいなかったのは幸いだろう。
(え!?ずっと王様がいなかったんですか!?)
(もちろん国政が滞ることのないように代行者が立てられたわけだが……まぁ、それは事件後の話だ。色々複雑な事情があったとだけ言っておこう。……ともかく、伯父は『事件』の最重要人物……はっきり言ってしまえば、首謀者ということだ)
(!!)
今回の誘拐事件との関わりが想起されるという、かつての事件。
その首謀者が先代の国王であると告げられ、流石のエステルも事の重大さに絶句する。
そしてアルドは事件の概要を、その発端から語り始めた。
先代国王バルドは、大きな功績と呼べるものは無かったが、目立った失政というのも特に無く……言ってしまえば、凡庸な王であった。
しかし、それは政治的な能力という点であり、人間としては看過できない大きな欠点を抱えていた。
それが……
(バルドは異常なくらい女好きで、多くの女性を後宮に住まわせ色欲に溺れていたという)
(えっと…………すっごくエッチだったって事ですか)
(ま、まあ、そういう事だ)
言い方はアレだが、まあそういう事だ。
(……中には無理やり後宮入りさせられた女性もいてな。貴族は言うに及ばず、見目が良い娘となれば身分も関係なしに手を出していたと言われている)
そこまで聞けば、エステルにも話の流れが読めた。
つまり。
(お母さんも……その王様に目を付けられたって事ですか?)
(……より正確に言えば、バルドはついに手を出してはいけないところまで手を出そうとした。つまり、神殿の聖女に……エドナはその中の一人だったということだ)
エルネア王国は当然ながら君主制国家であり、国王の権力は絶大である。
だが、例え王と言えど、人一人を好き勝手に扱う事など本来は許されない。
だから、バルドが無理やり女性を後宮入りさせていた事は問題視されていた。
しかし、王が強権を持つことに違いはなく、王の側近たちは閑職に飛ばされる事を恐れて諫言する者は僅かばかりだった。
そうやって好き勝手に女性を侍らせて肉欲に溺れていた先王だったのだが……その欲望はとどまることがなかった。
女神エル・ノイアに祝福された神秘の乙女たち。
聖女は癒やしの奇跡の力を有するのみならず、その美貌も類まれなるものだった。
バルドはそんな彼女たちをも、自らの欲望を満たすための相手として目を付けたのだ。
しかし……エル・ノイア神殿は、国家権力とは切り離された独自の力を持っている。
故に、いかな王の強権と言え聖女を好き勝手に自分のものにすることなど出来ない。
……そのはずだった。
29
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる