【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

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剣聖と聖女の帰還

聖女、潜入する

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 聖女の失踪について神殿上層部が揃って何か隠しているのであれば、そのトップたる大神官も当然なにかを知ってるはず……
 そう考えたエドナは、直接会って話を聞こうと考えた。

 しかしそうは言っても、彼女の地位ではおいそれと会えるものではない。
 それは彼女もよく分かっていた。

 だから……

(大神官様の部屋にこっそり忍び込む……それしかないわ)

 と、大胆なことを考えるのだった。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 夕刻。
 仕事を一通り終えたエドナは、人目を忍んで神殿の立ち入り制限区域へ向う。

 そこは一般には開放されてない区画であり、彼女もこれまで数回ほどしか訪れたことがない場所だ。
 ほとんど人影はなかったが、気配を感じるたびに柱の陰に潜んでやり過ごし、彼女は記憶を頼りに大神官の執務室に向う。
 完全に不審者である。



 やがて、彼女は目的の部屋の前にたどり着いた。
 そこは神殿内で最も奥まった場所の一つ。
 最高権力者の部屋というだけあって、その扉も大きく立派なものだ。


(……ここね。確か今は不在のはずだけど)

 流石に、彼女は大神官のある程度のスケジュールを事前に確認はしていた。
 だが念のため……誰か中にいないか、彼女は扉に張り付いて聞き耳を立てる。
 完全に不審者である。


(……物音はしない。よし……!)


 エドナは意を決して扉に手をかける。
 鍵はかかっていないようだった。
 ドアノブを回したときに、カチャ……と音が出るのに肝を冷やしながら、僅かな隙間から中を覗き込む。

(……うん、大丈夫ね。誰もいないわ)

 すると彼女は、素早く扉の隙間からスルリと部屋の中に入り、そっと扉を閉めた。
 紛う事なき不審者である。




 部屋の中はとても広く、至るところに綺羅びやかな調度品が置かれている。
 だが、仕事をするには落ち着かない雰囲気に思えた。
 一つ一つのモノは良いものだと言えるのだが、部屋全体としての統一感に欠くのである。

(聖職者の執務室というよりは、成金的な俗っぽさね……)

 平民の出で、今も比較的質素な暮らしをしている彼女であっても……その部屋は下品でセンスが無いと感じられた。

(大神官……ミゲル様って、個人的にはあまり良い感じはしなかったのだけど……)

 部屋の雰囲気一つ見ても、自分の感覚は正しかったのかもしれない……と思った。



 そして彼女は調度品の一つ、彼女の背丈ほどもあろうかという大瓶の後ろに隠れた。

(予定通りなら……もうすぐ戻ってくるはず。それまではここに隠れてましょう)

 ミゲルに会うまでは見つかるわけにはいかない。
 彼以外の誰かが来ないとも言えないので、しばらく息を潜めて待つことにするのだった。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




 エドナが大神官の執務室の中で息を潜めて身を隠してからしばらく経った。
 彼女はすぐに大神官が部屋に戻ってくると思っていたが……待ち人はなかなか帰ってこない。


(遅い……わね。もうどれくらい経ったのかしら?)

 何をするでもなく、ただ待つだけというのは思いのほか精神的にキツい……と言うことを彼女は知る。

 そしていい加減彼女が痺れを切らして、もう戻ろうかと考え始めたときのこと。


 カチャ……


 入口の方から扉が開く音が聞こえてきた。


(来たっ!!遅いわよ!!)

 内心で理不尽な文句を言いつつ、彼女は更に息を潜めて入ってきた人物が目当ての大神官なのか見極めようとした。



「……やれやれ。随分と遅くなったてしまったな」

 そう独り言を呟きながら入室してきたのは、豪奢な法衣を纏った、やや肥満体型の壮年男性。


(大神官ミゲル……様。他には……誰もいないわよね)


 彼が部屋に戻ってきても、暫くは隠れたままで様子を伺い、他に誰もいないことを確かめる。


(……よし、誰もいないわ)

 それを確認すると、彼女は意を決して隠れていた場所から大神官の前に姿を見せる。


「!?誰だっ!!」

 誰かが部屋にいるなどとは思っても見なかった彼は、当然の驚きをもって誰何の声を上げた。

「大神官様、不躾に申し訳ありません。突然このような形でお伺いしたことをお許し下さい」

 エドナはまず丁寧な口調で謝罪を述べた。

 神殿上層部に疑念を抱いているものの、今の段階ではそれもはっきりせず……であれば、トップである大神官に敬意を欠くわけにはいかない。
 ……こうやって忍び込んでる時点で今更ではあるのだが。


 そして、侵入者が賊の類ではないと分かり、大神官は落ち着きを取り戻してエドナを見る。

「お前は……聖女エドナか」

「え……私のことをご存知なのですか?」

 最高位の大神官が、聖女と言えど末端に過ぎない自分の名前を知っていた事に、彼女は驚いた。


「もちろんだとも。聖女は貴重な存在であるが故……顔と名前は覚えておる。特に君くらいに優秀な者ならば、尚の事」

「では、聖女リアーナの事も……ですか?」

「リアーナか。ああ、知っているとも。……そうか、君は彼女の妹だったな。なるほど、姉のことを探しているのだな」

「!……はい。ご存知であれば、教えてください!姉は今……どこにいるんですか!?」

 彼は姉の所在を知っている。
 それを確信したエドナは、大神官に詰め寄りそうになるのをグッとこらえ……しかし、勢い込んで尋ねた。

 そして、それを問われた大神官ミゲルは、どこか嫌らしくも感じられる笑みを浮かべた。


 果たして、彼の答えや如何に……?


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